2025年11月現在、伯桜鵬(はくおうほう)哲也はまだ22歳。
それなのに、すでに横綱から「金星(きんぼし)」を挙げ、“令和の怪物”と呼ばれています。
この記事では、
- 伯桜鵬ってそもそもどんな力士?
- どうして「令和の怪物」と呼ばれるようになったのか?
- 22歳で横綱撃破って、どれくらいすごいことなのか?
- どんな相撲スタイルで、今後どこまで伸びそうなのか?
を解説していきます。
伯桜鵬ってどんな力士?プロフィールをサクッと整理
まずは基本情報から。
- 四股名(しこな): 伯桜鵬 哲也(はくおうほう てつや)
- 本名: 落合 哲也(おちあい てつや)
- 生年月日: 2003年8月22日(22歳)
- 出身地: 鳥取県倉吉市
- 所属部屋: 宮城野部屋 → 伊勢ヶ濱部屋
- 身長・体重: 181cm・約157〜160kg(場所によって多少増減)
- 得意技: 左四つ、寄り、押し相撲
- 最高位: 東前頭筆頭(2025年11月場所)
- 三賞: 殊勲賞・敢闘賞・技能賞をそれぞれ1回ずつ受賞
- 金星: 3個(大の里から2個、豊昇龍から1個)
デビューからまだそんなに年月はたっていないのに、
「三賞コンプリート&金星3個」という実績は、普通に考えてもかなりエグい数字です。
アマチュア時代から「怪物」だった伯桜鵬
「令和の怪物」と言われると、
「マスコミが派手に言ってるだけでしょ?」
と思うかもしれません。
でも、伯桜鵬の場合はアマチュア時代から実績がバケモノ級なんです。
高校時代:高校横綱に2回輝く
- 相撲の強豪校として有名な鳥取城北高校に進学。
- 2年・3年と続けて高校横綱のタイトルを獲得。
- 高校生No.1を決めるレベルで、すでに「全国の頂点」に立っていました。
全日本選手権・実業団でもトップクラス
- 高校3年時には、学生・社会人をふくめた全日本選手権でベスト8。
- 卒業後すぐに角界入りはせず、
左肩の手術とリハビリを優先し、
いったん実業団相撲の世界へ。 - そこでなんと、実業団横綱にまで登りつめます。
この実業団での活躍が評価され、
一気に「幕下15枚目格付出し」の資格をゲット。
ふつうの新弟子より、はるかに上のスタートラインからプロ入りすることになりました。
プロ入り後の出世スピードがエグい
「令和の怪物」と呼ばれる一番の理由が、出世スピードです。
2023年1月:初土俵でいきなり幕下優勝
- 2023年1月場所、いきなり幕下15枚目格付出しでデビュー。
- そこで7戦全勝・幕下優勝。
- 幕下15枚目格付出しからたった1場所で十両昇進したのは史上初という快挙でした。
2023年3月〜5月:十両も2場所で通過
- 新十両でいきなり10勝5敗。
- 続く5月場所では、14勝1敗で十両優勝。
ここまで、プロ3場所の通算成績は31勝6敗。
まさに「格が違う」というレベルです。
2023年7月:新入幕でいきなり11勝&三賞2つ
- 2023年7月場所で新入幕。
- いきなり11勝4敗の好成績を残し、
敢闘賞と技能賞のダブル受賞を達成しました。 - 優勝争いにもからみ、
「109年ぶりの新入幕優勝があるか?」とまで言われるほど。
このあたりから、メディアで
「令和の怪物・伯桜鵬」という呼び名が本格的に定着していきました。
ケガでどん底 → そこからの復活も「怪物級」
順風満帆に見えた伯桜鵬ですが、
じつは早い段階で大きな壁にぶつかっています。
左肩のケガで長期休場
- 以前から抱えていた左肩の故障が悪化。
- 2023年9月場所・11月場所を全休し、
番付は十両から幕下まで陥落しました。
「怪物」と言われていた若手が、
あっという間に土俵から姿を消してしまったわけです。
2024年:幕下からやり直し、それでも快速復帰
しかしここからが伯桜鵬の本領発揮。
- 2024年1月場所(西幕下5枚目)で6勝1敗。
- すぐに十両へ戻り、
そこから8勝7敗、11勝4敗、8勝7敗、10勝5敗…と
きっちり勝ち越しを積み重ねました。
そして2025年1月場所からは幕内に復帰し、
- 2025年1月:東前頭15枚目で10勝5敗
- 3月:東前頭9枚目で9勝6敗
- 5月:東前頭7枚目で8勝7敗
- 7月:東前頭4枚目で8勝7敗
- 9月:東前頭2枚目で8勝7敗+殊勲賞
と、全場所勝ち越し&番付アップ。
その結果、2025年11月にはついに東前頭筆頭まで上がってきました。
ケガで一度は幕下まで落ちた力士が、
わずか1年ちょっとで再び幕内上位に帰ってくる。
ここにも、伯桜鵬のメンタルの強さと地力の高さが表れています。
22歳で横綱撃破!「金星」が教えてくれる本当の強さ
さて、この記事の大きなテーマでもある
「22歳で横綱撃破」について、くわしく見ていきましょう。
そもそも「金星」ってなに?
簡単に言うと、
幕内の平幕力士(前頭)が、本場所で横綱を倒したときに付くご褒美
のことです。
- 番付が上の横綱に勝つだけでも大金星なのに、
- 横綱に連続して勝つなんて、そうそう起こらないことです。
2025年7月:新横綱・大の里から初金星
2025年7月場所(名古屋場所)、
伯桜鵬は新横綱・大の里と初めて土俵で対戦しました。
- 自己最高位・東前頭4枚目で迎えた場所。
- 「横綱初挑戦・初金星」という離れ業をやってのけます。
- 鳥取県出身力士としては約60年ぶりの金星というおまけ付き。
このときの伯桜鵬のコメントがまたカッコいい。
「攻略法は『横綱に引かせること』。それしかチャンスはない」
と語り、実際に
- 横綱の右差しを封じる
- 引き気味になったところを一気に押し出す
という狙い通りの相撲で勝ちきりました。
この一番で、
「やっぱり伯桜鵬は令和の怪物だ」と感じたファンは多いはずです。
すでに金星は3個、そのうち2個が大の里
さらにスゴいのは、ここで終わらないところ。
2025年11月場所の時点で、
- 金星は合計3個
- 大の里から2個
- 豊昇龍から1個
と、横綱キラーぶりを見せています。
九州場所(2025年11月)では、
- 初日:豊昇龍(横綱/または大関からの昇進組)を寄り倒し
- 2日目:横綱・大の里に寄り倒されて1勝1敗
と、まさに横綱・トップ力士と真っ向勝負を繰り広げるポジションにいます。
22歳の若さで、
「横綱とガチでやり合う前頭筆頭」というだけで、
どれだけ規格外かわかると思います。
「令和の怪物」と呼ばれる3つの理由
ここまでを整理すると、
伯桜鵬が「令和の怪物」と呼ばれる理由は、ざっくり3つに絞れます。
① とんでもない出世スピード
- 幕下付出から1場所で十両昇進(史上初)
- 十両も2場所で通過して新入幕
- 新入幕で11勝&三賞2つ
- ケガで落ちても、すぐに十両→幕内→上位へ復帰
「順調に昇進」どころではなく、
“階段を飛ばして駆け上がっている”ようなスピード感です。
② 技術がすでにベテラン級
専門家からは、
「相撲技術はベテラン並み」
と評価されるほど。
実際の相撲を見ても、
- 左四つで組んでからの寄り
- 立ち合いの当たりの強さ
- まわしを取るタイミングのうまさ
- 相手の力をいなして前に出る感覚
など、19〜22歳とは思えない完成度です。
③ 「負け相撲は勝ち相撲の倍見る」研究熱心さ
伯桜鵬の有名なコメントがあります。
「負けた相撲は、勝った時の倍ぐらい見直す」
「幕内は本当に全員がバケモノ。その中で勝つには、細かいところでやっていくしかない」
若さにまかせて勢いだけで突っ走るのではなく、
- 自分の負けを徹底的に研究する
- 相手のクセを細かくチェックする
という冷静さとオタク気質が、
“怪物”と言われる強さをさらに底上げしています。
しこ名「伯桜鵬」に込められた3つの思い
「伯桜鵬」という、少し変わった名前。
どこかストーリー性のある字面ですよね。
実はこの四股名には、3つの思いが込められています。
「伯」…故郷・鳥取への愛
- 伯桜鵬の出身地・鳥取県は、昔「伯耆国(ほうきのくに)」と呼ばれていました。
- その「伯」の字を入れることで、
地元への感謝と誇りを表しています。
「桜」…原点となった「桜ずもう」
- 伯桜鵬は子どもの頃、倉吉市で行われる
「桜ずもう」という相撲大会に出ていました。 - これは、同じ倉吉出身の元横綱・琴櫻をたたえる大会です。
- 自分の原点である大会と、尊敬する横綱への思いを込めて「桜」の字をチョイス。
「鵬」…師匠・白鵬へのリスペクト
- 「鵬」は、言わずと知れた第69代横綱・白鵬(現・宮城野親方)の四股名から。
- 伯桜鵬自身も 「師匠の『鵬』の字をいただき、地元にゆかりのある字を入れてもらった。とてもいい四股名で、すごくうれしい」
と語っています。
地元と、子どもの頃の原点と、
憧れの横綱——。
三つの想いを一つの名前に詰め込んだのが、
この「伯桜鵬」という四股名なんです。
指導者と環境も「怪物級」
伯桜鵬の成長を語るうえで、
指導者と環境も外せません。
白鵬の内弟子としてスタート
- プロ入り時の所属は宮城野部屋。
- そこで、史上最多優勝を誇る元横綱・白鵬の内弟子として鍛えられました。
白鵬は
- 土俵際の粘り
- 反応速度
- 相手のクセを読む“勘”
に優れた力士でしたが、
伯桜鵬にもそのセンスが色濃く受け継がれているように見えます。
宮城野部屋の閉鎖 → 伊勢ヶ濱部屋へ
2024年には、宮城野部屋での不祥事などの影響から、
部屋自体が閉鎖され、所属力士は伊勢ヶ濱部屋へ移籍しました。
伊勢ヶ濱親方は、
元横綱・照ノ富士として知られる人物。
伯桜鵬が大の里から金星を挙げたときも、
足の運びや相撲の組み立てを厳しく指導されていたことが報じられています。
「令和の怪物」は、
“怪物級の指導者”に育てられている怪物
…と言ってもいいかもしれません。
伯桜鵬の相撲スタイルを「中学生にもわかる言葉」で解説
ここで一度、伯桜鵬の取口を
できるだけシンプルに整理してみます。
① 基本は「左四つ」+寄り
- 左手で相手のまわしの奥をつかみ(左四つ)
- 右手で相手の外側を押さえながら
- グイグイ前に出て、寄り切る相撲が得意。
いわゆる「正統派の力相撲」です。
② でも押し相撲もできる
- 立ち合いから、低く当たって突き押しで前に出る相撲も上手。
- 相手が差しに来る前に、自分のペースで土俵外まで運んでしまうこともよくあります。
③ とにかく“修正力”が高い
2023年名古屋場所のとき、伯桜鵬は
「負けた相撲は勝ったときの倍くらい見直す」
と言っていました。
- 前の日に負けた相撲の反省点を、
- すぐ次の日の取り組みに反映してくる
この修正の速さこそが、
10代・20代前半でここまで勝ち続けている一番の理由かもしれません。
22歳の今、どこまで伸びる?ファンが期待できるポイント
では最後に、
「伯桜鵬は今後どこまでいけそうか?」
という話を、現実的な目線で考えてみましょう。
まだ22歳、経験値は伸びしろだらけ
- すでに前頭筆頭・三賞3つ・金星3つという実績。
- それでいて、年齢はまだ22歳。
通常、
- 大関に上がるのは20代後半〜30歳前後
- 横綱はさらにその先
というケースが多いことを考えると、
伯桜鵬にはまだ5〜10年分の伸びしろがあります。
ケガを乗り越えた経験が、逆にプラスになる可能性
すでに左肩の大きなケガを経験し、
- 一度は幕下まで番付を落とし
- そこから地道に勝ち星を積み上げて復帰した
というストーリーを持っています。
これは、
- これからどんなスランプが来ても、
- 「あのときよりマシだ」と思える
- 長い力士人生で、大きな心の支えになる
という意味でも、とても大きい経験です。
横綱・大の里との“新時代ライバル物語”
2025年11月場所2日目では、
横綱・大の里に寄り倒されてしまいましたが、
その前には2連勝していたというデータもあります。
- 横綱・大の里(25歳)
- 前頭筆頭・伯桜鵬(22歳)
この2人の対決は、
これからの大相撲を盛り上げる“新時代のライバル関係”になるかもしれません。
まとめ:伯桜鵬が「令和の怪物」と呼ばれる理由
最後にポイントだけ整理しておきます。
- アマチュア時代から全国制覇クラスの実績
- 高校横綱2回、実業団横綱、全日本選手権ベスト8など。
- 史上初のスピード出世
- 幕下付出から1場所で十両昇進、
十両2場所で通過、新入幕で11勝&三賞2つ。
- 幕下付出から1場所で十両昇進、
- ケガからの復活力
- 肩の手術・長期休場で幕下まで落ちながら、
1年あまりで幕内上位までカムバック。
- 肩の手術・長期休場で幕下まで落ちながら、
- 22歳で横綱撃破&金星3個
- 新横綱・大の里から金星2個、豊昇龍から1個。
- すでに“横綱キラー”の雰囲気すらある。
- 「負け相撲は勝ち相撲の倍見る」研究熱心なメンタル
- 幕内を「全員がバケモノ」と言い切りつつ、
その中で勝つための努力を惜しまない。
- 幕内を「全員がバケモノ」と言い切りつつ、
- 四股名に込められた“3つの絆”
- 故郷(伯耆国)、原点の桜ずもう、師匠・白鵬。
- 地元愛と恩人への感謝が強い、人間的にも熱い力士。
「怪物」という言葉は怖そうに聞こえますが、
伯桜鵬の場合、
努力と研究をやめない、礼儀正しい“令和の怪物”
という表現がいちばんしっくりきます。
これから
- 大関・横綱を本気で狙うのか
- どんなライバル関係が生まれるのか
大相撲の“令和後半”を語るうえで、
伯桜鵬は、絶対に外せない存在になっていきそうです。


