鳥山まことさんの名前を、ニュースやXで見かけて「え、建築士なのに芥川賞?」と気になった人も多いと思います。
この記事では、
- 鳥山まことは「何者」なのか
- 年齢・学歴・経歴
- 代表作『時の家』のポイント
- なぜ建築士が芥川賞を獲るほどの小説を書けたのか
をまとめていきます。
鳥山まことは「何者」?プロフィールをざっくり整理
まずは、ざっくりしたプロフィールから。
- 名前:鳥山 まこと(とりやま まこと)
- 生まれ年:1992年
- 年齢:33歳(2026年1月時点)
- 出身地:兵庫県宝塚市
- 現在:兵庫県明石市で暮らすと言われている
- 職業:小説家・一級建築士(建築家)
- 主な受賞歴
- 2023年 三田文学新人賞「あるもの」
- 2025年 野間文芸新人賞「時の家」
- 2025年下期(第174回)芥川龍之介賞「時の家」
本業は一級建築士。
その一方で、「あるもの」「時の家」などの小説で一気に注目され、ついに芥川賞までたどり着いた、まさに“二刀流”の作家です。
学歴:建築・環境デザインを専門的に学んできた人
鳥山さんの学歴は、はっきりと公表されています。
- 京都府立大学 生命環境学部 環境デザイン学科 卒業
- 九州大学大学院 修士課程 修了(建築・空間系の分野)
「環境デザイン学科」という名前は少しおしゃれですが、中身はかなり本格的な建築・空間の学びです。
たとえば、
- 建物や家の設計
- 街並みや風景のつくり方
- 人が暮らしやすい空間とは何か
といったことを、図面や模型、歴史や法律も含めて学ぶ世界です。
つまり鳥山さんは、大学〜大学院のあいだ、ずっと“空間”と“暮らし”について考え続けてきた人と言えます。
この「空間を見る目」「暮らしを立体的にイメージする力」が、あとでお話しする小説の描写にも、深くつながっていきます。
経歴①:一級建築士としての仕事
大学・大学院で建築を学んだあと、鳥山さんは一級建築士としてキャリアをスタートさせます。
一級建築士とは、国家試験に合格したプロ中のプロ。
住宅はもちろん、さまざまな建物の設計にかかわることができる資格です。
インタビューやコラムなどを見ると、鳥山さんは
- 兵庫県明石市で暮らしながら建築士として働いている
- 妻も建築士で、自宅をふたりで設計したエピソードがある
など、「生活のど真ん中」に建築がある人だとわかります。
さらに、
- 京都芸術大学 通信制大学院 文芸領域で非常勤講師も務めている
という情報もあり、「建築」「小説」「教育」という三つの領域で活動している、とても多才な人物です。
建築士としての日常が、小説の“材料”になる
建築の仕事では、
- どの位置に窓をつけると、朝日がちょうどよく入るか
- どこにコンセントをつけると、暮らす人がストレスを感じないか
- 年月が経ったとき、この家はどう古びていくのか
など、「今」と「未来」の両方を想像しながら設計していきます。
この“時間をふくんだ空間の想像力”こそが、後の小説『時の家』の大きなテーマに、そのままつながっていきます。
経歴②:三田文学新人賞から芥川賞へ──作家としての歩み
鳥山さんは、いきなり芥川賞を取ったわけではありません。
文学の世界での歩みを、ざっくり時系列で追ってみましょう。
- 2022年:林芙美子文学賞に「高低差」で候補入り
- 2023年:「あるもの」で第29回三田文学新人賞を受賞
- 2024年:「欲求アレルギー」「アウトライン」などの短編を文芸誌に発表
- 2025年:『時の家』で第47回野間文芸新人賞を受賞
- 2025年下期:同じ『時の家』で第174回芥川賞を受賞
ポイントは、「建築士として働きながら、30代で小説家として一気に頭角を現した」こと。
学生時代から書いていたとはいえ、本格的に評価されはじめたのは社会人になってから。
「会社員や専門職をしながら、小説を書き続けるのはムリなのでは?」と思っている人にとって、かなり希望のもてる経歴です。
芥川賞受賞作『時の家』はどんな作品?
では、芥川賞を受賞した『時の家』とは、どんな作品なのでしょうか。
詳しいネタバレは避けつつ、公式情報や紹介記事からわかる範囲でまとめると──
- 舞台は一軒の家
- その家に暮らした三世代の家族の記憶や感情が描かれる
- 家という空間の中に、時間の流れや人の思い出が折り重なっていく
- 建築家ならではの視点で、「家」と「人の時間」を丁寧に結びつけている
紹介文では「建築小説」「家をめぐる物語」といった言葉も使われており、
まさに“建築と文学が交差する場所”を、小説という形で表現した作品だといえます。
選考のコメントやニュースでも、
- 「家に刻まれた記憶を描いた作品」
- 「建築士ならではの視点が活きている」
といった評価が目立ちます。
そもそも芥川賞ってどんな賞?
ここで少しだけ、芥川賞についても整理しておきます。
- 正式名称:芥川龍之介賞
- 内容:「新進作家による、もっともすぐれた純文学の短編・中編」に贈られる賞
- 主催:日本文学振興会
- 賞金:100万円+時計など
- 年2回(上半期・下半期)の選考
日本では、
- 一般向けの小説(エンタメ寄り)には「直木賞」
- 文学性の高い作品(純文学)には「芥川賞」
というイメージが強く、どちらも「受賞しただけで本が大きく話題になる」超有名な賞です。
その芥川賞を、専門職の建築士が、本業を続けながら獲ったという事実が、多くの人の興味を引いているわけですね。
建築士が芥川賞を獲った理由①
空間を見る「プロの目」が、小説の描写を深くする
建築士は、図面の上だけでなく、頭の中で
- 光の入り方
- 風の通り道
- 人の動き(動線)
- 将来の暮らし方の変化
を何度もシミュレーションします。
この「頭の中で空間を歩き回る」ような感覚は、小説で場面を書くときにも、そのまま使える力です。
『時の家』でも、
- 部屋の位置関係
- 窓から見える景色
- 家の中の“高低差”や“段差”
- 時間の経過による家の表情の変化
といったものが、自然な形で描かれていると評価されています。
読者は、文章を読んでいるだけなのに、
まるで自分もその家の中を歩き回っているような感覚になる。
これは「空間を立体的にイメージする建築士ならではの視点」が、小説の描写に深く入り込んでいるからだと考えられます。
建築士が芥川賞を獲った理由②
「時間の積み重ね」を扱う建築と、文学の相性のよさ
建築の現場では、よく「時間」という言葉が出てきます。
- 10年後、この家はどんな風に古びるか
- 子どもが大きくなったとき、この間取りは使いやすいか
- 街全体が変化したあと、この建物は景観の中でどう見えるか
つまり、建築は「時間が流れたあとの世界」をいつも想像する仕事でもあります。
実際に、鳥山さんのプロフィール紹介でも、
建築の現場で感じた、時間の積み重なりや人の記憶が物語に結びついていった
といった趣旨の説明がされています。
そして『時の家』は、その名のとおり「時間」と「家」がテーマ。
- 一軒の家に、三世代の記憶が折り重なる
- 家そのものが、“タイムカプセル”のような存在になる
という構造は、まさに建築で培った「時間をふくんだ空間の感覚」が、小説の形で結晶したものと言えるでしょう。
建築士が芥川賞を獲った理由③
人の暮らしを見つめてきたからこその「生活感」と「リアルさ」
建築士の仕事は、「図面を引くだけ」では終わりません。
- どんな家族構成なのか
- どこで食事をして、どこでくつろぐのか
- 何時ごろに家を出て、どう帰ってくるのか
- 将来、親と同居する可能性はあるか
など、家に住む人の暮らし方や性格まで含めて考える必要があります。
鳥山さんは、まさにこうした「人の暮らしを想像し続ける仕事」をしてきた人です。
その経験は、小説の中で
- 「この人は、こういう癖がありそうだ」
- 「こういう家に住む人なら、こんな悩みを持つだろう」
- 「こういう台所なら、こういう会話が生まれそうだ」
といった生活感のある人物描写につながっていきます。
芥川賞は「人間をどれだけ深く描けているか」も重要なポイントです。
建築士として積み重ねてきた“暮らしの観察力”が、そのまま文学的な説得力につながったことは、大きな強みだったと考えられます。
建築士が芥川賞を獲った理由④
「二足のわらじ」だからこそ書ける、現代の手触り
もうひとつ大きいのは、鳥山さんが“専業作家ではない”という点です。
- 平日は建築士として働く
- その合間や夜に小説を書く
- 家族との暮らし、自宅設計なども並行する
こうした生活は、決して余裕たっぷりではないはずです。
しかしそのぶん、現代の働く世代が感じている“忙しさ”や“もどかしさ”も、作品に自然とにじんでくると考えられます。
報道でも、鳥山さんが「建築士として働きながらデビュー作で新人賞を獲得した」と紹介されており、
「社会人になってからの挑戦で結果を出した作家」として、共感を呼んでいます。
読者や選考委員にとっても、
- “現役の建築士が書いた物語”
- “本業を持つ作家が見ている現実”
という点は、作品に新鮮さと説得力を与える要素だったはずです。
コラムや連載から見える「家」と「小説」へのまなざし
鳥山さんは、小説だけでなく、「家」や「建築」と「物語」の関係」についてのエッセイ・コラムも書いています。
たとえば、noteでの連載「家を書いて、小説を建てる」では、
- 自分たち夫婦で設計した家が完成したこと
- 家づくりのプロセスと、小説を書くことの共通点
- 空間と物語の両方を“組み立てていく”感覚
などが語られています。
タイトルからもわかるように、鳥山さんにとって
- 「家を書く」=物語の中に空間を立ち上げること
- 「小説を建てる」=言葉で構造をつくること
というイメージが、とても自然につながっていることがわかります。
ここからも、
建築と文学を、最初から「別もの」としてではなく、ひとつの延長線上として捉えている人
だということが伝わってきます。
同じように「本業×創作」を目指す人へのヒント
この記事を読んでいる方の中には、
- 「自分も本業を持ちながら、何か創作をしたい」
- 「今からだと遅いんじゃないか」
と感じている人もいるかもしれません。
鳥山まことさんのケースから、そんな人へのヒントをまとめると──(ここからは私の解釈です)
- 専門分野は、むしろ“創作のネタ”になる
- 建築なら空間や時間の感覚
- 介護なら人の老いとケアのリアル
- ITならネット社会の空気感
→ 自分の仕事でしか見えない世界は、強い武器になります。
- 30代からでも、評価の波は一気に来ることがある
- 鳥山さんも30代で新人賞→野間文芸新人賞→芥川賞と、一気に注目されました。
- 「学生のときに賞を取らなかったからもう遅い」ということは、必ずしもありません。
- 「二足のわらじ」だからこそ、書けるものがある
- 本業で見た現実、ストレス、喜び、葛藤……
- それらはすべて、物語の血肉になります。
- 小さな一歩(新人賞への応募など)から、一気に扉が開くこともある
- 鳥山さんの場合、「あるもの」で三田文学新人賞を受賞したことが、文壇での評価のスタートになりました。
まとめ
最後に、この記事の内容をぎゅっとまとめます。
今後、『時の家』の選評やインタビュー、講演などが増えれば、
「建築と文学の関係」について、さらに詳しい話も出てくるはずです。
まずは、
- プロフィールや経歴をざっくり押さえる
- 『時の家』を実際に読んでみる
ここから入ると、「建築士が書く芥川賞作品ってどんな世界なんだろう?」という疑問が、きっとおもしろい読書体験につながっていくと思います。


