2025年の新語・流行語大賞トップ10に『オールドメディア』が入りました。
「え?そんな言葉、前からあったくない?」
「意味あいまいなんだけど…誰の言葉なの?」
と思った人、多いはずです。
この記事では、
- 「オールドメディア」ってそもそもどういう意味なのか
- 誰が言い出した言葉なのか
- なぜ2025年に流行語大賞入りするほど話題になったのか
を解説していきます。
まず「新語・流行語大賞」ってなに?
最初に、「オールドメディア」が選ばれた新語・流行語大賞について、ざっくり整理しておきます。
- 主催しているのは、ことばの辞典『現代用語の基礎知識』を出している自由国民社
- その年の日本社会をよく表している言葉を
- 年間大賞 1つ
- トップテン(合計10語)
という形で選ぶイベントです
2025年は、
- 年間大賞:
高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」 - トップテンのひとつとして
「オールドメディア」
が選ばれました。
つまり「オールドメディア」という言葉は、
2025年という年を語るうえで外せないキーワード
として公式に認定された、ということです。
「オールドメディア」ってどんな意味?
ではその肝心の「オールドメディア」とは何か。
単語としての意味
シンプルに言うと、
昔からある、古いタイプのメディア
という意味です。
ここでいう「メディア」は、
- 新聞
- テレビ
- ラジオ
- 雑誌
など、マスコミと呼ばれてきたものを指します。
インターネットが広がる前から、情報の中心だったのはこの「メディア」たちでした。
それに対して、
- SNS(X/旧Twitter、Instagram、TikTok など)
- YouTube
- 個人ブログ
- ネットニュースサイト
といった、ネット発の新しいメディアと比べると「古い側」になります。
そこから、
- Old(古い)+ Media(メディア)
→ Old Media(オールドメディア)
という呼び方が使われるようになったわけですね。
日本語でのニュアンス
日本で「オールドメディア」と言うとき、だいたい次のようなニュアンスが混ざっています。
- 時代遅れっぽい
- 若い人に届いていない
- 権力側と近くて、庶民の感覚からズレている
- ニュースもどこか偏っている(ように感じる)
特にSNS世代から見ると、
「テレビや新聞は安全な情報しか流さない」
「都合の悪いことはスルーしている」
といった不信感が強く、そのモヤモヤが「オールドメディア」というラベルに乗っかっている、という面があります。
「オールドメディア」は誰の言葉?
ここが今回のポイントです。
言い出しっぺは青山繁晴さん
2025年の新語・流行語大賞では、
「オールドメディア」の受賞者として
青山繁晴(あおやま しげはる)参議院議員・環境副大臣・作家
の名前が発表されました。
青山さんは、
- 元・共同通信の記者(つまり中の人だった)
- その後、テレビなどで政治・国際情勢の解説者として活躍
- 現在は自民党の参議院議員で、環境副大臣も務めている政治家
という経歴の持ち主です。
表彰式の場で、
青山さん自身が、
「14〜15年前からこの言葉を使ってきた」
と話しています。
さらに、自身のブログでも、
すでに2021年の時点で「オールドメディア」という言葉について、長文で説明しています。
本人の「本来の意図」
面白いのは、青山さん本人は
マスコミをバカにするつもりで
「オールドメディア」と呼んだわけではない
と、はっきり書いている点です。
要するにこういう考え方です。
- 自分は新聞記者として鍛えてもらった立場なので、本当は感謝している
- でも、ビジネスモデルや読者の高齢化などで、メディアがこのままだと本当に危ない
- その「危機感」を伝えるために、少しショッキングな言葉として「オールドメディア」と呼んでいる
つまり青山さんにとって「オールドメディア」は、
「愛情と危機感を込めた、目を覚ましてほしいという警告」
という意味が強かったわけです。
じゃあ、なぜ2025年に流行語大賞入り?
「オールドメディア」自体は、青山さんいわく10年以上前から使っていた言葉。
にもかかわらず、2025年になって急に流行語大賞のトップテンに入るほど話題になったのはなぜでしょうか。
選挙と不祥事で一気に拡散
報道によると、この言葉が一気に広がったきっかけとして
- 兵庫県知事選(2024年11月ごろ)から始まり
- 大きな国政選挙のたびに
- さらに大手メディア側の不祥事(誤報・不適切な報道)などが重なり
そのたびに、「新聞・テレビなどを“オールドメディア”と呼び、不要で偏ったものだと決めつける空気」が強くなっていった、と説明されています。
X(旧Twitter)やYouTubeなどでも、
- 「またオールドメディアがやらかした」
- 「オールドメディアは信用できない」
といったフレーズが拡散され、「オールドメディア」がネットスラングに近い使われ方をするようになりました。
選考委員のコメントが示す“問題意識”
流行語大賞の選考側も、「オールドメディア」という言葉が広まった背景について、かなり踏み込んだコメントを出しています。
まとめると、こんな感じです。
- 今は「SNSでバズれば当選」という空気すらある
- 政治家自身も、切り抜き動画や短いセンセーショナルな発言で、支持を集めようとしている
- 一方で、昔から情報をチェックしてきた新聞・テレビなどが
- 事実を検証する
- 分析する
- 背景をじっくり伝える
という役割を担ってきた
- それなのに、そうした歴史のあるメディアを一言で「オールド」と切り捨てる風潮は、
あまりにも雑で危ういのではないか
つまり選考委員は、
「テレビや新聞にも問題はある。でも、
それを一言で“オールドメディア=悪”と決めつけていいの?」
という問いかけを込めて、「オールドメディア」をトップテンに選んだわけです。
「言葉のズレ」も話題になった
面白いのは、言葉を広めた本人の意図と、
ネットでの受け取られ方が少しズレている、という点です。
- 青山さんの本来の意図:
「古いメディアよ、もっとがんばれ、目を覚ませ」という内側からの叱咤激励 - ネット上での使われ方:
「マスコミは全部ダメ」「オールドメディア=信用ゼロ」という、雑なレッテル張り
このギャップについて、青山さん自身も
「私が申した真意とは少し違う文脈がある」
とコメントしています。
この「言葉のねじれ」も含めて、「オールドメディア」は2025年という年の空気を象徴するキーワードになった、と言えそうです。
「オールドメディアVSネット」の構図はなぜ生まれるのか?
ここからは、少し視点を広げてみましょう。
「オールドメディア」という言葉が流行る背景には、
よく言われる
オールドメディア VS ネットメディア(SNS)
という対立構図があります。
情報が届くまでのスピードの差
- テレビや新聞:
- 取材 → 編集 → チェック → 放送・掲載
と、時間をかけて出す
- 取材 → 編集 → チェック → 放送・掲載
- SNSやYouTube:
- その場でスマホを取り出し、数秒~数分で発信
今の人からすると、
「なんでテレビはこんなに遅いの?」
と感じてしまうのも仕方ありません。
ただしそのぶん、オールドメディアには
- 裏取り(事実確認)
- 関係者への取材
- 編集会議でのチェック
などが入りやすく、情報の精度を上げる仕組みがあります。
ビジネスモデルと「偏向」の問題
一方で、オールドメディアは
- スポンサー(広告主)
- 既存の読者・視聴者の傾向
に強く縛られています。
その結果、
- スポンサーに不利な内容を出しにくい
- 読者層の「好み」に合わせて論調が偏っていく
といった構造的な問題から、
「偏向している」と批判されやすくなります。
逆にSNS側も、
- バズりやすい、強い言葉ばかりが拡散される
- 決めつけ・陰謀論・極端な主張のほうが伸びやすい
といった意味で、別の偏りを抱えています。
つまり本当のところは、
オールドメディアもネットメディアも、それぞれに「偏り」がある
というのが現実です。
「オールドメディア」が流行語になった意味
では、2025年の新語・流行語大賞で「オールドメディア」がトップテンに入ったことは、私たちに何を示しているのか。
「情報との付き合い方」を問い直すきっかけ
選考委員のコメントを踏まえると、今回の受賞には、こんなメッセージが込められているように見えます。
- SNSでバズった動画だけを見て、
「この政治家サイコー!」「この人は最低!」と決めつけていないか? - テレビや新聞の報道に対して、
「オールドメディアだから信用しない」と最初からシャットアウトしていないか? - 逆に、テレビの言うことだからといって、
「全部そのまま信じてしまっていないか?」
「オールドメディア」という言葉が流行語になったことで、
情報を“どこから・どう受け取るか”を、
一人ひとりが改めて考えるタイミングに来ている
ということを、社会全体に突きつけているように感じます。
言葉はいつでも“ねじれて”いく
もうひとつ大事なのは、
言葉は、使う人が増えるほど、
もともとの意味から離れていってしまう
という現実です。
「オールドメディア」の場合、
- 名付け親:
「内側からの危機感と愛情を込めて使ったつもり」 - ネット上:
「気に入らないニュースがあったらとりあえず“オールドメディア”と罵るラベル」
という具合に、かなり意味が変形しています。
私たちが日々、SNSで言葉を使うときも、
「この一言が、誰かを雑に切り捨てるラベルになっていないか?」
と、少しだけ立ち止まって考えてみる必要がありそうです。
まとめ
最後に、この記事の内容をぎゅっとまとめてみます。
● ①「オールドメディア」とは?
- 新聞・テレビ・ラジオ・雑誌などの昔からあるメディアのこと
- ネット世代からは
「古い」「偏っている」と見られがちな存在
● ② 誰の言葉?
- 元・共同通信記者で、現・自民党参議院議員の
青山繁晴さんが、十数年前から使っていた言葉 - 本人は「バカにするためではなく、
危機感と感謝を込めた呼びかけ」と説明している
● ③ なぜ2025年に流行語大賞トップテン入り?
- 選挙報道や大手メディアの不祥事のたびに、
「オールドメディア」という言葉がネットで拡散 - 「テレビ・新聞は不要で偏っている」という
強い批判のラベルとして広まった - 一方で選考委員は、
「歴史あるメディアを一言で切り捨てていいのか?」
という問題意識から、この言葉を選んだ
● ④ 私たちへの問いかけ
- テレビも新聞もSNSも、どれも完ぺきではない
- 情報源を一つにしぼると、見える世界も偏る
- 「オールドメディアだからダメ」「ネットだから正しい」と決めつけず、
複数の情報を見比べるクセが大事
「オールドメディアが流行語大賞入り」というニュースは、
単なる“言葉遊び”ではなく、
「あなたは、どんな情報を、どんな姿勢で受け取っていますか?」
という問いを、私たち一人ひとりに投げかけているのかもしれません。


