北海道白老町で進んでいるメガソーラー計画。
その住民説明会が「非公開」で行われる予定だったところに、住民が強く反発し、11月30日の説明会は中止になりました。
ニュースの見出しには、
「意図が見え見え」
という住民側の声も出てきます。
私たちの電気料金には「再エネ賦課金(さいエネふかきん)」という名目で、再エネを支えるお金が上乗せされています。
この記事では、
- 白老町で何が起きているのか
- 「意図が見え見え」と言われるポイントはどこか
- 私たちの電気代に乗っている「再エネ賦課金」とどう関係するのか
を整理してみます。
白老町メガソーラー計画で何が起きているのか
白老町とメガソーラー
白老町は、苫小牧の近く、太平洋側にある町です。
実は以前から、町内にはメガソーラー(大規模太陽光発電所)がいくつも作られてきました。
今回ニュースになっているのは、新たに進んでいる「6つのメガソーラー計画」です。
テレビ局の報道によると、
- 白老町では6つのメガソーラー計画が進行中
- 生活圏に近く、土砂崩れの心配があるとして
- 地元住民が「反対の協議会」をつくり、計画に反対している
と伝えられています。
問題になった「住民説明会」
11月30日に予定されていたのが、このメガソーラー計画についての住民説明会です。
ところが、この説明会は
- 「非公開」で行う
- 一般の住民や報道は入れない
- ごく一部の関係者だけで実施する
といった運用になると伝えられ、そこに住民側が強く反発しました。
その結果、説明会自体が中止に。
ニュースやSNSでは、住民の声として
「意図が見え見えだ」
「本当に住民の声を聞く気があるのか」
といったコメントも紹介されています。
そもそも「メガソーラー」とは何か?
メガソーラーとは、とても大きな規模の太陽光発電所のことです。
家庭の屋根に乗っている太陽光パネルが「ミニサイズ」だとすると、その何百倍、何千倍もの広さのパネルを並べるイメージです。
でも、トラブルも多い
一方で、全国各地でメガソーラーをめぐるトラブルも増えています。
代表的なのは、
などです。
白老町でも、まさに
生活圏に近く、土砂崩れの心配がある
という理由で、住民が反対協議会をつくっています。
住民が「意図が見え見え」と感じた3つのポイント
「意図が見え見え」という言葉には、
「本当の狙いがわかってしまう」
「隠そうとしてもバレバレだ」
というニュアンスがありますよね。
今回のケースで、住民がそう感じてしまったポイントを、ニュースや一般的な事例から整理すると、おおよそ次の3つにまとめられます。
① 説明会が「非公開」
まず一番大きいのは、説明会が非公開だったことです。
- 「住民のための説明会」と言いつつ
- 一般の住民やメディアの傍聴を認めない
- 誰が何を言ったか、外からは分からない
という形だと、
「後で『説明しましたよ』と言うためだけのアリバイ作りでは?」
「本音で議論する気がないのでは?」
と疑われても無理はありません。
SNSでも「報道非公開」「意図が見え見え」といった批判の声が紹介されています。
② 生活圏のすぐそばで「6カ所分」進んでいるのに…
白老町では、6つのメガソーラー計画が同時に進んでいると報じられています。
規模の大きな事業がいくつも並行して進むのに、
- 事業者や行政が、どれだけ丁寧に情報を出しているか
- 住民の不安に、どこまで正面から答えているか
は、非常に重要なポイントです。
ところが、
- 台風や大雨が増えている時代に、土砂崩れが心配される場所で
- 生活圏の近くに、次々とメガソーラーが計画されているのに
- 説明会は非公開で、中止になってしまった
という流れを見ると、
「安全性や生活への影響の話は、ちゃんとしたくないのかな…」
と感じる人が出てくるのも自然です。
③ 誰が得をして、誰が負担しているのかが見えない
再生可能エネルギーの大規模事業は、多くの場合、
という構図で成り立っています。
「地球のため」「脱炭素のため」と言いつつ、実際には
という状態だと、住民の側から見て
「意図が見え見え」
「結局、誰のための再エネなの?」
と感じてしまうのも、理解しやすいかもしれません。
「再エネ賦課金」ってそもそも何?
ここで、一度ニュースから少し離れて、再エネ賦課金について整理しておきましょう。
再エネ賦課金の正式名称と中身
再エネ賦課金の正式名称は、
再生可能エネルギー発電促進賦課金
と言います。
かんたんに言うと、
「太陽光や風力など、再エネで発電された電気を、
電力会社が決まった価格で必ず買い取るための費用を、
私たち利用者が電気料金に上乗せして支払う仕組み」
です。
仕組みのポイントは3つ。
- 再エネで発電した電気は、電力会社が一定の価格・一定の期間買い取る(固定価格買取制度=FIT)
- その買い取りに必要なお金は、「再エネ賦課金」として全国の利用者から集める
- 単価(1kWhあたり何円か)は、毎年度、国(経産大臣)が決める
つまり、私たちが毎月払っている電気料金の一部が、再エネ事業者の収入を支えるお金になっている、ということです。
北海道電力エリアの具体例
北海道電力の公表資料を見ると、
2023年度 → 2024年度で、再エネ賦課金の負担が大きく増えていることが分かります。
- 低圧(一般家庭など):
1kWhあたり 1.40円 → 3.49円 に増加
単純化して言えば、
電気を100kWh使うと
再エネ賦課金だけで 140円 → 349円 くらいになる
イメージです(実際の請求は税込み・契約内容などで変わりますが、増え方の感覚として)。
電気代が「高くなった」と感じる理由の一つに、
この再エネ賦課金の上昇があると言われています。
メガソーラーと再エネ賦課金の関係
では、今回の白老町のメガソーラー計画と、私たちの再エネ賦課金はどうつながるのでしょうか。
再エネ賦課金があるから、事業者は投資しやすい
再エネ賦課金は、裏を返せば、
「再エネで発電した電気は、一定期間、決まった値段で必ず買ってもらえる」
という約束を事業者に与える仕組みです。
そのため、
- 金融機関からお金を借りやすくなる
- 長期の収入がある程度読めるので、大規模な投資がしやすい
というメリットがあります。
つまり、全国でメガソーラーが増えている背景には、
- 地球温暖化対策
- エネルギー自給率アップ
といった大きな目的に加えて、
- 「制度として儲かる構造」が用意されている
という現実の面もあるわけです。
負担は全国民、リスクは地元…という構図
ここで改めて整理すると、
- 建設・運営の利益:主に事業者(と投資家)
- 災害リスク・景観の変化・生活環境への影響:地元住民
- 買取費用の一部(再エネ賦課金):電気を使う全国民
という形になります。
この構図が、今回のように
- 「説明会は非公開」
- 「生活圏のすぐそばで6カ所も進む」
- 「電気代は上がる一方」
という状況とセットで見えてしまうと、
「意図が見え見えだ」
「住民のことより、制度を利用したビジネスが優先されているのでは?」
と感じる人が出てくるのも、ある意味で自然です。
地元で再エネ計画が出たときにチェックしたいポイント
最後に、今回の白老町のニュースをきっかけに、
私たちがニュースを読むとき・自分の地域で再エネ計画が出たときに、どこを見ればいいかを整理しておきます。
まずチェックしたい6つの項目
- 「どこに」作るのか(場所と地形)
- 斜面か、平地か
- 住宅地や学校、川、道路との距離はどうか
- 土砂災害・洪水などのハザードマップと照らし合わせてどうか
- 「どれくらいの規模」なのか
- 出力(○MW)
- 面積(○ヘクタール)
- 一般家庭○○世帯分、といった目安
- 「誰が事業者」なのか
- 地元企業なのか、全国規模の会社なのか、投資ファンドなのか
- 過去にトラブルの報道がないか
- 「どんなプロセス」で住民説明が行われているか
- 説明会は公開か非公開か
- 事前の告知方法(広報紙・ホームページ・回覧板など)は十分か
- 説明資料は一般にも公開されているか
- 「災害時・撤去時」の計画がどうなっているか
- 豪雨・地震・土砂災害が起きたときの想定
- 設備の寿命が来たとき、誰がどのお金で撤去するのか
- 「再エネ賦課金との関係」
- この事業が、固定価格買取制度(FIT/FIP)の対象なのか
- つまり「全国民の電気料金」がどこまで支えている仕組みなのか
おわりに
白老町のメガソーラー説明会中止のニュースは、
- 再エネという「正しいこと」のように見えるテーマの裏で
- 誰が説明し、誰が決め、誰が負担し、誰が得をするのか
という、とても現実的な問題を浮かび上がらせました。
「意図が見え見え」という言葉は、
裏を返せば、
「ちゃんと説明してくれれば、理解しようという気持ちはある」
というメッセージでもあります。
- 再エネ賦課金という仕組みで、私たちはすでにお金の面では再エネを支えている
- だからこそ、計画の中身や安全性については、納得いくまで説明を受ける権利がある
