「年収はそこそこ上がってるはずなのに、手取りが全然増えない…」
「178万の壁って、サラリーマンにも関係あるの?」
そんなモヤモヤを持っている人向けに、
年収300万・400万・500万のサラリーマン目線で、「178万円の壁」が実現したら手取りがどう変わるかを整理していきます。
まずざっくり結論
長い話になるので、先にざっくり結論から。
※ここではわかりやすさ重視で
「所得税だけの差」=「最低限これだけは手取りが増える」
という考え方で話を進めます。
住民税や社会保険料は、別のルールで計算されるからです。
「178万円の壁」ってそもそも何?
年収の壁=「ここを超えると急に損した気分になるライン」
まず基本用語から整理です。
世の中でよく聞く「年収の壁」は、ざっくり言うと
この金額を超えると、税金や社会保険料が一気に増えて
手取りがガクッと減ったように感じる境目
のことです。
有名どころだと、
- 103万円の壁(所得税の壁・今は仕組みが変わりつつある)
- 106万円の壁(社会保険加入の壁・大企業パートなど条件付き)
- 130万円の壁(健康保険の扶養を外れる目安)
- 160万円の壁(2025年からの「所得税がかからない上限」)
などがあります。
178万円の壁とは?
その中で「178万円の壁」とは、
今の「160万円まで所得税ゼロ」を、さらに178万円まで広げよう
という方向性の案のことです。
この案は、もともと国民民主党が
「103万円の壁は、最低賃金が安かった1995年の基準だから古い。
その後の最低賃金の上昇(約1.73倍)を反映させると、
今の基準は178万円くらいが妥当だよね」
と主張したところから出てきました。
今どこまで決まってるの?
ここは、勘違いポイントなので丁寧に。
なのでこの記事では、
「もし、国民民主党案の178万円の壁がそのまま採用されたとしたら」
という仮定のシミュレーションとして話を進めます。
「178万円の壁」がサラリーマンにも関係ある理由
「178万の壁って、パートや扶養内の人の話でしょ?」
と思う人も多いのですが、実は会社員にも影響ありです。
なぜかというと、178万円の壁を作るためには、
- 基礎控除(誰でも使える“税金ゼロの枠”)
- 給与所得控除(サラリーマンの必要経費みたいな枠)
この2つをドーンと増やす必要があるからです。
この控除の増額は、年収が300万でも400万でも500万でも共通で効いてくるので、
フルタイムの会社員にとっても
「課税される部分(課税所得)が減る → 所得税が下がる → 手取りアップ」
という流れが起きます。
実際、「会社員にも意外な恩恵がある」と解説している記事もあります。
この記事のシミュレーション条件
数字の話に入る前に、「前提」をはっきりさせておきます。
ここで使う数字は、
- 税理士事務所が公開している
「2025年版(160万円の壁)」と
「国民民主党案(178万円の壁)」の所得税額比較表 に基づいています。 - ケースは独身・会社員・他の控除(医療費控除など)はなしというシンプルな前提
- 表の数字は
- 社会保険料控除、住民税、復興特別所得税などは入っていない
と明記されています。
- 社会保険料控除、住民税、復興特別所得税などは入っていない
つまり、
ここで言う「手取りが増える額」
=「少なくとも、所得税がこれだけ下がる分は確実に手元に残る」
(実際の手取りは、ここから住民税や社会保険の影響もプラスマイナスあり)
という“最低ラインの手取りアップ額”と考えてください。
ちなみに、社会保険料(健康保険・厚生年金など)は、
人によって差はありますが、
- 会社員の「本人負担」は、年収のだいたい15%前後
と言われています。
この部分は、178万円の壁ができても基本的には変わりません。
年収300万円:178万円の壁になったら手取りはいくら変わる?
では、いよいよ本題。
まずは年収300万円のサラリーマンです。
1)今の制度(160万円の壁)のイメージ
税理士事務所の試算では、2025年版(160万円の壁)の条件だと、年収300万円の場合:
- 給与所得控除:98万円
- 基礎控除:88万円
- 課税所得:114万円
- 所得税額:57,000円
つまり、
年収300万円のうち、
「税金の対象になる部分」は114万円で、
そこに所得税率をかけて5万7,000円の所得税がかかる、
というイメージです。
(住民税や社会保険は別途かかっています)
2)178万円の壁になった場合(国民民主党案)
同じ年収300万円で、国民民主党案(178万円の壁)が採用された場合の試算はこうなります。
- 給与所得控除:98万円(変わらず)
- 基礎控除:123万円(ここが大きく増える)
- 課税所得:79万円
- 所得税額:39,500円
課税所得が 114万円 → 79万円 にグッと減る分、
所得税も 57,000円 → 39,500円 に減る、という仕組みです。
3)差額=最低限の「手取りアップ」は?
- 57,000円 − 39,500円=17,500円
年間で1万7,500円の減税=最低1万7,500円の手取りアップです。
月あたりに直すと、
- 約1,500円ちょっと/月
スマホの通信費やサブスク1〜2個分くらいは浮く感じですね。
年収400万円:178万円の壁になったら?
つぎに、年収400万円のサラリーマンの場合です。
1)今の制度(160万円の壁)
2025年版(160万円の壁)の試算では:
- 給与所得控除:124万円
- 基礎控除:88万円
- 課税所得:188万円
- 所得税額:94,000円
2)178万円の壁になった場合
同じ年収400万円で、国民民主党案だと:
- 給与所得控除:124万円
- 基礎控除:123万円
- 課税所得:153万円
- 所得税額:76,500円
3)差額=最低限の「手取りアップ」
- 94,000円 − 76,500円=17,500円
なんと、年収300万円のケースと同じく、年間1万7,500円の減税です。
こちらも月あたりにすると、
- 約1,500円ちょっと/月
「ランチを1回だけ安く済ませれば、あとは国が出してくれる」
くらいのイメージかもしれません。
年収500万円:178万円の壁になったら?
そして最後に、年収500万円のサラリーマンです。
1)今の制度(160万円の壁)
2025年版(160万円の壁)の試算では:
- 給与所得控除:144万円
- 基礎控除:68万円
- 課税所得:288万円
- 所得税額:190,500円
年収500万ともなると、課税所得も税率も上がるので、
所得税もかなりしっかり取られている印象です。
2)178万円の壁になった場合
同じ年収500万円で国民民主党案だと:
- 給与所得控除:144万円
- 基礎控除:123万円
- 課税所得:233万円
- 所得税額:135,500円
課税所得は 288万円 → 233万円 へ、
所得税は 190,500円 → 135,500円 になります。
3)差額=最低限の「手取りアップ」
- 190,500円 − 135,500円=55,000円
年収500万円の会社員だと、
年間5万5,000円の減税=最低5万5,000円の手取りアップです。
月あたりにすると、
- 約4,500円/月
電気代・ガス代のどちらかを、
ほぼ丸ごとカバーできそうな金額ですね。
3つの年収をまとめると
ここまでの話を、ざっくり表にするとこんなイメージです
(※いずれも「所得税だけを見た最低限の手取りアップ額」)
| 年収 | 2025年版(160万円の壁)所得税 | 178万円の壁になった場合 | 差額(=最低手取りアップ) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約5万7,000円 | 約3万9,500円 | 約1万7,500円アップ |
| 400万円 | 約9万4,000円 | 約7万6,500円 | 約1万7,500円アップ |
| 500万円 | 約19万500円 | 約13万5,500円 | 約5万5,000円アップ |
※いずれも税理士事務所のシミュレーション表をもとにした数字です。
「手取りアップ」といっても注意したいポイント
① 住民税・社会保険料は別の話
ここで見たのは「所得税」だけの話です。
- 住民税(市民税+県民税)
- 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)
は、また別の計算ルールで動いています。
とくに社会保険料は、
- 会社員の本人負担だけで年収の約15%前後
と言われていて、
手取りを大きく左右する要素です。
178万円の壁ができても、
この「15%前後」の世界が劇的に変わるわけではありません。
② すでに年収300〜500万円だと「扶養の壁」はあまり関係ない
今回のテーマは「サラリーマン本人の手取り」なので、
- 106万円の壁
- 130万円の壁
といった配偶者側の社会保険の壁は、
すでに年収300〜500万円で働いている本人には
あまり直接関係しません。
ただし、
- 自分の配偶者がパートで働いている
- 子どもがこれからアルバイトを始める
といった場合は、
世帯全体の「年収の壁」マップとして意識しておくとよいです。
③ 178万円になるか、168万円になるか、そもそもどうなるかはまだ未定
そして一番大事なのはここです。
- 政府・与党内では「168万円案」「178万円案」が報じられているものの、
- どこに着地するかは2025年12月時点では決まっていない
- 財源や他の制度とのバランスをどうするか、まだ議論が続いています。
この記事で紹介した数字は、
「もし、国民民主党案がそのまま実現したら」
というたたき台のイメージとして
受け取ってもらえると安全です。
サラリーマンが今からできる“現実的な”対策
「じゃあ、今のうちから何を意識しておけばいいの?」
という視点で、シンプルに3つだけ挙げておきます。
① 「年収」と「手取り」のギャップをざっくり把握しておく
- 自分の源泉徴収票や給与明細を見て、
年収・所得税・住民税・社会保険料が
それぞれどれくらいなのか、一度メモしてみましょう。 - 「なんとなく引かれてる」から
「このくらいは社会保険」「このくらいは税金」
と見えるようになるだけでも、
お金の不安はかなり減ります。
② 増えた手取りを「どこに回すか」を先に決めておく
もし今後、実際に制度改正が進んで
- 手取りが年間1〜5万円単位で増える
ようなことがあれば、
「なんとなく生活費で消えた…」
ではもったいないです。
- つみたてNISA・iDeCoの積立額をちょっと増やす
- 住宅ローンの繰上げ返済に回す
- 教育費や老後資金の“別口座”に自動振替する
など、増える前から「置き場所」を決めておくと、
未来の自分がだいぶ助かります。
③ 情報は“見出し”ではなく“中身”まで追うクセをつける
- 「178万円の壁、決定!」
- 「168万円案に修正か?」
など、見出しだけ見ると毎回ドキッとしますが、
本文を読むと「方針」「検討」「案」という表現が多いのも事実です。
- 見出しだけで一喜一憂しない
- 公式な決定(税制改正大綱・法案成立)を確認する
この2つを意識しておくだけでも、
無駄な不安や焦りはかなり減ります。
まとめ:年収300・400・500万のサラリーマンと178万円の壁
最後にポイントだけギュッとおさらいすると……
本当にこわいのは「178万円の壁」じゃなかった
ここまで
- 103万円の壁
- 160万円の壁
- 178万円の壁 ・・・
と、いろんな「壁」の話をしてきましたが、
記事を書いていてふと気づきました。
サラリーマンにとって
いちばん高くて分厚い本当の「壁」は──
給料日から1週間で消えていく
自分の浪費グセの壁
なのかもしれません。
178万円の壁ができて手取りが増えても、
コンビニの新作スイーツ、
期間限定コーヒー、
気づいたらポチってるネット通販……
結局、自分のお財布の中にある「物欲の壁」を
乗り越えられるかどうかが、
いちばん大事だったりして。
……というわけで、
まずは今日、余計なお菓子を1個ガマンできたら、
それがあなたの「真の手取りアップ政策」かもしれません。


