まず結論からいうと、
渡辺倫果選手の「点数が低い」のは「ミスだらけだから」ではなく、
- 回転不足ぎみのジャンプで「思ったより伸びなかった」
- PCS(演技構成点)がトップ勢より少し低い
- そもそも他の選手の出来が良すぎた
という「数字のマジック」に近いところが大きいです。
ここから、ゆっくり噛み砕いて見ていきますね。
全日本選手権2025・渡辺倫果は何位?点数は?
まずは事実整理から。
最終順位と合計点
2025年の全日本フィギュアスケート選手権(女子シングル)での
渡辺倫果選手の結果はこうでした。
- 最終順位:7位
- 合計得点:211.52点
- ショート(SP):71.36点
- フリー(FS):140.16点
優勝は坂本花織選手の234.36点、2位が島田麻央選手の228.08点。
つまり、
トップとの差は約23点。
そして、5位・6位の選手とは「ほぼ団子状態」で、スコアもかなり接近しています。
「7位だからダメだった」
というより、
「表彰台争いの一団から、ほんの少しこぼれた」
くらいのニュアンスに近いイメージです。
SPとFSでどんな滑りだったの?
ショートプログラム(SP)71.36点
SPの内訳はこんな感じです。
- 技術点(TES):39.01
- 演技構成点(PCS):32.35
- 減点(転倒など):0
主なジャンプ構成は、
- 3回転アクセル(3A)
- 3回転ルッツ+3回転トウループ(3Lz+3T)
- 3回転ループ(3Lo)
という、かなり攻めた構成です。
ポイントはここ:
- 3Aは踏ん張って着氷 → GOE(出来栄え点)はほぼプラスなし(+0.11)
- 3Lz+3Tは、トウループが回転不足(「<」判定)でGOEがマイナス(-0.76)
見た目には
「全部立ったし、めちゃくちゃ盛り上がってたのに、なんで点数伸びないの?」
と感じるのですが、ジャッジから見ると
- 3A:冷静に見れば「ギリギリ立った」レベル → 大きな加点はつかない
- 3Lz+3T:回転不足判定で加点どころか減点
となり、技術点が思ったほど爆発しなかった、という形です。
フリー(FS)140.16点
FSの内訳はこちら。
- 技術点(TES):76.08
- 演技構成点(PCS):64.08
- 減点:0(転倒なし)
目を引くのはやはり、
- 3A+3T コンビネーション
- 単発の3A
このトリプルアクセル2本は、どちらもGOEでプラス評価。
3A+3Tは合計13.34点、単発3Aは9.94点と、しっかり稼いでいます。
一方で、その後のジャンプでこんな「細かい痛手」が出ています。
- 後半の3Lzに「q」判定(やや回転不足)+GOEマイナス
- 2A+1Eu+3Sのコンビで、3Sに「q」判定かつ大きめのマイナスGOE(-1.78)
- スピンのひとつが「V」付き(レベル要件を一部満たせず)で、少し基礎点ダウン
転倒はしていないのに、
細かいところで地味に点数を削られている、という状態です。
そもそもフィギュアの点数ってどうつくの?
「なんでこんなに細かく点が動くの?」というところも、
ざっくり復習しておきましょう。
① TES(技術点)
ジャンプ・スピン・ステップなど
「技の難しさ+出来栄え」で決まる点数です。
- それぞれに「基礎点」がある
- そこに、出来栄えを表す「GOE(-5〜+5)」がつく
- 回転不足があると、
- 基礎点を下げられたり
- GOEが大きくマイナスになりやすい
② PCS(演技構成点)
簡単に言うと、
スケーティングのうまさ
音楽の表現力
プログラム全体の完成度
などをまとめて採点する「見た目」「芸術点」のようなものです。
- トップ選手はPCSで70点台〜80点近く出ることも
- ここでの数点の差が、トータルでは大きい差になります
③ 「q」や「<」って何?
プロトコル(採点表)を見ると、
ジャンプの横に
- 「q」
- 「<」
- 「<<」
といった記号がついています。
ざっくりいうと、
- q … 90度くらいの回転不足(ギリギリセーフ寄りだけど減点されやすい)
- < … 90度以上の回転不足(しっかり回り切れてない)
- << … 半回転以上足りない(転倒並みに大きく減点)
リンクではきれいに見えても、
スロー再生で見ると「着氷がちょっと足りない」
→ ジャッジはそこをきっちり見ています。
「点数が低い」と感じる3つの理由
では本題。
なぜ多くのファンが
「え、倫果ちゃんもっと出てよくない?」
と感じたのか。
理由① 回転不足ぎみで「跳んだ割に点が伸びてない」
SP・FSどちらも、
- 3回転アクセルを含む高難度構成
- 転倒もなく、大きなミスもない
という「成功した印象」が強い演技です。
ただ、採点表を見ると、
- SPの3Lz+3T → 3Tに「<」+GOEマイナス
- FSの後半3Lz・3Sなど → 「q」判定+マイナスGOE
となっていて、
「難しいジャンプを跳んだのに、
思ったほど点数が増えていない」
という、見た目と点数のギャップが生まれています。
学校のテストでいうと、
- 難しい応用問題には全部チャレンジしている
- でも途中式でちょっとずつ減点を食らっている
…みたいな感じです。
理由② PCSでトップ勢と差がついた
PCS(演技構成点)をざっくり比べると、
- 坂本花織選手
- SP:37.43
- FS:76.49
- 千葉百音・青木祐奈・島田麻央なども70点前後のPCSを獲得
- 渡辺倫果選手
- SP:32.35
- FS:64.08
となっていて、
トータルで10点以上のPCS差がついています。
ここは
- スケーティングの伸びやかさ
- プログラム全体のまとまり
- 細かい表現やポジションの美しさ
など、「経験」と「積み重ね」が出やすい部分。
倫果選手も決して低いわけではなく、
世界クラスの選手としては標準〜やや上くらいですが、
全日本のトップ勢があまりに高いので、
「技術では並んでいるのに、
PCSで一歩届かない」
という構図になっています。
理由③ 他の選手の出来が良すぎた(=相対評価の世界)
今回の全日本女子は、
- 坂本花織:王者の貫禄で安定の高得点
- 島田麻央:4回転+3Aで超高難度構成
- 千葉百音・青木祐奈:PCSも高く、ミス少なめ
と、「ちょっとしたミスでは順位が落ちる」超・ハイレベルな戦いでした。
その中で、
- アクセル2本成功という大きな武器
- でも回転不足ぎみのジャンプがいくつか
という倫果選手は、
「内容としては素晴らしいのに、
数字で並べると7位に収まってしまう」
という、なんとも切ないポジションに置かれたわけです。
ジャンプの内訳を、もう少しだけ具体的に
「点数が低い」と感じたファン向けに、
ちょっとだけマニアック目の解説もしておきます。
SP:3Aと3Lz+3Tの“伸びきらなさ”
SPで大きな武器となるのは、
- 3A(基礎点8.00)
- 3Lz+3Tコンビネーション
ですが、採点はこうでした。
- 3A → 8.11点(ほぼ基礎点+α)
- 3Lz+3T< → 8.50点(回転不足+マイナスGOE)
もしこれが、
- 3A:GOE+2〜+3
- 3Lz+3T:回転しっかり+プラスGOE
という形で決まっていれば、SPだけで2〜3点以上は上積みが見込めた計算になります。
FS:3Aは神、でも後半コンビで失点
FSは冒頭の
- 3A+3T(13.34点)
- 3A(9.94点)
が本当に素晴らしくて、TESの土台を一気に引き上げました。
ただ、その後の
- 3Lzq(回転不足ぎみ+マイナスGOE)
- 2A+1Eu+3Sq(3Sがq判定+大きなマイナスGOE)
で、本来取りたい点を取り切れていないのも事実です。
感覚的には、
「3A2本でドーンと稼いだ点を、
後半の細かいところで少しずつ返してしまった」
というイメージに近いです。
それでも今回の倫果は“収穫だらけ”
ネガティブな話ばかりだと気が滅入るので、
「むしろここがすごい」ポイントも整理しておきます。
① 3Aを2本そろえた、という事実
- 全日本という大舞台
- オリンピック選考もかかった大事な試合
- プレッシャーMAX
この中で、
- SPで3A成功
- FSで3Aを2本ともきっちり降りる
というのは、とんでもなく大きい収穫です。
「3Aが武器」と言われる選手でも、
- 回転不足
- 転倒
- 抜け(2回転になる)
などで苦しむことは珍しくありません。
その中で、
「回転不足ぎみな面はあるけれど、
とりあえずちゃんと降りて、点になっている」
という今回の内容は、
今後に向けても大きな自信材料になります。
② 課題が“ハッキリした”という意味での前進
今回のプロトコルを見ると、
課題はかなり明確です。
- コンビネーションの後半ジャンプで回転不足が出やすい
- 後半の3S・3Lzでq判定が出やすい
- スピンでレベルを取り切れていない箇所がある(V)
これって、裏を返せば
「直すポイントがハッキリ見えている」
ということでもあります。
- 3Aの成功率アップ
- 後半ジャンプの回転の質アップ
- スピンのレベル取り
ここが揃ってくれば、同じ構成でも一気に+10点前後伸びる可能性があります。
- 今回:211.52点
- 伸びしろ込み:220点台中盤〜後半も十分狙える
という未来も、まったく非現実的ではありません。
ファンとしての「正しいガッカリの仕方」
応援している選手の点数が伸びないと、
どうしても
「ジャッジしぶくない?」
「運営、倫果に厳しすぎ」
と言いたくなりますよね。
でも、今回の採点を冷静に見ると、
- 3Aはしっかり評価されている
- 回転不足がついたジャンプにはちゃんとマイナス
- PCSも、トップ勢ほどではないが決して低くない
と、大きな不公平があるようには見えません。
なので、ファンとしては、
- 「今回は回転不足が多めに出ちゃったなぁ…」
- 「でも3A2本そろったのはマジですごい」
- 「来季、PCSと回転の質が上がったときが本番だな」
くらいのテンションで見てあげるのが、
選手にとっても一番うれしい「ガッカリの仕方」かなと思います。
まとめ:点数は低く見えるけど、“内容はむしろ希望だらけ”
整理すると、
- 渡辺倫果の全日本2025は7位・211.52点
- SP・FSともに3Aを武器に攻めた構成
- ただし
- コンビネーションの後半ジャンプに回転不足
- 後半ジャンプの「q」判定
- PCSでトップ勢と10点前後の差
- 結果として「内容のわりに点数が低く見える」という現象が起きた
というのが、今回の「真相」です。
最後に
ここまで真面目に採点表を読み解いてきましたが、
テレビ前の私の個人的採点はというと──
- 感動点:100点
- 3Aに叫んじゃった度:120点
- もう一回リピート再生したくなる度:無限大ポイント
……と、完全にフィギュア素人の“どんぶり勘定採点”なので、
ジャッジパネルには一生入れそうにない

