「バーガーキング日本事業を売却」
「ゴールドマン・サックスに優先交渉権」
「買収額は700億円規模」
日本経済新聞の報道によると、バーガーキングの日本事業を持っている香港の投資ファンド「アフィニティ・エクイティ・パートナーズ」が、米金融大手のゴールドマン・サックスに日本事業の売却で優先交渉権を与えた、とされています。買収額は700億円規模。
しかもバーガーキングはここ数年で店舗数を急拡大していて、2025年11月時点で国内300店超(約312店舗予定)にまで増やしている段階です。
「え、今 伸びてるのに、なんで売るの?」
「ゴールドマンって聞くだけでなんか不安なんだけど…」
そんなモヤモヤを、ここで一度スッキリ整理していきます。
① 今、バーガーキングに何が起きているのか?
まずは状況をシンプルに。
ここでポイントなのが「優先交渉権」という言葉です。
「優先交渉権」ってなに?
ざっくり言うと、
「他の人より先に、じっくり話し合う権利」
です。
- ゴールドマンが一番手として交渉する権利を持っている
- ただし、まだ契約はサインしていない
- 条件次第では、交渉がまとまらない可能性もゼロではない
つまり現時点では、
「売却に向けた本気の話し合いが始まった」段階
と考えるのが現実的です。
② なぜ「今」売却なのか?3つの理由
「業績が悪いから売るの?」
と思うかもしれませんが、むしろ逆に近いです。
投資ファンドには「出口」の期限がある
アフィニティのような投資ファンドは、ざっくり言うとこんなビジネスモデルです。
- お金を集める(年金基金や富裕層などから)
- 将来伸びそうな事業を買う
- 数年〜10年くらいかけて育てる(店舗を増やす・利益体質にするなど)
- 価値が高くなったところで誰かに売る
- 売った利益を、出資者にリターンとして返す
この④の「売る」ことを「エグジット(出口)」と呼びます。
ファンドには運用期間が決まっているので、いつかは必ず「出口」を探さなければいけません。
実際、アフィニティは2022年ごろにも、韓国・日本のバーガーキング事業の売却を検討していたと報じられています。
今回の売却話は、
「バーガーキング日本事業がいい感じに育ったので、そろそろ出口(売却)に動こう」
というファンド側のタイミングと考えるとしっくりきます。
バーガーキング日本事業が「かなり育った」
バーガーキング日本は、この数年で一気に店舗数を増やしました。
- 2019年5月末:77店舗
- 2025年10月末:約300店舗
- 2025年11月20日時点見込み:312店舗
さらに、求人情報やプレスリリースでは、
「2028年末までに国内600店舗・売上600億円を目指す」
という目標も出ています。
つまり、
- 店舗は約4倍
- 成長ストーリーも描きやすい
- まだ伸びしろもある
という、「売却するにはちょうどいいタイミング」に見えるわけです。
「売る側」にとっても「今が高く売れるチャンス」
- 物価・人件費が上がる中でも、バーガーキングは積極出店で存在感を高めてきた
- 将来の不確実性(人口減少・競争激化)を考えると、
- 「これ以上育てる」リスク
- 「今売って利益を確定する」メリット
を天秤にかけることになります。
ファンドの視点で見ると、
「これだけ店も増えたし、ブランドも浸透してきた。
今なら高く買ってくれるプレーヤーがいる。じゃあ売ろう」
という判断になっても不思議ではありません。
③ ゴールドマン・サックスって何者?バーガーキングとの「昔の縁」
ゴールドマン・サックスは、世界的に有名な投資銀行・金融グループです。
企業の
- 買収
- 上場
- 資金調達
などを手伝ったり、自ら投資したりする「お金のプロ集団」です。
実はゴールドマンは、バーガーキングとまったくの無関係というわけでもありません。
2000年代前半、本体のバーガーキングは、TPG・ベインキャピタル・ゴールドマン・サックス系ファンドの連合に買収されていた時期があります。
つまり、
「バーガーキングというビジネスをどう伸ばすか」
「ハンバーガーチェーンの価値をどう高めるか」
という経験・知見を、過去にも持っていたプレーヤーの一つです。
④ ゴールドマンの狙いは?3つのポイントで整理
では、ゴールドマンはなぜバーガーキング日本に目をつけたのでしょうか。
狙い① 伸びしろのある外食ブランドへの投資
さきほど見たように、バーガーキング日本は
- 店舗数が急増(77 → 300超)
- 2028年に600店舗を目標
という「成長中のブランド」です。
投資家の目線で言えば、
「すでにある程度育っている」
+
「まだ伸びしろもある」
という、おいしいタイミングの案件です。
ゴールドマンは、飲食やサービス業への投資経験も多く、店舗網の拡大や収益性の改善に関するノウハウを持っているとされています。
狙い② 将来の「出口(エグジット)」を見据えた投資
ゴールドマン自身も「投資家」である以上、いつかは出口戦略を考えます。
予想されるシナリオとしては、例えば…
- 日本バーガーキングの上場(IPO)
- ビーケージャパンホールディングスを数年かけてさらに成長させ、
- 日本の株式市場に上場させて株を売却
- 別の戦略的パートナーへの売却
- 大手外食グループや他の投資ファンドに、さらに高い値段で売る
- 一部だけ売って、残りを持ち続けるハイブリッド型
- 上場後も一部株式を持ち続け、配当や株価上昇を狙う
もちろん、現時点ではあくまで可能性レベルの話ですが、
ゴールドマンがこうした「出口」を意識して動いている可能性は高いと考えられます。
狙い③ 日本の外食市場 × インフレ時代の「安定キャッシュフロー」
ハンバーガーチェーンは、
- 日常的に使われる
- 小さいけれど安定した売上が全国で積み上がる
という、キャッシュフロー(お金の流れ)が読みやすいビジネスです。
インフレが続くなかで、
- ある程度価格転嫁もしやすく
- デリバリー・テイクアウトなど、多様な売り方ができ
- ロイヤル顧客がつきやすい
という特徴があるため、
「景気に左右されすぎない、安定した収益源」
としても魅力的に見えます。
⑤ 売却されたら、私たちの生活はどう変わる?
では、バーガーキングユーザーとして、いちばん気になるポイントです。
店舗は減る?なくなる?
現時点の情報を見る限り、
- ゴールドマンは「事業成長を支える」と報じられており
- 2028年600店舗という目標も、すぐに変えるとは考えにくい
ので、
「日本からバーガーキングが消える」というシナリオは、少なくとも短期的には考えにくい
と言えます。
むしろ、
- 駅前やショッピングモールなど、今までなかったエリアへの出店
- 既存店のリニューアル
など、店舗網の強化に動く可能性のほうが高いでしょう。
クーポンや価格はどうなる?
ネットではすでに、
「クーポン改悪されるんじゃ…」
「値上げラッシュ来そう」
と不安の声も出ています。
これは正直なところ、
- 原材料費や人件費の高騰
- 他チェーンとの価格競争
なども絡むので、「売却のせい」とは切り分けて考える必要があります。
ただし、投資家が入る以上、
- 収益性アップ
- 値付けの見直し
が行われる可能性はあります。
現実的な変化としては、
- 期間限定の「激安クーポン」は少しメリハリをつける
- セットメニューやサイズの構成を変える
- 原価の高いメニューは見直す
…といった「じわじわ系の調整」が考えられます。
メニューや味は変わる?
味については、本社(レストラン・ブランズ・インターナショナル=RBI)側のブランド管理があるため、いきなり別物になる可能性は低いです。
とはいえ、
- サイドメニューの入れ替え
- 地域限定メニューの強化
- デリバリー向けセットの拡充
など、「どの商品に力を入れるか」は変わるかもしれません。
「ワッパーがワッパーじゃなくなる」
みたいな極端な変化より、
「サイドやセット構成・キャンペーンの中身が、少しずつ変わっていく」
と考えたほうが現実的です。
働いている人たち(社員・アルバイト)は?
求人情報を見ると、ビーケージャパンホールディングスは
- 2028年600店舗を目標に人材採用を強化
- 店長・SV・本部職などキャリアパスも用意
といった方針を打ち出しています。
オーナーが変わった後も、
- 出店を続けるなら、むしろ人材ニーズは高い
- 処遇改善や教育体制の強化に投資が回る可能性もある
ので、一概に「悪くなる」とは言えません。
一方で、投資家目線の効率化(シフト管理、店舗統廃合など)が進む可能性はあるため、働く人にはプラス・マイナス両方の変化が出るでしょう。
⑥ 今後のシナリオ:バーガーキングはどうなっていく?
ここからはあくまで予想ですが、考えられるパターンを整理しておきます。
シナリオA:ゴールドマンが買収 → 成長投資 → 上場
- ゴールドマンが正式に買収
- 数年間、出店やデジタル投資で事業を拡大
- 日本バーガーキング(ビーケージャパンホールディングス)として株式上場
- 一部株を売って、投資を回収
→ 「日本発のバーガーキング上場企業」が誕生する可能性も。
シナリオB:ゴールドマンが育てたあと、別の外食グループへ売却
- ゴールドマンが収益性・店舗網を整える
- 日本の大手外食チェーンや海外グループなどにまとめて売却
→ 「外食コンビネーション企業」の一部になるという形。
シナリオC:交渉がまとまらず、別の投資家・企業にバトンタッチ
- 優先交渉権はあっても、条件が折り合わなければ破談もあり得ます。
- その場合、
- 別のファンド
- 戦略的投資家(外食グループなど)
が買い手として浮上する可能性もあります。
⑦ ニュースを見るときの「落ち着くポイント」
最後に、このニュースを追うときに意識しておきたいポイントをまとめます。
- 今はまだ「優先交渉」の段階
- 「売却決定」ではない
- 条件次第で変わる余地もある
- バーガーキングは撤退ではなく「オーナーチェンジ」
- 日本から消える話ではない(少なくとも現時点の報道では)
- ファンド → ファンドへのバトンタッチは珍しくない
- 「育ての親」が役割を終えて、「次の持ち主」に渡すだけ
- 感覚的には「オーナーが変わるマンション」や「新しい大家さん」くらいに捉えるとイメージしやすい
- 私たちにとっての一番のチェックポイントは「実際の変化」
- 店舗数(新規オープン・閉店)
- 価格・クーポン
- メニュー構成、キャンペーンの傾向
ニュースの見出しだけを見ると不安になりますが、大事なのは
「誰がお金を出しているか」より
「その結果、サービスや商品が良くなるのか、悪くなるのか」
という点です。
まとめ
少なくとも今の段階では、
「バーガーキングが日本からいなくなる」というより、
「バーガーキングが、次のステージに進むための大きな節目」
と考えておくと、落ち着いてニュースを追えるはずです。
これからしばらくは、
- 公式発表
- 店舗数の推移
- キャンペーンやクーポンの変化
などをチェックしながら、「バーガーキングの次の一手」を見守っていきたいですね。
