この記事では、
「暗号資産105銘柄に金商法適用へ」「税率20%」って結局どういうこと?
をしっかり解説します。
今、何が起きているのか?ニュースのざっくり整理
2025年11月16日、朝日新聞などの報道をきっかけに、こんなニュースが一気に広がりました。
「金融庁が、ビットコインなど105銘柄の暗号資産を金商法の ‘金融商品’ として扱う方針を固めた」
ポイントは3つです。
- 対象は日本の取引所で扱っている105銘柄
ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など、日本の交換業者が扱っているコインが対象になる見込みです。 - 金商法(金融商品取引法)の規制の枠に入れる方向
これまで主に「資金決済法」で扱ってきた暗号資産を、株や投資信託に近い「金融商品」としてみなす案が進んでいます。 - 税金を20%の分離課税にする案も“検討中”
「株と同じ税率20%の申告分離課税にしたらどうか」という議論も、今回の議論とセットで進んでいます。ただし、まだ決定ではありません。
この記事タイトルにもあるように、
- どのコインが対象になりそうか
- 本当に税率20%になるのか
- 投資家にとってプラスなの?マイナスなの?
という点を、順番に見ていきます。
そもそも「金商法」って何?暗号資産は今までどう扱われてきた?
まずは土台の話からです。
金商法=株や投資信託のルールブック
金商法(金融商品取引法)は、一言でいうと
「株・投資信託・デリバティブなどを扱うためのルールブック」
です。
- ウソの説明をして売ってはいけない
- インサイダー取引は禁止
- 投資家をだまさないよう、情報をきちんと開示する
といったルールが書いてあります。
いまの暗号資産は「資金決済法」で管理
これまで日本では、暗号資産(仮想通貨)は主に資金決済法という別の法律で扱われてきました。
- 交換業者の登録制度
- 顧客資産の分別管理
- 不正流出などへの対応
といった「決済手段」としての面を重視したルールが中心です。
一方で、投資商品としての細かい規制(インサイダー取引の禁止など)は弱かったという指摘もありました。
これからは「投資商品」としても本格的に管理?
金融庁のワーキンググループでは、
暗号資産も、投資性が強いものについては金商法の枠組みでしっかり規制しよう
という方向性が、2025年の会合で繰り返し議論されてきました。
今回ニュースになった「105銘柄に金商法適用へ」というのは、
その議論がいよいよ具体的な形になってきた、というイメージです。
「105銘柄」ってどのコイン?自分の保有通貨は含まれる?
一番気になるのがここですよね。
105銘柄=日本の取引所で扱われているコイン群
報道によれば、今回の対象は
国内の暗号資産交換業者が取り扱うビットコインなど105銘柄
とされています。
つまり、
…など、日本で登録済みの交換業者が取り扱っている銘柄がカウントされ、その合計が「105」になっている、というイメージです。
代表的にはこのあたりのメジャー通貨が含まれる見込み
ニュース記事でも、具体例として名前が挙がっているのは、
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
などの主要銘柄です。
実際には、各取引所が扱っている日本円建てペアの銘柄がほぼ対象になるとみられますが、正式なリストはまだ公表されていません(記事執筆時点)。
自分のコインが対象かを確認する簡単な方法
現時点(2025年11月)でできる確認方法は、シンプルです。
- 自分が使っている国内取引所を開く
- 「取扱銘柄一覧」「銘柄リスト」といったページをチェック
- その一覧に載っているコインは、今回の「105銘柄」に含まれる可能性が高い
逆に、
- 海外取引所専用の草コイン
- DEX(分散型取引所)でしか扱われていないトークン
などは、この「105銘柄」の枠には含まれない可能性が高いと考えられます。
(ただし、将来どう拡大されるかは別問題なので、引き続きニュースのチェックは必要です)
金商法適用で何が変わる?投資家にとってのメリット・デメリット
「ルールが厳しくなる」ということは、投資家にとって
いいこともあれば、ちょっと窮屈になることもあるということです。
情報開示がぐっと増える(メリット)
報道によれば、105銘柄については、
- 発行者の有無やプロジェクトの性質
- 使っているブロックチェーン技術の特徴
- 価格変動のリスク
- 取扱い開始・廃止、破産などの重要事実
といった情報の開示が義務化される方向とされています。
これにより、
- なんとなく雰囲気で買う
- 情報が不透明なまま「ノリ」で投資する
といった、“よくわからないけど買ってしまう”リスクは減りやすくなります。
インサイダー取引の禁止(メリット)
ニュースでは、「インサイダー規制」の対象になることも報じられています。
ざっくり言うと、
プロジェクトの内部情報を知っている人が、
未公開の重要情報を使ってこっそり売買するのは禁止
ということです。
株式と同じように、
- 「上場廃止の予定を知っていた人が、事前に売り抜ける」
- 「大型提携の情報を事前に知っていた人が、発表前に買い集める」
といった行為が規制される方向なので、
一部の“インサイダー”だけが得をする不公平感は減ると期待できます。
事業者側の負担増 → 上場ハードルが上がる可能性(デメリット)
一方で、交換業者にとっては、
- 情報開示のコスト
- 監査・コンプライアンス体制の強化
- 金商法に対応した社内体制づくり
などの負担が増えることになります。
その結果として、
- 「簡単には新しい銘柄を上場させにくくなる」
- 「流動性が低いマイナー銘柄の上場が見送りになる」
といったことも起きるかもしれません。
投資家目線で言うと、
- 変なコインが減る → 安全性アップ
- でも、面白い新興プロジェクトが日本で上場しにくくなる可能性 → ワクワク感は少し減る
という、トレードオフも考えられます。
「税率20%」は本当?今の税金と何が変わるの?
ここが一番センシティブなところなので、
「決まったこと」と「まだ検討中のこと」を分けて整理します。
現在の税金のルール(2025年時点)
いまの日本では、暗号資産の利益は
雑所得として総合課税
扱いです。
- 他の所得(給与など)と合算
- 所得税+住民税を合わせて最大約55%になることもある
この「税率が高すぎる」「計算が複雑すぎる」というのが、
ずっと前から投資家の不満ポイントでした。
いま議論されている案:申告分離課税20%前後
今回の報道でも、
金商法上の金融商品として扱うことで、株式と同じ申告分離課税(約20%)の適用が検討されている
と伝えられています。
- 株・FXと同じように、
「暗号資産だけで税金計算 → 税率20.315%」にする案 - 損失繰越、交換時課税の繰延なども含めて、2026年度の税制改正要望の中で議論されています。
重要:まだ「決定」ではない
ここが誤解されやすいポイントです。
- 金融庁のワーキンググループ → 制度の方向性を議論
- 与党税制調査会 → 税制改正の内容を年末に決める
- その後、法案として国会提出・可決 → 実際の施行はさらに先
という流れになります。
つまり、2025年11月時点では
「20%になる『可能性』はかなり高まってきたが、
まだ “確定” ではない」
という状態です。
「もう20%になったんだ!」と勘違いして申告をサボるとアウトなので、ここは本当に要注意です。
いつから変わる?スケジュール感をざっくり整理
報道や金融庁資料から読み取れる大まかなタイムラインはこんなイメージです。
実際に
- 「いつの利益から20%になるのか」
- 「どの取引が金商法の対象になるのか」
といった細かい話は、今後の法案・政令・ガイドラインで決まっていきます。
今のうちに個人投資家がやっておきたい3つの準備
「じゃあ、いま何をしておけばいいの?」という実務的な部分を、
あくまで一般的な心構えレベルでまとめます。
※ここからは投資助言ではなく、一般的な情報提供のつもりで読んでください。
1. 取引履歴をきれいに整理しておく
今後、
- 分離課税
- 損失繰越
- 交換時課税の繰延
などが導入される可能性がありますが、
そのときに重要になるのが過去の取引履歴です。
- 各取引所から、取引履歴CSVをダウンロード
- 年度ごとにフォルダ分けして保存
- DeFiやNFTも含め、できるだけ一元管理
これだけでも、将来の税制変更にかなり対応しやすくなります。
2. 「駆け込み売り」をする前に、落ち着いてシミュレーション
「どうせ20%になるなら、それまでガチホでいいんじゃ?」
「逆に今のうちに損出しした方が得?」
…といろいろ考えてしまいますが、税制が“確定していない”段階で極端な行動を取るのはリスクもあります。
- 自分の年収ゾーンだと、今の総合課税でも税率はそこまで高くない場合も
- 将来20%になっても、他の要素(損失繰越など)で有利・不利が変わる可能性も
冷静に「自分の場合はどうか?」をざっくりシミュレーションしてから判断すると良いでしょう。
3. 情報ソースを「法律寄り」に変えていく
これからは、
- インフルエンサーのXポストだけ
- 「◯◯コイン爆上げ!」系の動画だけ
に頼ると、制度面で置いていかれるリスクが高まります。
今後は、
といった“制度より”の情報源も、チェックしておくと安心です。
よくありそうな疑問Q&A(ざっくり版)
最後に、よく出そうな疑問を超ざっくりQ&Aで。
Q1. 海外取引所やDEXでの取引も金商法の対象になる?
A.
今回ニュースになっている「105銘柄」は、日本の登録業者が扱っている銘柄がベースです。
海外取引所やDEXそのものが、直接すぐ金商法の枠に入るわけではありません。
ただし、日本居住者が海外取引所を使う税務・法務リスクは、これとは別に存在します。
ここは税理士・専門家に相談レベルの話になってきます。
Q2. NFTやゲーム内トークンも20%になるの?
A.
現時点では、「105銘柄」「金商法適用」と報じられているのは、
暗号資産交換業者が扱う暗号資産(いわゆる仮想通貨)が中心です。
NFTやゲームトークンの扱いは、
別途議論・整理が進む可能性がありますが、まだはっきりしていません。
Q3. もう2025年分の確定申告から20%でいいの?
A.
ダメです。
2025年11月時点では、まだ
- 金商法改正も
- 税制改正も
決まっていません。
2025年分の申告は、現行ルール(雑所得・総合課税)で行う必要があります。
まとめ
この記事のポイントを最後にギュッとまとめます。
といった姿勢が、これからますます重要になってきます。
暗号資産は、これまで「グレーっぽい投資」のイメージが強かったかもしれません。
しかし今、日本では
「ちゃんとした金融商品として扱おう」
という流れが一気に加速しています。
その分、
- 遊び半分で手を出すのではなく
- ルールを理解したうえで「大人の投資」として付き合う
ことが、これからの暗号資産投資には求められていきそうです。

