佐藤直樹が「現役ドラフト」で楽天に移籍──
「え、今年104試合も出てたのに? なんで放出?」
ホークスファンなら、まずここで固まりますよね。
この記事では、
- そもそも現役ドラフトって何?
- 佐藤直樹はどんな選手で、今年どんな成績だったのか
- それなのになぜホークスは放出したのか
- 逆になぜ楽天は「取りに行った」のか
- 楽天でどんな役割が期待されているのか
を整理していきます。
今回の動きをざっくり整理
2025年12月9日に行われた「現役ドラフト」で、
- 福岡ソフトバンクホークスの佐藤直樹外野手(27)が、東北楽天ゴールデンイーグルスへ移籍
- その一方で、楽天の辰見鴻之介外野手が広島東洋カープへ移籍
という三球団をまたぐ“トレードチェーン”のような形になりました。
しかも佐藤直樹は、今季自己最多の104試合に出場し、
- 打率:.239
- 本塁打:5本
- 打点:18
- 盗塁:10
と、すべてキャリアハイの数字。
「活躍してたのに、なんで出すの?」
ここが、今回の一番の“モヤモヤポイント”です。
現役ドラフトってそもそも何?
まずはルールの整理から。
現役ドラフトは、一言でいうと
「1軍にあまり出られていない選手に、新しいチャンスを与えるための仕組み」
です。
- 各球団が「リスト」を提出
→「うちでは出番を多く用意してあげられないかも…」という選手が名前を載せられる - そのリストに載った選手を、他球団が指名して獲得できる
- 逆に、自分の球団からも誰かが出ていく可能性がある
という、“出す側”と“取る側”がセットになっている制度です。
ポイントは、
- 「戦力外」ではなく、あくまで“現役のまま”他球団へ移る
- 「いらないから出す」というより、
“うちでは出番を増やしきれないけど、他球団ならもっと使ってもらえるかも”
という選手が対象になりやすい
というところ。
なので今回も、
「ソフトバンクから見れば“放出”」
「楽天から見れば“獲得”」
という、立場によって見え方が違う移籍になっています。
佐藤直樹ってどんな選手?
ここで、一度佐藤直樹の選手像を整理しておきます。
経歴・プロフィール
- 1998年9月3日生まれ(27歳)
- 兵庫県出身
- 報徳学園高 → JR西日本
- 2019年ドラフト1位でソフトバンクに入団
- ポジション:外野手
- 右投げ右打ち
- 身長178cm・体重85kg
いわゆる「社会人出身の即戦力ドラ1外野手」です。
ここまでのプロでの歩み
- 2021年:1軍25試合出場も、打撃はまだ試行錯誤
- 2022〜2023年:一軍出場は増えたり減ったり、打率も1割台と苦しむ
- 2023年オフ:一度戦力外通告→育成契約へ
- 2024年:ファームで結果を出し、6月に支配下復帰
- 2025年:ついに104試合出場とキャリアハイのシーズンに
一度育成落ちを経験しながら、もう一度はい上がってきた、かなり“ドラマ”のある選手です。
2025年シーズンの特徴
2025年の成績を見てみると(ソフトバンク所属時)
- 試合:104
- 打率:.239
- 本塁打:5
- 打点:18
- 盗塁:10
- 三振:72
「打率3割バッター」ではないけれど、
- ある程度長打も打てる
- 足も使える(2桁盗塁)
- 守備も評価が高い(元々“守れる外野手”として期待)
という「走攻守3拍子型のユーティリティ外野手」になりつつある段階でした。
それなのに…なぜソフトバンクは佐藤直樹を放出した?
ここが一番気になるところですよね。
ソフトバンクの編成トップは、今回の放出について
「能力の高い選手で、今年はいい成績を出してくれた。
ただ、外野手の争いは引き続き激しい中で、現役ドラフトに参加する以上、誰かを出さないといけない」
と説明しています。
もう少し“翻訳”すると、理由はだいたいこのあたりです。
理由① 外野の層がとにかく厚い
ソフトバンクはご存じの通り、外野の層がとんでもなく厚い球団です。
- 実績十分のスター
- 他からの補強組
- 若手の有望株
が入り乱れて競争している状態。
その中で、
- 「1軍にはいるけど、スタメン固定とまではいかない」
- 「代走・守備固め・たまにスタメン」
という立ち位置の選手がどうしても増えてしまいます。
佐藤直樹は、まさに「便利で頼りになる4番手〜5番手外野手」になっていました。
チームとしては嬉しいけれど、
現役ドラフトのルール上は「出す候補になりやすいタイプ」でもあります。
理由② 「出したくないけど、出すならこのクラス」問題
現役ドラフトには、
- まったく使う予定のない選手だけ並べると、
→ 他球団から見て魅力がなく、制度として成立しない - かといって、チームのど真ん中戦力は出したくない
という、“建前と本音のせめぎ合い”のような面があります。
その結果、
- 「うちでは出番が“そこそこ”あるけど、他球団ならもっと使ってもらえるかも」
- 「ちゃんと実績もあって、他球団から見ても“欲しい”と思われるクラス」
の選手が、リストに載りやすくなるわけです。
佐藤直樹は、
- 104試合出場という実績あり
- まだ年齢も若く、伸びしろもある
- でもソフトバンクでは、来年も外野の熾烈な競争に巻き込まれる
という、「良くも悪くも“現役ドラフトに出しやすい”条件が揃っていた選手」だったといえます。
理由③ “違うタイプ”の外野手を優先した可能性
ソフトバンク側の構想として、
- 「長打力のある外野手」
- 「若い左打ち」
- 「特定ポジションを守れる選手」
など、チームとして“より優先したいタイプ”の選手がいた、という見方もできます。
その中で、
- 右打ちの外野手で
- 走塁・守備型で
- 打撃はまだ「伸びしろ込み」の選手
である佐藤直樹は、
「チームとしては評価しているけれど、
将来像を考えた時に、違うタイプを残さざるを得なかった」
という、“編成上の涙を飲んだ選択”だった可能性が高いです。
では、なぜ楽天は佐藤直樹を「狙った」のか?
一方、楽天から見れば話は逆です。
日刊スポーツなどの報道でも、
「楽天は、手薄だった右打ちの外野手を補強する形となった」
と書かれています。
つまり楽天から見れば、
「うちの弱点をピンポイントで埋めてくれる選手」
として映っているわけです。
楽天の補強ポイントとピッタリ一致
ざっくり整理すると、楽天が欲しかったのはこんなタイプです。
- 右打ち
- 外野を守れる
- 足が速くて守備もいい
- 一軍レベルの経験あり
これ、佐藤直樹の特徴とほぼ一致しています。
さらに、
- 2025年の10盗塁
- 守備の評価
- キャリアハイの104試合出場
などを考えると、
「控えの一人」ではなく
「レギュラー候補として見ている」
と考えても不思議ではありません。
辰見鴻之介を手放した“穴”を埋める
今回の現役ドラフトでは、
- 楽天は辰見鴻之介外野手を広島へ送り出した
辰見も「足と守備」が売りのタイプ。
つまり楽天は
- 走塁・守備で光る外野手1人を手放し
- 代わりに、同じように走塁・守備に強みのある外野手(佐藤)を獲得
している形です。
ただし佐藤は、
- 2025年にある程度長打も見せている
- 一度育成からはい上がった経験があり、メンタル的にもタフ
という意味で、
「辰見とは少しタイプの違う“新しい刺激”をもたらしてくれる選手」
として期待されていると考えられます。
「一から頑張る」本人のコメントも前向き
佐藤本人も、現役ドラフトで指名されたと聞いたとき、
「まさか自分が選ばれるとは思っていなかった。
新天地で気持ちを入れ替えて、一から頑張ろうという気持ちです」
とコメントしています。
楽天にとっては、
- まだ“完成”ではないけど、
- ここからレギュラーを狙っていく空気感も含めてチームに新しい風を入れてくれる
そんな選手としての期待も大きそうです。
楽天での起用イメージは? どんな場面で輝きそう?
では、楽天に入った佐藤直樹は、どんな形で使われそうでしょうか。
あくまで“現時点のイメージ”ですが、こんな起用が考えられます。
守備固め+終盤の代走要員
まずは王道パターン。
- 終盤リードしている試合での守備固め
- ランナーに出たら代走として投入
- セーフティリードをさらに広げにいく
- 相手バッテリーにプレッシャーをかける
といった、“勝ちゲームを締める要員”として起用される可能性は高いです。
対左投手用のスタメン
右打ち外野手ということで、
- 相手が左投手の時
- 打線にもう一人右バッターが欲しい場面
で、スタメン起用されるケースも十分考えられます。
とくに、
- 守備力が高い
- 足もある
という点は、「打てなくても何もできない」タイプと違い、試合に出しておきやすい強みです。
「一皮むければレギュラー」ポジション
そして何より、
- 打率.239 → ここから2割5分台、2割7分台へ
- 本塁打5本 → 2ケタ台を目指せるか
- 盗塁10 → 15〜20盗塁を狙えるか
このあたりの数字がもう一段階伸びてくると、
「外野のレギュラー候補どころか、“センター固定”も見えてくる」
レベルになってきます。
楽天としては、
- すぐに「4番打者」を任せる選手ではないけれど、
- 数字の伸び次第では外野のセンターラインを任せられるかもしれない
という“夢”を見られる補強といえます。
「放出」と「狙い」は紙一重──立場が変わると見え方が変わる
今回の佐藤直樹の現役ドラフト移籍は、
- ソフトバンク視点:
→「出したくなかったけど、外野の層と将来像を考えて、苦渋の決断で放出」 - 楽天視点:
→「ウチの弱点である“右打ちの外野手”を、ピンポイントで補える絶好のチャンス」
という、立場によって真逆の評価になるケースです。
同じ選手でも、
- チームの事情
- ポジションの層
- 将来像のイメージ
が違うだけで、
「余っている戦力」にもなるし、
「のどから手が出るほど欲しい戦力」にもなる。
現役ドラフトという制度は、まさにその“ギャップ”をうまく利用して、
- 選手に新しいチャンスをつくり
- 球団側にも補強の機会を与える
仕組みだと言えそうです。
これからの注目ポイント
最後に、「ここを見ているともっとこの移籍を楽しめるよ」というポイントを、いくつか挙げておきます。
- 楽天での背番号とポジション
→ チームからの期待度が背番号にも表れがちです。 - オープン戦・シーズン序盤での起用法
→ 代走・守備固め中心か、ガッツリスタメンかで、立ち位置が見えてきます。 - 打撃フォームの変化
→ 新天地でコーチと一緒にフォームをいじるケースは多く、「打率の天井」が変わる可能性あり。 - 盗塁数と走塁の積極性
→ せっかくの武器なので、楽天でどれだけ“走る野球”を求められるかは要注目です。 - 古巣ソフトバンク戦での“因縁対決”
→ ここで大活躍すると、現役ドラフトの“ストーリー”として最高の見どころになります。
まとめ
ここまでの話をギュッとまとめると──
そして、
ソフトバンクファン
「なんで出しちゃったんだよ…」
楽天ファン
「よく出してくれた、ありがとう…」
同じ現役ドラフトなのに、
涙目で見送る人と、ガッツポーズで迎える人がいる。
…結局いちばん“現役でドラマ”を生んでいるのは、
選手じゃなくて、ファンの心のアップダウンなのかもしれませんね。

