雄物川高校バレー部にとって、今はまさに「試練のとき」です。
監督が体罰・暴言で懲戒免職となり、チームは監督不在のまま大会を迎えることになりました。この記事では、
- 何が起きたのか
- なぜ監督不在で大会に出ることになったのか
- これからチームはどう変わっていくべきか
を解説していきます。
雄物川高校バレー部はどんなチーム?
まずは前提として、「雄物川高校バレー部ってどんなチームなの?」というところから整理しましょう。
- 秋田県横手市にある県立高校
- 男子バレーボール部は全国でも有名な強豪
- 「春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権)」の常連校として知られている
長く全国の舞台に立ち続けてきた「伝統校」であり、地域の誇りでもありました。
そんなチームを指導していたのが、元日本代表のセッターとして北京五輪にも出場した宇佐美大輔監督です。
宇佐美監督に何があったのか?
体罰と暴言が発覚
報道によると、秋田県教育委員会は、雄物川高校男子バレー部の宇佐美大輔監督が、部員に対して体罰や暴言を行っていたと認定し、2025年11月7日付で懲戒免職処分にしました。
内容として報じられているのは、たとえば次のような行為です。
- 顔を平手やこぶしで殴る
- お腹を蹴る
- ボールをぶつける
- 「バカ」「お前のせいで負けた」などの暴言を何度も浴びせる
学校の調査では、男子バレー部31人のうち、
- 「体罰を受けた」と訴えた生徒が14人
- 「暴言を受けた」と訴えた生徒が13人
いたとされています。そのうち1人は口の中を切るけがも負いました。
また、この問題を受け、秋田県バレーボール協会は宇佐美監督に1年間の謹慎処分を科しています。
なぜ今、大きな問題になったのか
きっかけは、2025年9月ごろに「監督が部員に体罰を与えている」という情報が、県バレーボール協会に寄せられたことでした。
そこから協会と学校が調査を行い、
- 宇佐美監督も体罰を認めたこと
- 複数の部員が被害を訴えたこと
などが明らかになり、処分に至っています。
宇佐美監督は「生徒を全国レベルにしたかった」と話していると報じられていますが、どんなに勝ちたい気持ちがあっても、暴力や暴言は許されません。
なぜ「監督不在」で大会を迎えることになったのか?
春高予選を前にした謹慎・指導停止
体罰問題が公になったのは、春高バレー秋田県予選の開幕直前です。
報道によると、
- 県バレーボール協会は2025年10月6日付で、宇佐美監督に1年間の謹慎処分
- 宇佐美監督は監督職を一時的に外れ、顧問やコーチが代わりに指導する体制へ移行
という流れになりました。
そのため、
「春高バレー秋田県予選は、監督不在の中で戦う」
という異例の状況になっています。
ベンチには誰が入るのか?
監督が不在とはいえ、試合には必ず帯同者が必要です。
多くの場合、
- 学校の別の教員である「部活動顧問」
- 外部コーチやスタッフ
- マネージャーやトレーナー
などが、役割を分担してチームを支えることになります。
雄物川高校でも、
- 顧問の教員
- 既にいたコーチ
が中心となって、選手たちをサポートすると見られます。
ただし、ここで重要なのは、
「宇佐美監督の代わり」になれる人はいない
という現実です。戦術やシステムだけでなく、長年積み上げてきた「信頼関係」や「チームの文化」も、いきなりは引き継げません。
監督不在で戦う雄物川高校バレー部の不安とチャンス
ここからは、監督不在で大会に挑むチーム側の目線で考えてみましょう。
選手たちが抱えるであろう不安
- 戦術面の不安
- タイムアウトで誰が指示を出すのか
- 相手の対策やフォーメーションの変更は誰が決めるのか
- 試合中の細かい駆け引きに対応できるのか
- メンタル面の揺れ
- 長く一緒にやってきた監督が急にいなくなるショック
- メディアやSNSで自分たちのチームが話題になるプレッシャー
- 「自分たちが何か悪いことをしたのでは?」という罪悪感を抱く選手もいるかもしれません
- 学校生活・将来への不安
- 「この先、バレー部はどうなってしまうのか」
- 「進路(大学進学、推薦など)に影響はないか」
これらは大人でもつらい状況です。高校生にとってはなおさら重い現実でしょう。
それでも残る「チャンス」の側面
しかし、一方でこれは大きな転機でもあります。
- 暴力や恐怖に頼らない、新しいチーム文化を作るチャンス
- キャプテンや3年生が主体となる「選手主導のチーム」へ変われるタイミング
- 「勝つためだけのバレー」から、「人として成長するバレー」へ方向転換するきっかけ
監督のカリスマ性に頼らないチーム作りは時間がかかりますが、うまくいけば「本当に強いチーム」になります。
新体制づくりで大事になる5つのポイント
では、雄物川高校バレー部がこれから新体制を作っていくうえで、どんなことが大切になるでしょうか。ここからは、あくまで一般論としての提案です。
① 安全と安心を最優先にする
まず何よりも大事なのは、
「暴力も暴言もない、安全で安心できる練習環境」です。
- 何かおかしいことがあれば、すぐ相談できる窓口をつくる
- 顧問の先生
- 学校のスクールカウンセラー
- 外部の相談窓口
- 1対1の密室ではなく、できるだけ「開かれた場」で指導が行われるようにする
- チーム内で「これ以上はやりすぎ」という共通の基準を確認する
これは雄物川高校だけでなく、すべての部活動に共通する大きな課題です。
② 指導スタイルの見直し
これまで日本のスポーツ界では、
「厳しさ=怒鳴る・殴る」
と誤解されてきた場面がたくさんありました。
しかし、今は時代が変わっています。
- データや映像を使った論理的な指導
- できている点を認めた上で課題を伝えるポジティブ・フィードバック
- 選手と一緒に考える対話型のコーチング
こうしたスタイルに切り替えることが、新しい雄物川高校バレー部には求められます。
③ チームの「価値観」を言葉にする
強いチームには、必ずはっきりした「価値観」があります。
たとえば、
- 「仲間を傷つける言葉は使わない」
- 「ミスを責めるのではなく、次の一手を考える」
- 「勝ち負けよりも、人としての成長を大事にする」
こうしたルールを、
「なんとなくそうだよね」ではなく、紙に書いて、全員で確認する
ことが、これからのチームづくりには重要です。
④ 外部の力も上手に借りる
新しい監督・コーチが決まるまでは、
- 学校外の指導者
- 地元クラブチームのコーチ
- OB・OG
など、外部の力を借りる場面も増えるでしょう。
ただしその際も、
暴力や暴言を許さない「ガイドライン」
を学校側がしっかり示すことが必要です。
⑤ 選手一人ひとりの「心のケア」
今回の件で傷ついたのは、体罰を受けた選手だけではありません。
チームメイト全員が、何らかの心のダメージを受けているはずです。
- 「あの時、自分は止められなかった」と自分を責める選手
- 「声をあげたせいで、こんなことになったのでは」と不安な選手
- 「もうバレーを続けたくない」と思う選手
こうした気持ちに寄り添い、
必要であればカウンセリングや専門家のサポートを受けられる体制
を整えることが、とても大切です。
高校スポーツ全体に突きつけられた課題
今回の雄物川高校バレー部の問題は、
「一つの学校の不祥事」で終わらせてはいけないテーマです。
「勝利至上主義」の弊害
日本の部活動では、
- 「全国に行くためなら多少のことは仕方ない」
- 「強くなるには、厳しい指導が必要だ」
という空気が、今も根強く残っています。
しかし今回のように、
- 生徒がけがをするほどの体罰
- 人格を傷つける暴言
があったと報じられている以上、
「勝つためなら何をしてもいい」という考えは、はっきりと否定されるべきです。
通報しやすい仕組みづくり
今回の件は、部員の関係者からの情報提供がきっかけで明るみに出ました。
つまり、
「おかしい」と思った人が声を上げられたからこそ、問題が表に出た
とも言えます。
今後は、
- 学校内に「第三者委員会」や外部窓口を整える
- 生徒や保護者が、匿名でも相談できるフォームを用意する
- 教員同士でも、指導の仕方をチェックし合える仕組みを作る
といった取り組みが、他校も含めて必要になります。
メディアと私たちの「受け止め方」
また、私たち一般の大人も、
- 単に「バッシングのネタ」として楽しむ
- 面白半分にSNSで拡散する
のではなく、
- 何が事実として報じられているのか
- 何がまだわかっていないのか
を冷静に見極める必要があります。
「叩いて終わり」ではなく、「二度と同じことが起きないように、何ができるか」を考える視点が大事です。
これからの雄物川高校バレー部はどうなるのか?
では、肝心の「これから」についてです。
正直なところ、
具体的に誰が新監督になるのか
どんな体制になるのか
といった情報は、まだ公表されていません(2025年11月時点)。
ですから、ここから先は「予想」ではなく、
「こうなっていってほしい」という希望・提案として書きます。
「強さ」と「人権」を両立するチームへ
雄物川高校は、
長年にわたり全国の舞台で戦ってきた伝統校です。
その歴史や実績を「なかったこと」にする必要はありません。
むしろ、
- これまで培ってきた技術や戦術
- OB・OGのつながり
- 地域の応援
を大切にしつつ、
「人として大切なもの」をもう一度見直す機会にしてほしいところです。
選手たちが胸を張って言えるチームへ
理想的なのは、
在校生や卒業生が、将来こう言えるチームです。
「きついことも多かったけれど、あの3年間があったから、今の自分がある」
「あのチームでよかった、と心から思える」
そのためには、
- 「恐怖」ではなく「信頼」でチームをまとめる
- ミスを責めるのではなく、「どうすれば良くなるか」を一緒に考える
- ベンチにいる大人たちが、子どもたちの「心と体の安全」を守る最後の砦になる
こうした変化が不可欠です。
私たち大人にできること
最後に、この記事を読んでいる私たち大人にできることも考えてみます。
- 情報を鵜呑みにせず、事実を確認する姿勢を持つ
- 「勝つためなら体罰も仕方ない」という考えを、はっきり否定する
- 子どもたちのSOSを見逃さない
そして何より、
「暴力に頼らない指導をしている、たくさんの素晴らしい指導者たちがいる」
という事実も忘れずに、
健全な部活動のあり方を、社会全体で支えていく必要があります。
まとめ
この記事では、
について整理してきました。
雄物川高校バレー部は、今後しばらく「苦しい時間」が続くかもしれません。
それでも、
- 暴力のない、安全で安心できる環境
- 選手主体の、風通しの良いチーム文化
- 地域やOB・OGに愛されるチームづくり
を進めていくことで、
「強さ」と「人としての成長」を両立した、新しい雄物川高校バレー部に生まれ変わる可能性があります。
私たちにできるのは、
ただ傍観するのではなく、
「二度と同じことを繰り返さないでほしい」
「選手たちが胸を張ってプレーできる環境になってほしい」
という思いを持ちながら、
冷静に、そして温かい目でこのチームの“これから”を見守ることではないでしょうか。


