2025年12月1日、福島県の磐梯山で「火山性地震」がぐっと増えた、というニュースが流れました。
「え、噴火するの?」「登山や旅行は危ないの?」と不安になって、スマホで検索した人も多いと思います。
この記事では、
- いま磐梯山で何が起きているのか
- 「火山性地震」とは何か
- 「噴火の前ぶれなのか?」という一番気になるポイント
- これから登山・観光・地元で暮らす人が、何に気をつければいいか
を整理していきます。
いま磐梯山で何が起きているのか(2025年12月1日時点)
まず、公式の情報から、事実だけを整理してみます。
火山性地震が一時的に増加
仙台管区気象台によると、磐梯山では12月1日の朝3時ごろから5時ごろにかけて、火山性地震が増加しました。
その結果、午前9時の時点で、その日の火山性地震の回数は124回(速報値)となっています。震源は山頂付近の深さ約2kmと推定されています。
これは、ここ最近の磐梯山としては多い回数で、2023年7月以来、約2年5か月ぶりの水準だと、地元のニュースも伝えています。
それ以外のデータに「大きな変化はない」
同じく気象台の発表では、次のような点も強調されています。
- 低周波地震(マグマや熱水が大きく動くときに出やすい地震)は観測されていない
- 火山性微動(振動が長く続くタイプの揺れ)も観測されていない
- 地殻変動(山体が大きく膨らんだり沈んだりする動き)にも、特別な変化は見られない
- 監視カメラで見ても、噴煙や地表の様子に目立った異常はない
つまり今のところは、
「地震の回数は増えたけれど、他の観測データには大きな変化が出ていない」
という状態です。
噴火警戒レベルは「1」のまま
気象庁は、火山ごとに「噴火警戒レベル」という段階を決めています。
2025年12月1日現在、磐梯山の噴火警戒レベルは、「レベル1:活火山であることに留意」のままです。引き上げは行われていません。
地元向けの防災情報でも、
- レベル1は継続
- 「火山性地震の増加以外に特段の変化は認められない」
- 火山活動の推移に「留意」してください
と案内されています。
そもそも「磐梯山」ってどんな火山?
不安なニュースが出てくると、「そもそもこの山はどんな火山なの?」という基本も気になりますよね。
会津のシンボルであり、有名な観光地
磐梯山(ばんだいさん)は、福島県会津地方にある標高約1,816mの成層火山です。
きれいな三角形のシルエットから「会津富士」とも呼ばれ、登山やスキー、裏磐梯の湖沼群など、観光地としても有名です。
1888年の大噴火で地形が大きく変わった
磐梯山がよく知られている理由のひとつは、1888年(明治21年)の大きな噴火です。
- 1888年7月15日の朝7時30〜45分ごろ、大きな噴火が発生
- 水蒸気爆発にともなう山体崩壊(山の一部が崩れ落ちる現象)で、北側の小磐梯が大きく崩れた
- 岩なだれや土石流、爆風などで477人もの犠牲者が出たとされています
- 崩れた土砂が川をせき止め、桧原湖など裏磐梯にたくさんの湖ができた
現在の裏磐梯の風景は、この大災害のあとにできたものだと考えると、「自然の力って本当に大きいんだ」と感じますよね。
一方で、最近1万年間の火山活動を調べた資料によると、1888年の噴火以降、磐梯山では噴火は発生していないとされています。
「火山性地震」ってなに?普通の地震と何が違うの?
ニュースを見ていて、いちばん耳慣れないのが「火山性地震」という言葉かもしれません。
火山の“おしゃべり”のようなもの
ざっくり言うと、火山性地震=火山の中で起きる小さな地震です。
- 地下のマグマや熱い水(熱水)、ガスなどが動く
- その動きで周りの岩がきしんだり割れたりする
- そのときに起きる「ドン」「ミシミシ」という揺れが、火山性地震
というイメージです。
一方、ふだんニュースで流れる一般的な地震は、
- プレート同士が押し合って
- 地殻全体の力のバランスが崩れて
- 一気にズレたときに起こる揺れ
という、もっと大きなスケールでの現象です。
火山性地震が増えると「前ぶれ?」と注目される理由
火山によっては、噴火の前に火山性地震が増えることがあるため、
「火山性地震が増えた=噴火の前ぶれでは?」
と心配されやすくなります。
ただし、ここがとても大事なポイントですが、
火山性地震が増えたからといって、必ず噴火するわけではない
という事実も、同じくらい重要です。
磐梯山でも、一時的に火山性地震の回数が増えたあと、特に噴火もなく落ち着いた例が過去にもあります。
過去にもあった「地震だけ増えた」ケース
今回の124回という数字だけを見ると、「多そうで怖い」と感じるかもしれません。
ですが、もっと多くの地震が起きたこともありました。
2022年12月:1日で786回の火山性地震
気象庁の資料によると、2022年には、火山性地震がやや多い状態が続いていた中で、12月28日に日回数786回という最大記録を出したことがあります。
それでも、
- その後、地震回数は徐々に減少
- 他の観測データに大きな変化はなし
- 噴火警戒レベルは1のままで推移
という経過でした。
2023年7月、そして2025年12月1日
地元ニュースによると、今回の124回という回数は、2023年7月の増加以来、約2年5か月ぶりの水準だとされています。
つまり磐梯山では、
- ときどき火山性地震が増える「山の中の動き」が起きる
- しかし、それだけで噴火につながるとは限らない
というパターンが、これまでも見られているということです。
もちろん、だからといって油断していいという意味ではありません。
「いたずらに怖がりすぎない」「でも、活火山だということは忘れない」
このバランスが大事だといえます。
「噴火警戒レベル1」ってどんな状態?
ここで、よくニュースに出てくる「噴火警戒レベル」について簡単に整理しておきましょう。
気象庁の火山警戒レベル(火山ごとに少し表現は違うこともありますが)をざっくり言うと、次のようなイメージです。
2025年12月1日時点での磐梯山は、「レベル1」のままです。
つまり、現時点では、
「火山性地震は増えているけれど、登山や観光を全面的に止めるような段階ではない。
ただし、活火山であることを意識し、気象台の情報に注意してほしい。」
という意味合いになります。
登山・観光はどう考えればいい?
一番気になるところはここですよね。
「これから磐梯山や裏磐梯へ行く予定だけど、キャンセルした方がいいの?」という疑問です。
公式情報のポイント
現在の公式な解説情報では、次の点が示されています。
- 火山性地震は増えている
- ただし、低周波地震や火山性微動、地殻変動などに特段の変化はない
- 監視カメラでも、噴気の様子などに大きな変化は見られない
- 噴火警戒レベル1は継続
- 山に登る場合は、気象台が出す情報や自治体の指示に注意すること
また、山体北側の火口や沼ノ平付近では以前から噴気や火山ガスが見られるため、立入規制やヘルメットの携行など、地元の決まりを守ってくださいとも書かれています。
観光・登山を考えるときの「現実的な目安」
現状で考えられる目安は、次のようなイメージです。
- レベル1の間は
- 「絶対に来てはいけない」という状態ではない
- ただし、登山・トレッキングをするなら、
- 最新の火山情報をチェック
- 立ち入り禁止のエリアには絶対に入らない
- 急な体調不良やガス臭などに敏感になる
- もしレベルが引き上げられたら
- その内容(2なのか3なのか)によって、
- 火口周辺に近づかない
- 山への立ち入り自体をあきらめる
など、計画の見直しが必要
- その内容(2なのか3なのか)によって、
不安が強い人は、「今回は無理せず別の山や観光地にする」という選択も、立派なリスク管理です。
逆に、
・公式情報を毎日チェックできる
・山のルールや規制をきちんと守れる
という人なら、情報とセットで落ち着いて判断するのがおすすめです。
地元の人・旅行者が「いま」できる5つの備え
「レベル1だから何もしなくていい」というわけではありません。
逆に言えば、いまのうちなら、落ち着いて準備しやすいとも言えます。
① 正しい情報源をブックマークしておく
磐梯山の火山情報をチェックするなら、まずは公式の情報源です。
- 気象庁「火山活動の状況(磐梯山)」
- 気象庁の火山情報ページや火山観測データ
- 地元自治体(福島県・猪苗代町・北塩原村など)の防災ページ
SNSの噂だけを見るのではなく、必ず公式サイトもセットで見る習慣をつけておくと安心です。
② 自分のいる場所の「ハザード」をざっくり知る
- 自分の住んでいる地域や泊まる予定の宿が、
- 山体崩壊や土石流、火山泥流の想定エリアなのか
- どの川沿いが危険なのか
を、ざっくりでいいので地図で確認しておきましょう。
磐梯山は、1888年の噴火で大きな山体崩壊が起き、裏磐梯の湖沼群ができた歴史を持ちます。
「どの方向に土砂が流れやすい山なのか」を知っておくと、もしもの時の判断材料になります。
③ 家族で「もしものときの連絡方法」を決めておく
地元で暮らす人はもちろん、旅行者も含めて、
- 電話がつながらないときはどうするか
- 集合場所をどこにするか
- 宿泊先の避難経路・非常口の場所
を、事前に話しておくだけでも、緊急時の不安はかなり減ります。
④ 最低限の防災グッズを「軽く」持っておく
登山やハイキングのときは、
- ヘルメット(または代わりになる帽子)
- マスクやタオル(火山灰・ガスから口や鼻を守るため)
- 飲料水・行動食
- モバイルバッテリー・ライト
など、「日帰りでもこれは持っておきたい」という最低限のセットを用意しておくと安心です。
⑤ デマや過度な不安を広げない
火山のニュースは、人の不安を強く刺激します。
つい
- 「もうすぐ大噴火だって!」
- 「逃げないとやばいらしい」
と、確かめずにシェアしてしまいがちです。
けれど、デマや誤情報は、それ自体が一種の「災害」になり得ます。
- まず公式情報を確認する
- 情報源がはっきりしないものは、拡散しない
この2つを意識するだけでも、周りの不安をあおらずに済みます。
1888年噴火の教訓と「いま」の違い
最後に、「過去の大噴火」と、「いま」の私たちの状況の違いも、少しだけ触れておきます。
1888年のときは、観測体制がほとんどなかった
1888年の磐梯山噴火は、岩なだれや爆風で477人が亡くなる大災害でしたが、当時は、火山を常時監視する観測網はほとんどありませんでした。
前兆をつかんで警報を出す、という仕組み自体がまだ整っていなかったのです。
いまは観測網と情報システムが整っている
現在の日本では、気象庁が全国の火山について、
- 地震計(火山性地震・微動の監視)
- GPS・傾斜計(地殻変動の監視)
- 監視カメラ(噴煙や噴気の様子)
などを使って常時監視しています。
磐梯山も「常時観測火山」に指定されていて、噴火警戒レベルや解説情報が随時出される仕組みがあります。
もちろん、「観測しているから絶対に安心」と言い切れるわけではありませんが、
1888年当時よりも、
・前兆をつかむ目
・情報を広く伝える仕組み
は、格段に整っている
という点は、落ち着いて受け止めたいところです。
まとめ
最後に、ここまでのポイントをぎゅっとまとめます。
という、基本的だけれど大事な行動です。
「磐梯山が好きだからこそ、ちゃんと向き合う」。
「必要以上に怖がらないけれど、『他人事』とも思わない」。
そんなスタンスで、これからも磐梯山との付き合い方を考えていけるといいですね。

