※本文中の事実関係は、報道や本人サイトの記載をもとにまとめています。
まず事実関係を整理:いつ・何が起きたのか?
衆院議員を辞職したタイミング
2025年9月8日、立憲民主党の衆議院議員だった馬場雄基さん(当時32歳)は、衆議院議長あてに辞職願を提出し、同日許可されました。
同じ日に立憲民主党へ離党届も提出し、翌9日には記者会見を開いて「11月の福島市長選に立候補する」考えを正式に表明しています。
なぜ辞職したのか(表向きの理由)
ニュースで伝えられた一番シンプルな理由は、
11月に行われる福島市長選挙に立候補するため
というものです。
衆院議員のまま「兼務」することはできませんから、市長選に本気で挑むためには、国会議員を辞める必要があります。この点は制度上、とてもストレートな理由です。
「立民を離党して無所属」になった本当の狙いは?
ここからが、この記事のメインテーマです。
本人が語る「無所属で挑む」決意
馬場さんは、自身の公式サイトで次のように書いています。
- 「熟慮の末に、衆議院議員の職を辞し、離党し、無所属として福島市長選挙に挑む決意を致しました。」
- 「見て見ぬふりは、私にはできません。」
- 「たとえ衆議院議員を辞してでも、すべてを投げ打ってでも、福島に住まう市民一人ひとりと希望溢れる福島の未来をつむぎあい、国をも動かす地域のトップリーダーになることを目指します。」
ここから読み取れるポイントを、わかりやすく整理すると、
- 政党の一員として「国政から」支える立場より、
- 福島市にどっぷり入り込んで「地域のトップ」として動きたい
- 政党の色を前面に出すより、「市民目線」を前面に出したい
という方向転換です。
「政党の延長線では変わらない」への問題意識
選挙情報サイト「選挙ドットコム」に掲載された馬場さんの文章では、こんな趣旨のことが語られています。
「嫌だなと思っている現職がいる。でも、対抗する側も結局は同じ政治信条、同じ政党の延長線上にある。
結局、市民が本当に求める“変化”がどこにもない。」
ここで馬場さんが問題視しているのは、
- 「与党か野党か」「自民か立憲か」という“政党の色分け”で選ぶ政治
- 顔ぶれは変わっても、政治の中身があまり変わってこなかった現実
です。
だからこそ、自分は政党の看板をいったん外し、
「立憲か自民か」ではなく、「福島市民がどんな未来を望むのか」を軸にしたい
というメッセージとして、「無所属で出馬する」という形を選んだ、と解釈できます。
なぜ「立憲の推薦候補」ではなくなったのか
今回の福島市長選では、現職の木幡市長を、国民民主・社民などが推薦し、さらに自民・立憲・公明の市単位の組織も「相乗り」で支援する構図になりました。
つまり、
- 立憲民主党としては、「現職・木幡市長」を支える側
- その一方で、馬場さんは「現職とは違う、市政の刷新」を掲げて出馬
という、立場の違いが生じます。
もし馬場さんが立憲に残ったまま市長選に出れば、
- 党本部や県連の方針との整合性
- 他の候補との関係
- 市議会での勢力バランス
など、いろいろな「しがらみ」が出てきます。
そこで馬場さんは、
- 一度、党を離れ
- 「政党ではなく、市民と向き合う」というメッセージを明確に出す
ために「離党+無所属出馬」という選択をした、と考えられます。
公式サイトでも「しがらみのない政治への挑戦」「市民一人ひとりの思いを力にかえ」といったフレーズが強調されており、これも無所属で挑む姿勢とつながっています。
「辞職」の裏にある、福島市への危機感
福島市で感じた「うつむき加減の空気」
公式サイトの決意表明には、こんな記述もあります。
- 福島市は、幼稚園から高校まで過ごした「青春の場所」
- 地元の仲間たちと対話を重ねる中で、「寂しい」「なんだかね」という声が増えていた
- 「まなざしの光が失われかけている」と危機感を抱いた
ここでいう「寂しい」「なんだかね」は、とてもあいまいですが、
- 人口減少
- 駅前の再開発の遅れ
- 若い世代の流出
- 熊の出没などの安全・環境問題
といったいろいろな課題が重なった、モヤモヤした空気を指していると考えられます。
実際に、福島市長選の解説記事でも、主な課題として
- 駅前再開発
- 人口減少への対応
- メガソーラーなどの環境問題
- クマ対策
などが挙げられています。
「国会から」では届きにくい手触り感
馬場さんは、国会議員として復興・環境・経産などの委員会で活動し、復興政策にも関わってきました。
しかし、
- 国政レベルの議論はどうしても抽象的になりがち
- 目の前の「駅前の空き店舗」「子どもの遊び場」「市内交通」といった課題には、市長や市役所の方がダイレクトに関与できる
というギャップもあります。
そのため、
「復興や福島の未来を本気で前に進めるには、市長という立場で現場に飛び込む方がいいのではないか」
という結論に、本人の中で徐々に固まっていったのだと考えられます。
本人も、
- 「たとえ衆議院議員を辞してでも、すべてを投げ打ってでも」
と書いているので、国会議員というポジションを手放すことの重さは理解した上で、「それでもやる」と覚悟した、ということになります。
「無所属での市長選」という戦い方
実際の選挙構図
2025年11月16日に投開票された福島市長選は、次の3人による戦いでした。
- 馬場雄基さん(33):無所属・新人・元立憲民主党衆院議員
- 木幡浩さん(65):現職・3選めざす・政党推薦多数
- 高橋翔さん(37):無所属・新人・会社経営
結果として、無所属新人の馬場さんが、3選を目指した現職らを破って初当選したと報じられています。
ここから分かるのは、
- 「政党が相乗りで支える現職」に対して
- 「無所属で、市民目線の刷新」を掲げた馬場さん
- という“継続か刷新か”の構図が、有権者にも届いた、ということです。
無所属だけど「政党と完全に無縁」ではない
一方で、共同通信などの報道によると、馬場さんは選挙戦で、自民・立民双方の一部議員とも連携していたとされています。
つまり、
- 表向きの立場:無所属の候補
- 実際の選挙戦:個々の議員レベルでは、自民・立民の一部が応援
という、やや複雑な構図です。
ここをどう見るかは、有権者の判断が分かれるポイントです。
- 「政党の公式な“推薦”や“公認”から距離を置きつつ、人としてのつながりは活かしている」と見ることもできるし
- 「結局は政党の力も借りているではないか」と感じる人もいるでしょう。
いずれにせよ、「政党ラベルではなく、市民目線で」というメッセージを前に出しながら、実務的には国政で築いたネットワークも活かしていく――そんな現実的なスタイルと言えます。
辞職と離党に対する評価:賛否それぞれの見方
「覚悟と責任感」を評価する声
ポジティブな評価としては、こんな見方があります。
- まだ若く、衆院議員2期目というキャリアを途中で投げてまで、地元の市長選に挑むのは、相当な覚悟がないとできない
- 「国会議員のバッジを守る」より、「自分の街に飛び込む」ことを選んだのは、地方に腰を据えたい本気度の表れ
- 震災を高校3年生で経験し、「福島から逃げない」と決めた原点からすると、筋が通っている
また、30代前半という若さで市長になれば、人口減少やまちづくりなど、長期的な視点で政策を組み立てることができます。
「途中で投げ出した」と見る厳しい声
一方で、批判的な見方も当然あります。
- 衆院議員として任期を全うする前に辞職したことについて、「国政を途中で投げ出した」と感じる人もいる
- 「国会より市長の方がやりがいがありそうだから」と見えてしまうと、「自分のキャリア優先では?」という疑念も生まれやすい
- 選挙戦やネット上では、「自民党との距離感」などをめぐって批判的な論評も出ています
政治家の進退は、どうしても「美談」と「批判」の両方が生まれます。
大事なのは、どの情報をもとに、自分なりの評価軸を持つか、という点です。
福島市長として、これから何を問われるのか
期待されていること
馬場さんは、市長として次のような方向性を掲げています。
- 「次世代文教都市」をつくる
- 子どもを起点に、教育・文化・人づくりからまちを豊かにしていく
- 若者や子育て世代が「住みたい」と思える福島市
- 福島の復興・エネルギー・環境の課題にも、国と渡り合える市長として取り組む
衆院議員としての経験と、松下政経塾での学びを、市政にどう落とし込むか――ここが腕の見せどころです。
市民がチェックすべきポイント
読者として、そして一人の有権者としては、今後こんな点を見ていくとよさそうです。
- 選挙で語った公約が、どこまで具体的な政策に変わるか
- 例えば、駅前再開発や子育て支援をどう進めるのか
- 無所属市長として、どのように市議会や政党と向き合うか
- 対立ばかりでも困るし、政党に流されても困る
- 市民との対話の場をどれだけ継続できるか
- 出馬前に「2,000人以上と対話した」と書いていましたが、それを市長になっても続けられるか
まとめ:辞職理由を一言で言うと?
最後に、この記事のテーマを一言でまとめます。
馬場雄基さんの「辞職理由」は、表向きには「福島市長選に出るため」。
その裏側には、
- 政党の枠を超え、市民目線で市政を刷新したいという思い
- 震災以来の「福島から逃げない」という個人的な覚悟
- 国政では届きにくい、足元のモヤモヤした空気を変えたいという危機感
があり、そのために
「立憲民主党を離党し、無所属で福島市長選に挑む」という選択をした――
というのが、今わかる範囲での答えと言えます。
もちろん、評価は人それぞれです。
「覚悟を買う」という見方もあれば、「任期途中の辞職はどうなのか」と問う声もあるでしょう。
大切なのは、
- 事実(いつ、何をしたか)
- 本人の言葉(なぜそう決めたのか)
- まわりの評価(賛成・反対両方)
をバランスよく押さえたうえで、
「自分だったら、この選択をどう評価するか?」
と、一度立ち止まって考えてみることです。



