スキージャンプ日本代表、そして「空飛ぶ起業家」としても知られる
中村直幹。
今でこそ、札幌ワールドカップで自己最高の2位に入るまでの実力者ですが、
そのスタートは、学生世代の世界大会である冬季ユニバーシアード金メダルでした。
そこから、
- 2017年:ユニバーシアード金メダル
- 2017年:アジア冬季競技大会 個人&団体で金メダル
- 2022年:フィンランド・ルカでW杯初の個人3位表彰台
- 2026年:地元・札幌ワールドカップで自己最高の2位
と、じわじわ階段を上がるように成長してきました。
この記事では、
「ユニバーシアード金メダルからW杯2位まで」
というテーマで、
- 年代ごとの経歴
- 代表的な成績
- その時どんな意味があったのか
をまとめていきます。
プロフィールと「遅咲きエース」というキャラクター
まずは基本情報から。
- 名前:中村 直幹(なかむら なおき)
- 生年月日:1996年9月19日
- 出身:北海道(札幌市出身とされることが多い)
- 身長:約175cm
- 所属:自ら立ち上げた フライング・ラボラトリー(Flying Laboratory SC)
- ニックネーム:CEO(会社代表だから)
かなり特徴的なのは、
- 大学卒業後に「自分の会社」を作り、
- その会社に所属しながらW杯を転戦している
という点です。
ほとんどのジャンプ選手が、企業のスキー部や実業団に所属するのに対して、
直幹選手は「起業家×日本代表」という珍しいキャリアを歩んでいます。
とはいえ、ジャンプの世界での成績は、
- 10代でいきなりW杯優勝!…ではなく
- 20代半ば〜後半になってから、じわじわ伸びてきた
という「遅咲きタイプ」。
ここが、ストーリーとしてとても面白いところです。
ジュニア時代:強豪だらけの中で「1歩あとろ」を走る
佐藤幸椰・小林陵侑たちと競い合った高校時代
直幹選手は、中学・高校時代、
- 1学年上:佐藤幸椰
- 同学年:小林陵侑
- 1学年下:伊藤将充
といった、のちに日本代表となるメンバーと一緒に切磋琢磨してきました。
しかし、少年組(ジュニア)での成績だけを見ると、
- 優勝は高校3年の「札幌市長杯大倉山サマージャンプ大会」のみ
と、「無双していたスター」ではなかったのがポイントです。
初めての国際大会〜ジュニア世界選手権の銅メダル
- 2013年:FIS公認レース「宮様スキー大会」で国際大会デビュー(36位・48位)
- 2015年:コンチネンタルカップ(2部リーグ)に出場し、少しずつポイントを獲得
- 2016年:ルシュノフで行われたノルディックスキージュニア世界選手権
- 個人 21位
- 団体で銅メダル(伊藤将充・岩佐勇研・小林陵侑とともに日本チーム3位)
世界ジュニアの団体で銅メダルというのは立派な成績ですが、
当時のジャンプ界での「主役」はまだ別の選手たち。
直幹選手は、
「ちゃんと結果は出しているけれど、超スターというわけではない」
という、一歩うしろから追いかける立場だったと言えます。
2017年:ユニバーシアード&アジア冬季大会で一気に開花
そんな中村直幹の名前が、一気に全国区になったのが2016/17シーズンです。
国内で4勝、そして飛躍のシーズンへ
このシーズン、直幹選手は国内大会で
- 全日本選手権ノーマルヒル優勝
- HBCカップ優勝
- 宮様スキー大会ノーマルヒル優勝
- 伊藤杯シーズンファイナル優勝(2年連続)
と、国内で4勝を挙げる活躍。
ここから、一気に国際大会でも結果が出始めます。
アルマトイ・冬季ユニバーシアードで金メダル2つ
2017年、カザフスタン・アルマトイで行われた
冬季ユニバーシアードのスキージャンプ男子個人ノーマルヒルで、直幹選手は金メダルを獲得。
さらに、ハルカ・イワサ選手と組んだ混合団体でも金メダル。
- 個人戦:265.8ポイントで優勝
- 混合団体:日本ペアが金メダル
と、学生世代の世界大会で「2冠」という大活躍でした。
札幌・アジア冬季競技大会でも個人&団体で金
同じ2017年2月、札幌ではアジア冬季競技大会が開催されました。
ここでも中村直幹は、
- 男子個人ノーマルヒル:6位
- 男子個人ラージヒル:金メダル
- 男子ラージヒル団体:金メダル(岩佐勇研・佐藤幸椰・伊藤将充とともに)
という結果を残します。
ポイント
- 2016年:ジュニア世界選手権団体で銅
- 2017年:ユニバーシアードで金2つ、アジア大会で金2つ
という流れで、
「日本の若手 → アジアのトップ → 世界へ」
と、階段を一段ずつ上がった形になっています。
ワールドカップ常連へ:2018〜2021年「土台作りの4シーズン」
2018/19シーズン:初めてフルでW杯遠征へ
2017/18シーズンまでは、
ワールドカップ(W杯)への出場は
「日本開催のときだけ」
「海外組の代わりとしてスポット参戦」
という、限定的なものでした。
しかし2018/19シーズンになると状況が一変。
- 開幕から海外遠征メンバーに選出
- シーズンを通してほぼフルでW杯に参戦
- 総合39位と、いきなり中位に食い込む
この年、世界選手権(ゼーフェルト大会)の代表にも初選出されます
(出場機会はなかったものの「代表入り」自体が大きなステップ)。
2019年:大学卒業&「フライング・ラボラトリー」設立
2019年3月、東海大学を卒業した直幹選手は、
なんと自ら会社を立ち上げてしまいます。
それが、今の所属であるフライング・ラボラトリー(合同会社)。
- 環境問題やSDGsに取り組むこと
- スポーツを通じて社会に貢献すること
を掲げた会社で、本人はそのCEO(代表)として活動。
普通なら「実業団に入る」道を選ぶところですが、
彼はあえて
「自分でチームを作って、自分でスポンサーを集め、世界で戦う」
という道を選びました。
ここから、
- 「起業家ジャンパー」
- 「空飛ぶCEO」
というキャラクターも、少しずつ知られるようになっていきます。
2019/20〜2020/21:コンチネンタル2位・サマーGP表彰台・団体2位…
2019/20シーズン以降は、
- コンチネンタルカップ(2部)シュチンスク大会で2戦連続2位
- サマーグランプリ・クールシュヴェル大会で3位表彰台
- ザコパネ大会の男子団体で優勝メンバーになる
など、「W杯の一歩下」でしっかり結果を出し続けます。
さらに2020/21シーズンには、
- フライング世界選手権プラニツァ大会:団体5位メンバー
- W杯フライング団体で日本チーム20年ぶりの表彰台(2位)のメンバー
として、大舞台での経験値もどんどん積み上がっていきました。
このあたりの4シーズンは、
「派手な個人表彰台はまだない」
けれど
「世界のトップレベルで“当たり前に戦える土台”を作った時期」
と言えます。
2022年:北京オリンピックと初の4位
2021/22シーズン:W杯フル参戦で総合31位
2021/22シーズンは、開幕からW杯にフル参戦。
- ロシア・ニジニ・タギルで、自己最高となる4位を記録
- シーズン総合は31位まで順位を上げる
もうこの時点で、
「日本代表の中堅〜上位クラス」
と呼べるだけの実力者になっています。
北京オリンピックでの成績
そして、初の北京オリンピック 2022代表入り。
- 個人ノーマルヒル:38位
- 個人ラージヒル:29位
- 男子団体ラージヒル:5位(入賞)
メダルこそ届かなかったものの、
- 世界最大の舞台を経験
- 団体戦で入賞に貢献
という、キャリアの大きな節目になりました。
2022年ルカ:W杯初表彰台「3位」のインパクト
いよいよ、タイトルにある「W杯表彰台」に近づいていきます。
ルカでの“サプライズ3位”
2022/23シーズン、フィンランドのルカで行われた
スキージャンプW杯第2戦。
ここで直幹選手は、
- ノルウェーのグランルード
- オーストリアのクラフト
という2人のトップ選手に続き、3位に入賞します。
FIS公式のレポートでも、
「ハイレベルな試合の中で、日本のNaoki Nakamuraがサプライズの3位」
と紹介されました。
日本人18人目のW杯個人表彰台
この3位は、
- 直幹本人にとって初のW杯個人表彰台
- 日本人としては歴代18人目の個人表彰台達成者
という、記録的な一歩でもあります。
同シーズンのトータルでも、
- W杯総合ランキング24位(当時自己最高)
と、「世界の中堅上位」の立ち位置をしっかり固めました。
チーム戦でも表彰台
2022/23シーズンは、アメリカ・レイクプラシッドで行われた
「スーパーチーム」形式の団体戦でも、日本チームの3位表彰台メンバーに。
- 個人でも3位
- 団体でも3位
と、個人・団体の両方で「表彰台経験者」となりました。
ケガと復活:2023/24〜2024/25シーズン
腰痛に泣いた2023/24シーズン
2023/24シーズンは、国内では
- 札幌市長杯大倉山サマージャンプ大会優勝
- 全日本選手権ノーマルヒル優勝
と、相変わらず強さを見せますが、
シーズン途中で腰痛によりW杯を欠場。
その影響もあり、W杯総合は56位と数字だけ見ると物足りない結果に。
ただし、これは
「一度“休養のブレーキ”を踏んだシーズン」
と考えることもできます。
2024/25シーズン:再び世界トップ30へ
翌2024/25シーズンには、
- 国内サマー大会で2勝
- ワールドカップ総合25位まで巻き返し
- 世界選手権トロンハイム大会では、個人ノーマルヒル11位と健闘
と、しっかり復活。
ここまでくると、
「一時的にケガで停滞しても、ちゃんと戻ってくる選手」
という信頼感も生まれてきます。
2026年札幌:W杯2位というキャリアハイ
そして、タイトルにもあるW杯2位の瞬間がやってきます。
札幌・大倉山でのキャリアベスト
2026年1月17日、札幌・大倉山ジャンプ競技場で行われた
スキージャンプW杯(男子ラージヒル)。
この日、
- 優勝:ドメン・プレブツ(スロベニア)
- 2位:中村直幹
- 3位:二階堂 蓮
という結果になり、直幹選手はキャリア最高となる2位を記録します。
FISの公式レポートには、
「Sapporoでキャリアベストの2位。134mと132.5mのジャンプで263.6ポイントを獲得」
と書かれており、
- 1本目:134m
- 2本目:132.5m
- 合計:263.6ポイント
という、地元での会心の2本となりました。
「1147日ぶりの表彰台」からさらに一歩
実はその少し前、2023年の札幌W杯では、
1147日ぶりのW杯表彰台(3位)を経験しています。
それからさらに積み上げての、2026年の2位。
- 2022年ルカ:初の3位
- 2023年札幌:久しぶりの3位(1147日ぶり)
- 2026年札幌:自己最高の2位
と、「3位 → 3位 → 2位」と少しずつ順位を上げているところに、
彼の“コツコツ型の成長”がよく表れています。
FIS公式も「ポジティブさ」をフィーチャー
2026年2月、FISは
「Naoki Nakamura (JPN): Flying with Positivity – A Special Letter of Naoki!」
という特集動画を公開しています。
内容は、
- 若い頃の自分への手紙
- 「情熱」「信じる力」「楽しむ気持ち」が支えになっていること
- 前向きなエネルギーで飛び続ける姿
などを描いたもの。
ここからも、
「成績だけでなく、人柄とストーリーを含めて愛される選手」
になっていることが分かります。
年代別にざっくり整理:主な経歴&成績
最後に、「年表的」に主な経歴と成績をざっとまとめておきます。
〜2016年(ジュニア期)
- 国内ジュニア大会で着実に成績を伸ばす
- 2016年ノルディックスキージュニア世界選手権 ルシュノフ大会
- 個人21位
- 団体銅メダル(日本チーム3位)
2016/17シーズン(飛躍の年)
- 国内4勝(全日本選手権NH、HBC杯、宮様ノーマルヒル、伊藤杯など)
- 2017年 冬季ユニバーシアード(アルマトイ)
- 男子個人ノーマルヒル 金メダル
- 混合団体 金メダル
- 2017年 アジア冬季競技大会(札幌)
- 個人ノーマルヒル6位
- 個人ラージヒル 金メダル
- 団体ラージヒル 金メダル
2018〜2021年(W杯で土台作り)
- 2018/19:初のW杯フルシーズン参戦、総合39位
- 2019年:東海大学卒業 → フライング・ラボラトリー設立
- 2019/20:コンチネンタルカップ2戦連続2位、サマーGP3位、団体優勝など
- 2020/21:W杯総合34位、スキーフライング団体2位のメンバー
2021/22シーズン(北京五輪)
- W杯ニジニ・タギル戦で自己最高4位
- W杯総合31位
- 北京オリンピック
- 個人NH38位
- 個人LH29位
- 団体LH5位(入賞)
2022/23シーズン(初のW杯個人表彰台)
- フィンランド・ルカ大会でW杯個人3位(初表彰台)
- W杯総合24位(当時自己ベスト)
- レイクプラシッドのスーパーチーム団体で3位メンバー
2023/24〜2024/25(ケガからの復帰と安定)
- 2023/24:腰痛でW杯欠場が増え、総合56位。ただし国内では2勝
- 2024/25:W杯総合25位まで回復、世界選手権ノーマルヒル11位
2025/26シーズン(現在地)
- 2026年1月17日 札幌W杯:
- ドメン・プレブツに次ぐ2位(キャリアベスト)
- 134m+132.5mで263.6ポイント
- FIS公式の特集「Flying with Positivity」で、前向きな人柄もクローズアップ
おわりに:直幹の軌跡は、まだ「途中」
ここまで見てきたように、
中村直幹のキャリアは、
- 10代からバンバン優勝してきた「天才タイプ」ではなく
- ジュニアでは一歩引いた立場から、
- 大学・社会人になってからじわじわ伸びてきた
という、「遅咲きの努力型」の物語です。
その中で、
- 冬季ユニバーシアード金メダル2つ
- アジア冬季競技大会 個人&団体金メダル
- W杯初表彰台(ルカ3位)
- 地元札幌でのW杯2位(キャリアハイ)
と、タイトルにある通り、
「ユニバーシアード金メダルからW杯2位まで」
の道のりを、着実に踏みしめてきました。
そして今もまだ29歳(2026年時点)で現役のど真ん中。
- ジャンプ選手として、どこまで順位を伸ばしていくのか
- 起業家として、どんな形でスポーツと社会をつなげていくのか
その両方に、まだまだ大きな可能性があります。
これから先、
- 「W杯初優勝」
- 「世界選手権やオリンピックでのメダル」
といったニュースが飛び込んできたとき、
今日のこの記事を思い出してもらえたら嬉しいです。
「あのユニバーシアード金メダルの少年が、
ここまで来たんだな」
と感じられると、
スキージャンプを見る楽しさが、きっと一段深くなるはずです。





