2026年1月8日、写真週刊誌系メディア「SmartFLASH」の記事がYahoo!ニュースなどを通じて配信されました。内容は、
- 菅直人元首相(1946年10月10日生まれ・79歳)に「認知症」の症状があり
- 介護保険の区分で「要介護3」と認定されている
- 東日本大震災(2011年3月11日)のことを「覚えていない」と家族に話している
といった現在の様子を、夫人が語ったというものです。
ネット上ではこのニュースが拡散し、
「震災対応の当時の首相が、3.11を忘れてしまったのか」
と、驚きや複雑な気持ちの声が多く上がっています。
ただし、
- 「認知症」
- 「要介護3」
- 「震災を覚えていない」
という言葉だけが一人歩きすると、誤解や偏見を生みやすいテーマでもあります。
そこで本記事では、
- 菅直人元首相のこれまでの歩み(とくに震災との関わり)
- 報道で伝えられた「現在の状態」
- 認知症・要介護3とはそもそも何か
- 「震災を忘れた」という表現をどう理解すればよいのか
を整理していきます。
菅直人元首相とは?かんたんプロフィール
まずは、本人がどんな人だったのかをざっくり振り返っておきます。
- 1946年(昭和21年)10月10日生まれ
- 弁理士を経て政治家に
- 衆議院議員を14期つとめたベテラン政治家
- 厚生大臣、副総理、財務大臣などを歴任
- 2010年6月〜2011年9月まで第94代内閣総理大臣を務めた
そして、多くの人の記憶に残っているのが、
- 2011年3月11日に起きた「東日本大震災」と
- その後の「福島第一原発事故」への対応
です。震災当日は首相官邸で記者会見を行い、その後、福島第一原発をヘリで視察に行ったことなどが、今も賛否を含めて語られています。
また、立憲民主党の最高顧問などを務めた後、2024年の衆院選に立候補せず、年齢などを理由に政界引退を表明しています。
つまり、
「菅直人=3.11当時の総理大臣」
というイメージは、本人の政治家人生の中でも非常に大きな位置を占めている出来事だと言えます。
報道で伝えられた「現在の菅直人氏」
報道内容を、できるだけ冷静・中立に整理します。
SmartFLASHの記事およびそれを引用した各メディアによると、夫人の証言として次のような点が紹介されています(要約)。
- すでに「要介護3」の認定を受けている
- 「認知症」が始まっていると説明
- 自宅(エコカンハウスと呼ばれる住まい)で家族と穏やかに暮らしている
- 東日本大震災のことについて尋ねても
- 「覚えていない」と答えることがある
記事によれば、夫人は
- 夫の記憶の抜けが多くなっていること
- 介護面で大変な部分もあること
などを語りつつも、「家族と暮らす穏やかな日々」であることも強調しています。
ここで大事なのは、
「東日本大震災を“軽んじている”から忘れた」のではなく
「病気の影響で、大事な出来事さえ思い出せなくなることがある」
という文脈で語られている、という点です。
「東日本大震災を忘れた?」という言葉の受け止め方
タイトルにもある「大震災忘れた?」という言葉は、とても強い表現です。
私たち多くの人にとって、2011年3月11日の東日本大震災は、決して忘れられない出来事です。地震・津波・原発事故によって、甚大な被害が出ました。
そのときの首相だった人物が、15年たった今、
「そのことを覚えていない」
と言っている――
この事実だけを切り取ると、
- 「無責任だ」
- 「あれほどのことを忘れるなんてあり得ない」
と感じる人が出てくるのも自然なことです。
しかし、ここでいったん立ち止まって考えたいのが、
「認知症と記憶」の関係
です。
認知症では、
- ついさっきの会話や
- 自分の経験の一部
が、ぽっかり抜け落ちるように忘れてしまうことがよくあります。これは、本人の「気持ち」や「反省」の有無とは切り離された、脳の病気としての症状です。
例えば、
- 家族にとって一生忘れたくない大事な思い出
- 本人が若いころ何度も話していたエピソード
であっても、病気が進むと、その出来事自体は思い出せなくなります。
ですから、
「震災を忘れた=震災を軽く見ている」
という短絡的な図式ではなく、
「病気の進行によって、大事な記憶さえ保てなくなっている」
と理解する必要があります。
「それでも、あのときの責任はどうなるのか」と感じる人もいるかもしれません。
ただ、「責任」や「評価」は、当時の行動や記録にもとづいて社会全体で考えることができます。一方、今の本人の健康状態をどう見るかはまったく別の話です。
そもそも「認知症」とはどんな病気?
ここからは、報道の前提になっている「認知症」そのものを、簡単な言葉で整理します。
厚生労働省などの説明では、「認知症」とは、
- 脳の病気や障害が原因で
- 記憶・判断力・注意力などの認知機能が低下し
- 日常生活に支障が出ている状態
を指します。
よくある症状としては、
- 同じ話を何度も繰り返す
- さっきの食事の内容を覚えていない
- 今日が何月何日なのか分からなくなる
- お金の管理や薬の管理がうまくできなくなる
- 場所や時間、人の関係が分からなくなる
といったことがあります。
ここで大切なのは、
- 「もの忘れ」=すべて認知症ではない
- 認知症は性格の問題ではなく「病気」である
- 誰でも高齢になれば、なる可能性がある
という点です。
日本では、65歳以上の高齢者のうち「5人に1人」が認知症になると見込まれている、というデータもあります。
つまり、
「特別な人だけがなる病気」ではなく
「長生きすれば誰にでも起こりうる状態」
だと言えます。
「要介護3」とはどんな状態?
次に、「要介護3」という言葉についても整理しておきましょう。
日本の介護保険制度では、介護がどのくらい必要かを
- 要支援1・2
- 要介護1〜5
の7段階に分けています。数字が大きくなるほど、手助けが必要な時間も長く、状態も重くなります。
そのなかで要介護3はざっくり言うと、
「日常生活のほとんどに介護が必要な状態」
です。
具体的には、介護情報サイトなどでは、次のような例が挙げられています。
- 立ち上がりや歩行が、自力だけでは難しい
- トイレや入浴、着替えに介助が必要
- 身だしなみを自分で整えるのが難しい
- 認知症による理解力の低下や、徘徊・妄想などの症状が見られることもある
- 常時、見守りや介護が必要になることが多い
要介護3になると、
- 自宅での介護を続ける場合、家族の負担がとても大きくなる
- 特別養護老人ホーム(特養)など、入所施設の利用を検討する段階
と説明されることが多いです。
報道では、菅氏は「要介護3」でありながら、今も自宅で家族と暮らしている様子が伝えられています。
これは、
- 家族の支え
- 介護サービスの利用
などが組み合わさって、在宅生活がなんとか維持されている、というイメージに近いでしょう。
家族の介護と「元首相」という肩書き
今回のニュースで、もう一つ考えさせられるのが、
「一人の高齢者」としての菅直人さん
と
「元首相」という肩書き
のギャップです。
介護の現場の目線で見れば、
- 認知症の高齢者
- 要介護3の家族を支える配偶者
という、とても「ありふれた」姿でもあります。
実際、
- 配偶者が「最近、何も覚えていなくて困っている」とこぼす
- 本人は「そんなことあったっけ?」と笑っている
という光景は、どこの家庭でも起こりうるものです。
しかし、菅氏の場合は、
- 「3.11当時の首相」
- 「原発事故の対応の当事者」
という、歴史に残るような役割を担った人物であるがゆえに、
「そんな人が震災を覚えていないなんて…」
という強い感情が生まれます。
ここで大切なのは、
- 「歴史の検証」と「個人の老い」を分けて考えること
- 当時の判断の是非は、資料や証言に基づいて冷静に議論する
- 一方で、「今」の本人は病気を抱えた高齢者として、尊厳をもって接する
という視点だと思います。
震災の記憶を「社会として」どう受け継ぐか
認知症が進むと、本人の中で
- どんなに重大な経験であっても
- ある日、ふっと記憶の糸が切れるように
思い出せなくなることがあります。
もし菅氏が、東日本大震災の当時のことを詳しく語れなくなったとしても、
- 当時の会見映像
- 国会の議事録
- 官邸の記録や、現場で働いた人の証言
などは、これからも残り続けます。
つまり、
「震災の記憶を残す役割」は、もはや本人一人の記憶ではなく
「社会全体で受け継いでいく段階」に入っている
とも言えます。
私たちにできることは、
- 2011年3月11日に何が起こったのかを、ときどき振り返る
- 被災地や原発事故の教訓を、次の世代に伝える
- そして、当時の当事者が高齢になった今、その「老い」もまた社会で支える
といった、地道な姿勢ではないでしょうか。
今回のニュースから学べること
最後に、今回の「菅直人元首相 要介護3&認知症」の報道から、私たちが受け取れるポイントをまとめます。
- どんな立場の人でも、年をとれば認知症になる可能性がある
- 元首相であっても例外ではありません。
- 認知症は「だらしなさ」ではなく「脳の病気」です。
- 「要介護3」は、生活のほとんどに介護が必要な状態
- 立ち上がりや歩行、トイレや入浴、着替えなど、多くの場面で介助がいります。
- 家族の負担は大きく、介護サービスの活用が不可欠です。
- 「大震災を覚えていない」は、病気の症状として理解すべき
- 「忘れた=軽く見ている」とは限りません。
- 認知症では、大事な出来事でさえ思い出せなくなることがあります。
- 歴史の検証と、個人の老いへのまなざしは分けて考える
- 当時の対応への評価や批判は、記録にもとづいて続けることができます。
- その一方で、今の本人は「介護を必要とする一人の高齢者」として尊重したいところです。
- 震災の記憶を守る責任は、すでに「社会全体」に移っている
- 当事者の記憶だけに頼らず、資料・証言・教育を通じて、次の世代につないでいく必要があります。
おわりに
「菅直人元首相の現在…要介護3&認知症で大震災忘れた?」
というショッキングなタイトルの裏側には、
- 一人の高齢者とその家族の、静かな介護の日常
- 認知症という病気の現実
- そして、震災の記憶をどう社会で受け継ぐかという大きなテーマ
が隠れています。
怒りや違和感だけで終わらせるのではなく、
「もし自分の家族が同じ立場になったらどうだろう」
「震災の記憶を、自分はどう子ども世代に伝えていこうか」
と、一度立ち止まって考えるきっかけにしてもいいのかもしれません。

