2025年のマイルチャンピオンシップ、見応えありましたね。
この記事では、
エルトンバローズ/ラヴァンダ/オフトレイル/ウインマーベル/トウシンマカオ
この5頭が、実際レースでどう走ったのかを振り返っていきます。
まずはレース全体をざっくりおさらい
レースの基本情報
- レース名:第42回 マイルチャンピオンシップ(G1)
- 日付:2025年11月23日(日)
- 場所:京都競馬場・芝1600m(外回り)
- 馬場:良
- 勝ち馬:ジャンタルマンタル(1番人気・川田将雅騎手)
- 勝ちタイム:1分31秒3
上位3頭はこんな感じでした。
1着:ジャンタルマンタル
2着:ガイアフォース
3着:ウォーターリヒト
ペースは前半4ハロン45.9秒、後半3ハロン34.2秒。
ざっくり言うと、
「前半からけっこう飛ばして、最後までスピードを落とさない、タフなマイル戦」
という流れでした。
その中で、今回の主役である5頭はこんな着順でした。
- オフトレイル:4着
- エルトンバローズ:5着
- トウシンマカオ:11着
- ラヴァンダ:16着
- ウインマーベル:18着(最下位)
ここからは一頭ずつ、
「レース前の期待」→「レースの走り方」→「結果をどう見るか」
という順番で見ていきます。
エルトンバローズ:3年連続マイルCS、「古豪」の意地の5着
どんな馬?
エルトンバローズは、
マイル〜1800mで長く一線級で戦ってきた実力馬。
- 2023年:毎日王冠(G2)優勝
- 2023年マイルCS:4着
- 2024年マイルCS:2着
- 2025年もG2毎日王冠で5着と、まだまだ衰えを感じさせない走り
つまり今回のマイルCSは、
3年連続の挑戦
になります。
それでも今年の単勝人気は12番人気(オッズ67.2倍)。
「もうピークは過ぎたのでは?」と見られた面もありました。
レースぶり:2番手から渋とく粘って5着
エルトンバローズは5枠9番からスタート。
スタート良く飛び出し、トウシンマカオの後ろ、2番手のポジションを取りました。
通過順は、
- 3〜4コーナー:②②番手
前には逃げるトウシンマカオ、外にはジャンタルマンタル。
かなりプレッシャーのかかる「好位ど真ん中」のポジションです。
直線に向くと、
- 先頭のトウシンマカオが苦しくなり
- 外からジャンタルマンタル、ガイアフォース、さらにウォーターリヒトが襲いかかる展開
エルトンバローズ自身も最後までしぶとく脚を使いましたが、
結果はクビ差の5着。
上がり3ハロンは33.6秒でまとめています。
騎乗した西村淳也騎手は、
「勝ち馬のオーラがすごかった。昔のエルトンバローズに戻ってくれたし、これから頑張ってくれると思います」
とコメントしていて、「内容には手ごたえあり」という雰囲気でした。
この5着をどう評価する?
- 前半かなり速い流れ(45.9秒)で、逃げ馬のすぐ後ろ
- 直線でも大きく止まらず、G1で5着
- 人気は12番人気
こう考えると、
「人気以上によく走った、“復活気配アリ”の5着」
と言っていい内容です。
年齢的にはベテランの域ですが、
京都マイル適性の高さと精神的なタフさはまだまだ健在。
今後も、展開ひとつでまたG1で馬券圏内があっても不思議ではない走りでした。
オフトレイル:大外から豪脚炸裂の4着
どんな馬?
オフトレイルは、イギリス生まれの外国産馬で、
- 2024年:ラジオNIKKEI賞(G3)優勝
- 2025年:スワンステークス(G2)優勝
と、3歳〜4歳にかけて一気に出世してきた新興勢力です。
父はFarhh、馬主はゴドルフィン。
いかにも「伸びしろの塊」という血統・バックボーンの馬ですね。
今回のマイルCSでは、
7番人気・オッズ34.1倍と「中穴どころ」の評価でした。
レースぶり:後方から最速32.6秒の末脚で4着
オフトレイルの通過順は、
- 3〜4コーナー:⑬⑬番手(後方グループ)
- 上がり3F:32.6秒(全馬中最速)
スタート後は無理に前へ行かず、
いつものように後方でじっくり脚をためる形。
直線では、内から外へうまく進路を見つけると、
そこから一気に「これぞG2ウィナー」級の豪脚を披露。
結果はクビ差の4着。
勝ち馬ジャンタルマンタルからも、そう大きく離されていません。
この4着をどう見る?
ポイントは、
- G1の舞台で 最速の上がり32.6秒
- 後方13番手からの追い込みで4着まで届いたこと
ここから見えてくるのは、
「展開次第で、G1制覇も現実的に見えてきた一戦」
ということです。
もし、
- もう少し前めのポジションが取れていた
- 直線で進路取りにロスが少なかった
こうした条件がそろえば、
馬券内、さらには勝ち切りまであってもおかしくない力は十分にありそうです。
「道なき道を行く」という馬名の意味どおり、
“王道路線のど真ん中”に殴り込んできた新星と言える内容でした。
トウシンマカオ:ハイペースで逃げて11着、それでも役割は大きかった
どんな馬?
トウシンマカオは、もともと短距離〜1400mで実績を積んできた快速馬。
- スプリント路線の重賞でも上位常連
- 2025年京王杯スプリングカップ(G2・東京芝1400m)などで存在感を見せている
今回のマイルCSでは、
11番人気・オッズ58.9倍とそこまで高い評価ではありませんでしたが、
「マイルでもスピードを生かしてどこまで粘れるか」が注目ポイントでした。
レースぶり:迷いなくハナへ、マイルCSの「ペースメーカー」に
1枠1番という絶好枠を引いたトウシンマカオは、
スタート後スッと出て、そのままハナ(先頭)を主張。
- 3コーナー:①番手
- 4コーナー:①番手
- 上がり3F:34.5秒
前半800mが45.9秒というハイペースだったことを考えると、
かなり攻めた逃げだったことがわかります。
直線入り口までは先頭を守っていましたが、
残り200mあたりから脚色が鈍り、
最終的にはクビ差の11着まで順位を落としました。
この11着は「負けて強し」か?
結果だけを見ると二桁着順ですが、
- G1の大舞台で、しっかり自分の競馬=逃げを打った
- ハイペースを作ったことで、差し・追い込み勢の台頭を演出した
- そのおかげで、オフトレイルのような「後方勢の好走」にもつながった
という意味で、
レース全体に与えた影響はかなり大きい1頭です。
マイルのG1で逃げ切るのは本当に難しいので、
「攻めの騎乗で、レースを動かした“陰の立役者”」
と評価してあげたい内容でした。
距離を1400m前後に戻せば、
また重賞戦線で主役級の走りを見せてくれる可能性は十分あります。
ラヴァンダ:好位から運ぶも伸びを欠き16着
どんな馬?
ラヴァンダは、
2025年のアイルランドトロフィー(G2・東京芝1800m)を制した上がり馬の牝馬です
- 戦績:17戦3勝・総賞金約1億6400万円
- 調教師:中村直也(栗東)
- 父:シルバーステート
秋に重賞を勝って勢いに乗り、
満を持してマイルCSに挑戦してきました。
今回の単勝人気は6番人気・オッズ20.2倍。
「一発あるかも?」という期待を集めた1頭です。
レースぶり:前目のポジションから直線で失速
ラヴァンダは5枠10番からスタート。
- 3〜4コーナー通過順:④④番手
- 上がり3F:34.5秒
- 結果:16着(勝ち馬から約1.5秒差)
トウシンマカオが作るハイペースのすぐ後ろ、
さらに外からジャンタルマンタルやアスコリピチェーノも並びかけてくる中で、
「かなり厳しい流れの好位」
を追走する形になりました。
直線に向いた時点ではまだ手応えがあるように見えましたが、
坂を上がってからは脚が残っておらず、
最後はズルズルと後退してしまいました。
16着でも、完全な「大敗」とは言い切れない理由
数字だけを見ると大敗ですが、
- 初のG1・フルメンバー18頭立て
- マイルCS特有の「前半から速い流れ」
- 秋の連戦での疲れがあってもおかしくないタイミング
とハードルは高かったレースです。
ラヴァンダ自身は、
「好位から運ぶ競馬はできたが、G1の厳しい流れの中で最後まで粘り切るスタミナが足りなかった」
そんな印象です。
今後、
- 相手が少し楽になるG2・G3
- 1800m前後のゆったりしたペースのレース
では、また重賞戦線で主役に戻ってくる可能性は十分あります。
ウインマーベル:本来の“千四の鬼”らしさ出せず18着
どんな馬?
ウインマーベルは、
もともと1200〜1400mで高いパフォーマンスを見せてきた快速馬。
- スプリンターズSで2着
- 高松宮記念など、スプリントG1でも上位争いの常連
- 「千四の鬼」と評されるほど、1400mに強いと紹介されることも
父はアイルハヴアナザー、馬主は(株)ウイン。
スピードと根性を合わせ持つタイプです。
今回のマイルCSでは、
10番人気・オッズ53.5倍でした。
レースぶり:中団から伸び切れず18着
ウインマーベルは6枠12番からスタート。
- 3〜4コーナー通過順:⑩⑩番手(中団やや後ろ)
- 上がり3F:34.5秒
- 結果:18着(最下位)
道中は中団あたりで脚をためる競馬でしたが、
直線に向いてからも
「これだ!」という伸びを見せることができず、
ジリジリと後退してしまいました。
マイル(1600m)の壁?負け方は案外シンプル
ウインマーベルに関しては、
- もともとベスト距離が1200〜1400m
- 今回はG1の厳しいマイル戦
- 前半から速い流れで、最後までスピードを維持しきれなかった
という点を考えると、
「やっぱりベストは短距離。マイルのG1はさすがに厳しかった」
とシンプルに捉えてよさそうです。
距離を短く戻して、
得意のスプリントや1400m戦に出てきたときは、
今回の結果だけで軽視しすぎない方が良いタイプと言えます。
5頭の走りから見えたもの
今回取り上げた5頭を、一言でまとめるとこんなイメージです。
- エルトンバローズ:人気薄でも“京都マイル巧者”は健在の5着
- オフトレイル:G1級の末脚を証明した4着。夢はもっと先まで見える
- トウシンマカオ:攻めの逃げでレースを動かした、陰の功労者
- ラヴァンダ:G1のハイペースに泣くも、条件が変われば巻き返し可能
- ウインマーベル:やはり本領は短距離。マイルG1は厳しかった
マイルCSは、
「その馬の適性」と「立ち回り」がハッキリ出るレースです。
- 先行して粘るタイプ
- 後方から一気に差すタイプ
- 短距離寄りのスピード型
- 中距離寄りの持久力型
それぞれの馬が、
今年のマイルCSという「舞台」でどんな表情を見せたのか──。
その違いを知っておくと、
次にこの馬たちが出てきたとき、
「この距離・この舞台なら、前走より走れるかも」
「今回は条件が合わないから評価を下げよう」
といった、ちょっと“プロっぽい視点”でレースを楽しめるようになります。
おわりに:負けた馬にもドラマがある
G1というと、
どうしても「勝ち馬」ばかりに注目が集まりがちです。
でも実際は、
こうした「負けた馬たち」の物語も、
知れば知るほど味わい深いものがあります。
次に彼らがターフに戻ってきたとき、
今回のレースを思い出しながら、
「あのときの悔しさを晴らす番だな」
と、ちょっとだけ気持ちを込めて応援してみるのも楽しいですよ。




