2025年末。
「ミラノ・コルティナ2026冬季五輪」まであと少し、というタイミングで起きた大事件――
女子スピードスケート1000mの女王とも呼ばれるユッタ・リールダムが、
自分の看板種目・1000mのオリンピック予選で転倒し、途中棄権。
このニュースは、日本でも大きく取り上げられました。
「いったい何が起きたのか?」
「ケガは? 五輪の出場はどうなった?」
「メンタル面への影響は?」
この記事では、
2025年末のオランダ五輪代表選考会(オリンピックトライアル)で起きた“あの転倒”について、
- 事実としてわかっていること
- 報道や本人コメントから読み取れる“真相”
- その後のユッタの復活劇と、五輪代表決定までの流れ
を整理していきます。
舞台はオランダ国内の「五輪代表選考会」
まず、「どこで・何のレースで」転倒したのかを確認しておきましょう。
場所は聖地タイアルフ(ヘーレンフェーン)
問題のレースが行われたのは、
スピードスケートの聖地と呼ばれる、オランダ・ヘーレンフェーンの屋内リンク「タイアルフ(Thialf)」です。
ここは、
- 世界選手権
- ワールドカップ
- オランダ国内選手権
など、数え切れないほどのビッグレースが行われてきた、
スケートファンにはおなじみの場所です。
レースは「オリンピックトライアル」=国内予選
大会の正式名称は、オランダの「オリンピックトライアル」(五輪代表選考会)。
意味としては、
- オランダ代表としてミラノ・コルティナ2026に出場できるのは、各種目ごくわずかな人数
- その出場枠を、国内選手同士で争う“最後の関門”
という位置づけです。
オランダはスピードスケート大国なので、
国内で勝つことが、ある意味「世界レベルで勝つこと」と同じくらい大変です。
ユッタが出た種目は「1000m」
ユッタが転倒したのは、
彼女の代名詞ともいえる 女子1000m のレース。
1000mは、スプリント(短距離)の爆発力と、
中距離のスタミナの両方が必要な、かなり難しい種目です。
- 彼女は北京五輪2022の1000mで銀メダル
- 世界選手権1000mで複数回の優勝
- 2025年ワールドカップでも1000mで優勝を重ねる「絶対女王」
つまり、このトライアル1000mは、
「ミラノでも金メダル候補」と言われるスターが、
まず“自国で代表権を取る”ための、絶対に落とせないレース
だったわけです。
転倒したレースで実際に何が起きていたのか
スタート~前半までは「いつも通りの女王ペース」
五輪公式サイトなどのレポートによると、
スタート直後のユッタは、いつも通り力強くリンクを蹴り、
最初のコーナーまでは順調そのものでした。
- 1000mの“おなじみの滑り出し”
- タイム的にも、十分代表圏内を狙えるペース
- 会場の空気も「今日も勝つだろう」という雰囲気
まさか、このコーナーの先に悪夢が待っているとは、
本人も、観客も、誰も想像していなかったでしょう。
2つ目のカーブでバランスを崩す
転倒が起きたのは、2つ目のカーブ。
レポートや動画を総合すると、
- コーナーに入るときのスピードは、時速60km近いトップスピード
- そこで内側のエッジ(刃)が氷から外れたような形になり
- 上体のバランスが一気に崩れ、そのまま外側のフェンスへ滑り込む
という流れだったとされています。
氷上競技ではよくあるパターンですが、
1000mのような高速種目では、ほんの少しのズレが致命傷になります。
そのままボード(フェンス)に激突し、レース続行不能
転倒したユッタは、氷の上を横滑りしながら外側のボードに衝突。
しばらく起き上がれず、そのあとスタッフに支えられながらリンクを後にした――と報じられています。
- レースは途中棄権(DNF)
- 当然ながら、1000mの代表枠を獲得するタイムは残せず
- 会場にはどよめきとため息
という、「悪夢のような数十秒」でした。
転倒の原因は? わかっていること/わかっていないこと
ここが、多くのファンが気になっているポイントだと思います。
結論から言うと、
「これが100%の原因です」と断言できる公式な技術レポートは出ていない
というのが現状です。
そのうえで、報道や映像からわかる範囲を、整理してみます。
事実としてわかっていること
- スピードが非常に高かった状態でのカーブだった
- 1000mのレース中盤、トップスピードに近い局面
- コーナーでは、かなり深く体を傾けて滑走していた
- イン側のエッジが氷をとらえきれずに滑ったように見える
- 映像からは、足元が外側に流れるような形で崩れている
- 他選手との接触や、明らかな器具トラブルは報じられていない
- 別の選手とぶつかったという情報はなし
- スケート靴の破損なども、少なくとも公には出ていない
可能性として語られている要因(あくまで「推測」)
専門家やメディアが指摘している要因としては、いくつかの「可能性」があります。
- コーナーに入るラインが、いつもより攻めすぎていた
- 氷の状態(細かい溝や削れ具合)が、少し予想と違った
- シーズン終盤の疲労やプレッシャーが、微妙なフォームの乱れを生んだ
ただし、これらはあくまで外側からの分析や推測であり、
本人・チームが「公式に原因」と認めたわけではありません。
ユッタ本人の言葉:「ショックだったけど、体は大丈夫」
本人は、その後のインタビューで、
- 「あの瞬間は本当にショックだった」
- 「でも体は大きなケガではなく、スケートは続けられる」
といった主旨のコメントをしています。
つまり、
・原因は「致命的な故障」ではなく
・高いレベルで攻め続けた結果、ほんのわずかなズレが出た
というイメージでとらえるのが、いちばん現実的かもしれません。
転倒直後のユッタ|涙、そして“彼”の存在
涙でリンクを去る姿
オランダメディアや海外スポーツ紙は、
「涙ながらにリンクを去るユッタ」という表現で、この場面を伝えています。
- 1000mは、彼女が“自分の種目”と呼ぶほどの看板種目
- そこから転倒で代表権を逃してしまったショック
- 会場の大歓声が一気に静まり返る中での退場
精神的ダメージは、相当なものだったと想像できます。
スタンドでは婚約者ジェイク・ポールが見守っていた
スタンドでその様子を見ていたのが、
婚約者の Jake Paul です。
- 元YouTuberで、現在はプロボクサーとして活動
- 2025年にユッタと婚約を発表した「世界的セレブカップル」の一人
彼は、自身も試合でアゴを骨折するなど大きなケガから復帰した直後で、
その経験もあってか、転倒後のユッタを「Warrior(戦士)」と呼び、
SNSで力強いメッセージを送っています。
それでも終わらなかった五輪への道:500mでの“立て直し”
ここからが、ユッタのすごいところです。
数日後の500mで、まさかの“復活2位”
1000mで転倒したのは金曜日。
そのわずか2日後の日曜日、今度は女子500mのトライアルが行われました。
普通なら、まだ心の傷も体の痛みも残っているはずです。
それでもユッタはリンクに戻り、
- 37秒42のタイムで2位に入る快走
- 500mの五輪代表枠をしっかり自力で確保
という“立て直し”を見せました。
オランダ代表入りはどう決まった?
結局、このトライアルの結果とシーズン全体の成績を踏まえ、
- 500m:トライアル2位の結果により、正式に代表入り
- 1000m:転倒でタイムなしだったが、シーズン中の圧倒的な実績が評価され、
オランダスケート連盟(KNSB)の裁量枠(ディスクリナリー・スポット)で最後の1枠が与えられた
という形になりました。
本人もインスタグラムで、
「500mと1000m、両方でミラノに行けることになった!」
「誰かから枠を奪う形ではなく、最後の1つを私にくれた。そのことに本当に感謝している」
と喜びを語っています。
つまり、
1000mのトライアルでは“落ちた”けれど、
シーズンを通しての女王としての実績を評価され、
1000mにも出場できる「逆転劇」が起きた
というわけです。
そもそも、なぜそこまで評価されたのか? 2025年シーズンの「強さ」
「転倒したのに、なぜ特別枠で選ばれたの?」
と思う方もいるかもしれません。ここには、ちゃんと理由があります。
2025年の成績は“ユッタ無双”レベル
2024〜25シーズンのユッタは、
- 世界選手権で500m・1000m・チームスプリントの3冠
- 世界スプリント選手権でも総合優勝
- ワールドカップ1000mでも何度も優勝し、世界トップのタイムを連発
まさに、
「転倒さえしなければ、オランダ国内でも世界でも頭ひとつ抜けた存在」
と言えるシーズンでした。
五輪公式も「1000m女王」として特集
五輪公式サイトも彼女を、
- 北京五輪1000mの銀メダリスト
- 2026年ミラノ・コルティナでは金メダル候補
- 1000mを得意とする、スプリント系のスター選手
として特集しています。
こうした背景があるからこそ、
- 1回の転倒だけで全てを失わせてしまうのか?
- それとも「代表としてふさわしい実力者」として救済するのか?
という議論が、オランダ国内でも大きなテーマになりました。
最終的に連盟は後者を選び、
「実力と実績を総合的に見て、1000mの最後の枠をユッタに与える」
という判断を下した、という流れです。
転倒がユッタに与えた“本当のダメージ”とは
肉体的なケガは大事に至らず
報道ベースでは、
転倒のあと、ユッタに骨折などの大きなケガはなかったとされています。
- それでも、氷とボードに激突しているので、打撲や痛みはあったはず
- その状態で数日後の500mを滑り切ったのは、相当な根性
肉体的には「回復可能なダメージ」で済んだと言えるでしょう。
いちばん大きかったのは「メンタルへの衝撃」
本人も、
- 「まだショックが残っている」
- 「でも、前を向いて進むしかない」
といったコメントをしていて、
心のダメージの方が大きかったことがうかがえます。
- 一番得意な種目で転倒
- 国内メディア・世界メディアが一斉に報道
- 婚約者や家族も見ている前での“失敗”
これは、どんなトップアスリートでも堪える出来事です。
それでも「リンクに戻る」ことを選んだ
それでも彼女は、数日後には500mに出場し、しっかり代表権をつかみました。
この選択には、
- 「怖いから、しばらく休みたい」という気持ちを乗り越える勇気
- 「五輪で勝つ」という目標が、それだけ強く心にあること
が表れています。
婚約者のジェイクも、自身のケガからの復帰経験を踏まえ、
「You are a warrior(君は戦士だ)」
とメッセージを送っており、
2人の関係性がメンタル面の支えになっていることも伝わってきます。
日本から見る「転倒」の意味:高木美帆とのライバル物語
日本人としてどうしても気になるのが、
高木美帆 とのライバル関係ですよね。
「技術と精神」の高木 vs 「パワーとカリスマ」のユッタ
日本のスケート系サイトでは、
- 高木美帆=技術と精神の象徴
- ユッタ=パワーとカリスマの象徴
と表現されることもあります。
1000mでは、たびたび世界大会で直接対決があり、
- 0.1秒前後の僅差で決まるレース
- 見ている側も息が止まりそうな、名勝負の連続
となっています。
転倒は「ライバル対決が消えるかもしれない危機」だった
もし、今回の転倒をきっかけに
- ユッタが1000mの代表から落ちていた
- 500mだけの出場になっていた
としたら、
ミラノ・コルティナ五輪の女子1000mから、
「高木 vs ユッタ」という“頂上決戦カード”そのものが消えてしまう
可能性もあったわけです。
そう考えると、
- 特別枠であれ、ユッタが1000mに戻ってきたこと
- そして高木も順調に代表権をつかんでいること
は、スピードスケートという競技全体にとっても、
かなり大きな意味を持っていると言えます。
まとめ
最後に、この記事のポイントを整理しておきます。
何が起きたのか
- 2025年末、オランダ・ヘーレンフェーンの「オリンピックトライアル」女子1000mで転倒
- 2つ目のカーブでバランスを崩し、そのままボードに激突して途中棄権
- 1000mの代表枠を自力では取れず、リンクを涙ながらに後にした
原因について
- 他選手との接触や、大きな器具トラブルは報じられていない
- 映像からは、高速で攻めたコーナーでインエッジが外れたように見える
- 正式な「これが原因」という技術レポートは出ておらず、詳細は不明
- いちばん大きなダメージは、肉体よりもメンタル面だった
その後の展開
- 数日後の500mトライアルで2位に入り、500m代表枠を獲得
- シーズンを通しての圧倒的な実績が評価され、1000mもオランダ連盟の裁量枠で選出
- 結果として、ミラノ・コルティナ五輪では500m・1000mの両方に出場が決定
この転倒が教えてくれること
ユッタ・リールダムの2025年末の転倒は、
単なる「ミス」や「アクシデント」ではありませんでした。
- どれだけ強い選手でも、たった一度の滑りで地獄を見ることがある
- しかしそこで、“もう一度リンクに立つ”と決められるかどうか
- その選択こそが、アスリートの本当の強さを決める
ということを、彼女は自分の行動で示してくれました。
ミラノのリンクで滑るユッタを見るとき、
「完璧な女王」ではなく、
一度は転んで泣きながらリンクを去り、
それでも戻ってきた“戦う人間”
として見ると、レースの意味がまた違って見えてくるはずです。
転倒の真相を追うことは、
同時に「立ち上がる力の物語」を知ることでもあります。
その視点で、ぜひこれからのレースを楽しんでみてください。



