2025年12月16日、日本の経済産業省が
中古バイク販売大手「レッドバロン」に外為法(外国為替及び外国貿易法)違反で警告を出した、というニュースが流れました。
ポイントだけ先にまとめると、こんな感じです。
- ロシアへの中古バイク輸出には国の承認(OK)が必要なケースがある
- ところがレッドバロンは、
2022年から約2年間、その承認を取らずにロシア向けにバイクを輸出していたとされています - 結果として、経産省から「外為法違反にあたる」として警告が出た、という流れです
ニュースでは「迂回輸出(うかいゆしゅつ)」という言葉も出てきます。これは「いったん別の国を経由して、最終的にロシアへ送る」というイメージです。
経産省によると、2022〜2024年にかけて、韓国などを経由してロシアへ輸出が行われていたとされています。
では、この2022〜2024年のあいだに、いったい何が起きていたのか。
時系列で整理していきましょう。
レッドバロンってどんな会社?
まず、登場人物を確認しておきます。
- 社名:株式会社レッドバロン
- 本社:愛知県岡崎市
- 事業:国内外の新車・中古バイクの販売、買取、輸出など
- 国内店舗:2024年11月末時点で直営店305店(全国最大級の中古バイクチェーン)
バイクに乗る人なら「赤い看板のあの店ね」とすぐイメージできる、有名チェーンです。
中古バイクだけでなく、輸出も手がけている「バイクのプロ集団」と言っていい存在です。
そんな大手が、なぜロシア向け輸出で注意されることになったのか。
背景には、ロシアへの経済制裁と、それにともなう輸出規制の強化があります。
2022年:ウクライナ侵攻とロシアへの経済制裁
ロシアがウクライナへ侵攻
2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻しました。
これに対して、欧米や日本は経済制裁という形で圧力をかけます。
経済制裁とはざっくり言うと、
「お金やモノの流れを止めて、国際ルールを守らせようとする」手段
です。
日本もロシア向け輸出を制限
日本政府も、他の国と足並みをそろえてロシアへの輸出を制限し始めました。
- 2022年3月18日以降、
ロシア向けの一部品目は経産大臣の承認がないと輸出できない仕組みに - 承認が必要な品目は、
「軍事に転用されそうなもの」や「産業基盤を強くするもの」など、かなり幅広いです
こうした規制は、法律でいうと外為法48条などに基づいて行われています。
「ぜいたく品」扱いのバイクも対象に
さらに、2022年4月には、ロシア向けの「ぜいたく品」輸出禁止の一環として、
- 日本価格で60万円超のモーターサイクル(バイク)なども
「原則、輸出禁止」の対象に入りました。
つまり、
ある程度高価なバイクをロシアに売るときは、
「そもそも輸出しちゃダメ」か、
「特別な承認が必要」という世界になった
ということです。
このルールが動き始めたのが、ちょうど2022年春ごろ。
ここから、レッドバロンの問題となる2022〜2024年の時期が重なってきます。
そもそもロシア向けの中古車・バイクはどうなっていた?
制裁の前後で、ロシア向けの日本車・中古車ビジネスはこんな状況でした。
- 日本車・日本の中古車は、もともとロシアで大人気
- 2022年の時点で、日本からロシアへの中古自動車輸出台数は約20万台とされ、前年より3割以上増えていたというデータもあります
- 制裁が始まると、高級車や一定以上の排気量のクルマなどは輸出禁止に
- 規制対象外の車種に需要が集中したり、第三国(別の国)経由での輸入など、回り道のルートも増えていきました
バイクについても同じで、
「ロシア向けルートがいきなりゼロになる」というより、
・法律でダメと言われているもの
・まだグレーまたはOKのもの
・第三国経由で“見えにくく”なったもの
が入り混じって、非常にややこしい状態になっていったわけです。
2022〜2024年:レッドバロンは何をしたとされているのか
ここから、今回のニュースの中心部分です。
経産省の説明(公表されている範囲)
報道によると、経産省は次のような内容を発表しています。
- 期間:2022年〜2024年にかけて
- 内容:ロシア向けに輸出が規制されている中古バイクを
国の承認なしで輸出していた - ルート:韓国など第三国を迂回する形で、複数回輸出されていた
- 台数:輸出されたバイクの台数は、公表されていない
- 評価:「組織的な行為とは認められなかった」と説明されている
つまり、
・期間はウクライナ侵攻後の制裁まっただ中
・対象は「規制されている中古バイク」
・しかも最終仕向け地はロシア
・なのに経産省への承認申請をしていなかった
という点が、外為法違反にあたると判断された、ということです。
※「誰が指示したのか」「会社としてどこまで把握していたのか」といった細かい内部事情は公表されていません。
経産省は「組織的な行為とは認められなかった」としているため、社ぐるみの故意だった、とまでは言っていない点も押さえておく必要があります。
「迂回輸出」ってなに? なんでダメなの?
迂回輸出のイメージ
「迂回輸出(うかいゆしゅつ)」というのは、ざっくりいうと、
A国 → B国(いったん別の国) → C国(本当の行き先)
というように、本当の行き先をわかりにくくする輸出ルートのことです。
今回のケースでいえば、
日本 → 韓国など → ロシア
という流れがあった、と報道されています。
なぜ問題になるのか
各国がロシアに対して経済制裁を行うとき、
「ロシア向けはダメです」と言っても、別の国を経由すればバレにくいという問題が出てきます。
そこで日本政府は、
- ロシアへの直接輸出だけでなく、
- ロシアへの制裁逃れに関与している疑いのある第三国の企業への輸出にも規制をかけるようになりました
2025年1月には、
UAE・中国・カザフスタン・トルコなど、制裁回避に関与した疑いのある31団体への輸出禁止も打ち出されています。
つまり世界的には、
「ロシアに直接送ってないからセーフ」
という言い訳は、もう通用しない
という流れになっています。
レッドバロンのケースは、
まさにこの「迂回輸出」と見なされる行為が問題にされた、といえます。
経産省の「警告」とは? どれくらい重いのか
今回は「警告」レベル
経産省は、今回レッドバロンに対して
- 貿易経済安全保障局長名で
「貿易関連法規を理解し、厳正な輸出管理を行うよう厳重注意」 - 再発防止策として、
輸出管理方法の明確化・法令遵守の徹底を求める「警告」
という対応をとりました。
ここでポイントなのは、
・輸出停止命令や業務停止命令などの「行政処分」までは行っていない
・あくまで「警告」(注意)レベルにとどまっている
という点です。
外為法違反がもっと悪質だと判断されれば、
- 会社や関係者が刑事告発される
- 一定期間、輸出そのものが禁止される
といった、より重い措置もあり得ます。
今回は、そこまでの段階には至っていない、ということになります。
レッドバロン側のコメント
報道によると、レッドバロンは今回の警告について、
- 警告を受けたことを謝罪
- 「今回の警告は輸出停止などの行政制裁ではなく、
顧客や取引先に迷惑をかけることはない」と説明 - すでに行っている輸出管理・法令順守の徹底を
今後さらに強化すると表明
といったコメントを出しています。
レッドバロンのバイクに乗っている人への影響は?
気になるのは、
「自分が今乗っているバイクは大丈夫なの?」
「店が急に営業停止になったりしない?」
という点だと思います。
現時点の公表情報だけを見ると:
- 今回はあくまで「警告」であり、
輸出停止などの行政処分は行われていない - そのため、国内の店舗営業やサービス提供が
すぐに止まるという話ではない - 問題となっているのは、
あくまでロシア向けの一部中古バイクの輸出に関する部分
というレベルの話です。
もちろん、今後の調査や世論の反応次第で、
会社としてのイメージ・ブランドには影響が出る可能性はありますが、
「明日から店が突然なくなる」という話ではありません。
2022〜2024年の流れをざっくり年表で整理
ここまでを、できるだけシンプルな流れでおさらいしてみます。
2022年
- 2月:ロシアがウクライナに侵攻
- 3月以降:日本を含む各国がロシアへの経済制裁を強化
- 3月18日〜:ロシア向けの一部品目は、経産大臣の承認が必要に
- 4月5日〜:
600万円超の高級車、60万円超のバイクなど「ぜいたく品」のロシア向け輸出が原則禁止に
この頃から、
「ロシアへクルマ・バイクを売る」というビジネスは、
かなり厳しいルールに縛られるようになりました。
2022〜2024年
- レッドバロンは、
規制対象となる中古バイクを、国の承認なしにロシア向けに輸出していたとされる - 経産省によると、
韓国など第三国を経由して、複数回ロシアへ輸出が行われていた - 台数や個別案件の詳細は、公表されていない
- 一方で「組織的な行為とは認められなかった」とも説明されている
2023〜2024年:制裁強化の流れは続く
- 日本からロシアへの中古車輸出は増加し、
それにブレーキをかけるため、2023年には排気量1900cc超の中古車なども輸出禁止の対象に - ロシア向けの輸出規制全体は、年々強化されていく方向でした
2025年
- 1月:ロシアへの制裁逃れに関与した疑いのある
第三国企業31団体への輸出禁止など、制裁迂回を防ぐための規制を強化 - 12月16日:
経産省がレッドバロンに対し、
外為法違反などにあたるとして警告を出したと発表
…というのが、2022〜2024年(+2025年の公表)につながる大きな流れです。
この問題から見える「これから」のポイント
今回のレッドバロンの件は、
一社だけの問題というよりも、こんなテーマを浮かび上がらせています。
- 「海外に売る」=「法律との戦い」になってきている
- 特にロシアや制裁対象国がからむと、
「売れるかどうか」だけじゃなく「売っていいのか」が重くのしかかります。
- 特にロシアや制裁対象国がからむと、
- 迂回輸出は、これからますます厳しく見られる
- 「第三国経由だからOK」は、
もはやどの国も許さない方向です。
- 「第三国経由だからOK」は、
- 企業の「知らなかった」は通用しづらい
- 経産省のFAQや資料を読むだけでも、
かなり細かい規制があることがわかります - グローバルに商売をするなら、
法律・制裁・輸出管理の専門人材が、これからますます重要になってくるでしょう。
- 経産省のFAQや資料を読むだけでも、
- 利用者にとっては「信頼」の問題
- バイクそのものに欠陥があるわけではありません。
- ただ、「あの大手が輸出管理で注意された」というニュースは、
どうしてもブランドへの信頼にも影響しがちです。
まとめ
最後に、この記事の内容を一言でまとめると、
2022年のロシア制裁強化で、
高額バイクのロシア向け輸出は「原則ダメ&承認制」になったのに、
レッドバロンは2022〜2024年にかけて、
国の承認なし&第三国経由でロシアへ中古バイクを輸出してしまい、
2025年になって経産省から外為法違反で「警告」を食らった
という話でした。
バイクは「速さ」が魅力の乗り物です。
でも、法律を追い越して走り抜けてしまうと、
あとからこうして大きなしっぺ返しが来ます。
スピード違反で捕まるときもそうですが、
「ちょっとぐらいなら大丈夫だろ」
という感覚が、一番危ないのかもしれません。
──というわけで、
バイクは速くてもいいけれど、
コンプライアンスだけは「制限速度厳守」でお願いしたい。
…そう心の中でつぶやきながら、
今日も私は原付の30km/h制限にビクビクしているのでした。
(こっちも、つい違反しそうになるのがオチですが…)

