ジェンティルドンナという名前を聞くと、
「強かった」「伝説級の牝馬」というイメージはあっても、
- 具体的にどんなレースで勝ったのか
- どれくらい“歴史的にレアな実績”なのか
までは、意外と説明しづらいですよね。
この記事では、
「ジェンティルドンナの実績と代表レース」=どれくらいすごい馬だったのか
を整理していきます。
ジェンティルドンナってどんな馬?ざっくりプロフィール
まずは基本情報から。
- 名前:ジェンティルドンナ(Gentildonna)
- 生年:2009年2月20日生まれ(北海道・ノーザンファーム)
- 父:ディープインパクト
- 母:ドナブリーニ
- 性別:牝馬(メス)
- 通算成績:19戦10勝(うち2着4回)
- 獲得賞金:約13億2621万円(JRA史上トップクラス)
主なタイトルだけ抜き出すと、こんな感じです。
- 牝馬三冠(桜花賞・オークス・秋華賞)制覇
- ジャパンカップ連覇(2012年・2013年)
- ドバイシーマクラシック優勝(2014年)
- 有馬記念優勝(2014年・ラストラン)
- G1を7勝
さらに、
- 年度代表馬(日本の「その年の最優秀馬」)を2012年と2014年の2回受賞
- 2016年にJRA顕彰馬(競馬殿堂入り)に選出
という、まさに「名馬中の名馬」です。
実績①:牝馬三冠を制した“貴婦人”
まず最初の大きな実績は、
3歳時に牝馬三冠を達成したこと
です。
牝馬三冠ってなに?
牝馬(三歳の女の子の馬)には、
「クラシック」と呼ばれる大きなレースが3つあります。
- 桜花賞(1600m・阪神)
- 優駿牝馬=オークス(2400m・東京)
- 秋華賞(2000m・京都)
この3つすべてに勝つことを「牝馬三冠」と呼びます。
- 桜花賞:スピード勝負
- オークス:スタミナもいる2400m
- 秋華賞:タフでテクニカルな条件
と、それぞれ求められる能力が微妙に違うので、
全部勝つのは本当に難しいんです。
ジェンティルドンナは2012年に、
- 桜花賞
- オークス
- 秋華賞
この3つをすべて勝って、史上4頭目の牝馬三冠馬になりました。
しかもライバルが強かった
当時のライバルには、のちにG1馬になる「ヴィルシーナ」などがいて、
決してメンバーが弱かったわけではありません。
それでもジェンティルドンナは、
桜花賞・オークス・秋華賞のすべてでヴィルシーナを破り、
力でねじ伏せるような形で三冠達成。
「同世代の牝馬では、完全に頭ひとつ抜けた存在」
であることを、早い段階で証明してしまいました。
実績②:ジャパンカップ連覇という“歴史級”の記録
次に語られるべき実績が、
ジャパンカップ(JC)を2012年・2013年と連覇したこと
です。
ジャパンカップとは?
- 舞台:東京競馬場・芝2400m
- 時期:秋(11月末ごろ)
- 特徴:日本と海外のトップホースが集まる大レース
日本ダービーと同じ距離で行われる国際G1で、
「世界の一流馬が集まる舞台」として位置づけられています。
2012年JC:オルフェーヴルとの“伝説の一騎打ち”
2012年のジャパンカップは、
- 三冠牝馬ジェンティルドンナ
- 三冠馬オルフェーヴル
という三冠馬同士のガチ対決になりました。
残り400mから、
オルフェーヴルが一気に伸びてきて先頭へ。
そこにジェンティルドンナが内から並びかけて、
体をぶつけ合いながらの激しい叩き合い。
写真判定の結果は――
ハナ差でジェンティルドンナの勝利。
このレースは今でも、
「JC史上屈指の名勝負」
「三冠馬同士の死闘」
と語られています。
さらにこの勝利で、
- 3歳牝馬として史上初めてジャパンカップ制覇
という歴史もつくりました。
2013年JC:史上初の連覇
翌2013年、
ジェンティルドンナはジャパンカップを連覇します。
このときは、デニムアンドルビーの強烈な追い込みを
「クビ差」でしのぐ形での勝利。
これにより、
ジャパンカップ史上初の2連覇達成
という、またひとつ大きな歴史的記録を残しました。
実績③:ドバイシーマクラシック制覇で“世界”にも通用
日本国内だけでなく、
ジェンティルドンナは海外G1でも勝っています。
ドバイシーマクラシックってどんなレース?
- 開催地:アラブ首長国連邦・ドバイ(メイダン競馬場)
- 距離:芝2410m
- 格:G1
- 世界中から一流馬が集まるビッグレース
2014年、ジェンティルドンナはこのレースに挑戦し、
見事に優勝。
相手には、ヨーロッパの強豪「シリュスデゼーグル」などがいて、
決して楽なメンバーではありませんでした。
それでも、日本馬として海外の大舞台で勝ったことで、
「日本だけじゃなく、世界レベルでもトップクラス」
であることを証明したと言えます。
実績④:引退レースで有馬記念優勝という“完璧なラスト”
そして何より印象的なのが、
引退レースとなった2014年の有馬記念を勝って終わったこと
です。
有馬記念とは?
- 舞台:中山競馬場・芝2500m
- 年末の「グランプリレース」
- ファン投票で出走馬が選ばれる“夢のレース”
ファンの人気も実力も必要な、
いわば「一年の締めくくりの大舞台」です。
ラストレースでの勝利
2014年の有馬記念には、
- 同年のジャパンカップ馬エピファネイア
- 成長著しい3歳馬トゥザワールド
- 名馬ゴールドシップ
など、そうそうたるメンバーが集まっていました。
そこでジェンティルドンナは、
直線で堂々と抜け出して勝利。
「ジャパンカップは3連覇を逃したけれど、有馬記念できっちり取り返した」
という、非常にドラマチックなラストでした。
この勝利で2014年の年度代表馬にも選ばれ、
まさに「最強の有終の美」を飾ったと言っていいでしょう。
代表レースを「ストーリー」で振り返る
ここまで「実績の一覧」で見てきましたが、
代表レースをストーリーとして振り返ると、
ジェンティルドンナの“すごさ”がより伝わりやすくなります。
① 2012年桜花賞:一気に主役へ
- 3歳春、牝馬クラシック初戦
- ライバル・ヴィルシーナら強敵が集結
- ジェンティルドンナは直線で一気に突き抜けて快勝
ここで、
「世代の主役はこの馬だな」
と多くのファンに印象づけました。
② 2012年オークス:2400mも余裕でした
- 距離は2400mに伸びる=スタミナも試される
- しかし、桜花賞馬ジェンティルドンナはここでもきっちり勝利
- 2着はまたしてもヴィルシーナ
「マイル(1600m)だけじゃなく、2400mでも強い」
ということがはっきりしたレースです。
③ 2012年秋華賞:三冠へのラストピース
- 京都2000mという少しクセの強いコース
- 三冠がかかったプレッシャーの中での一戦
- それでも、最後はしっかり抜け出して勝利
これにより、
牝馬三冠達成(史上4頭目)
が決まりました。
④ 2012年ジャパンカップ:オルフェーヴルとの死闘
先ほども触れた通り、
- 三冠牝馬ジェンティルドンナ
- 三冠馬オルフェーヴル
ががっつりぶつかったのが、この2012年JC。
内から抜け出そうとするジェンティルドンナに、
外から半馬身ほど前に出るオルフェーヴル。
そこからさらに盛り返し、
体をぶつけ合いながらハナ差で勝利。
判定を待つ時間も含めて、
「手に汗にぎる」とはこういうことか、というレースでした。
⑤ 2013年ジャパンカップ:史上初の連覇
前年ほどの派手さはないものの、
今度は追いすがるデニムアンドルビーをクビ差でしのぐ形で連覇。
- プレッシャーの中で
- 勝って当たり前と思われる立場で
- きっちり結果を出す
この「勝ち切る力」こそ、
ジェンティルドンナのすごさを象徴していると言えます。
⑥ 2014年ドバイシーマクラシック:海外でも一流
強豪・シリュスデゼーグルらを相手に、
世界のビッグレースで勝利した2014年のドバイシーマクラシック。
- 馬場も違う
- 気候も違う
- 輸送も長い
という、馬にとっては負担の大きい中で勝てたのは、
能力の高さだけでなく、精神的な強さもあったからだと考えられます。
⑦ 2014年有馬記念:ラストを勝利で締める
ジャパンカップ3連覇は叶わなかったものの、
その悔しさを晴らすような走りを見せたラストラン。
「最後まで強くて美しい走り」
で締めくくったことで、
“貴婦人”というニックネームにぴったりの引退レースとなりました。
数字で見る「どれくらいすごいのか?」
感覚的にも「すごい」のですが、
数字で見てもその異常さがよく分かります。
G1・7勝という異次元
G1を1勝するだけでも、
普通の競走馬からしたら「一生に一度あるかないか」の大成功です。
ジェンティルドンナは、
- 牝馬三冠=3勝
- ジャパンカップ=2勝
- ドバイシーマクラシック=1勝
- 有馬記念=1勝
合計でG1・7勝。
これは日本競馬の歴史の中でも、
本当に一握りの馬しか到達していない数字です。
年度代表馬を2回受賞
- 2012年:牝馬三冠+ジャパンカップ制覇
- 2014年:ドバイシーマクラシック&有馬記念制覇
この実績で、
日本の年度代表馬に2度選ばれています。
年度代表馬を「2回」取る馬もかなり少なく、
その時代の“顔”だった馬にしか許されない勲章です。
JRA顕彰馬(競馬殿堂)
2016年にはJRA顕彰馬にも選出されています。
これは、
「日本競馬史に名を残すレジェンド」
に与えられる称号であり、
オルフェーヴルやディープインパクト、オグリキャップなどと同じ“殿堂”入りということです。
第二の人生:お母さんとしても結果を残した
現役を引退したあと、
ジェンティルドンナはノーザンファームで繁殖牝馬(お母さん馬)になりました。
代表的な産駒(子ども)が、
- ジェラルディーナ(父モーリス)
です。
ジェラルディーナは、
- 2022年のエリザベス女王杯(G1)に勝利
- 母娘そろってG1馬というストーリーが話題に
「名馬の子どもが、ちゃんと大レースを勝つ」というのは、
そんなに頻繁に起こることではありません。
現役時代だけでなく、
“母としてもG1馬を送り出した”という点でも、
ジェンティルドンナは一流でした。
ウマ娘世代にも届いた“貴婦人”の物語
最近は、スマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』で
ジェンティルドンナを知った人も多いと思います。
ゲーム内では、
- 3.5周年前後で育成ウマ娘として実装
- 史実を元にしたイベント・セリフが話題に
となり、
リアル競馬を知らなかった層にもファンが広がりました。
そして2025年11月、
16歳での訃報が伝えられたときには、
- 競馬ファン
- ウマ娘ファン
の両方から、多くの追悼の声が上がっています。
まとめ
最後に、ポイントを整理します。
実績面のヤバさ
- 牝馬三冠(桜花賞・オークス・秋華賞)制覇
- ジャパンカップ連覇(史上初)
- ドバイシーマクラシック制覇(海外G1)
- 有馬記念をラストランで優勝
- G1・7勝
- 年度代表馬2回
- JRA顕彰馬(殿堂入り)
→ 「実績だけ見ても、日本競馬史トップクラスの名馬」と断言してOKなレベル。
レース内容のドラマ性
- オルフェーヴルとのJC死闘(2012年)
- プレッシャーの中で三冠達成
- ドバイで世界の強豪を破る
- 有馬記念で有終の美
→ 「勝つときはドラマチックに勝つ」馬で、
映像を見返すだけで、何度でも楽しめます。
これからジェンティルドンナを知りたい人へ
もしあなたが、
「ジェンティルドンナって結局どこを見ればいいの?」
と思っているなら、
まずは次のレースの映像を見るのをおすすめします。
- 2012年 桜花賞
- 2012年 オークス
- 2012年 秋華賞
- 2012年 ジャパンカップ(vs オルフェーヴル)
- 2013年 ジャパンカップ(連覇のレース)
- 2014年 ドバイシーマクラシック
- 2014年 有馬記念(ラストラン)
この7本を順番に見るだけで、
「ああ、この馬は本当に“貴婦人”だったんだな」
と、きっと実感できるはずです。



