広末涼子さんに、罰金70万円 の略式命令――。
ニュースを見て、
「え、185キロも出して追突して70万円で終わり?」
「逆に、有名人だから重くされたんじゃ?」
と、いろいろな声が出ています。
この記事では、
- そもそもどんな事故だったのか
- 「過失運転致傷」と「過失傷害」の違い
- 一般的な罰金の相場
- 70万円は「安い?高い?」
を、法律のルールと実際の運用から整理していきます。
まず事実整理:どんな事故で、何の罪だったの?
新東名高速での追突事故
報道によると、ポイントはおおまかに次のとおりです。
- 事故は 2025年4月、静岡県掛川市の新東名高速道路(上り線のトンネル内)で起きた
- 広末さんの車は、時速185キロ というかなりのスピードで走行していた
- その状態で 大型トレーラーに追突し、さらに壁にも衝突
- 同乗していた男性が 骨折のケガ を負った
- 2025年12月22日、「過失運転致傷」の罪で略式起訴
- 2025年12月23日付で、掛川簡易裁判所が 罰金70万円の略式命令
- 2026年1月6日、罰金70万円という内容が報道で明らかになった
ここで重要なのは、罪名が「過失運転致傷」 だという点です。
「過失傷害」で起訴されたわけではない
→ 正式には「自動車運転処罰法」の 過失運転致死傷罪(過失運転致傷)
です。
「病院での傷害事件」はどうなったの?
この事故のあと、病院で看護師にケガをさせたとして「傷害」の疑いで逮捕された件も報じられていました。
その「傷害事件」については、最終的に不起訴処分 となっています。
今回の 罰金70万円 は、あくまで
新東名での追突事故
+
同乗者に骨折のケガを負わせた
この部分に対する 「過失運転致傷」の刑事罰 です。
「過失運転致傷」と「過失傷害」はどこが違う?
ブログタイトルでは「過失傷害」と書かれがちですが、法律的にはまったく別の条文です。
過失運転致死傷(今回の罪)
自動車事故のときによく出てくるのが、自動車運転死傷行為処罰法5条 の「過失運転致死傷」です。条文はざっくりいうと、こういう内容です。
自動車の運転で注意を怠り、人を死傷させたら、
7年以下の拘禁刑(懲役・禁錮が一本化されたもの) または
100万円以下の罰金
ポイントはここです。
- 車の運転中のミス(前方不注意・スピード違反など) で人をケガさせたときに適用
- 罰金は 最大100万円
- 場合によっては 実刑(刑務所)もありうる かなり重い罪
そして実務上、人が亡くなっていない「致傷」の事故で、示談がまとまっている場合 は、比較的軽めの処分(罰金刑・執行猶予付き判決など)になることも多いとされています。
過失傷害
一方、刑法209条の「過失傷害」 は、車に限らない「うっかりケガをさせた」ケース全般が対象です。例えば、
- スポーツ中の危険なタックル
- 自転車で歩行者にぶつかる
- 日常生活での不注意によるケガ
などが典型例です。
刑法209条はこう定めています。
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金または科料
つまり、
- 過失運転致死傷 … 車の運転で人を死傷させる → 罰金上限 100万円
- 過失傷害 … 車に限らずうっかりケガさせる → 罰金上限 30万円
で、まったく別枠 なんですね。
今回の広末さんのケースは
車の運転中の事故 → 自動車運転処罰法の「過失運転致傷」
なので、本当は「過失傷害」ではなく「過失運転致傷」の事案になります。
交通事故の「過失運転致傷」罰金の相場はどれくらい?
では本題です。
「過失運転致傷」での罰金の“だいたいの目安” はどれくらいなのでしょうか。
法律上の上限
さきほど触れたとおり、法律上は
100万円以下の罰金(または7年以下の拘禁刑)
が上限です。
ただ、実際の裁判や略式命令では、ケースごとに
- ケガの重さ(全治何日か/骨折かどうか)
- 被害者の人数
- 過去の違反歴・事故歴
- スピード違反などの程度
- 被害者との示談がまとまっているか
- 反省・謝罪の状況
などが総合的に見られて、具体的な金額が決まります。
弁護士サイトなどで紹介されている「目安」
交通事故・刑事事件を扱う弁護士事務所の解説では、だいたい次のような書き方がされています。
- 軽傷で示談も早くまとまる 場合
→ 「過失運転致傷」で 30万~100万円程度の罰金が目安 - 被害が大きい(重い後遺症・死亡など)
→ 罰金では済まず、執行猶予付きの禁錮刑や実刑 になることも - 弁護士サイトの具体例
- 子どもに全治90日のケガ → 罰金70万円 の例
- 軽傷の事故 → 罰金10万円 の例 など
このあたりから見ると、
人身事故で“骨折レベル”のケガ → 罰金50~80万円前後におさまるケースも多い
というイメージがつかめます。
では、罰金70万円は「安い?高い?」を考えてみる
ここからが、みなさんが一番気になっているポイントですね。
法律の枠で見ると
まず、法律上の最大は100万円。
その中で 70万円 というのは、
- 上限100万円のうち、7割のライン
- 「すごく軽い」というより、やや重め~中の上くらい
という位置づけになります。
さきほどの弁護士サイトの目安(30~100万円)や実例(全治90日で70万円)と比べても、相場の範囲内で、むしろ高め寄り と言ってよさそうです。
事故の内容から見るとどうか
ただし、今回の事故の中身を考えると、感覚的にはモヤモヤする人も多いと思います。
- 時速185キロ という、かなり極端なスピード違反
- 高速道路のトンネル内という、事故になれば大惨事にもなりうる場所
- 実際に同乗者が 骨折のケガ
こうした事情だけを聞くと、
「もっと重い刑罰でもいいのでは?」
と感じる人がいるのも当然だと思います。
一方で、
- 被害者が死亡しているわけではない(「致傷」レベル)
- 被害者が同乗者1人にとどまっている(報道ベース)
- 示談が成立している可能性
- 初犯であること
- 事故後の対応・反省の姿勢
など、加害者側にとって有利な事情(「情状」と呼ばれます)があったと考えられます。
こうした事情を全部ならして見たとき、
「実刑ではなく罰金刑」+「金額は相場の中でもやや重め」
という判断になった、とみるのが自然でしょう。
世間感情とのギャップ
多くの人が感じるギャップは、ここにあります。
- 法律上は
→「人が亡くなっていない、示談もある → 罰金70万なら相場の範囲内」 - 感情的には
→「185キロで走って人にケガ → 70万で済むの?命が軽すぎない?」
日本の刑事裁判では、「結果の重さ」や「過失の程度」だけでなく、示談の有無・反省・社会的制裁なども総合的に考慮 されます。
特に芸能人の場合は、事故により
- CM契約の終了
- 出演作の差し替え・中止
- イメージダウンによる仕事の喪失
など、「仕事面のダメージ」が非常に大きく、裁判所がこれを 「社会的制裁」としてある程度評価する こともあります。
つまり、
お金の額だけで「軽い・重い」を判断できない
→ 「法の世界の評価」と「世間感情」のあいだにギャップが出やすい
という構図があるわけです。
「有名人だから甘い/厳しい」は本当?
SNSではよく、
- 「芸能人だから甘くされたんじゃ?」
- 「逆に、見せしめで普通の人より重くされてない?」
という声が出ます。
実際のところ、刑事裁判で“有名人だから”量刑が変わる、ということは原則としてありません。
裁判所が見るのはあくまで、
- 事故の内容(スピード・現場の状況・過失の程度)
- ケガの重さ・被害者の人数
- 示談の有無
- 反省・謝罪
- 前科・前歴
- 事故後の生活状況
…などの「法律上の事情」
です。
ただし、先ほど触れたように、
芸能活動の停止・CMの降板 = 「社会的制裁」として考慮されることはある
とも言われます。
これは「有名人だから得している」というより、
その人が実際に受けたダメージを、ひとつの事情として見る
という話で、一般人でも「会社をクビになった」「収入が大きく減った」などは同じように情状として評価されることがあります。
「過失傷害の相場」と比べるとどう見える?
タイトルにもある「過失傷害」の相場とも、少し比べておきましょう。
過失傷害の法定刑
さきほど紹介したように、刑法の過失傷害(209条) は、罰則が
30万円以下の罰金または科料
です。
たとえば、
- 自転車と歩行者の事故
- スポーツ中の危険プレー
- 日常生活中の不注意
などでケガをさせたときに問題になります。
そのため、「過失傷害の相場」で見れば、
70万円という罰金は、そもそも「過失傷害」では出ない金額
です。
つまり、
- 「過失傷害ベースの事故」と比べると → かなり重い
- 「自動車事故の過失運転致傷ベース」で比べると → 相場の範囲内で高め寄り
ということになります。
私たちがこのニュースから学べること
ここからは、少し視点を変えて、私たちの生活に引き寄せて考えてみます。
スピード違反は「ちょっとくらい」では済まない
高速道路を走っていると、
「みんな制限速度よりちょっと速いし、まあ大丈夫だろう」
と、スピード感覚がマヒしがちです。
でも、今回のように 大きな事故が起きた瞬間、それはもう
- 「ちょっとのスピードオーバー」ではなく
- 「人の命や人生を大きく変えてしまう行為」
として扱われます。
時速185キロという極端なケースでなくても、
- ほんの一瞬のわき見
- スマホの通知を見た一瞬
- ちょっとした居眠り
が、取り返しのつかない事故につながる のは、誰にとっても他人事ではありません。
「お金の額=命の値段」ではない
ネットではどうしても、
「70万円で済んだのか」
「人の骨折が70万って安すぎる」
という話になりがちです。
けれど、刑事裁判の罰金は、
- 加害者に対する 制裁
- 将来、同じことをさせないための 抑止
- 社会全体への メッセージ
などを総合して決められます。
被害者の損害賠償(治療費・慰謝料など)は、民事の示談や裁判の世界 の話で、ここではまた別の基準で金額が決まります。
「罰金=命の値段」と捉えると、どうしてもモヤモヤが大きくなりますが、
罰金はあくまで 刑事上のペナルティの一部
と理解しておくと、少し見え方が変わってくるかもしれません。
SNSの「感情のボール」をどう受け止めるか
今回のように、有名人×交通事故×スピード違反 という要素が揃うと、SNSでは
- 「許せない」「軽すぎる」
- 「もう一生テレビに出るな」
- 「病気なんだから仕方ない部分もあるのでは」
など、さまざまな意見がぶつかり合います。
もちろん、どう感じるかは人それぞれで自由です。
ただ、情報を受け取る側としては、
- 事実(何が起きたか)
- 法律の枠組み(どんな罪で、どんな相場か)
- 自分の感情(怒り・悲しみ・違和感)
を、頭の中で少しだけ分けて考えてみると、ニュースとの距離の取り方が変わってきます。
今回でいえば、
- 罰金70万円は、過失運転致傷としては相場の範囲内で、やや重め
- でも、185キロという数字を見ると、恐怖や怒りを感じるのも自然
- さらに、本人もその家族も、今後長く社会的な代償を払い続ける
こうした複数の側面が、同時に存在しています。
まとめ
最後に、ポイントを整理します。
結論としては、
法律の運用上は「特別に軽すぎるわけではなく、相場の範囲内で重め」
でも
スピードや事故の状況を見れば、モヤモヤを感じる人が多いのも当然
という、「法の世界」と「気持ちの世界」のズレがくっきり出たケース と言えるでしょう。

