スーツアクターってどんな仕事?凄さがわかるアクションシーン5選

スーツアクターってどんな仕事? エンタメ

「スーツアクター」は、変身ヒーローや怪獣など、“中に入って演じる人”のことです。

  • 仮面ライダー
  • スーパー戦隊シリーズ
  • ウルトラマン
  • 怪獣・怪人・ゆるキャラ など

こういった「顔が見えないキャラクター」の中で、アクション全部を担当する俳優・スタントマンが、スーツアクターです。

特徴をざっくりまとめると、こんな感じです。

  • マスクやスーツで顔も表情も見えない
  • セリフはあとから声優さんや俳優さんが録音(アフレコ)
  • それでも“性格”や“感情”を動きだけで伝える
  • 殺陣(たて)やアクロバット、ワイヤーアクションもこなす
  • 「スタントマン」でもあり「俳優」でもある存在

つまり、
「危険なアクションをやる人」+「キャラクターのお芝居をする人」
この二つを同時にこなす仕事なんです。


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どれくらい大変な仕事なの?

スーツアクターの現場は、想像以上にハードです。

視界がほとんどない

ヒーローのマスク、かっこいいですよね。
でも中から見ると、

  • 視界がものすごく狭い
  • 曇る
  • 暗い

と、ほぼ「小さなのぞき穴」状態だと言われています。

そんな状態で、

  • 敵と剣を交える
  • 後ろからの攻撃をよける
  • 段差を飛び越える
  • バイクや車を使ったスタントをする

…という、かなり無茶なことをやっています。

スーツの中はサウナ状態

スーツや着ぐるみの中は、風が通りません。
夏場の撮影だと、着ているだけで汗がだくだく。

ある記事では、

1日の撮影で体重が5キロ落ちることもある
と書かれているほど、体への負担が大きい仕事です。

それでも、カメラの前では余裕そうに見せなければいけません。

命がけのスタントもある

初代『仮面ライダー』では、主演の藤岡弘、さんが自分でスーツを着てバイクスタントを行い、撮影中の事故で大怪我を負ったことがあります。

この事故をきっかけに、今では俳優本人には危険なスーツアクションをさせないというルールになり、スーツアクターが本格的に活躍するようになりました。

  • 高所からの落下
  • 爆破の横を走り抜ける
  • バイクでジャンプする

こういった“命がけ”の部分を引き受けているのが、スーツアクターたちなのです。

「動きだけで演技をする」プロ

スーツアクターは、単に派手なアクションをするだけではありません。
大事なのは、「キャラクターらしさ」を体で表現することです。

たとえば、

  • 熱血キャラ → 大きく、前のめりな動き
  • クールキャラ → 無駄のない、キレのある小さめの動き
  • コミカルキャラ → 軽く飛び跳ねるようなアクション

など、変身前の俳優さんの性格や演技に合わせた動きを、全身で作り上げています。


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スーツアクターの「すごさ」がわかるポイント

整理すると、スーツアクターのすごさは、主にこの5つ。

  1. 視界が悪い・暑い・重いという悪条件の中で動く
  2. 命の危険があるスタントも引き受ける
  3. キャラクターの性格を「動き」だけで表現する
  4. カメラの位置や編集まで頭に入れて、見栄えのいい画を作る
  5. 主役なのに、名前がほとんど出ない“裏方”として作品を支える

この「主役なのに、顔も名前も出ない」というところが、まさに職人の世界ですよね。


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凄さがわかるアクションシーン5選

ここからは、スーツアクターのすごさが実感できる代表的なシーンを5つ選んで、どこがすごいのかを解説していきます。

※作品名や話数は、あくまで代表例として挙げています。ネタバレはできるだけ控えめにします。


① 『仮面ライダー龍騎』第1話

「空から剣が降ってくる」シーン

  • スーツアクター:高岩成二さん(多くの平成ライダーの中の人として有名)

有名なシーンとして語られるのが、『仮面ライダー龍騎』第1話で、変身したばかりの龍騎の足元に、空から剣が突き刺さるシーンです。

普通なら、

剣が刺さる → すぐにかっこよく抜いて構える

という“ヒーローらしい”動きになりそうですが、この時の龍騎は違います。

  • 剣をすぐには抜かない
  • きょろきょろと空を見上げる
  • 「え、今なにが起きた!?」という戸惑いを全身で表現

監督が「なぜ空を見上げたの?」と聞いたところ、高岩さんは

「剣が降ってきたら、その落ちてきたところを見るでしょう」
と答えたそうです。

ここがすごいポイントは、

  • 単に“かっこいいヒーロー”ではなく
  • 「普通の青年が、いきなりヒーローになった戸惑い」を演技に落とし込んでいる

というところ。

アクロバットが大きいシーンではありませんが、
「動きだけでキャラを語る」のお手本のような演技です。


② 『仮面ライダー電王』クライマックスフォームのドタバタアクション

『仮面ライダー電王』では、電王の中に「イマジン」と呼ばれるキャラたちが憑依して動きをコントロールします。

  • モモタロス(熱血)
  • ウラタロス(クール)
  • キンタロス(豪快)
  • リュウタロス(子どもっぽい)

この4体がいっぺんに乗り移った姿が「クライマックスフォーム」。

このフォームのアクションがとにかく大変で、

  • 4人分の性格が体の中でケンカしている
  • 勝手に手足が動くような、落ち着きのない動き
  • それでいて、ちゃんと敵も倒さないといけない

という、カオスそのもののキャラクターです。

高岩さん本人も、

「久しぶりに泣きたくなった」
と言うほど大変な動きだったそうです。

それでも画面の中では、

  • コメディとしてちゃんと笑える
  • ヒーローとしてもちゃんとかっこいい

という絶妙なバランスに仕上がっています。

ここで分かるのは、

スーツアクター=単なるアクションの人ではなく、
“多重人格を体一つで演じる俳優”でもある

ということです。


③ 『ウルトラマンレオ』 二家本辰巳さんのキレキレアクション

ファンの間で「最高峰のアクション」と名前が挙がることが多いのが、『ウルトラマンレオ』でスーツアクターを務めた二家本辰巳さんです。

評価されているポイントは、

  • 素早く綺麗なバク転・バク宙
  • キレのあるバックスピンキック
  • 敵に吹っ飛ばされる時のリアルな受け身
  • 痛みをちゃんと感じているように見える演技

など、「痛み」「重さ」「スピード」が伝わってくるところ。

特に、レオは他のウルトラマンよりも武道っぽい肉弾戦が多く、

  • 投げ技
  • 関節技
  • 連続蹴り

など、人間の格闘技に近い動きが目立ちます。

ここでのスーツアクターのすごさは、

  • 「空想の巨人」でありながら
  • 人間の格闘技として見ても説得力のある動きをしていること

です。

「ヒーローだから強い」のではなく、
“強く見せるための技術”が詰まっているアクションなんですね。


④ 初代『仮面ライダー』のバイクスタントと、その後の歴史

さきほど少し触れたように、初代『仮面ライダー』では、主演の藤岡弘、さんが自らスーツアクションとバイクスタントを担当していました。

  • バイクでのジャンプ
  • 急停止
  • 崖ぎりぎりを走る

といった、今なら絶対にNGと言われそうなレベルのスタントを、本人がやっていたのです。

しかし、その撮影中に大きな事故が発生し、藤岡さんは重傷を負います。
この出来事を受けて、今では

「俳優本人に危険なスーツアクションはさせない」

というルールができ、プロのスーツアクターが前面に立つ時代になりました。

ここから分かるのは、

  • スーツアクションは本来、命がけの危険がある
  • だからこそ、専門の訓練を積んだプロが必要
  • その結果、アクションの質もどんどん上がっていった

という歴史です。

今、安心してカッコいいアクションを楽しめるのは、
この時代に体を張ってきた人たちのおかげだと言えます。


⑤ スーパー戦隊シリーズの「最終回付近の総力戦」

東映のスーパー戦隊シリーズでは、『科学戦隊ダイナマン』以降、最終回やその近くの回で、変身前の俳優本人がスーツを着てアクションをするという演出が行われることがあります。

とはいえ、すべてを俳優本人がやっているわけではなく、

  • 基本的な動き・ポーズ・ヒーローらしさ → スーツアクターが普段から作り上げている
  • その「型」を、クライマックスだけ俳優本人がなぞる

という形になっています。

スーパー戦隊のアクションは特に、

  • 5人(最近はそれ以上)がぴったり揃った動きをする
  • カメラワーク+爆発+ワイヤーアクションが同時進行
  • バラバラな位置にいるのに、最後は一枚の絵としてキレイに決まる

という、“集団アクションの芸術”のようなところがあります。

ここでのスーツアクターのすごさは、

  • 自分だけでなく、周りの動きも計算しながら演技している
  • 「このカットなら、自分は2歩下がって、右足で決めポーズ」など
    カメラ位置と編集を読んだ“設計された動き”をしていること

です。

最終回付近で俳優本人がスーツを着てアクションをするときも、

  • それまで長期間、スーツアクターが積み上げてきた「動きのキャラクター性」
  • それを俳優本人に伝え、一緒に仕上げていく

という、バトンリレーのような関係があるのです。


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スーツアクターになるには?

「こんな仕事があるなら、やってみたい!」と思った方のために、
ざっくりとした道のりも紹介しておきます。

アクションの養成所やプロダクションに入る

有名どころとして、こんな団体があります。

  • ジャパンアクションエンタープライズ(JAE)
  • レッドアクションクラブ
  • そのほか、各作品に関わるプロダクション など

ここで、

  • アクション(空手・カンフー・体操・トランポリンなど)
  • 殺陣(たて)
  • 受け身・転がり方・安全な落ち方
  • カメラ映えする動き

といった基礎を徹底的に叩き込まれます。

ヒーローショーなどで経験を積む

多くのスーツアクターは、遊園地やイベントのヒーローショーからスタートします。

  • 炎天下の野外ステージ
  • 舞台での生の観客相手のアクション
  • 子どもたちの前で転び方・立ち上がり方を体で覚える

こうした現場で経験を積みながら、テレビや映画の仕事にステップアップしていきます。

身体能力だけじゃなく「役者力」も大事

スーツアクターは、アスリートのような体の強さも必要ですが、
それ以上に「役として生きる力」が求められます。

  • 「このキャラなら、こんな立ち方はしない」
  • 「この性格なら、敵に背を向ける時もこう動くだろう」

といった、細かい性格づけを動きに変換する力が、プロとアマの差になります。


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まとめ

ここまで見てきたように、スーツアクターとは

  • 危険なアクションを引き受けるスタントマンであり
  • キャラクターを命吹き込む俳優でもあり
  • それでいて、名前も顔もあまり知られない“裏の主役”

という、かなり特殊で、そして尊敬すべき仕事です。

この記事で紹介した5つのポイントとシーンを思い出しながら、

  • 仮面ライダーのさりげないしぐさ
  • ウルトラマンの構え方や歩き方
  • スーパー戦隊の全員が揃った決めポーズ

を、もう一度じっくり見てみてください。

きっと、

「あ、この一歩の出し方、めちゃくちゃ計算されてるな」
「この転び方、ほんとに痛そう…」
「キャラの性格が、動きだけで伝わってくる!」

と、新しい発見があるはずです。

これからヒーロー番組や特撮作品を見るとき、
「この中には、命がけで作品を支えている職人がいる」
そんな目線をほんの少し持ってもらえたら、
スーツアクターたちにとって、何よりの拍手になると思います。

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