まずは、ざっくりプロフィールから。
- メンバー:佐藤良成(さとう りょうせい)、佐野遊穂(さの ゆうほ)
- 結成:1998年
- かたち:男女2人組のデュオ
- 関係:音楽の相方であり、プライベートでも夫婦。3人の男の子の両親でもあります。
音楽のルーツは、70年代フォークやカントリーなど。そこに日本語の歌詞をのせて、別れ・コンプレックス・家族・日常の小さな感情を丁寧に歌うスタイルが特徴です。
CDアルバムはこれまでに12枚以上のオリジナルアルバムをリリース。映画やドラマ、CMへの楽曲提供も多く、
- 映画『ぼくのお日さま』主題歌「ぼくのお日さま」
- 映画『大きな家』主題歌「トンネル」
- NHK朝ドラ『ばけばけ』主題歌「笑ったり転んだり」
など、ここ数年でタイアップも一気に増えました。
2025年には、代表曲をまとめた初の公式ベスト盤『ハンバート入門』も発売予定。タイトル通り、「これから聴き始めたい人」の入口になる1枚です。
夫婦デュオとしての3つの魅力
1. 「会話しているみたいな」ハーモニー
ハンバートハンバートを一言で言うと、“会話しているような歌”。
ふたりともメインボーカルなので、
- 夫(良成さん)がぼそっとつぶやく
- 妻(遊穂さん)が、明るく、少しあきれたように返す
こんな夫婦のやりとりが、そのまま歌になったような感じです。
大げさなビブラートも、高いハイトーンもあまり出てきません。
その代わり、日常の声のまま歌っているから、聴いている側も肩の力が抜けていきます。
2. 日常に寄りそってくる歌詞
歌詞のテーマは、キラキラした恋愛よりも、
- 家族のこと
- ちょっとこじれた恋
- 心の弱さやコンプレックス
- 仕事や生活のしんどさ
…といった、リアルな日常の感情が中心。
「がんばれ!」とストレートに励ますのではなく、
「しんどいよね」「しょうがないよね」と弱さごと受け止める感じなので、
疲れた夜に聴くと、じわっと効いてきます。
3. ライブの「家の延長」みたいな空気
ライブ映像やレポートを見ると、MCはゆるゆる。
ふたりのかけ合いは、もはや居間でしゃべっている夫婦そのものです。
でも、曲が始まると一気に集中して、
ギター1本とハーモニカ、そして2人の声だけで会場が一気に“物語の世界”になります。
ハンバートハンバート「必ず聴きたい名曲10選」
ここからは、初めて聴く人でも入りやすい定番曲+最近の代表曲を、10曲に絞って紹介します。
それぞれ「どんな曲か」「どんな時におすすめか」も、できるだけ中学生でも分かる言葉で書きました。
① 笑ったり転んだり
── 朝ドラ『ばけばけ』主題歌。2020年代の代表曲へ
- 収録:シングル/ベスト盤『ハンバート入門』など
- タイアップ:NHK連続テレビ小説『ばけばけ』主題歌
タイトル通り、「笑ったり、転んだり」しながら生きていく私たちを歌った曲。
毎日、うまくいかないことが多くて、
- 仕事でミスした
- 子育てでイライラした
- 人間関係でちょっと落ち込んだ
そんなときでも、
「それでも明日も生きていくよね」という、静かな前向きさがにじんでいます。
メロディも明るすぎず、暗すぎず。
「朝から聞いてもしんどくならない」「夜に聴いても優しい」という、絶妙なバランスです。
こんな人におすすめ
・朝ドラでハンバートを知った人
・最近ちょっと人生に疲れている人
・まず1曲だけ聴いてみたい人
② おなじ話
── 代表曲にして“ハンバート入門の入門”
- 初出:アルバム『11のみじかい話』(2005)など
- ベスト盤『ハンバート入門』にも収録
男女の会話形式で進んでいく、超定番バラード。
歌詞の解釈はいろいろあって、
- 長年連れ添った老夫婦の会話
- 亡くなった人と残された人の「心の中の会話」
など、聴き手によって見える物語が変わる不思議な1曲です。
メロディはとてもシンプルで、ゆっくり。
だからこそ、歌詞の一言一言が心に刺さります。
こんな人におすすめ
・歌詞をじっくり味わうのが好きな人
・「静かなラブソング」が好きな人
・ハンバートを1曲で説明してと言われたら、これを出したくなる人
③ ぼくのお日さま
── 映画のタイトルにもなった、やさしい光の歌
- 初出:アルバム『むかしぼくはみじめだった』(2014)
- 映画『ぼくのお日さま』(2024)の主題歌/タイトルになった曲
「お日さま」という言葉の通り、暗い気持ちをそっと照らしてくれるような曲です。
落ち込んでいる「ぼく」にとって、大切な存在を「お日さま」にたとえて歌っています。
子どものような視点と、大人の切なさがまざっていて、
聴いていると、自分の人生のどこかの場面と重なって泣きそうになる人も多いはず。
こんな人におすすめ
・最近ちょっと心が曇りがちな人
・誰か大事な人を思い出したい夜
・静かに泣きたい時の1曲がほしい人
④ がんばれ兄ちゃん
── 不器用なお兄ちゃんに送る、弟からの応援歌
- 収録:アルバム『家族行進曲』(2017)
タイトルだけ見ると「熱血応援ソング?」と思うかもしれません。
でも実際は、ちょっと頼りない兄を、弟が心から応援する曲です。
- 走るのが遅い
- 勉強も運動もパッとしない
- でも、人の痛みに気づけるやさしさがある
そんな「お兄ちゃん」の姿を、弟目線でやさしく描いています。
家族の中での「弱さ」と「かっこよさ」が、両方ちゃんと描かれているのがハンバートらしいところ。
こんな人におすすめ
・きょうだいがいる人
・自分に自信が持てないお兄ちゃん/お姉ちゃん
・家族をテーマにした曲が好きな人
⑤ 虎
── かわいいのにちょっと怖い、“感情の獣”の歌
- ベスト盤『ハンバート入門』収録曲
- 元アルバム:『FOLK 2』など
タイトルは「虎」ですが、
出てくるのは動物園の虎ではなく、心の中で暴れる感情のような存在です。
- 嫉妬
- 怒り
- もどかしさ
そういった、できれば隠しておきたい感情を
ちょっとユーモラスに、でもリアルに描いています。
サウンドは軽快で、ライブではかなり盛り上がる曲。
歌詞をちゃんと聴くと「うわ、これ自分じゃん…」とドキッとする人も多いはずです。
こんな人におすすめ
・感情がぐちゃぐちゃになりがちな人
・元気な曲から聴き始めたい人
・ライブで盛り上がる曲を知りたい人
⑥ 長いこと待っていたんだ
──「こういうバンドを待っていた」と言わせた名曲
- 代表的なライブ人気曲のひとつ
- アルバム『道はつづく』などに収録とされる楽曲で、後に『FOLK』シリーズでも歌われる
タイトルの通り、
「こんな音楽を長いこと待っていたんだ」という気持ちを歌った1曲。
歌っているのはもちろんハンバート自身ですが、
そのままリスナーの気持ちにも重なります。
アコースティックギターと2人の声だけなのに、
最後にかけてじんわり高まっていく感じが心地よく、
「フォークってやっぱりいいな」と素直に思わせてくれる曲です。
こんな人におすすめ
・アコースティックサウンドが好きな人
・落ち着いて“音楽そのもの”を味わいたい人
⑦ 恋の顛末
── 大人の「別れ」を静かに受け入れるラブソング
- 収録:アルバム『丈夫な私たち』(2022)
タイトルの「顛末(てんまつ)」は、物事のいきさつ・行き着いた先という意味。
この曲では、終わってしまった恋を、
大きなドラマではなく、静かな日常の中で受け入れていく姿が描かれています。
- 「終わったことは終わったこと」
- わかっているけど、すぐには切り替えられない
そんな心の揺れが、淡々としたメロディにのって続きます。
失恋ソングなのに、極端に泣き叫んだりしません。
だからこそ、大人の恋愛をしてきた人ほど刺さる1曲です。
こんな人におすすめ
・最近、恋が終わった人
・元恋人を思い出してしまう夜がある人
・メンヘラ系ではない失恋ソングを探している人
⑧ 黄金のふたり
── 長く一緒にいる“ふたり”の、ささやかな祝福
- 収録:アルバム『丈夫な私たち』
タイトルからして、「長く連れ添う2人」への賛歌のような曲。
きらびやかなウェディングソングではなく、
日常の中で少しずつ積み上がってきた時間を「黄金」と呼んでいるような、あたたかい歌です。
夫婦デュオであるハンバートハンバートが歌うからこそ、
歌詞の一言一言に説得力があります。
こんな人におすすめ
・結婚している人、長く付き合っているカップル
・相手に「いつもありがとう」と言いたいけど、照れくさい人
⑨ 小さな声
── 「頑張れない自分」をそっと代弁してくれる曲
- 収録:バラードベスト『WORK』(2019)
- 同アルバムのために書き下ろされた新曲
アルバム『WORK』は、
ハンバートが「泣けるバラード」を中心に集めたセルフカバー+ライブ盤。
その中で唯一の新曲が「小さな声」です。
テーマは、
社会の「がんばれ」という圧に押しつぶされそうになっている人の気持ち。
- 誰にも本音を聞いてもらえない
- でも、叫ぶ元気もない
- だから「小さな声」でしか言えない
そんな、ギリギリの心をそっとすくいあげてくれます。
ミュージックビデオでは、
本人たちの自撮り縦動画を使って「窮屈な心象風景」が表現されており、
曲の世界観とぴったり重なります。
こんな人におすすめ
・仕事や介護、子育てでいっぱいいっぱいの人
・「もう頑張れない」と思っているのに、周りからは「もっと頑張れ」と言われる人
⑩ トンネル
── 暗闇の先に、かすかな光を見せてくれる曲
- 収録:12thアルバム『カーニバルの夢』(2024)
- ドキュメンタリー映画『大きな家』主題歌
タイトル通り、「トンネル」を人生の比喩にした曲。
- 先が見えない不安
- それでも一歩ずつ進むしかない現実
- ほんの少しだけ見えてくる光
こうした感情が、静かなバンドサウンドにのっています。
派手なサビで一気に盛り上がるタイプの曲ではありません。
けれど、聴き終わったあとに「もう少し、生きてみようかな」と思わせてくれる不思議な力があります。
こんな人におすすめ
・人生の転機にいる人
・仕事や家族のことで、先が見えないと感じている人
どうやって聴き始めるのがいい?
まずはベスト盤『ハンバート入門』を通しで
2025年発売の公式ベスト盤『ハンバート入門』には、
ここで紹介した曲のうち
- 笑ったり転んだり
- おなじ話
- 長いこと待っていたんだ
- 虎
- ぼくのお日さま
- がんばれ兄ちゃん
など、代表曲がぎゅっと詰まっています。
最初は細かいことを考えず、
通勤中や家事の合間に「アルバム丸ごと流す」のがおすすめです。
気に入った曲があったら、元のアルバムへ
- 家族感のある曲が好き → 『家族行進曲』
- しっとりバラード中心で聴きたい → 『WORK』
- 最近の“今っぽい”ハンバートを知りたい → 『丈夫な私たち』『カーニバルの夢』
こんな感じで、気に入った曲が入っているアルバムに逆戻りしていくと、
自然と「沼」にハマります。
余裕があればライブ映像・YouTubeも
公式YouTubeチャンネルには、
「がんばれ兄ちゃん」「ぼくのお日さま」「小さな声」などのMVが公開されています。
MCやライブレポの雰囲気も合わせてチェックすると、
「ただのミュージシャン」ではなく、
“隣に住んでいるちょっと不思議な夫婦”のような距離感になっていきます。
まとめ
ハンバートハンバートの音楽は、
派手なドラマや一発逆転の物語ではなく、
- うまくいかない日々
- それでも続いていく生活
- その中にある小さな幸せ
を、静かに、でもまっすぐに歌う音楽です。
「若い頃みたいに、恋だ友情だと騒ぐ感じじゃないんだよな…」
「でも、心のどこかでは誰かに寄りそってほしい」
そんな大人の心のすき間に、すっと入り込んでくるはず。
この記事を読み終えたら、まずは
「笑ったり転んだり」か「おなじ話」のどちらか1曲だけでいいので、
再生してみてください。
きっと、「あ、この夫婦、なんかいいな」と感じると思います。



