元宙組トップスター・凰稀かなめさん。
すらっとした長身と中性的な雰囲気で、「王子様そのもの」と言われた男役さんです。
そんな凰稀かなめさんを語るとき、外せないのが「相手役」の存在。
この記事では、
- 公式のトップ娘役としての“相手役”
- 作品ごとに見た「物語の中の相手役」
- ファンから見た“もう一人の相棒”
という3つの視点から、「宙組トップ時代」のコンビと作品を、年表形式でわかりやすく整理していきます。
凰稀かなめの「公式相手役」は誰?
宙組トップ就任と、ただ一人の相手役
2012年7月2日付で、凰稀かなめさんは宙組6代目トップスターに就任しました。
そのとき同時に、花組から実咲凜音さん(愛称:みりおん)が組替えとなり、宙組トップ娘役=公式の「相手役」に決まりました。
お披露目公演は、2012年の
『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(宝塚大劇場・東京宝塚劇場・のちに博多座公演)です。
つまり、
「宝塚歌劇団の“公式な意味”での凰稀かなめの相手役」は、
実咲凜音さんただ一人
ということになります。
ファンの間では、このトップコンビは2人の愛称から「てるみり(てる×みりおん)」と呼ばれ、
トップお披露目から退団公演まで、全8公演を共にしました。
宙組トップ時代の「てるみり」作品年表
まずは、「凰稀かなめ×実咲凜音」トップコンビとしての主な作品を、ざっと表で整理します。
◆てるみり・作品ざっくり年表(宙組トップ時代)
| 年 | 公演名(本公演・ツアー) | 凰稀かなめの役 | 実咲凜音の役 | 関係性のイメージ |
|---|---|---|---|---|
| 2012 | 銀河英雄伝説@TAKARAZUKA(大劇場・東京・博多座) | ラインハルト・フォン・ローエングラム | ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ | 若き皇帝と、冷静で賢い政治パートナー&妻候補 |
| 2013 | モンテ・クリスト伯/Amour de 99!! | エドモン・ダンテス | メルセデス | 無実の罪で引き裂かれる婚約者同士の悲恋 |
| 2013 | うたかたの恋/Amour de 99!!(全国ツアー) | 皇太子ルドルフ | マリー・ヴェッツェラ | 死へ向かう一途な恋人同士の悲劇 |
| 2013 | 風と共に去りぬ(大劇場・東京) | レット・バトラー | メラニー・ハミルトン | 公式相手役はメラニー役だが、物語上の“恋の相手”は別にいる少し変則的な関係 |
| 2014 | ロバート・キャパ 魂の記録/シトラスの風II(中日) | アンドレ・フリードマン(ロバート・キャパ) | ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー) | 戦場を共に駆ける写真家カップル |
| 2014 | ベルサイユのばら-オスカル編-(大劇場・東京) | オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ | ロザリー | 「身分違いの姉と妹」のような関係。ロマンスは別軸 |
| 2014–15 | 白夜の誓い-グスタフIII世、誇り高き王の戦い-/PHOENIX 宝塚!!(大劇場・東京) | グスタフIII世 | ソフィア・マグダレーナ・ア・ダンマルク | 政略結婚から始まる王と王妃の大人の愛 |
(※このほかに、トークイベントや特別出演などもありますが、ここでは「トップコンビ主演の主な舞台作品」に絞っています)
ここからは、1作品ずつ、
「どんな物語で」「2人の関係がどう描かれたのか」を、
もう少しゆっくり見ていきます。
お披露目作『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』の「てるみり」
若き皇帝と、知性派ヒロインの始まり
- 凰稀かなめ:ラインハルト・フォン・ローエングラム
- 実咲凜音:ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ(ヒルダ)
原作は田中芳樹さんの人気SF小説『銀河英雄伝説』。
宝塚版では、銀河帝国側の若き皇帝・ラインハルトと、その片腕とも言えるヒルダの関係が印象的に描かれました。
ヒルダは、
- 冷静で頭が良い
- 自分の意見をはっきり言える
- それでも礼儀と品を失わない
という、「知性派ヒロイン」タイプ。
凰稀ラインハルトの金髪×軍服のビジュアルに、
実咲ヒルダのクラシカルなドレスと落ち着いた雰囲気が重なって、
「大人の帝国カップル」の雰囲気が強く出ていました。
お披露目公演としては、
- 2人が“甘く見つめ合う場面”より
- 政治や戦略を語り合う“頭脳派コンビ”
としての印象が強く、
「ただの恋人」ではなく「人生と戦いを共にするパートナー」というイメージで、
てるみりコンビのスタートを飾った作品でした。
『モンテ・クリスト伯』:引き裂かれた婚約者同士の悲恋
エドモンとメルセデス、明るさと悲劇の落差
- 凰稀かなめ:エドモン・ダンテス
- 実咲凜音:メルセデス(エドモンの婚約者)
デュマ原作『モンテ・クリスト伯』を宝塚向けに再構成した作品です。
物語序盤の2人は、
- 若くてまっすぐな船乗りエドモン
- 彼を心から慕うメルセデス
という、とてもフレッシュなカップル。
しかし、エドモンは陰謀に巻き込まれ冤罪で投獄され、
やがて復讐者モンテ・クリスト伯として別人のように変わり果てて戻ってきます。
この作品の「てるみり」の魅力は、
- 序盤のまぶしい幸せ
- プロポーズ前後のシーンは、
見ているこちらまで照れるほどピュア。
- プロポーズ前後のシーンは、
- 再会シーンの切なさ
- 復讐者となった彼と、かつての婚約者として対峙するメルセデス。
- 「もうあの頃には戻れない」という空気が、
凰稀さんのクールさと、実咲さんの感情豊かな芝居で浮き彫りになります。
「お披露目の知性派カップル」だった『銀英伝』から一転、
人間くさい愛と復讐のドラマで、
感情表現の幅広さを見せてくれた作品でした。
全国ツアー『うたかたの恋』:命を賭けた一途な恋
皇太子ルドルフとマリー・ヴェッツェラ
- 凰稀かなめ:皇太子ルドルフ
- 実咲凜音:マリー・ヴェッツェラ(男爵令嬢)
オーストリア皇太子ルドルフと、若きマリーの「心中事件」をモチーフにした作品です。
ここでの「てるみり」は、とにかく
「全力で恋をして、全力で散っていく二人」
という印象が強いカップル。
- 凰稀ルドルフは、
皇太子としての重圧と孤独を抱える、影のある青年。 - 実咲マリーは、
彼にまっすぐ恋をして、最後まで彼だけを見つめる少女。
特に有名なのが、
- 手紙を読み上げる場面
- 最後に「二人だけの世界」に閉じこもっていく流れ
など、「止められない恋の暴走」を描いたシーンです。
お披露目・大劇場作品で見せた知性派&ロマンチックなコンビ像から、
地方ツアーで一気に「破滅型ロマンス」へと振り切ったことで、
てるみりコンビの「悲恋も似合う二人」という側面が強く印象付けられました。
『風と共に去りぬ』:公式相手役と物語上の相手役がズレる作品
レットの恋の相手は?という少しややこしい構図
- 凰稀かなめ:レット・バトラー
- メインヒロイン(スカーレット・オハラ):朝夏まなと/七海ひろき(男役が女役を担当)
- 実咲凜音:メラニー・ハミルトン(レットの“恋の相手”ではない)
原作『風と共に去りぬ』では、
- レットの恋の相手:スカーレット
- メラニー:スカーレットの義理の妹・アシュレイの妻
という関係です。
宝塚宙組版では、
- スカーレット役を朝夏まなとさん&七海ひろきさんという男役2人が役替わりで担当
- 実咲さんは、穏やかで献身的なメラニーを演じました
そのため、
- 公式の「相手役」=トップ娘役・実咲さん
- 物語の中での“恋の相手”=スカーレット(演じるのは男役)
という、少しややこしい構図になっていました。
この作品での「てるみり」の魅力は、
- レットとメラニーという、
「静かな理解者同士」の関係 - 派手な恋愛ではなく、
人としての信頼・敬意のにじむやりとり
にあります。
「恋人役ではなくても、トップコンビとして舞台を支える」という、
宝塚ならではのコンビのあり方が見える作品と言えます。
『ロバート・キャパ 魂の記録』:戦場を共に駆けるパートナー
キャパとゲルダ、仕事も恋も“戦友”な二人
- 凰稀かなめ:アンドレ・フリードマン(ロバート・キャパ)
- 実咲凜音:ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー)
実在した報道写真家ロバート・キャパと、その恋人であり同業者のゲルダ・タロー。
スペイン内戦の戦場を駆け抜けた2人の物語です。
ここでの2人の関係は、
- 恋人
- 仕事のパートナー
- 同じ“死のリスク”を背負う戦友
が全部重なったような、
とても濃い「大人のコンビ」でした。
- 凰稀キャパの、危ういほどの情熱と自由さ
- 実咲ゲルダの、彼に振り回されながらも同じ場所へ飛び込んでいく強さ
がぶつかり合い、
「ただの恋愛ものでは終わらない、人生ごとぶつかるカップル」として描かれています。
この作品は中日劇場公演でしたが、
「もっと大劇場でも観たかった」という声が今も多い公演です。
『ベルサイユのばら-オスカル編-』:ロマンスは別軸でも、確かな存在感
オスカルとロザリー、“姉妹のような”支え合い
- 凰稀かなめ:オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
- 実咲凜音:ロザリー(ロザリー・ラ・モリエール)
『ベルサイユのばら』オスカル編では、
- オスカルのロマンスの中心は、アンドレとの関係
- 実咲さん演じるロザリーは、オスカルを慕う若い娘
という構図です。
このため、ここでも
- 公式相手役=実咲さん
- 物語上の“恋の相手”=別キャラクター
という形になります。
それでもロザリーは、
- オスカルを尊敬し、ついていく
- 革命の中で「生きる選択」をする
という重要な役どころ。
てるみりとしては、
- 「戦場を共にするキャパ&ゲルダ」のような恋人同士ではなく
- 「時代の中を、一歩引いたところから見つめる若者と、それを導く存在」
という関係性で、
また新しいコンビ像を見せてくれました。
退団公演『白夜の誓い/PHOENIX 宝塚!!』:王と王妃としてのラストダンス
グスタフIII世とソフィア、政略結婚から始まる愛
- 凰稀かなめ:グスタフIII世(スウェーデン王)
- 実咲凜音:ソフィア・マグダレーナ・ア・ダンマルク(王妃)
スウェーデン王グスタフIII世の生涯を描いた作品です。
2人の関係は、最初から恋愛ではなく政略結婚。
- 王としての理想と現実に揺れるグスタフ
- 異国の王家に嫁ぎ、孤独を抱えながらも気高く立つソフィア
物語が進むにつれ、
2人の間には「愛」というよりも、
- 責任を分かち合う同志
- 国を背負う者同士の信頼
に近い感情が育っていきます。
退団公演でこのような「静かな大人の愛」を描いたのは、
凰稀かなめというスターの持つ、
- クールさ
- 精神的な強さ
- 「最後まで戦い抜く」イメージ
と、とてもよく合っていました。
ショー『PHOENIX 宝塚!!』では、
大羽根を背負った2人の姿がしっかりと刻まれ、
てるみりコンビとしてのフィナーレを飾りました。
「相手役」は娘役だけじゃない?同期・緒月遠麻との“もう一つのコンビ”
ここまで「娘役トップとしての相手役=実咲凜音さん」を中心に見てきましたが、
宝塚ファンの中には、
「凰稀かなめの相手役は、実咲凜音より同期の緒月遠麻さんでは?」
と冗談めかして語る人もいます。
- 雪組時代から仲の良い同期
- 宙組トップ就任の際、緒月遠麻さんも宙組に組替え
- 多くの作品で「親友」「側近」「ライバル」として、凰稀さんのすぐ横に立つ役どころを担当
という事情から、
- 舞台上では「娘役としての相手役=実咲凜音」
- 男役同士の“相棒”的な相手役=緒月遠麻
という、
二重のコンビ構造が生まれていたとも言えます。
これは数字では説明しづらい部分ですが、
「凰稀かなめの魅力は、娘役とのロマンスだけでなく、
男役同士の“バディ感”にもある」という、
ファンならではの視点です。
まとめ
最後に、「歴代相手役」という視点から見た凰稀かなめの魅力を、3つに整理してみます。
① どんなタイプのヒロインとも“絵になる”バランス感覚
- 知性派ヒロイン(ヒルダ)
- 一途な恋人(メルセデス/マリー)
- 献身的で穏やかな女性(メラニー)
- 戦場を共にする写真家(ゲルダ)
- 革命に翻弄される娘(ロザリー)
- 異国の王妃(ソフィア)
実咲凜音さんが演じたヒロイン像は、作品ごとにかなりバラバラです。
それでも、
- 凰稀かなめの「少し影のある王子様感」
- 実咲凜音の「まっすぐで品のある娘役らしさ」
が組み合わさると、
毎回ちゃんと別のカップル像に見えるのが、このコンビのすごいところです。
② 「甘い恋」だけでなく、「人生のパートナー」を描ける
- 『銀英伝』の政治パートナーとしてのヒルダ
- 『ロバート・キャパ』の戦友としてのゲルダ
- 『白夜の誓い』の王と王妃としてのソフィア
これらは、「恋愛」よりも、
- 共に戦う
- 共に国や使命を背負う
といった要素が強い関係性です。
凰稀かなめは、そういった「人生ごと背中を預け合うパートナー関係」を演じるのがとても得意なスターと言えます。
③ 娘役以外にも“相棒”がいる、多層的なコンビの形
- 公式相手役=実咲凜音(てるみり)
- 男役の相棒=同期の緒月遠麻
- 作品ごとのロマンス相手が別にいることも(スカーレット、アンドレ など)
こうした多層的なコンビ構造は、
「ただ一組のトップコンビだけで押し切る」のとは違う面白さがあります。
凰稀かなめの宙組トップ時代は、
「一人のスターを、さまざまな“相手役”が取り囲んで、
いろいろな顔を引き出していった時代」
と表現できるかもしれません。
おわりに
「凰稀かなめの歴代相手役まとめ」として、
宙組トップ時代の名コンビ作品を振り返ってきました。
- 公式の相手役=実咲凜音(てるみり)
- 作品ごとの“物語上の相手役”
- 同期や男役仲間との“もう一つのコンビ”
こうした視点で作品を見直してみると、
すでに観たことのある公演も、また違った楽しみ方ができるはずです。
もし配信や映像、ブルーレイなどで観る機会があれば、
ぜひ
「今日はヒロインとの関係性をじっくり追ってみよう」
という視点で、
凰稀かなめさんの舞台を味わってみてください。





