2026年1月7日。
福井県の杉本達治・前知事が、女性職員に送っていた「セクハラLINE」の詳細が、特別調査委員会の報告書で公表されました。
報道によると、
- 被害を訴えた女性職員は4人
- セクハラにあたると認定されたメッセージは約1000通
- 内容には「エッチなことは好き?」「キスしたいなぁとは思わないの!?」「二人きりでさしつさされつで楽しもうね」といった文言が含まれていた
とされています。
この記事では、
- 何が起きていたのか
- どこが問題なのか
- 私たちの身近な職場・組織で同じことを起こさないために、何ができるのか
を整理していきます。
事件のざっくりした流れ
まずは、時系列でざっくり整理してみましょう。
発端は「公益通報」
報告書や各社の報道をまとめると、流れはおおよそ次の通りです。
- 2025年4月ごろ
- 県職員の女性が、県の公益通報窓口(外部)に通報。
- 内容は「知事から愛人になることを求めるようなLINEが複数回届いた」「食事に繰り返し誘われた」など。
- その後の調査開始
- 県が内部調査を開始。
- しかし「身内だけで調査するのは限界がある」と判断され、外部の弁護士3人による特別調査委員会が設置される。
- 約6000人の職員にアンケート・聞き取り
- 福井県職員およそ6000人を対象にアンケートや聞き取りを実施。
- その結果、4人の女性職員が「深刻なセクハラ被害」を訴えていることが明らかになる。
- 2025年11月25日 知事が辞職表明
- 杉本前知事は、不適切なメッセージを送ったことを認めて辞職を表明。
- 会見では「軽い冗談、少しふざけた気持ちだった」「それがセクハラだったと認識した」といった趣旨の説明をしています。
- 2025年12月 正式に辞職
- 2026年1月7日 調査報告書を公表
- 不適切なメッセージの具体的な中身や件数、時期などが明らかに。
- ここで「約1000通」「内容の一部公開」「刑法に抵触する可能性も」というショッキングな事実がニュースになります。
このように、
「一人の女性職員の通報」から始まり、
「外部の弁護士による調査」→「多数の職員への聞き取り」→「複数の被害者の存在が判明」→「約1000通のセクハラメッセージ」
という形で、問題の全体像が浮かび上がってきました。
LINEの内容はどんなものだったのか
調査報告書や報道では、メッセージの一部が具体的に紹介されています。
たとえば、次のようなものです(※報道で紹介された範囲の抜粋です)。
- 「エッチなことは好き?」
- 「キスしたいなぁとは思わないの!?」
- 「二人きりでさしつさされつで楽しもうね」
- 「レオタードを着て、おっきく足を上げて、ボンボンを持って元気に躍り回ることだと思うよ」
- 「〇〇ちゃんの後ろ姿は肉付きがよくて張っていて、とても好きなの」
- 「ハグとチューをしていいってこと!?」
さらに、
- 「一切内緒で、墓場まで持っていってね」
- 「ただのお遊びです」
など、「秘密にして」「遊びだから」というニュアンスを含むメッセージもあったとされます。
また、報告書では
- 太ももやお尻を触るなどの身体的接触
- 執拗な飲食の誘い
- 暗に性的関係を求めるような連絡
なども認定されており、
ストーカー規制法や刑法の「不同意わいせつ罪」に抵触する可能性も指摘されたと報じられています。
ここで大事なのは、
「ちょっと下ネタを言った」レベルではなく、
長期間・多回数・一方的に、性的な内容を含んだメッセージや行為が繰り返されていた
と評価されている点です。
なぜ「セクハラ」になるのかを整理する
「でも、本人は『冗談のつもりだった』と言っている」
「軽口のつもりだったんじゃないの?」
そう思う人もいるかもしれません。
ここで一度、「セクハラとは何か」を整理しておきましょう。
セクハラの基本的な考え方
厚生労働省などのガイドラインでは、ざっくりいうとセクハラは
相手が望んでいない性的な言動で、相手に不快感や不利益を与えること
と説明されます。
ここでポイントなのは、
- 「言った側のつもり」ではなく、受け取った側がどう感じたか
- そして、それが職場という場で、立場の弱い側に向けて行われているか
という点です。
上司が部下に向かって
「エッチなことは好き?」
「キスしたいなぁとは思わないの!?」
と繰り返し送ることは、
普通に考えて、仕事に必要な会話ではありません。
しかも相手は知事というトップ、
受け取る側は県職員です。
人事評価や職場での立場にも、知事の影響は間違いなくあります。
「断りづらい」「はっきりNOと言えない」
という状況で、一方的に性的なメッセージが送られ続けた。
これがセクハラとして認定された理由です。
「冗談だった」は免罪符にならない
杉本前知事は会見で、
「軽口や冗談のつもりだった」といった説明をしています。
しかし、
- 相手は部下
- 職場に関係ない性的なメッセージ
- 長期・多回数
- 相手が「怖い」「嫌だ」と感じていた
という状況では、
「冗談だったからセーフ」とはなりません。
むしろ、
冗談のつもりで相手を傷つけていた
という意味で、
より深刻な問題と言えます。
調査報告書が明らかにしたこと
報告書や報道をもう少し詳しく見ると、この問題の根深さが見えてきます。
被害者4人・メッセージ約1000通
特別調査委員会は、
- 女性職員4人を「被害者」と認定
- LINEやメールなどで送られた、セクハラを裏付けるテキストメッセージは約1000通
と結論づけています。
これは一時的な「気の迷い」ではなく、
長期間にわたって繰り返された行動だと見なされた、ということです。
期間は「2004年ごろから2025年まで」
調査によると、
問題となる言動は、杉本氏が
- まだ県の総務部長だった2004年ごろから
- 知事として勤務していた2025年まで
およそ20年以上にわたって続いていたとされています。
つまり、
「知事になって突然おかしくなった」というより、
長い年月をかけて、こうした行動が”当たり前”になっていった
可能性が高いということです。
身体への接触と、刑事罰の可能性
報告書では、
- 太ももやお尻などを触る行為
- 執拗な連絡、飲食への誘い
などもあったとされ、
ストーカー規制法違反や、刑法の不同意わいせつ罪に抵触する可能性がある
とまで指摘されています。
もちろん、
実際に刑事事件になるかどうかは、捜査機関や司法の判断ですが、
「ただの軽い冗談」では済まないレベルの行為だった
と評価されていることは、重く受け止める必要があります。
なぜこうした問題は起き続けるのか
ここまで読んで、
「なんでこんなことが長年バレなかったの?」
と感じる方も多いと思います。
その背景には、日本の職場文化や、人間関係の空気があります。
「上司には逆らいにくい」という空気
日本の職場では、いまだに
- 上司に逆らいづらい
- 「ノリが悪い」と思われたくない
- 言い返すと「空気を読めない」と言われる
こうした空気があります。
まして相手は知事です。
人事、評価、異動、今後のキャリア。
すべてに影響する立場の人から、
「エッチなことは好き?」と送られてきたときに、
どれだけの人が「やめてください」と言えるでしょうか。
多くの人は、
- 既読スルー
- なんとなく話をそらす
- 愛想笑いでごまかす
といった対応になりがちです。
しかしそれは、決して「同意」でも「歓迎」でもありません。
「飲み会文化」と「冗談」の勘違い
日本の組織では、
お酒の場での下ネタや、冗談めかしたセクハラ発言が、
長年「笑って流すもの」とされてきました。
- 「昔はこんなの普通だった」
- 「自分も言われてきた」
こうした感覚のまま、
時代の変化についていけない人もいます。
しかし今は、
- セクハラに関する法律・ガイドライン
- メディアやSNSでの問題提起
- 価値観の変化
によって、
「笑って済ませる」時代ではなくなっています。
それでもなお、
権力や地位を持っている人ほど、
周りから注意されにくい、現実があります。
結果として、
- 本人は「昔からのノリ」のつもり
- 周囲は「おかしい」と思いながらも言えない
というねじれが生まれ、
今回のように長年放置されてしまうのです。
私たちがこのニュースから学べること
この事件は、
地方自治体のトップという「遠い世界」の話に見えるかもしれません。
しかし、職場での人間関係という意味では、
私たちの身近な会社や組織でも、
同じ構図が簡単に起こり得ます。
ここから、私たちが学べるポイントを整理してみます。
「これってセクハラ?」のチェックポイント
自分の言動が相手を傷つけていないか、
最低限、次のような点は意識しておく必要があります。
- 相手は「部下」や「立場の弱い人」ではないか
- 仕事に関係のない性的な話題・外見の話をしていないか
- 相手が「困った笑顔」になっていないか
- 返事が明らかにそっけない(既読スルーが続くなど)のに、しつこく送っていないか
- 「これ、会社のチャットや会議で堂々と読まれても平気か?」と自問したときに、胸を張って「大丈夫」と言えるか
ひとつでも怪しいと思ったら、
「それはもうアウト寄り」と考えたほうが安全です。
LINE・SNSを「距離をつめる道具」にしない
LINEやSNSは便利ですが、
仕事相手との距離を一気に縮めてしまう面もあります。
- 深夜・早朝に、仕事と関係のないメッセージを送らない
- 相手のプライベートに踏み込む内容(恋愛・体型・性的な話題)を送らない
- 返事がないのに連投しない
こうした基本を守るだけでも、
今回のような事態はかなり防げます。
被害を感じたときにできること
もしあなたが、
「これはさすがにおかしい」「怖い」「気持ち悪い」
と感じる行為を受けたとき、
できることはたくさんあります。
- 職場の信頼できる同僚・先輩に相談する
- 会社や自治体の「ハラスメント相談窓口」を利用する
- 労働局の総合労働相談コーナーや、法務局の人権相談
- 地方自治体の女性相談・人権相談窓口
など、公的な相談窓口も用意されています。
大事なのは、
「自分が我慢すればいい」
「自分が気にしすぎなのかもしれない」
と、すべてを抱え込まないことです。
今回のケースも、
一人の女性職員の通報がきっかけで、
長年続いてきた問題が明るみに出ました。
「声をあげること」には勇気がいりますが、
それが組織を健全にする第一歩になります。
目撃した第三者としてできること
自分が直接の被害者でなくても、
- 職場のチャットであきらかにおかしな発言を見た
- 飲み会で部下にしつこく下ネタを振っている上司を見た
そういう場面に出くわすことがあります。
そのときに、
- さりげなく話題を変える
- 被害を受けている人に後で声をかける
- 必要に応じて相談窓口に情報を伝える
など、「傍観者」ではなく、
セーフティネットの一部になることができます。
まとめ
今回の
「杉本達治前知事1000通セクハラLINE」問題は、
- 地方自治体のトップという立場の人が
- 長年にわたり
- 立場の弱い部下に対して
- 性的なメッセージや身体的接触を繰り返していた
と認定された、非常に重いケースです。
そしてこれは、
「一部の特殊な人の話」ではなく、
- 権力を持つ人が
- 自分の「冗談」「親しみ」のつもりの言動を
- 誰も注意してくれないまま積み重ねた結果
とも言えます。
私たち一人ひとりが、
- 自分の言動が相手にどう受け止められるか
- 「冗談」という言葉でごまかしていないか
- おかしいと思ったときに、誰かに相談できるか
- 第三者として「見て見ぬふり」をしていないか
を振り返ることが、
同じような悲しいニュースを減らすための第一歩になります。
タイトルに出てくる
「エッチなことは好き?」
この一言は、
軽いノリの一文のように見えて、
実は「立場」「権力」「職場」という文脈の中では、
人の人生やキャリアを傷つけかねない、重い意味を持ちます。
今回の出来事を「ゴシップ」として消費して終わるのではなく、
自分の働き方・人との距離の取り方を見つめなおすきっかけにしたいところです。

