韓国が発表したのは、中国人観光客を完全に“ノービザ”にするわけではなく、「団体ツアー客」に限った一時的なビザ免除です。
主なポイントをまとめると、
つまり、
「だれでも好きな時にパスポートだけ持って韓国入りOK」という話ではなく、
あくまで “条件付きの団体ツアー向けビザ免除” です。
なぜ今なのか?
この制度は
- 中国が2024年11月から、韓国人に対してビザなし短期滞在を認めたことへの「お返し」
- そして、観光で景気を押し上げたいという韓国側の狙い
が組み合わさって実現したと言われています。
なぜ韓国はビザ免除に踏み切ったのか?
理由はざっくり言うと、次の3つです。
- 観光でお金を落としてもらいたい(景気テコ入れ)
- 中国との関係をよくしたい(外交・政治)
- 東アジアの「観光争奪戦」に負けたくない(戦略)
順番に見ていきましょう。
観光で景気をテコ入れしたい
韓国はコロナ後、観光客はかなり戻ってきたものの、
- 内需(国内の消費)が弱い
- 経済成長もやや鈍っている
と言われています。
そこで政府は、
「海外からの観光客に、もっとお金を使ってもらおう!」
という方向に舵を切りました。
実際、韓国を訪れる外国人観光客の中で中国人は最大の割合(2024年時点で約28%)を占めています。
つまり、
- 中国人観光客が増える
→ 免税店・ホテル・飲食・エンタメ・カジノなどでお金を使ってくれる
→ 経済全体にプラス
という計算です。
カジノや免税店が「中国人客の増加を見込んで準備を進めている」という報道もあります。
中国との関係改善、「ビザ免除のキャッチボール」
もうひとつ大きいのが外交的な意味です。
- 中国は 2024年11月から、韓国人に対してビザなしでの短期滞在(観光・ビジネスなど)を認める措置をスタート
- これを受けて、韓国側も
→ 「じゃあ、こちらも中国人観光客にビザ免除を出します」という“お返し”
と見る専門家も多いです。
この「相互ビザ免除」の流れによって
- 日中韓の中で、中韓の観光・ビジネス往来が一気に増えつつある
- 中国と韓国、両方で観光客やビジネス往来が増えている(グループツアー予約数が大幅増)
と報じられています。
国際イベント&イメージ戦略
韓国は、アジア太平洋地域の大きな国際会議(APECなど)を控え、世界から人を呼び込みたい状況です。
- 「観光客が多く訪れる、開かれた国」というイメージを打ち出したい
- 会議のタイミングに合わせて、中国からの観光客の波を作りたい
という思惑もあると見られています。
まとめると:
- 経済的メリット(観光消費)
- 外交的メリット(中国との関係強化)
- イメージ戦略(国際会議&開かれた国アピール)
この3つが合わさって、「条件付きビザ免除」に踏み切った
という構図です。
韓国にとってのメリットとリスク
メリット(期待されていること)
- 観光消費の増加
- 免税店、デパート、ドラッグストア、飲食店などに観光客が戻る
- 特に「爆買い」してくれる中国人観光客は、売上面で大きな存在
- 地方空港・港の活性化
- 仁川国際空港だけでなく、地方空港や港も中国の団体ツアーの受け入れ準備を進めている、と報じられています。
- 相互往来が活発になることで、ビジネスのチャンス拡大
- 旅行会社、航空会社、ホテルだけでなく、
- 決済サービス(アリペイ・WeChat Pay)、アプリ、エンタメ産業なども恩恵を受けると見られています。
リスク・不安の声
もちろん、いい話ばかりではありません。
韓国メディアでも、インフラや受け入れ体制の強化を急ぐべきだ、という論調が出ています。
一方、日本の状況はどうなっている?
ここからが本題の「日本はどうする?」です。
日本は中国人観光客にビザは必要?
2025年11月時点で、
- 中国人観光客が日本に来る場合、基本的にビザが必要です。
ただし、日本側もまったく何もしていないわけではなく、
- 中国人向けの
- 10年有効のマルチビザ(一定の条件を満たす人向け)
- 団体ツアービザの滞在期間の延長
など、ビザの条件を緩和する動きは2025年に入って出ています。
とはいえ、
「韓国のように一定条件でノービザOK」という段階には、まだきていません。
中国から見た「日本旅行」は逆風が強い
さらにややこしいのが、政治的な緊張です。
- 2025年11月、日本の首相が台湾有事に関する発言をしたことなどをきっかけに、
→ 中国側の反発が強まり、
→ 中国政府は日本への渡航に対して「注意喚起」「渡航自粛」を呼びかけ。 - その結果、
- 日本行きの航空券が大量キャンセル(数十万件規模)
- 一部の中国系航空会社が日本便の運休・減便
- クルーズ船も日本寄港を取りやめ、韓国・済州島などへルート変更
という報道が相次いでいます。
つまり今の日本は、
「ビザをどうするか」という前に、
政治的な対立+中国側の“日本避け” という逆風が吹いている状態
と言えます。
では、日本はどうするべきなのか?
ここからは、「政策提案」というより考え方の整理です。
ポイントは次の3つだと思います。
- 韓国と同じことをする必要はない
- それでも「観光で稼ぐ」戦略自体は重要
- 中国だけに頼らないインバウンド設計がカギ
順に見ていきましょう。
韓国と同じ“ビザ免除”をすぐ真似する必要はない
正直なところ、今の政治状況を考えると、
- 日本が突然「中国団体客ノービザ!」とやる可能性は低いと思われます。
理由はシンプルで、
- 国内世論の反発
- 安全保障上の懸念
- 中国との政治的対立が強いタイミング
などを考えると、韓国以上にハードルが高いからです。
ただし、これは「中国人観光客なんていらない」という話ではなく、
「今この空気で、韓国と同じレベルのビザ免除をやるのは現実的ではない」
という意味です。
それでも日本に必要なのは「稼げる観光」の設計
日本も少子高齢化で、内需だけでは経済成長が苦しくなっています。
- 観光は外貨を稼ぐ数少ないチャンス
- 地方にお金を落としてもらえる貴重な産業
という意味で、インバウンド戦略は引き続き重要です。
そこで日本ができる現実的な方向性としては、例えばこんなものがあります。
① ビザそのものは維持しつつ、「手続きのストレス」を減らす
- eVISA(オンラインビザ申請システム)の対象拡大や使いやすさ改善
- 旅行会社と連携した「パッケージ申請」の仕組みづくり
- 必要な書類や審査基準をわかりやすく公開
ポイントは、「セキュリティを守りつつ、手続きはできるだけラクにする」ことです。
② 中国以外からの観光客をもっと増やす
たとえば、
- 東南アジア(タイ・ベトナム・インドネシアなど)
- 欧米・オーストラリア
- 中東の富裕層
など、すでにビザ免除や緩和が進んでいる国・地域も多くあります。
「中国からの観光客が一時的に減っても、
全体としてのインバウンドは増やせる設計にしておく」
こうしたリスク分散が重要です。
③ 「量」ではなく「質」で勝負する
韓国はビザ免除で「数」を取りに行っている印象がありますが、日本は
- 長期滞在
- 高付加価値な体験(温泉・高級旅館・地方観光・文化体験など)
- リピーター
を重視する方向性もありえます。
日本政府が中国人向けに
- 10年有効のマルチビザ、団体滞在期間の延長
などを検討しているのも、
「たくさん来て、何度も来て、長く滞在して、たっぷりお金を使ってもらう」
という「質重視」の発想に近いと言えます。
個人レベルでどう考えればいい?
この記事を読んでいる多くの人にとっては、
「政府がどうするか」も大事だけど、
「自分のビジネスや生活にどう影響するの?」
というところが気になるはずです。
観光・インバウンド関連の仕事をしている人へ
- 韓国のビザ免除で、中国人観光客の一部は「日本→韓国」へ流れる可能性が高いです。
- 逆に言えば、
- 韓国・中国との関係が悪化したとき、日本が「安全で安心な旅行先」として選ばれるタイミングも来るかもしれません。
長い目で見れば、東アジアの観光需要はなくならないので、
- 多言語対応(中国語だけでなく英語・韓国語など)
- 富裕層・長期滞在者向けのサービス
- オンラインでの情報発信
など、「どの国の観光客が増えても対応できる体制」を作っておくことが重要です。
投資・ビジネス視点で見るなら
- 韓国の免税店・航空・カジノ関連が、中国人観光客増加で恩恵を受けるという期待が出ている
- 逆に、日本の観光・小売関連は、中国向けのビジネスをやりすぎると政治リスクをもろに受ける可能性がある
「中国観光客だけに頼りすぎない」ポートフォリオを考える視点は、ビジネスでも投資でも共通かもしれません。
まとめ
最後に、この記事のポイントを一気に整理します。
だからこそ、日本が考えるべきは:
- 韓国と同じ“ノービザ”を焦って真似することではなく、
- ビザは維持しつつ、手続きをラクにして「来やすさ」を上げる
- 中国だけに依存しない、多国籍・高付加価値の観光戦略を作る
という、中長期での「観光立国」の設計だと言えます。
韓国が「団体ノービザ」で攻めた今、
日本は「安全・質・多様性」でどう勝負していくのか?
この問いは、政府だけでなく、
観光業・地域・ビジネス・投資をしている私たち一人ひとりに向けられているのかもしれません。

