ミラノ・コルティナ五輪で一気に注目度が爆上がりしている中井亜美選手。
テレビで演技を見て、
- 「このフリーの曲、どこかで聞いたことある…」
- 「歌詞の意味を知ったら、もっと泣けそう」
と思った方も多いはずです。
この記事では、
- ミラノ五輪で中井選手が滑っている“フリーの曲”は何か
- その曲自体がどんな意味を持った歌なのか
- 中井選手のプログラムとして見ると、どういう“物語”に感じられるのか
を解説していきます。
そもそも中井亜美ってどんな選手?
中井亜美選手は、2008年生まれの日本女子シングルのフィギュアスケーター。
2025–2026シーズンにシニアデビューすると、グランプリシリーズ・フランス杯でいきなり優勝、カナダ大会で銅メダル、そしてGPファイナルでも銀メダルを獲得した、まさに“新星”です。
トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に、
「技術もすごいのに、表現がとても柔らかくてきれい」
と評価されるタイプのスケーターですね。
その勢いのまま日本代表に選ばれ、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックに出場。
ショートでは大技のトリプルアクセルを決めてトップに立つなど、女子シングルの主役の一人になっています。
ミラノ五輪フリーの曲は「What a Wonderful World」
中井選手がミラノ五輪でフリーに使っている曲は、
「What a Wonderful World(ホワット・ア・ワンダフル・ワールド)」。
もともとはアメリカのジャズシンガー、
Louis Armstrong
が1967年に発表した名曲で、作曲者はボブ・シール(Bob Thiele)とジョージ・デヴィッド・ワイス(George David Weiss)。
歌詞の内容を一言でいうと、
「世界って、こんなに美しくて、素晴らしいんだよね」
と静かにかみしめる歌です。
中井亜美バージョンは、レキシー・ウォーカー&ピアノ・ガイズのアレンジ
中井選手が使っているのは、オリジナルそのものではなく、
- 歌:Lexi Walker(レキシー・ウォーカー)
- 演奏:The Piano Guys(ザ・ピアノ・ガイズ)
による、透明感のあるカバー版。
ピアノとチェロの柔らかい響きに、澄んだ高音ボーカルが重なるアレンジで、
ブログなどでも
「原曲の温かさを残しつつ、未来にそっと光が差すような世界観」
と表現されています。
このフリーは、日本を代表する振付師
宮本賢二
が担当したプログラムです。
もともとの「What a Wonderful World」は、どんな歌?
曲の意味を知るために、まずは元曲の背景から。
1960年代アメリカの“暗い空気”の中で生まれた希望の歌
「What a Wonderful World」が書かれた1960年代後半のアメリカは、
- ベトナム戦争への反対デモ
- 人種差別をめぐる対立
- 政治的な不安
など、社会全体がピリピリしていた時代でした。
作詞・作曲をしたボブ・シールとジョージ・ワイスは、
そんな「重い空気」に対して、あえて
小さな日常の美しさ
人と人との優しさ
を歌うことで、「こんな時代でも、世界には希望がある」と伝えたかったと言われています。
歌詞のざっくりした内容(超ざっくり意訳)
歌詞をざっくりかみ砕くと、こんな感じです:
- 緑の木、赤いバラ、青い空や白い雲を見て「なんて素敵なんだろう」と感じる
- 友達同士が「元気?」と握手している様子を見て、そこにも愛情を感じる
- 赤ちゃんが生まれ、これからたくさん学びながら大きくなっていく未来に希望を感じる
- そして静かに、「世界って、なんて素晴らしいんだろう」と心の中でつぶやく
つまり、特別なドラマではなく、
「日常の小さな景色の中に、世界の素晴らしさを見つけていく歌」
なんですね。
なぜこの曲がフリーのプログラムになったの?
実は中井選手、最初は前シーズンのフリー「シンデレラ」を続投する予定でした。
ところが、著作権の問題で「シンデレラ」は使えなくなってしまったと報じられています。
そこで、新しく作られたのがこの
「What a Wonderful World」のフリープログラム。
シーズン前半に行われたサマーカップなどでお披露目され、
「急きょ作り直したとは思えない完成度」と、ファンや観戦ブログで高く評価されました。
戦略的にも“強い”プログラム
技術的な面でいうと、このフリーは
- トリプルアクセル(3A)
- ルッツ+トウループのコンビネーション
- フリップ、ループなどの3回転ジャンプ
- レベル4を狙えるスピン・ステップ
を組み合わせた、高難度の構成になっています。
ブログの分析では、コンビネーション構成を少しずつ変えながら
「より点数を出せるように」 調整されているとも指摘されていて、
“癒し系の曲”でありつつ、中身はかなり攻めたプロです。
「What a Wonderful World」中井亜美版プログラムの世界観
ここからは、実際の演技や関係者のコメントをヒントに、
このフリープログラムがどんな“物語”に見えるのかを、言葉にしてみます。
本人いわく「希望をくれる音楽」
国際スケート連盟(ISU)のインタビューの中で、中井選手は
フリーの「What a Wonderful World」について、
「このプログラムでは、ステップシークエンスのところがとても好き。
ステップのときは、少し歌に合わせて心の中で歌っていて、
“希望をくれる音楽”なのが気に入っています」
と話しています。
本人が「希望をくれる音楽」と感じながら滑っている、というのは
このプログラムを見る上で大きなヒントですね。
動きと歌詞がリンクしている
ファンの感想ブログなどでは、
- 「I hear ~」の歌詞で耳に手を当てる振付
- 「Pretty in the sky」で空を見上げるような動き
- 「I love you」のフレーズに合わせた、伸びやかなスパイラル
など、“歌詞と振付がピタッと重なるシーンが多い”と分析されています。
こうした“歌詞の聞こえない日本の視聴者”にも、
「今、何を感じている場面なのか」 が伝わりやすい振付になっているのが特徴です。
プログラムをざっくり3つのパートに分けてみる
テレビ中継で見るときにイメージしやすいよう、
このフリーをざっくり3つのパートに分けてみます。
① 静かに世界を見つめ始める“序盤”
最初は、ゆったりしたメロディに乗せて、
リンクの上を大きなカーブでなぞるような滑りから始まります。
ここは
- 「木や空、花をじっくり見つめている」
- 「まだ何かを決意する前の、“観察”の時間」
のような雰囲気。
このあたりで最初のジャンプやスピンが入ってきますが、
動きは急ぎすぎず、「景色を味わっている」感じが強いパートです。
② トリプルアクセルで“挑戦”と“希望”を打ち出す中盤
曲が少し盛り上がってくる中盤で、
中井選手の象徴であるトリプルアクセルが入ってきます。
ここは
- 「怖さもあるけれど、思い切って飛ぶ」
- 「自分から世界に飛び込んでいく」
という“挑戦”のイメージと重ねて見ているファンも多いようです。
大技を決めた後も、コンビネーションジャンプが続きますが、
曲そのものはあくまで優しく、明るい。
「大技を挑戦しても、心の根っこは穏やかで希望に満ちている」
そんなギャップが、このプログラムを特別なものにしています。
③ ステップシークエンス~ラストポーズで“世界の素晴らしさ”を全身で表現
終盤のハイライトが、本人もお気に入りだというステップシークエンス。
ここでは
- 体を大きく使って、歌に合わせるような振付
- 上を見上げて微笑んだり、客席に向けて手を差し出したり
と、「世界っていいな」「人っていいな」という
曲のメッセージをそのまま体で描いていくような動きが続きます。
ラストのポーズは、その“素晴らしい世界”を
そっと抱きしめるような、味わうような印象。
ジャンプの難しさだけに注目していると見落としがちですが、
最後まで「世界へのまなざし」をテーマにしたプロになっているんですね。
ミラノ・コルティナ五輪という舞台で、この曲が持つ意味
オリンピックは、世界中から選手が集まり、
国や文化の違いを越えて応援し合う場です。
そこに「What a Wonderful World」を持ってきた、というのは
- 世界の色々な問題や対立は確かにある
- だけど、リンクの上では“こんなに素晴らしい景色”を一緒に見ている
というメッセージにも感じられます。
さらに中井選手にとっては、
- 本当は続けたかった「シンデレラ」が使えなくなった
- そこから新しいフリーを作り上げ、
- グランプリシリーズ優勝、GPファイナル銀、四大陸銀、そして五輪代表へ
という“ストーリー”があります。
こうして歩んできた彼女が、五輪のリンクで
「それでも世界は素晴らしい」
という歌を滑る。
これは、ただの選曲ではなく、
「困難を乗り越えた先に見える景色」を
共有しようとしているようにも感じられます。
見るときにここをチェックすると、もっと深く楽しめるポイント
テレビや配信で観るとき、
次のポイントを意識してみると、ぐっと味わいが深まります。
① 出だしの表情と滑りの“柔らかさ”
- 一歩目からエッジ(刃)の使い方がとてもなめらか
- 顔つきが“きばっていない”のに、しっかり集中している
「緊張しているのに、世界を楽しもうとしている人」のような
絶妙なバランスが出ています。
② トリプルアクセルに入る前後の空気の変化
- 入りの助走が、他のジャンプより少し長い
- 飛ぶ瞬間に、体の芯がギュッとまとまる
ここで決まるかどうかで、点数的には大きく変わりますが、
曲のトーンはそこまで変えず、“挑戦も日常の一部”のように見せているのがうまいところです。
③ ステップシークエンスで“歌っている”感じ
- 足元は細かく動いているのに、上半身はしなやか
- 歌詞に合わせた手の動きや視線の方向
本人も「少し歌いながら滑っている」と話しているので、
「今、どの言葉に合わせて動いているのかな?」と想像しながら見ると楽しいです。
④ 最後のポーズと、そのあとの表情
演技が終わった瞬間、
- 「やり切った!」という安堵
- 観客と世界への感謝
の両方が混ざったような表情をすることが多いです。
ここまで見て初めて、このプログラムが伝えたかった
「私にとっての素晴らしい世界」
が完成するように感じます。
まとめ
「世界って、やっぱり素敵だな」と思わせてくれるフリー
最後に、ポイントを整理します。
テレビでこのフリーが流れたら、
ジャンプの成否だけで一喜一憂するのももちろんアリですが、
- 「今、この動きはどんな景色を見ているんだろう?」
- 「彼女にとっての“素晴らしい世界”って何だろう?」
と想像しながら見ると、
何度でも味わえるプログラムになるはずです。








