ニホンウナギの輸出入が規制される?日本で食べられなくなる?

ニホンウナギの輸出入が規制 ライフスタイル

「ウナギがワシントン条約で規制されるらしい」
「日本でうな丼が食べられなくなるの?」

結論から先に言うと、現時点(2025年11月末)の時点では「日本でウナギが食べられなくなる」という状況ではありません。

ただし、ウナギをめぐる国際ルールの議論は続いていて、今後、輸出入のコストが上がったり、値段が高くなる可能性は十分あります。

この記事では、

  • そもそも「ウナギ規制」のニュースは何が起きているのか
  • ワシントン条約って何?「規制される」とは具体的にどういうことか
  • 規制されたら、日本の食卓はどう変わるのか
  • 私たちができることはあるのか

を整理していきます。


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いま世界で何が起きているの?ざっくり3行まとめ

まず、最新の動きをざっくり3行でまとめます。

  1. ウズベキスタンのサマルカンドで「ワシントン条約(CITES)」の大きな会議(COP20)が開催中。
  2. そこにEU(ヨーロッパ連合)などが「すべてのウナギを国際取引規制の対象にしよう」という案を出した。
  3. その案は委員会では反対多数で「否決」されたが、本会議(全体会合)で再投票される可能性があり、議論は完全には終わっていない。

つまり今は、

とりあえず一回目は否決されてホッとしたけど、
まだこの先どうなるか、完全には決まっていない

という、微妙な「ひと安心+まだ油断できない」状態です。


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ワシントン条約ってそもそも何?

ニュースでよく見る「ワシントン条約」は、正式には

絶滅の危険がある野生動植物の国際取引(輸出入)をコントロールするためのルール

です。

ポイントはここです。

  • 「自然の中で数が減っている動物・植物」を守るための条約
  • 各国が勝手に売ったり買ったりして絶滅しないように、
  • 輸出入に「許可」「書類」「上限」などのルールを決める

「捕るな」「食べるな」というよりは、

取引(とくに国をまたぐ取引)をちゃんと管理しよう

という考え方です。


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「規制される」とは?=輸出入に“関所”が増えるイメージ

では、「ニホンウナギの輸出入が規制される」とはどういうことか。

今回、EUなどが出した案は、
ウナギ全種をワシントン条約の「附属書Ⅱ」に入れようという内容でした。

附属書Ⅱに入ると、主にこんなことが必要になります。

  • 国境をまたいで売り買いするたびに「輸出許可証」「証明書」が必要になる
  • 「この取引は、資源が減りすぎない範囲で行われている」と各国がチェックする
  • つまり、手続きとコストが増えて、貿易量が絞られる可能性が高い

わかりやすく言えば、

これまでフリーパスで出入りできていた国境に、
きびしいチェック付きの関所ができる

というイメージです。

ポイント:附属書Ⅱに入る=いきなり全面禁止ではない
ただし、まったくゼロになるわけではありません。
「条件付きでOK。ただしちゃんと管理してね」というランクです。


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なぜEUは「ウナギ全種の規制」を提案したの?

では、なぜEUはここまで強い規制案を出したのか。

理由はシンプルで、

世界中のウナギの仲間(アユソ科ウナギ類)の多くが、
数を大きく減らしていて“絶滅の危険が高い”と心配されているから

です。

  • ウナギは、海で生まれて川に上って育ち、また海に帰るという複雑な一生を送る
  • 途中でダムや川の開発、汚染、温暖化などの影響を強く受ける
  • そこに「乱獲(取りすぎ)」や「違法取引」が重なり、
    多くの種類が急激に減っている

特に、日本やヨーロッパの近くで獲れるニホンウナギ、ヨーロッパウナギは、
すでに国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧種」に分類されており、
「このままでは本当にいなくなるかも」というレベルまで来ています。

EU側は、

「ウナギは世界中でつながっていて、
どこか一箇所だけで守っても足りない。
だから、全種まとめて国際ルールの枠に入れるべきだ

という考え方で、この提案を出しました。


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日本はなぜ反対したの?「食文化」と「値段」の問題

一方、日本はこの案に反対しました。

理由として挙げられているのが、

  1. 日本はすでにある程度、資源管理や養殖を行っている
    • シラスウナギ(ウナギの稚魚)の漁獲量制限
    • 養殖の管理、トレーサビリティ(追跡管理)の導入 など
  2. ニホンウナギが「絶滅寸前」だとは考えていない
    → EU案は厳しすぎる、という立場
  3. 日本で食べるウナギの約7割は輸入品で、
    規制されると価格高騰や食文化への影響が大きい

特に3番目が、私たちの生活に直結するポイントです。

  • 今、日本で食べられているウナギの多くは
    中国や台湾などからの輸入品です。
  • 規制がかかると、輸出側の国は「許可」を取る手間やコストが増える
  • その分、日本に入ってくるウナギの値段が上がる可能性が高い

つまり、日本政府としては、

「急に厳しく規制すると、
ウナギが超高級品になって、
庶民の食卓から消えてしまうかもしれない」

という懸念を強く持っているわけです。


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委員会では「否決」されたけど…本当にもう安心?

さきほど少し触れましたが、今回のEU案は

  • ワシントン条約の「委員会」の投票で、賛成35、反対100、棄権8で否決されました。

この結果だけ見ると、

「よかった、規制はなくなったんだ!」

と思いたくなりますが、実は少しややこしいところがあります。

  • ワシントン条約の会議では、
    委員会 → 本会議(全体会合)という流れがある
  • 通常は、委員会の結論がそのまま本会議でも承認されることが多い
  • ただし、本会議で「再投票」される可能性がゼロではない

実際、日本のニュースでも、

「まずはホッとしたが、12月5日の本会議で再投票される可能性があり、
まだ安心しきれる状況ではない」

といった表現が使われています。

じゃあ、どう考えればいいの?

現時点での現実的な見方としては、

  • 今回の会議で、すぐに「全面的な規制」が決まる可能性はかなり下がった
  • でも、ウナギ資源の減少という問題自体は消えていない
  • 今後も別の形で「国際取引ルールの強化」が議論される可能性は十分ある

という感じです。


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「日本で食べられなくなる」のリアルなシナリオ

多くの人が一番気にしているのは、ここだと思います。

「うな丼、うな重、ひつまぶし……
日本人の大好きなウナギ料理は、本当に消えてしまうの?」

シナリオ①:規制が強化された場合

もし今後、ウナギが附属書Ⅱに入ったり、
さらに厳しい規制が採択されたとすると、考えられるのはこんな未来です。

  • 輸入ウナギの価格が大きく上がる
    • 許可証・書類・検査などのコストが上乗せ
    • 違法取引の取り締まりが厳しくなり、安い“怪しいルート”が使えなくなる
  • スーパーや外食チェーンで「安いうな丼」が減る
    • ワンコインや1000円前後で食べられる店が減る可能性
  • 高級店は「さらに高級」に
    • もともと高い専門店は、希少性が増してさらに高価に

ただし、

  • 「完全に食べられなくなる」というよりは、
    「頻繁には食べられないぜいたく品になる」

という表現の方が、現実に近いと思われます。

シナリオ②:規制は緩やか、でも資源が回復しない場合

もう一つの怖いパターンは、

「国際ルールはあまり厳しくならなかったけれど、
結局、資源がどんどん減ってしまう」

というケースです。

この場合、

  • シラスウナギがなかなか獲れず、養殖の“タネ”が不足
  • 養殖ウナギの価格が上がり、結果として小売価格も上がる
  • 最悪の場合、自然界のウナギが本当に少なくなり、
    長期的には“本当に食べられなくなる”

という、一番避けたい未来につながってしまいます。


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ウナギはなぜそんなに減ってしまったのか?

ここで少し、ウナギの生き方と、減ってしまった理由も整理しておきます。

ウナギの一生は「大冒険」

ニホンウナギの一生は、ざっくりこうです。

  1. 太平洋のはるか南、マリアナ諸島近くの海で生まれる
  2. 透明な「レプトセファルス」と呼ばれる幼生として海を漂う
  3. 日本や台湾、中国の近くまで来ると、「シラスウナギ」として川や河口に入る
  4. 川や湖で何年もかけて大きくなる
  5. 再び海へ下り、遠くの産卵場へ向かって一度だけ産卵して一生を終える

この長い旅の途中、たくさんの「リスク」があります。

  • 河川のダムや護岸工事で、上流まで上れない
  • 水質汚染や温暖化で、住みやすい場所が減っている
  • 海流の変化で、産卵場や回遊ルートにも影響が出ている可能性
  • そこに漁獲・違法取引・過剰な養殖需要が重なる

…こうした要因が積み重なり、世界中でウナギの仲間が減っている、
というのが専門家たちの共通認識です。


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日本はこれからどうするべき?「守りながら食べる」ための条件

国際会議での議論を待つだけでなく、日本としてやるべきこともたくさんあります。

① シラスウナギの管理をもっと厳密に

  • いつ・どこで・どれだけ獲っているのか
    データをさらに細かく取り、科学的な上限(クォータ)を守る
  • 乱獲を防ぐために、漁期や漁法のルールを見直す

② 養殖の「見える化」と違法取引の排除

  • どこのシラスウナギを使って養殖したのか、
    トレーサビリティ(追跡できる仕組み)を強化
  • 曖昧なルートで入ってきた稚魚を使った養殖は、
    流通させないようにする

③ 完全養殖の研究を本気で進める

  • 日本ではすでに、ニホンウナギの「完全養殖(卵から卵まで)」に成功していますが、
    コストが高く、まだ商業ベースにはほど遠い状況です。
  • もし完全養殖が実用化すれば、
    自然の資源に頼らずウナギを生産できるようになります。

これはおそらく、
「ウナギを守りながら食文化も守る」ための、最大の切り札になるはずです。


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私たち消費者にできること

「国の政策」や「国際会議」の話になると、
自分には関係ないように感じるかもしれませんが、実は私たちにもできることがあります。

① 値段の安さだけで選ばない

  • 異様に安いウナギがあったら、
    「これはちゃんとしたルートなのかな?」と一度立ち止まる
  • 多少高くても、信頼できる店・ブランドを選ぶ

② 「たまのぜいたく」として大切に味わう

  • 昔の日本では、ウナギは「年に何度かのごちそう」でした。
  • 毎週コンビニのうな丼を食べる、というより、
    年に数回じっくり味わうというスタイルに戻すのも一つの選択肢です。

③ ウナギ資源のニュースに関心を持つ

  • 「規制反対だ!」「値上げは嫌だ!」だけで終わらず、
    なぜ世界が心配しているのかという背景も、少しだけでいいので知る
  • それだけでも、国や企業の動き方に少しずつ影響を与えていきます。

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まとめ

最後に、この記事の内容をギュッとまとめます。

  • 今、ウズベキスタンで開かれているワシントン条約の会議(CITES CoP20)で、
    EUなどが「すべてのウナギを国際取引規制の対象にしよう」と提案した。
  • この案は委員会で否決され、日本を含む多くの国が反対した。
  • ただし、本会議で再投票される可能性もあり、
    「もう大丈夫」と言い切れる状況ではない
  • 仮に今後、国際規制が強まれば、
    • ウナギの輸出入コストが増え、
    • 日本では「安いうな丼」が減り、
    • ウナギはもっと高級な食べ物になる可能性が高い。
  • もっと怖いのは、「規制が弱いまま資源だけ減り続ける」こと。
    その場合、本当にウナギがいなくなる未来が近づいてしまう。
  • 日本や世界がめざすべきなのは、
    「ウナギを守りながら食文化も続ける」ためのバランス探しであり、
    完全養殖の実用化や、漁獲・養殖の管理強化がカギになる。

「ニホンウナギの輸出入が規制される?日本で食べられなくなる?」という問いに、
いま答えるとすれば、

今日・明日いきなり食べられなくなることはない。
でも、このまま何もしなければ、
“いつか本当に食べられなくなる日”が来るかもしれない。

というのが正直なところです。

だからこそ、「今のうちにできること」を考えるタイミングに来ているのだと思います。
土用の丑の日にうな丼を前にしたとき、
「おいしい!」と同時に、
「この一皿を未来につなぐにはどうしたらいいだろう?」と、
ほんの少しだけでも思いを巡らせてみませんか。

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