「クレボステップ、やばすぎ」
「雪の登り坂を“走って”る…」
という動画を見かけた人、多いと思います。
ノルウェーのクロスカントリースキー選手
Johannes Hoesflot Klaebo(ヨハンネス・クレボ)が、
ミラノ・コルティナの2026 Winter Olympicsで見せた“坂ダッシュ”。
この時、
急な登り坂を、ほぼ「時速18km」ペースで駆け上がった
と報じられています。
ランニングでいうと、
「1マイル(約1.6km)を5分台前半で走るペース」です。
しかも 雪の上+登り坂+スキーを履いた状態 で、です。
この異次元の走り方が、
「クレボステップ」 と呼ばれている技術です。
この記事では、
- クレボステップとは何か?
- なぜ雪の登り坂で、そんなに速く走れるのか?
- 一般人でも真似できるポイントはあるのか?
を解説していきます。
クレボってどんな選手?
まずは技の名前の元になっている
「クレボ」という選手について、簡単に整理しておきます。
クロスカントリースキー界の“怪物”
ヨハンネス・クレボは、ノルウェーのクロスカントリースキー選手。
まだ20代ながら、世界選手権やオリンピックで金メダルを量産している、
史上トップクラスの実績を持つスーパースター です。
- オリンピックの金メダルをいくつも獲得
- 世界選手権でも何度も優勝
- スプリント系(短い距離のレース)に特に強い
あまりに勝ち続けるので、
「冬のマイケル・フェルプス」なんて呼ばれることもあります。
世界をざわつかせた“坂ダッシュ動画”
2026年ミラノ・コルティナ五輪のクロスカントリー・スプリントで、
クレボはラストの急な登り坂で、一気に他の選手を突き放しました。
そのシーンが
- “登り坂なのに、平地の全力疾走みたい”
- “スキー履いてるのに、ほぼ走ってる”
と世界中でバズり、
SNS動画は数百万〜千万単位の再生数を記録。
このときに使っていた登りのテクニックが、
ファンや解説者のあいだで
「クレボステップ」
と呼ばれ、日本語のネットでもトレンド入りしました。
クレボステップってどんな動き?
では、その「クレボステップ」とは何なのか。
イメージしやすいように、普通のクロスカントリー走法と比べながら説明します。
まずは“普通の”クラシカル走法をざっくり
クロスカントリースキーには大きく分けて
- クラシカル走法(板を平行にして滑る)
- フリー走法(スケートのように板を開いて滑る)
の2つがあります。
クレボステップが話題になるのは、
主にクラシカル走法のレース中の登り坂部分です。
クラシカルの基本は、
- 2本の板を 平行のレール に合わせて前後に動かし
- 足を交互に出して、滑りながら進む
というスタイルです。
登り坂になると、
- 板の先を「ハの字」に開いて登る ハの字登り(ハの字歩行)
- 少しきつい登りでは、歩くように一歩一歩登る
といった、割と“のしのし”した動きになります。
そこに現れた「クレボステップ」
クレボステップは、一言でいうと、
「クラシカル走法のルール内で、
ほとんど“ランニング”に近い動きをしている」
という感じです。
特徴を簡単にあげると:
- 足の回転がとにかく速い
→ 小さめのストライドで、テンポよく「タタタタッ」と登る - 上半身の前傾が強い
→ まるで短距離走のスタートダッシュのように、体を前に倒している - ポール(ストック)の使い方がパワフル
→ 腕で体を引き上げるように、全力で地面を押している - スキー板の接地時間が短い
→ 長くベタッと乗るのではなく、「着いて→蹴る→すぐ次の足」 - リズムが完全に“スプリント”
→ 心臓が千切れそうな全力ダッシュを、登り坂でやっている
見た目としては、
- スキーを履いた短距離ランナーが、雪の坂道を全力疾走している
というのが近いです。
日本の元代表選手のブログでも、
「他の選手を寄せ付けない“異次元の走り”」と評されているほど。
なぜ時速18kmも出るの? 5つの理由
では、なぜあんな登り坂で、
ほぼ時速18kmという、とんでもないスピードが出せるのか。
大きく 5つの理由 に分けて分解してみます。
理由1:ランニング+スキー=“推進力の合計”が大きい
クレボステップは、
- 足 → ランニングのように素早く蹴る
- 腕 → ポールで体を引き上げる
という2つのエンジンを、同時に全開にしている状態です。
普通のランニングは 足だけ がエンジンですが、
クレボステップは
「足+腕+スキーの滑り」
という 3つの推進力 が同時に働きます。
イメージとしては、
- 自転車を必死でこぎながら
- 後ろから誰かが押してくれて
- しかもタイヤの回転がよく回る
みたいな状態です。
登り坂でも失速しにくいのは、この「エンジンが多い」ことが大きな理由です。
理由2:体重移動と“体幹”の使い方がうますぎる
クレボは、体の軸(体幹)の使い方がとても上手です。
- 体を前に倒しすぎると、スキーが滑りすぎて空回りする
- 起き上がりすぎると、今度は前に進む力が足りない
この微妙なバランスを、
一歩ごとに正確にコントロールしている からこそ、
- 蹴った力がロスなく、前進に変わる
- 無駄な上下動(ピョコピョコ跳ねる)が少ない
という“効率の良さ”が生まれます。
単純に「筋肉ムキムキだから速い」というより、
「筋力」+「体の使い方のうまさ」
の両方が揃っている、というイメージです。
理由3:接地時間が短い=ブレーキをかけない
雪の上でスキーをしているとき、
一番スピードを落とすのは
板をべったりと踏みつけている時間
です。
長くベタッと踏むほど、雪との摩擦が増えて、ブレーキになってしまいます。
クレボステップでは、
- 板が雪に触れている時間がとても短い
- 「着地 → キック → 次の足」と、流れるように動く
ので、ブレーキになる時間が少なく、
そのぶん スピードが落ちにくい のです。
これは短距離走で言うと、
- 接地時間が短いスプリンターほど速い
のと同じイメージだと考えると、分かりやすいと思います。
理由4:ポールワークが“ほぼ懸垂レベル”
クレボを見ていると、
- ポール(ストック)を、自分の少し前に突き刺し
- そこから 全身を引き上げる ように、力強く押しています
この動きは、ぶら下がり棒で
「懸垂をする → 体を前に出す」
ようなイメージに近いです。
腕だけでなく、
- 背中
- 肩
- お腹まわり
の筋肉を全部総動員しているので、
ポール1回分の推進力が、とても大きい。
しかもその大きな一押しを、
ハイテンポで何度も繰り返すので、
坂の途中から一気にライバルを置き去りにできます。
理由5:道具とワックスも最適化されている
もちろん、トップレベルの選手なので、
スキー板やワックスのチューニングも完璧 です。
- 登りでしっかり“グリップ”してくれる
- でも、蹴ったあとはよく“滑る”
- 気温や雪質に合わせて、ワックスを細かく変えている
など、道具側も「クレボステップ」を活かす方向に作り込まれています。
とはいえ、
道具が同じでも、あの動きを再現できる選手はほとんどいません。
つまり
土台には、クレボ本人の技術とフィジカルがあって、
道具はそれを“最大限に引き出す存在”
という位置づけだと考えると良いでしょう。
クラシカルの“普通の登り”とどこが違う?
もう少しイメージを深めるために、
従来のクラシカル走法の登りと比べてみます。
従来の登り:安全・安定重視
クラシカルの登りでは、一般的に
- 大きめの一歩
- ゆったりしたリズム
- 上半身はあまり前に倒さない
というフォームが多く使われてきました。
理由はシンプルで、
- 滑りすぎると後ろにずるっと下がる
- 転ぶと大きなロスになる
- 長い距離を走るには、省エネも大事
だからです。
クレボステップ:リスクを取って“攻める登り”
それに対してクレボステップは、
- 歩幅:やや小さめだけど回転数が非常に高い
- リズム:完全にスプリントモード
- 体勢:かなり強めの前傾
- ポール:一発一発が重いパンチのように強い
という「攻め」のフォームです。
- ちょっとでもバランスを崩すと、転びそう
- 心肺的にも、ほぼ限界ギリギリ
というリスクを承知したうえで、
「この区間で一気に勝負を決める」
という意志を、フォームごと前面に出しているような技、と言えます。
実際、
あるレースでも、「クレボステップ」で登りを一気に駆け上がり、
そのまま単独でゴールに飛び込む場面が報じられています。
ルール的には大丈夫なの?
ここで気になるのが、
「あれってクラシカルのルール的にOKなの?」
という点ですよね。
スケーティングは禁止、でも…
クラシカル走法のレースでは、
- 板を大きく外に開く“スケーティング走法”は禁止
(フリー走法の専用レースになるので)
というルールがあります。
一方、クレボステップは
- 板の向きは基本的にクラシカル
- ただし、体の使い方やリズムが“半分ランニング”
という、 ルールギリギリを攻めたような技 です。
「強すぎる技」は、いつも議論になる
スキーの世界では、
- ある選手が新しい技術を持ち込み
- それがあまりに強すぎると
- ルールや用具規定が見直される
という歴史が何度もありました。
クレボステップも例外ではなく、
- 「あれはクラシカルとしてどうなのか?」
- 「他の選手は真似できるのか?」
- 「技術として受け入れるべきか?」
といった議論が出てきています。
ただし現時点では、多くのレースで普通に使われていて、
レフェリーに止められるような反則ではない と考えられています。
むしろ、
「ルールの範囲内で、ここまで速くなるのか…」
という、技術革新の象徴として語られることが多いです。
クレボステップに必要な“フィジカル”と“頭脳”
あれほどの登りダッシュには、
とんでもないフィジカルと頭脳が必要です。
必要なフィジカル
ざっくり挙げると、こんな能力が必要です。
- 強力な脚力(特に太もも・お尻)
→ 一歩ごとに、体重+スピードを前に送り出すパワー - 上半身の筋力(背中・肩・腕)
→ ポールを強く突き、体を引き上げる力 - 高い心肺能力
→ ほぼ全力ダッシュを数十秒〜1分以上続けられるスタミナ - バランス能力
→ 滑る板の上で、崩れずに走り続ける体幹の強さ
クレボはオフシーズンに、
アメリカの高地でランニングやローラースキーなど、
徹底したフィジカルトレーニングを積んでいると報じられています。
必要な“頭脳”
さらに、技術だけでなく“頭脳”も重要です。
- どの坂でクレボステップを使うか?
- どこまで全力を出し切り、どこから温存するか?
- ライバルが苦しむタイミングを読んで加速する
など、レース全体の中で
「ここでこの技を使えば、勝負を決められる」
という 戦略的な判断 が必要です。
単に“足が速い人の必殺技”ではなく、
フィジカル+技術+戦略眼
がセットになった、総合力の結晶と言えるでしょう。
一般人でも、クレボステップから学べること
「いや、そんな世界レベルの話されても…」
と思うかもしれませんが、
クレボステップには、私たち一般人にも参考になるポイントがたくさんあります。
「登りで勝負を決める」という発想
多くの人は、
- 坂=しんどい
- 坂=できるだけ力を温存したい場所
と考えます。
でもクレボは、あえて 坂を“勝負どころ”に変えた わけです。
- みんなが苦しい場所だからこそ
- 自分が得意になれれば
- 一気に差をつけられる
これはビジネスや日常生活でも同じで、
「みんなが避けたがる“しんどい部分”こそ、差がつくポイント」
という考え方につながります。
フォーム改善=“効率”の積み重ねで差がつく
クレボの強さは、筋肉だけでなく、
- 重心の位置
- 接地の速さ
- ポールを突く角度
- 体幹の安定
といった フォームの細かい最適化 の積み重ねです。
ランニングでも仕事でも、
- 姿勢を少し整える
- 無駄な動きを減らす
- 道具の使い方を工夫する
といった「効率アップ」を積み重ねると、
長い目で見て大きな差になります。
“自分だけの武器”を作る発想
クレボステップは、
他の選手には真似しきれない“本人の武器”になっています。
誰でもクレボのようにはなれませんが、
- 自分の得意な動き・分野を見つけて
- それを徹底的に伸ばす
- その結果として「○○と言えばあの人」と言われる
という流れは、どの世界でも同じです。
「自分のクレボステップは何か?」
と考えてみるだけでも、
仕事や趣味の取り組み方が変わるかもしれません。
まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
クレボステップは、
ただの派手なテクニックではなく、
「ルールの範囲で、どこまで効率を突き詰められるか」
「しんどい場所を、むしろ得意分野に変える」
という考え方そのものを象徴しているように見えます。
もしまた、
雪の登り坂をクレボが“走り上がる”動画を見かけたら、
ぜひこの記事を思い出して、
- 足と腕の連動
- 体の前傾角度
- ポールの突き方
- 登りのどこで加速しているか
をチェックしてみてください。
ただ「すごい!」と思うだけでなく、
“なぜあんなに速いのか”を楽しみながら観察できる ようになるはずです。


