2025年10月20日、仙台市太白区の70代女性が、金(きん)約18.6キロ(時価約3億4,800万円)と現金約1,040万円をだまし取られた、と報じられました。
犯人は警視庁の警察官を名乗る男で、「あなたが犯罪に関わっていないか確認する。全財産を調査させてほしい」と嘘を重ね、7月から10月にかけて被害が広がったとされています。警察は特殊詐欺事件として捜査しています。なお、この被害額は宮城県内の特殊詐欺として過去最高額とされています。
本記事では、事件の全体像、手口の流れ、なぜ「金」だったのか、同様の最近の事例、そして今日からできる自衛策まで、一気にまとめます。
事件のポイント(最初に事実だけ)
- 被害者:仙台市太白区の70代女性
- 期間:2025年7月〜10月
- 犯人の名乗り:警視庁の警察官(うそ)
- だまし文句:「犯罪に関わっていないか確認」「全財産の調査が必要」
- 被害内容:
- 金 約18.6kg(約3億4,800万円相当)
- 現金 約1,040万円
- 扱い:特殊詐欺事件として捜査中
- 位置づけ:宮城県内で過去最大の特殊詐欺被害額と報道。
ここまでが、報道で確認できている公式の骨子です。詳細はTBS系「東北放送(tbc)」のニュースと、Livedoorニュースの配信でも確認できます。
手口の流れを「時系列」でイメージ
報道にある情報をもとに、一般的に起きやすい流れを、今回のケースに当てはめてわかりやすく整理します(個別の細部は捜査中なので、以下は典型パターンの解説です)。
- 最初の電話
犯人が警察官を名乗る。「あなた名義の口座が犯罪に使われた可能性」「無実を証明するために全財産を確認」など、不安をあおる言葉を使う。 - “協力要請”という名の指示
「安全な保管のため一時的に預かる」「確認のため一度提出して」などと言い、資産の移動を促す。ここで現金だけでなく“金(地金)”をターゲットにされることがある。 - 分割して実行させる
一度に全額ではなく、複数回・長期間に分けて実行させ、心理的ハードルを下げる。今回も7〜10月にまたいで被害が積み上がったと報じられている。 - 証拠を残さない受け取り方法
手渡し、置き配風の受け渡し、ロッカー、宅配の転送など、足がつきにくい方法を指示するのが典型です(今回の受け渡し手段は公表情報にありません)。 - 連絡断絶
受け取りが終わると、連絡が途切れる。被害者は「いつ連絡が来るのか」と待ってしまい、通報が遅れることも。
なぜ「金(きん)」だったのか? 3つの理由
- 換金性が高い
金は世界中で価値が通用し、業者や個人間でも現金化しやすい。犯罪グループにとって扱いやすい資産です。 - 足がつきにくい場合がある
現金は番号で追跡されることがありますが、金は刻印やロットがあっても、溶かす・海外に流すなどで追跡が難しくなることがあります。 - “安全だと思わせやすい”
犯人は「銀行口座は危険。金なら安全」と“一見もっともらしい”理屈で誘導することがあります。実際には安全ではありません。
なお、似た構図の最近の事例として、山梨県で80代男性が金塊約4.5kg(約9,100万円相当)をだまし取られた事件も報道されています。偽の逮捕状まで届いたという話で、資産の“安全な保管”を装う点が共通しています。
犯人がよく使う決まり文句(今回の報道から)
- 「犯罪に関わっていないか確認するために、全財産を調査する」
- 「警視庁の警察官だ」(名乗りで安心させる)
- 「安全な場所に預かる」
- 「今すぐ対応しないと危険」(急がせる)
こうしたフレーズは、権威(警察名)を使って不安をあおり、考える時間を奪うための“型”です。仙台の事件でも「全財産の調査」という非現実的な要求が出てきています。ここが最大の赤信号でした。
なぜ見抜けなかったのか? 4つの心理ワナ
- 権威バイアス
「警察官」を名乗られると、つい本物だと思い込む。 - 恐怖と不安
「犯罪に関わっているかもしれない」と言われると、早く疑いを晴らしたい気持ちが強まり、判断力が下がる。 - 急がされる
「今すぐ」が繰り返されると、家族や誰かに相談する余裕が奪われる。 - 長期の慣らし運転
何度も連絡を重ね、信じ込ませる。今回も7〜10月という“長い期間”がポイントです。
「電話口の警察官」は基本的にアウト
- 警察が電話だけで「資産の提出」を迫ることはありません。
- 「全財産を調査」は、その時点で100%おかしいサイン。
- 本当に警察なら、所属・氏名・連絡先を名乗り、事件番号や担当部署を明示し、こちらから折り返しができるのが普通です。
少しでも怪しいと感じたら、自分で警察署の代表番号に折り返し(着信番号には折り返さない)か、#9110(警察相談専用電話)に相談を。
今日からできる「超・実用」な自衛策7つ
- “折り返し”ルールを家族の合言葉に
どんな相手でも、必ず一度電話を切って、自分で番号検索→公式の代表番号にかけ直す。 - 「資産の提出」「全財産の調査」はゼロ回答
金・現金・通帳・カード・暗証番号・ワンタイムパスは渡さない/教えない。 - 固定電話は留守電設定+ナンバーディスプレイ
名乗らない電話は取らない運用に。家族にも徹底。 - “金”の購入依頼は、すべて詐欺を疑う
「安全のため金を買え」「一時預かりする」はテンプレ詐欺。今回の事件でも金18.6kgが狙われました。 - 家族・近所・担当ケアマネで“通報ネット”をつくる
ひとりで抱えない。「変な電話が来たら、この3人にLINE」のルール化。 - 金融機関・貴金属店で“声かけ強化”を依頼
店頭で「警察に言われて…」は店員さんの重大サイン。おかしいと思ったら止めてとお願いしておく。 - 被害に気づいたら“スピード通報”
110番または#9110、取引の停止依頼、受け渡し場所の保全・カメラの確認。時系列メモを残す。
8) 最近の“似た型”も知っておく(知識は最大の防御)
- 山梨の事例(10/15報道)
80代男性が金塊約4.5kg(約9,100万円)をだまし取られた。偽の逮捕状が届き、指示に従って金を購入→自宅ポスト下に置いて回収されたという。「資産の安全保管」名目で誘導する点が、仙台のケースと構図が似ています。
型を知る=予防につながる。
「警察を名乗る」「全財産の調査」「金を買わせる・預けさせる」「置き配・ロッカーで回収」など、要素が重なったら即“詐欺フラグ”です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 警察が「自宅の現金や金を預かる」ことは本当にないの?
A. ありません。証拠品として持ち帰る場合は正式な手続きと書面があります。電話口での指示や、身分証の提示もないまま預かる話は100%詐欺です。
Q2. もし“本当に警察”だったら、電話を切って折り返しても失礼では?
A. 失礼ではありません。むしろ適切です。自分で調べた代表番号に折り返すのが大切。
Q3. 金や現金を受け渡ししてしまった。取り戻せる?
A. すぐに110番と#9110。監視カメラ映像や宅配・運送履歴、電話・メッセージの記録は回収の手がかりになります。時間勝負です。
Q4. 家族が心配。どう見守ればいい?
A. 電話の取り方ルール(留守電・折り返し)、合言葉、“お金の話は家族に相談してから”カードを電話機の横に貼る。金融機関・貴金属店にも“家族合図”を共有しておくと抑止になります。
もし今、この瞬間に“それっぽい電話”が来たら(行動チェックリスト)
- まず切る。深呼吸。
- 番号を検索し、代表番号に自分でかけ直す。
- 家族・信頼できる人に即共有。
- #9110で相談、110番もためらわない。
- 相手に個人情報・資産情報を言わない/渡さない。
- 受け渡しの指示があっても絶対に従わない。
まとめ──「全財産の調査」は“合図”、電話は一度切る
- 仙台の事件は、金18.6kg+現金1,040万円という過去最大級の被害(宮城県内)で、“警察官を名乗る”+“全財産の調査”という典型的な型が使われました。
- 警察が電話で資産提出を求めることはない。
- “全財産”“安全のため預かる”“今すぐ”は、すべて赤信号。
- 折り返しルールと家族合意、店頭での声かけ、#9110を日常の習慣に。
「知っていれば避けられる」——それが特殊詐欺です。今日、家族のグループLINEに“折り返しルール”を一言書き込みましょう。それだけで、被害の芽をかなり摘めます。
参考:今回の記事の一次情報
- TBS NEWS DIG(東北放送)「金18.6キロ(時価総額3億4800万円相当)と現金1040万円をだまし取られる 仙台の70代女性が被害」※2025年10月20日配信。事件概要・金額・期間・手口の骨子・宮城県内最高額。TBS NEWS DIG
- Livedoorニュース(配信)「特殊詐欺で金塊など3億円超被害 仙台の女性に警察官かたる」※2025年10月20日。概要の再確認。ライブドアニュース
- 神戸新聞(全国)「9千万円相当の金塊詐取 山梨、80代男性被害」※2025年10月15日。“金を買わせる・預けさせる”という似た型の参考事例。神戸新聞
追記(編集メモ):本稿は2025年10月20日(日本時間)の報道をもとに作成しています。今後、捜査の進展で新情報が出る可能性があります。この記事の範囲は上記ソースに基づく時点情報であり、細部は変わることがあります。最新の発表は警察・信頼できる報道をご確認ください。