イングランドのカップ戦「カラバオ杯」(リーグカップ)4回戦で、リヴァプールは本拠地アンフィールドでクリスタル・パレスに0–3で敗れ、ベスト8(準々決勝)を目前に大会から姿を消しました。
試合は2025年10月29日(現地)に行われました。パレスはイサマイラ・サールの2ゴールとイェレミ・ピノの1ゴールで勝利し、リヴァプールは10人になったこともあり、ほぼ何もできずに終わりました。
これはリヴァプールにとって、国内カップ戦ホームゲームで「0–3」という屈辱的な負け方をしたのは91年ぶりと言われる、とても重い結果です。
また、この試合で遠藤航は先発し、普段とは違う「3バックの右センターバック」という役割を与えられました。前半は最終ライン、後半は途中から中盤アンカー(ボランチ)に戻されるという少し特殊な使われ方で、評価(採点)やメディアの見方が大きく分かれています。
この記事では、
- 試合の流れとスコア
- なぜ0–3まで崩れたのか
- 遠藤航のプレー内容・採点
- カラバオ杯はこのあとどうなるのか(準々決勝の顔ぶれ)
を整理していきます。
試合の基本情報とスコアの動き
試合情報
- 大会:カラバオ杯(EFLカップ/リーグカップ)4回戦
- 日程:2025年10月29日(現地)
- 会場:アンフィールド(リヴァプールのホーム)
- 結果:リヴァプール 0 – 3 クリスタル・パレス
- 得点者:サール(41分、45分)、ピノ(88分)
リヴァプールは、リーグ戦やチャンピオンズリーグなど過密なスケジュールの中で、多くの主力を休ませた「大幅ターンオーバー」のメンバーでした。モハメド・サラー、フィルジル・ファン・ダイクといった看板選手は温存され、若手や控え中心の“実験的ラインナップ”だったと報じられています。監督アルネ・スロットは直前の試合から10人を入れ替えた、とも伝えられています。
一方、クリスタル・パレスはオリヴァー・グラスナー監督のもと、最近明らかにチームとしてまとまりがあり、スピードのあるアタッカー陣(イサマイラ・サール、イェレミ・ピノなど)が鋭くゴール前に走り込み、少ないチャンスを確実にモノにしました。
試合の流れ(ざっくり時系列)
- 前半はリヴァプールもボールはそこそこ持ちました。実際、ポゼッション(ボール支配率)は約59%対41%でリヴァプールが上回っています。
- しかし40分ごろ、守備のミスからサールに決められます。
- さらに前半終了間際、またサール。わずか数分のあいだに2失点し、0–2でハーフタイムへ。
- 後半、リヴァプールは追い上げたいところでしたが、若いDFアマラ・ナローが決定機阻止でレッドカード(退場)となり、1人少ない状態に。これで試合はほぼ決まりました。
- 終盤にはピノがダメ押しの3点目。サールが今度はアシスト役になり、ピノが落ち着いて決めて0–3。観客席からは早めに帰り始めるファンも出たという声もあります。
スタッツを見ると、パレスは枠内シュート9本を記録し、リヴァプールはわずか1本。つまり「打たれまくって、こっちはほぼ打ててない」という内容で、0–3というスコアにふさわしい現実でした。
なぜリヴァプールはこんなに崩れたのか? わかりやすく3つの理由に分解
リヴァプールの0–3負けは、単なる「たまたま調子が悪かった」では片づけられません。メディアやOBの指摘を整理すると、大きく3つのポイントが浮かび上がります。
理由1:極端なターンオーバー(総入れ替え感)
スロット監督は、リーグ戦・欧州戦・ビッグマッチ連続(アストン・ヴィラ、レアル・マドリード、マンチェスター・シティといった強豪との対戦が控えている)という過密日程を理由に、主力を温存しました。
結果として、ピッチには初出場の若手、復帰したばかりの選手、普段とは違うポジションに置かれたベテランなど、“公式戦での連係がほぼない人たち”が同時に並ぶことになりました。
これは、言い方を変えると「紅白戦のBチーム+即席フォーメーション」で強い相手とやったようなものです。当然、守備の声かけ(誰が誰を見るか)やラインの押し上げのタイミングがバラバラになります。
実際、1点目・2点目ともサールにあっさり裏を取られて決められており、そこには最終ラインのマーク受け渡しの混乱がはっきり出ていました。
特に2失点目は、相手のスプリントに対して、リヴァプール側のセンターバックが後手を踏んでしまい、個人対応で負けたシーンが目立ったとされています。
理由2:メンタルと経験の差
リヴァプール側には10代・20代前半の若手が多く、プレミアのスピードと圧力に慣れていない選手もいました。中にはまだトップチーム2試合目で、しかもこの試合で2回目の退場になってしまった選手もいた、と報じられています。
これは単純に「かわいそう」と言いたい話ではなく、こういう緊張状態では1回の判断ミスがすぐにレッドカード級のピンチになる、ということです。実際、その退場でチームはさらに崩れ、試合としては終わってしまいました。
逆にクリスタル・パレスは、FAカップ優勝などで「一発勝負の大会で勝てる」という自信と実績を積み上げてきているクラブです。2025年5月のFAカップ決勝ではマンチェスター・シティを破ってクラブとして初の主要タイトルを取っており、“ビッグクラブにも勝てる”というメンタリティをもう手に入れていると評価されています。
つまり、若手中心で不安定なリヴァプール vs 「自分たちはやれる」というパレス。このメンタルの差は、スコア以上に大きかったとも言えます。
理由3:戦術的なリスクが裏目に
リヴァプールはこの試合、3バック気味の守備配置にした時間帯がありました。遠藤航が右のセンターバック気味、ジョー・ゴメスが中央でまとめ役、アンディ・ロバートソンが左という並びです。
3バックは、サイドからウイングバックを押し上げて相手陣内に圧力をかける狙いがあります。ただし、そのぶん裏のスペースが広くなりやすい、という弱点もあります。とくにセンターバックが1対1でスピード勝負をさせられる場面が増えるので、そこにサールやピノのような「速い・抜け出しがうまい」タイプを当てられると、一気にやられやすい形になります。
実際、1人目で止めきれず、カバーも遅れる→一気に決定機、という形が何度も起き、結果としてパレスは枠内シュート9本も放ちました。リヴァプール側は逆に枠内1本に抑えられています。
つまり「ある程度ボールは持てたけど、ゴール前の決定力と守備の安定感は完全にパレスが上だった」という試合だったわけです。
ここまでくると、0–3というスコアはただの偶然ではなく、内容どおりの必然に近い負け、と言えます。
遠藤航の評価・採点・プレー分析
では、日本代表キャプテンでもある遠藤航はどう見られたのか。
(1) どこでプレーしたのか?
この日の遠藤は“本職”のボランチ(中盤の底)ではなく、3バックの右センターバックとしてスタートしたと報じられています。
本人は過去にもセンターバック経験がある選手ですが、プレミア級のスピードアタッカーを相手に1対1を繰り返すのは、さすがに難易度が高い仕事です。
後半には中盤に戻され、いわゆるアンカー(守備的MF)っぽい位置にも入りました。これはスロット監督が「やっぱり遠藤は中盤で使ったほうが安定する」と感じた可能性もある、と見るメディアもあります。
つまり、遠藤は“DFもMFも両方やらされた”という状況で、役割がとても重かったのです。
(2) 守備面の評価
イサマイラ・サールに対して1対1で抜かれたり、2失点目の場面でマークを外してしまったりと、決定的な場面で苦しい対応になった、と厳しく書くメディアもあります。リヴァプール専門メディア「This Is Anfield」では10点満点中「3」というかなり低い評価がついており、「本来のポジションではない3バックで苦戦し、サールをつかまえられなかった」と指摘されています。
「センターバックとしてはポジショニングとスピード勝負の両方できつそうだった」というニュアンスで、要するに“責められる場面で責められてしまった”という見方です。
一方、スポーツメディアの別採点では5.5〜5.7点(10点満点)と、そこまで低くない数字もあります。「ボールを持ったときは落ち着いていて、後方からのビルドアップ(後ろから組み立てるパス)はそれなりに安定していた」というポジティブな書き方もされていました。ただし、「そもそも彼はディフェンダーとして最後の砦をやるべきタイプではなく、完全にフィットしていたとは言いがたい」という一文もあり、全体として“限界は見えた”というトーンです。
この差は、「DFとしてどれくらい厳しく採点するか」で大きく変わっているように見えます。失点にからんだと見る人は3点レベル、ビルドアップなど前向きの部分も含めて総合評価する人は5点台、といった感じです。
(3) ボール扱い・ビルドアップ
パス回しについては「落ち着いていた」「後ろからロングパスでチャンスを作る場面もあった」とも書かれています。実際、リヴァプールはボール自体は持っていましたし、遠藤もその一部になっていました。ただ、それが決定機や得点にはつながらなかったのが正直なところです。リヴァプール全体で枠内シュート1本では、いくらつないでも結果は0点のままです。
(4) メンタル・リーダーシップ
もうひとつ気になるのは、“混乱した守備陣をどれだけまとめられたか”という点です。
この試合、ベテランのジョー・ゴメスやアンディ・ロバートソンといった、ある程度経験値のある選手も最終ラインにいましたが、彼ら自身も慣れない並び(3バック)と周囲の若手に苦しんでいました。
遠藤ひとりを責めるのはフェアではありません。そもそもチーム全体が「誰がリーダーなの?」という状態で、声をそろえられないまま2失点してしまった印象です。
ただ、その中でも“キャプテンタイプ”としてどれだけ味方を落ち着かせられたか、と言われると、今回はそこまで目立つ場面が作れなかったのも事実です。ファンや一部メディアからは、「中盤アンカーに戻した後は多少落ち着いた」という声があり、やはり彼はボランチの位置でこそ本領が出る、という評価に落ち着きそうです。
まとめると
これは、今後のリーグ戦・欧州戦で「遠藤をCB(センターバック扱い)で起用するのはどこまでアリか?」という監督の判断にも影響するはずです。
カラバオ杯はこのあとどうなる?(ベスト8の顔ぶれ)
リヴァプールはここで敗退したので、カラバオ杯の舞台を去ります。では、この大会自体はどう進むのでしょうか。
4回戦(ベスト16)を突破したチームで準々決勝(ベスト8)の組み合わせがすでに決まっています。報道によると、準々決勝カードは以下の通りです。
- アーセナル vs クリスタル・パレス
- カーディフ・シティ vs チェルシー
- マンチェスター・シティ vs ブレントフォード
- ニューカッスル・ユナイテッド vs フラム
ポイントをかんたんに見ると:
① パレスの勢いは本物か?
クリスタル・パレスは、アンフィールドでリヴァプールを0–3で倒してそのままベスト8入り。次はアーセナルと対戦します。パレスは“ビッグクラブにも勝てる”ことをFAカップ優勝などで示しており、勢いがあります。アーセナルにとっても油断できない相手です。
② ニューカッスルはタイトル防衛を狙うモード
ニューカッスル・ユナイテッドは昨シーズンのカラバオ杯王者で、ここでも順調に勝ち上がっています。次はフラム相手にホームで戦えるため、「ディフェンディング・チャンピオンとして2年連続で決勝まで行けるのか?」という視点が注目されています。
③ “最後のビッグチャンス”を狙うクラブも
カーディフ・シティ(下部リーグ勢)が残っており、しかもホームでチェルシーを迎え撃ちます。こういう“下位カテゴリのクラブがビッグクラブに一発勝負で挑む”のが、カラバオ杯の面白さです。トーナメントは12月15日ごろの週に準々決勝が行われる予定なので、12月半ばにはベスト4が出そろいます。
④ マンチェスター・シティは安定の強豪
シティはブレントフォードと当たります。シティはリーグカップ(カラバオ杯)を何度も優勝してきたクラブで、毎年のようにタイトル争いに絡んでいます。
このように、リヴァプールが落ちたことでトーナメントの顔ぶれは一気に「アーセナル・マンC・チェルシー・ニューカッスル+勢いあるパレス」という形になりました。正直、どこが優勝してもおかしくない、非常に濃い8チームです。
リヴァプールにとってこの敗戦はどれくらい深刻?
この0–3というスコアは、ただの「カップ戦の1試合負けた」では終わらないレベルで深刻だ、と複数メディアに指摘されています。
(1) チーム全体の流れが悪い
この試合で、リヴァプールはここ最近「7試合中6敗」という、とても重い不調ぶりを記録してしまいました。
国内のカップ戦でホーム0–3というのは1930年代以来というレベルの屈辱的な記録だとも言われていて、クラブの歴史的にも恥ずかしいと言われるような負け方になっています。
「スロット監督のもとでのワーストゲーム」とまで書く報道もあり、監督へのプレッシャーは一気に高まりました。ファンや解説者の中には「このメンバーで試合に出すって、最初から捨てゲームにしたようなものでは?」とかなりきつい言い方まで飛び出しています。
(2) とはいえ監督には言い分がある
一方でスロット監督は、「ケガ人が多い・試合が詰まりすぎている・主力を休ませないとリーグ戦も欧州戦も戦えない」という現実もある、と説明しています。つまり「カラバオ杯も大事だけど、今はいろいろ優先順位がある」という主張です。
この考え方は、近年のリヴァプールではそこまで珍しいことではありません。実際、ビッグクラブはシーズン序盤~中盤にかけて、リーグ戦・欧州戦・国内カップ2つ(FA杯とカラバオ杯)が重なり、“同じ選手を毎試合フルで出す”のはほぼ不可能です。
ただし今回は、その割り切り方が極端すぎたぶん、一気に「クラブ危機」っぽい空気になってしまった。それが問題だと言えます。
(3) 遠藤航にとっては何を意味する?
遠藤個人にとっては、いい意味でも悪い意味でも“アラが全部テレビに映ってしまった試合”でした。
- 良い面:後ろからのパス出しや、落ち着きそのものは評価されたメディアもある。
- 悪い面:センターバックとしてスピード系アタッカーに後手を踏み、失点にも絡んだと言われた。
このギャップは、今後の起用法に直接つながります。リヴァプールは今ケガ人が多く、最終ラインのやりくりが本当にギリギリだと言われています。そのため「遠藤をDFで使う」という選択肢は今後もあり得るのですが、この試合を見るかぎり“CBとして90分安心して任せられる”とまでは言い切れない、というのが正直な印象になるでしょう。
逆に言えば、「遠藤はやっぱり本職のボランチでこそ価値が高い」というメッセージにもなりました。後半、中盤に戻った後は多少落ち着いて見えた、という指摘は複数メディアで一致しています。
リヴァプールの今後のリーグ戦・欧州戦では、彼が中盤アンカーとして試合の流れを整える役割こそ、さらに重要になるはずです。
まとめ
リヴァプールにとってこの敗戦は「たかが1試合」では終わりません。
チームは6敗/7試合という深刻なスランプに入り、監督は采配を問われ、経験の浅い若手には重い現実が突きつけられました。
そして遠藤航にとっては、「中盤での安定感」という自分の価値と、「緊急時には最終ラインもやらされる」というチーム事情の両方がはっきり見えてしまった試合でした。ここから彼がどう信頼を取り戻し、どのポジションで使われ続けるのか。そこが次の注目ポイントになります。

