なぜ三田紀房は「絵が下手」と言われるのか?
――画風に隠れた“計算”を読み解く
はじめに:「ドラゴン桜」は好きなのに、絵が気になる…
『ドラゴン桜』や『インベスターZ』を読んだ人の中には、こんなモヤモヤを持つ人も多いと思います。
- 「ストーリーはめちゃくちゃおもしろい」
- 「でも、正直…絵はうまくないよね?」
- 「なんであの絵で、ここまで売れるんだろう?」
実際にネット上では、
「人物のバランスがおかしい」
「目つきが怖い」「なんか不気味」
といった声もあります。
一方で、
「表情の描き方がすごい」
「コマの迫力やセリフに引き込まれる」
という、真逆の評価もあります。
では、なぜ三田紀房は「絵が下手」と言われながらも、ヒットを連発できるのでしょうか。
この記事では、
- 「下手」と言われる具体的な理由
- しかしそれでも読まれている“本当の強み”
- 画風の裏にある「徹底した計算」と仕事術
を解説していきます。
三田紀房ってどんな漫画家?
まず、かんたんに三田紀房のプロフィールを整理しておきます。
- 代表作
- 『ドラゴン桜』
- 『ドラゴン桜2』
- 『インベスターZ』
- 『エンゼルバンク』
- 『クロカン』 など
- ジャンル
- 学習マンガ、ビジネスマンガ、マネー・投資マンガが中心
- テーマ
- 「常識を疑え」「逆転の発想を持て」といった“考え方”を描くのが得意
ビジネス書や自己啓発書に近い「考え方」を、物語やキャラクターを通して読ませるタイプの作家です。
だからこそ、
「話はめちゃくちゃおもしろいけど、絵はクセが強い」
という評価になりやすいのです。
なぜ「絵が下手」と言われるのか?4つのポイント
ネットでよく見られる意見を整理すると、「絵が下手」と言われる主な理由は次の4つです。
キャラクターの体のバランスが気になる
- 頭身(頭と体のバランス)が不自然に見える
- 手や足の付き方がぎこちなく感じられる
- ポーズが固くて、動きのあるシーンが少ない
スポーツ漫画のような「ダイナミックな動き」を期待して読むと、どうしても物足りなさを感じやすい部分です。
目つき・表情が「怖い」「不気味」に感じることがある
三田作品のキャラは、キリッとした三白眼(黒目が小さく白目の面積が多い目)が多いです。
- 怒っているように見える
- いつもギラギラして見える
- 苦手な人には「怖い」「不気味」と感じられる
こうした「目つき」が、苦手な人にとっては「下手=違和感」という評価になりがちです。
コマによって作画のクオリティに差がある
- あるコマではかっこいいのに、別のコマでは崩れて見える
- 1巻と後半巻で印象が違う
- 背景や小物のリアルさに対して、人物が浮いて見える
こうした「ムラ」が、「作画崩壊」として話題になることもあります。
他の“超画力系漫画家”と比べられやすい
今の時代、SNSや電子書籍のおかげで、超絶画力の漫画家がたくさん目に入ってきます。
- 線の密度がすごい
- 背景がほぼ写真レベル
- アクションシーンの迫力が桁違い
こういう作品と並べてしまうと、どうしても三田作品は「シンプルで素っ気ない」印象になり、「下手」と感じる読者も出てきます。
それでも読者をつかむ「三田紀房の絵の強み」
しかし、「絵が下手」と言われながらも、三田作品は長年にわたり読まれ続けています。
そこには、絵の“別の強み”があるからです。
表情のインパクトが強い
ドラゴン桜をレビューした東大生のブログでは、
「人物の表情がすごく印象的」「影の使い方で感情が伝わる」と高く評価されています。
- 決意した瞬間
- 追い詰められた瞬間
- ひらめいた瞬間
こういった“人生のターニングポイント”を切り取る表情の描き方が、三田作品の大きな魅力になっています。
コマ割りとセリフの「見せ方」がうまい
三田作品は、
- 大きなコマでドーンと名言を見せる
- 重要なセリフの前後で、表情のアップを入れる
- 読者が「うわ、刺さる…」と思う瞬間を、しっかり演出する
といった「見せ場の作り方」が非常に計算されています。
このおかげで、
絵の細かさではなく、「画面の説得力」や「セリフの入り方」で勝負している
と言えます。
情報が読みやすく整理されている
三田作品は文字量が多く、説明もたくさん出てきます。
それでもサクサク読めるのは、
- コマの中の情報が整理されている
- 画面がゴチャゴチャしすぎていない
- 「どこを見ればいいか」が直感的にわかる
といった、「情報設計」がうまいからです。
細密な絵ではなく、あえてシンプルな絵にすることで、
内容やメッセージがスッと頭に入るように計算されているとも考えられます。
実はかなり戦略的?「分業制」とデジタル化という発想
三田紀房の「画風に隠れた計算」を語るうえで外せないのが、
分業制とデジタル化です。
背景や小物は外注、人物だけ描く
三田本人のコラムによると、『インベスターZ』では、
背景や小物は専門の会社に外注し、自分は人物だけを描く体制を早い段階から取っていたと語っています。
- 校舎や部室
- パソコン、ペットボトルなどの小物
- 細かい背景描写
こうした部分を外注することで、
「自分はストーリーと人物に集中する」
という方針を徹底しているのです。
『ドラゴン桜』はネームだけ、作画は会社に委託
別のインタビューでは、『ドラゴン桜』について、
- 三田がネーム(コマ割り・セリフ・大まかな絵)を描く
- その後の作画はデジタル作画会社にほぼ一任する
という制作体制であることも明かされています。
もちろん、その前に技術指導を行い、クオリティのラインは決めているそうですが、
「完璧な100点よりも、締切を守りつつ作品を出し続けること」を重視している、と語られています。
とにかく“効率”を重視するスタイル
仕事の進め方について語ったインタビューでは、
- 「マンガ制作のあらゆる工程を効率化している」
- 「自分の仕事はプロットとネームが最重要」
- 「斬新さよりも“定番”を安定して出すことを目指している」
といった考え方が紹介されています。
つまり三田紀房は、
「自分が全部描くこと」よりも
「ヒット作を安定して生み出す仕組み」を優先している
と言えるでしょう。
「絵のうまさ」より「読者のメリット」を優先している
ここまで見てくると、三田紀房のスタンスが少し見えてきます。
「超絶画力」よりも「伝わること」を重視
- 絵を描き込むほど作業は重くなり、連載2本・3本と掛け持ちしづらくなる
- 文字や説明が多い内容を扱う以上、「読みやすさ」のほうが大事
- 読者がほしいのは「東大に受かる考え方」「お金の増やし方」であって、必ずしも“神作画”ではない
だから、
あえてシンプルな画風+強い表情+わかりやすいコマ割り
に振っている、と考えることもできます。
「定番を安定して出す」=白いポロシャツ理論
三田自身が、「洋品店をやっていた経験から、一番売れるのは“白いポロシャツ”のような定番だ」と話しています。
- 奇抜なデザインは一部の人には刺さるが、大多数には刺さらない
- 大勢に長く売れるのは、当たり前に見えるけれど質の良い“定番”
マンガづくりでも同じで、
多少クセがあっても、わかりやすくて、毎週ちゃんと届くコンテンツ
を目指していると言えるでしょう。
「絵が下手=ダメ」ではない時代になっている
ここで、少し視点を広げてみます。
分業制の漫画家・原作者は増えている
近年は、
- 原作:ストーリー担当
- 作画:絵担当
という分業でヒットを出す作品も増えています。
三田紀房のスタイルは、その先頭を走っているとも言えます。
読者も「何を期待して読むか」で評価が変わる
- 「迫力あるアクションを見たい」
→ 画力重視の作品を選ぶ - 「お金の知識や勉強法を知りたい」
→ 説明がわかりやすい作品を選ぶ
三田作品は後者なので、
「知識や考え方を学びたい読者」にとっては、とても価値があるマンガです。
「下手だけど売れている」のではなく「必要な部分にリソースを集中している」
三田紀房は、
- 絵よりもストーリー、構成、テーマに全力投球する
- 絵の一部は外注し、自分は「読者の頭に残るシーン」を作ることに集中する
という“経営者的な発想”で漫画づくりをしている、と言えます。
クリエイター・副業志望の人が学べるポイント
この記事を読んでいるあなたが、
- ブログを書いている
- 漫画やイラストを描いている
- 副業で情報発信をしている
そんな立場なら、三田紀房のスタイルから学べることはたくさんあります。
「全部自分でやらなきゃ」は捨てていい
- 記事の構成や企画は自分で考える
- デザインや画像づくりは外注・ツールに任せる
- 校正やリライトは別の人やAIの力を借りる
こうして「自分にしかできない部分」に集中したほうが、トータルの成果は大きくなります。
完璧な100点より「出し続ける80点」
三田紀房が語るように、連載を続けるには「時間とクオリティの折り合い」が必要です。
- ブログ記事も、完璧を求めすぎて1本に数週間かけるより
- 8割の完成度でも、継続して出し続けたほうが、読者に届くチャンスは増えます
自分の「強み」がどこかを見極める
- あなたの強みが「文章力」なら、文章に集中する
- 「構成力」なら、構成をテンプレ化して量産する
- 「イラスト力」なら、絵を前面に出した作品づくりをする
三田紀房は、「ストーリーとメッセージ」が自分の強みだと理解しているからこそ、そこに特化できています。
まとめ
最後に、ポイントを整理します。
- ネットで「三田紀房 絵が下手」と言われるのは、
- 体のバランスや動きがぎこちなく見える
- 目つきや表情が怖く感じられる
- コマによってクオリティの差がある
といった“違和感”が原因になっている。
- 一方で、
- 表情のインパクト
- コマ割りとセリフの見せ方
- 情報の読みやすさ
など、「伝える力」としての絵は高く評価されている。
- 背景や仕上げを外注し、自分はネーム・人物・ストーリーに集中する“分業制&デジタル化”という制作スタイルは、
「ヒットを出し続けるための経営的な判断」とも言える。 - 三田紀房は、「超絶画力のアート」を目指しているのではなく、
読者にとって役立つ内容を、安定して届けるための“定番の白いポロシャツ”のようなマンガ
を目指している。
だからこそ、
「絵が下手だから売れているのが不思議な漫画家」
ではなく、
「あえて絵をシンプルにし、ストーリーとメッセージに全振りしている戦略家」
と見るほうが、実態に近いのかもしれません。
もし次に『ドラゴン桜』や『インベスターZ』を読み返す機会があったら、
- キャラクターの表情
- コマの大きさや並び方
- 名言が出てくるタイミング
にも、少し注目してみてください。
「絵が下手」という評判の裏側にある、
“計算されたシンプルさ”が、きっと見えてくるはずです。




