最近のニュースで
「雄物川高校バレー部の監督が体罰・暴言で懲戒免職」
という見出しを目にして、びっくりした方も多いと思います。
その監督こそ、宇佐美大輔(うさみ だいすけ)さん。
- 元・男子バレーボール日本代表
- 2008年北京オリンピックに出場したセッター
- 日本代表の主将も務めたことがある名選手
という、バレー界ではとても有名な人です。
その一方で、現在は
秋田県立雄物川高校男子バレー部の監督としての体罰・暴言が問題となり、2025年11月7日付で懲戒免職処分を受けたと、秋田県教育委員会が発表しました。
この記事では、
- 宇佐美大輔って、そもそもどんな人なのか
- 体罰・暴言、懲戒免職とは何があったのか
- このニュースから、私たちは何を学べるのか
を解説していきます。
※ここで書く内容は、新聞・テレビなど公表されている事実にもとづいてまとめたものです。今後、新しい情報や裁判などで内容が変わる可能性がある点も、あらかじめおさえておいてください。
宇佐美大輔って誰?プロフィールをざっくり整理
まずは「どんな人なのか」を、ざっくり整理します。
- 名前:宇佐美 大輔(うさみ だいすけ)
- 生まれ年:1979年(46歳・2025年時点)
- 出身:秋田県横手市(雄物川高校のある地域と同じ)
- 身長:およそ184cm
- ポジション:セッター(司令塔の役割)
- 主な所属チーム:NECブルーロケッツ、パナソニック・パンサーズなど
- 日本代表歴:2001~2005年、2007~2012年に男子日本代表として活躍
- 主な実績:
- 2008年北京五輪に出場
- 2009年ワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャン)で日本を銅メダルに導く主将
- Vリーグや黒鷲旗で優勝、ベスト6にも選出
日本男子バレーを長く支えた司令塔であり、代表のキャプテンも務めた「顔」の一人と言っていい存在です。
現役引退後は、公立高校の教員となり、2014年からは母校・雄物川高校で教員兼バレー部監督を務めていました。
雄物川高校バレー部と宇佐美監督の関係
秋田のバレー好きにとって、雄物川高校男子バレー部は「春高バレー常連校」として知られています。
- 春の高校バレー全国大会(通称「春高」)に何度も出場
- 地元の期待を一身に背負った強豪校
宇佐美さんは、その雄物川高校のOBであり、2014年から監督としてチームを率いてきました。
- 元日本代表のセッター
- 北京五輪経験者
- 地元出身で母校の監督
ということで、地域にとっては「スターが帰ってきた」ような存在だったはずです。
実際、メディアでも「元日本代表主将が率いる雄物川」「名門を導く名将」といった形で紹介されてきました。
だからこそ、今回の体罰・暴言問題のニュースは、多くの人にとってショックが大きかったと言えます。
体罰・暴言で何があったのか?時系列で整理
では、今回の問題の「事実として公表されている部分」を、なるべく感情をまぜず、時系列で整理してみます。
① いつからいつまで?
秋田テレビや各紙の報道によると、
2023年4月から2025年9月までの間、指導の場面で体罰・暴言が行われていたとされています。
約2年半という、かなり長い期間です。
② どんな行為が問題になったのか
県教育委員会や報道によれば、宇佐美監督は指導中に、複数の部員に対し次のような行為をしたと認定されています。
- 顔を平手やこぶしで殴る
- 腹部を蹴る
- ボールをぶつける
- 「バカ」「お前のせいで負けた」などの暴言を繰り返す
また、
- 部員31人のうち、14人が体罰の被害を、13人が暴言の被害を訴えている
- その中の1人は、口の中を切るけがをしている
と報じられています。
宇佐美監督自身も、聞き取りの中で
「生徒を全国レベルに持っていきたいという思いだった」
と話し、体罰行為を認めているとされています。
③ どうやって発覚したのか
- 2025年9月、部員の関係者から県バレーボール協会に
「監督が部員に体罰を与えている」という情報が寄せられる - その後、協会と学校が調査
- 宇佐美監督は体罰を行っていたことを認める
という流れが報じられています。
④ 協会・学校・県教委の対応
- 2025年10月7日
- 秋田県バレーボール協会が、宇佐美監督を1年間の謹慎処分としたと報道される。
- 2025年11月7日
- 秋田県教育委員会が、宇佐美大輔教諭(46)を
懲戒免職処分にしたと発表。
- 秋田県教育委員会が、宇佐美大輔教諭(46)を
県教委は
「生徒を全国レベルに到達させたいと思うあまり行為に及んでしまった」
と宇佐美氏が説明していることも公表しています。
「懲戒免職って本当?」──結論から言うと「事実」です
ニュースの見出しにも出てくる
「懲戒免職って本当?」
という疑問については、答えはシンプルです。
- 秋田県教育委員会が正式に発表している
- 共同通信配信の記事として、全国の新聞社・メディアが一斉に報じている
この2点からみて、
「懲戒免職になった」という事実そのものは、公式に確認されている
と言えます。
もちろん、処分の妥当性や背景については、今後も議論が続くかもしれません。
しかし少なくとも現時点では、
- 体罰・暴言があったと県教委が認定
- その結果として、地方公務員である教諭が最も重い懲戒処分(懲戒免職)を受けた
という流れは、公的な記録として残ることになります。
「厳しい指導」と「体罰」の違いはどこにある?
ここからは、少し一般的な話です。
スポーツの世界では、今でも
「昔はもっと厳しかった」
「殴られて強くなった」
という言葉を耳にすることがあります。
しかし、今の教育現場では、暴力や人格を傷つける言葉は「指導」ではなく「体罰・ハラスメント」として明確に禁止されています。
よくある勘違い
どんな理由があっても、
・殴る、蹴るなどの暴力
・人格を否定するような暴言
は、教育として認められません。
今回も、宇佐美監督は
「生徒を全国レベルに持っていきたいという思いだった」
と話していますが、その思いがあったとしても、
行為としては体罰・暴言であり、許されないものだったと県教委は判断したわけです。
なぜここまで問題が大きくなるまで止まらなかったのか?
これは宇佐美さんだけの問題ではなく、日本のスポーツ界全体が抱えるテーマでもあります。
① 勝利至上主義と「名門校」のプレッシャー
- 雄物川高校は、春高バレー常連の強豪
- 地元やOB、メディアからの期待も大きい
「全国で勝たなければ」というプレッシャーは、監督・選手ともに相当なものだったはずです。
そうした中で、
- 指導がエスカレートしていく
- 「勝つためだから」と、自分にも他人にも言い訳してしまう
という構造が生まれやすくなります。
② 監督と生徒の力関係
部活動では、監督や顧問の先生は絶対的な権力を持ちがちです。
- 試合に出られるかどうか
- 進路(大学推薦など)
- 日々の評価
こうしたものが、ほぼ監督の一言で左右されてしまうことも少なくありません。
そのため、
- 殴られても我慢する
- 暴言を受けても「自分が悪いからだ」と思い込む
- 周囲に相談しづらい
といった状況に追い込まれてしまう生徒も多いのです。
③ 声を上げた人を守れる仕組み
今回のケースでは、
部員の関係者が県バレーボール協会に情報提供をしたことがきっかけで調査が始まったとされています。
これは裏を返すと、
- 学校の中だけでは声を上げにくい
- 第三者機関が間に入ることで、ようやく動き出した
ということでもあります。
今後は、
- 生徒や保護者が安心して相談できる窓口
- 匿名で通報できる仕組み
- 通報した人が不利益を受けないルール
などを、もっと整えていく必要があるでしょう。
「名選手=名監督」ではない、という現実
宇佐美大輔さんは、選手としては間違いなくトップレベルの実績を持つ人です。
- 五輪経験
- 日本代表の主将
- Vリーグ優勝、国際大会のメダル
しかし、名選手だったことと、良い指導者であることは別問題です。
- 高いレベルを知っているがゆえに、要求水準も高くなる
- 自分が現役時代に受けた「厳しい指導」を、無意識に再現してしまう
- 「勝たせなければ」という重圧を、一番近くにいる生徒にぶつけてしまう
こうしたことは、多くの競技で起きています。
今回のケースは、「日本代表クラスのスターでも、指導者としては大きな間違いを犯しうる」という現実を突きつけた形になりました。
保護者・部員・周りの大人が覚えておきたい「危険サイン」
このニュースを「誰かの失敗」として終わらせてしまうと、また同じことが起こりかねません。
ここでは、保護者や周りの大人が意識しておきたい「危険サイン」をいくつか挙げておきます。
1. 身体に不自然なあざや傷がある
- 顔や腕、足などに、説明しづらいあざ・傷が増える
- 「練習で転んだ」と同じ説明を何度もする
→ 体罰や過度なしごきが隠れている可能性があります。
2. 部活の話を極端にしたがらない
- 部活の話題になると、急に口数が減る
- 「楽しい?」と聞いても、「まあ…」とごまかす
- 練習前になると、明らかに表情が暗くなる
→ 指導環境に何か問題がある合図かもしれません。
3. 監督・コーチを過剰に恐れている
- 監督の名前を聞くだけで緊張する
- 「怒られるから」という言葉ばかり出てくる
- 多少のケガでも「内緒にしておいて」と言う
→ 権力関係が歪んでいる可能性があります。
4. 「自分が悪いから仕方ない」と言い続ける
- 明らかに行き過ぎた叱責や暴力なのに、
「全部自分が悪いから…」と自分を責める
→ 長期間のハラスメントで、自己評価が下がっているケースもあります。
こうしたサインに気づいたときは、
- まずは否定せず、ゆっくり話を聞く
- 学校の別の先生や、外部の相談窓口にもつなぐ
- 一人で抱え込まない
ことがとても大切です。
これからスポーツ現場に求められる「指導」のかたち
今回の件をきっかけに、全国のスポーツ現場で「指導のあり方」を見直す動きが進むはずです。
理想的な指導とは、例えばこんなイメージです。
- 技術面は厳しく、人格は尊重する
- ミスは指摘しても、人間性を否定しない
- 「バカ」「お前のせい」などの言葉は使わない
- 選手の意見や不調にも耳を傾ける
- 体調やメンタルの不調を、「甘え」と切り捨てない
- 話し合える関係をつくる
- 第三者の目が入る仕組みを整える
- 外部コーチや他の先生が様子をチェック
- 保護者会などで情報共有をする
- 勝利だけでなく、成長と安全を重視する
- 勝つことは大事。でも、それ以上に
「ケガをしない」「心が折れない」ことを大切にする
- 勝つことは大事。でも、それ以上に
宇佐美大輔さんのこれまでの功績まで否定する必要はありません。
ただし、どれだけ実績がある指導者でも、ルールを守らない行為は正当化されないということを、私たち全員が共有する必要があります。
まとめ
最後に、この記事のポイントをもう一度まとめます。
- 宇佐美大輔さんは、元バレーボール日本代表のセッターで、北京五輪出場・日本代表主将など大きな実績を持つ選手でした。
- 現役引退後は、秋田県の公立高校教員となり、母校・雄物川高校男子バレー部の監督として、春高常連の強豪校を率いてきました。
- しかし、2023年4月~2025年9月の間に、複数の部員に対して殴る・蹴る・ボールをぶつけるなどの体罰や、「バカ」「お前のせいで負けた」などの暴言を繰り返していたと県教育委員会が認定しました。
- その結果、秋田県教育委員会は2025年11月7日付で宇佐美大輔教諭を懲戒免職処分とし、この事実は全国ニュースとして報じられています。
- 「生徒を全国レベルに」という思いがあったとしても、暴力や人格を否定する言葉は、今のスポーツ・教育の世界では決して許されません。
- この出来事を、単なる「スキャンダル」として消費するのではなく、
- 指導者側:自分の指導を振り返る
- 学校・協会:相談・通報の仕組みを整える
- 保護者・周囲の大人:危険サインに気づき、声をあげる
という行動につなげていくことが大切です。
宇佐美大輔さんの名前をニュースで知った人も、
昔のプレーを知っているバレーファンの人も、
「名選手でも間違いを犯すことはある」
「だからこそ、仕組みと周りの目が必要だ」
ということを心に留めておきたいところです。


