201cmの長身から放つ3ポイントシュート。井上宗一郎選手の魅力はそれだけじゃない。B1からB2への移籍、日本代表での活躍。なぜ彼が注目されているのか、その理由に迫ります。
なぜ日本代表に選ばれたの?
井上宗一郎選手が日本代表に選ばれた理由は、主に2つあります。
1つ目は、201cmという長身と3ポイントシュートの組み合わせです。この特徴は、現代バスケットボールで重要視される「ストレッチ4」と呼ばれるポジションにぴったりです。ストレッチ4とは、パワーフォワードでありながら3ポイントシュートが得意な選手のことを指します。
2つ目は、トム・ホーバス監督の戦術に合っていたことです。ホーバス監督は、コート上の5人全員が3ポイントシュートを打てることを求める「ファイブアウト」という戦術を採用しています。井上選手はこの戦術にうってつけの選手でした。
実際に、2022年7月のFIBAアジアカップでは、井上選手は50%という高確率で3ポイントシュートを決めています。これは、日本代表での活躍を示す具体的な例と言えるでしょう。
井上選手自身も、「ホーバス監督が求めているバスケットが、自分の力を最大限発揮できるスタイルだった」と語っています。このことからも、井上選手の特徴と日本代表の戦術がうまくマッチしていたことがわかります。
B1からB2チームに移籍したのはなぜ?
井上選手がB1リーグのサンロッカーズ渋谷からB2リーグの越谷アルファーズに移籍した理由は、プレー時間を求めてのことでした。
サンロッカーズ渋谷では、2022-23シーズン、井上選手の平均出場時間は1試合わずか5分51秒でした。これは、選手としての実力を発揮するには十分な時間とは言えません。
一方、越谷アルファーズに移籍した2023-24シーズンでは、レギュラーシーズン50試合に出場し、平均出場時間は14分42秒に増加しました。さらに、プレーオフでは7.7得点3.2リバウンドを記録し、3ポイント成功率も52.4%と高い数字を残しています。
井上選手は移籍について、
「シュートを決めても、決めなくても試合に出ること自体が本当に楽しくて。そのなかで学べることもあって、自分はバスケットボールが好きなので、好きなことで仕事させていただいている。そこに関しては本当に幸せなシーズンだった」
と語っています。
この移籍により、井上選手は実力を発揮する機会を増やし、選手としての成長を加速させることができたと言えるでしょう。
日本代表での活躍はどうなの?
井上選手の日本代表での活躍は、主にワールドカップ予選とアジアカップで見られました。
2022年7月のFIBAアジアカップでは、3ポイントシュートの成功率が50%と高い数字を記録しました。また、同年のワールドカップ予選Window 3では、チャイニーズ・タイペイ戦で18分59秒の出場時間で14得点、6リバウンド、2ブロックを記録し、勝利に貢献しています。
しかし、2023年のFIBAバスケットボールワールドカップ本大会では、残念ながらあまり出場機会を得られませんでした。ドイツ戦で1分46秒、オーストラリア戦で1分40秒の出場にとどまりました。
これらの結果から、井上選手は予選やアジア大会では一定の活躍を見せているものの、世界大会ではまだ主力としての地位を確立できていないことがわかります。
今後、2024年のパリオリンピックや2025年のアジアカップに向けて、井上選手がどのように成長し、日本代表での役割を拡大していくかが注目されています。
ストレッチ4って何?
ストレッチ4とは、現代バスケットボールで重要視されるポジションの一つです。具体的には、以下の特徴を持つ選手を指します。
- パワーフォワード(PF)のポジションを担当
- 3ポイントシュートが得意
- 身長が高く、リバウンドも取れる
従来のパワーフォワードは、主にゴール付近でプレーする大型選手でした。しかし、ストレッチ4は外側からも得点を取れるため、相手のディフェンスを広げる(ストレッチする)効果があります。これにより、チームメイトがドライブしやすくなったり、インサイドでの1対1の機会が増えたりするのです。
井上選手は、201cmという身長と3ポイントシュートの正確さを兼ね備えており、まさにストレッチ4の典型と言えます。
現代バスケットボールでストレッチ4が重要視される理由は、以下の通りです。
- オフェンスの多様性を高める
- スペーシングを改善し、チームメイトの動きやすさを向上させる
- 相手ディフェンスの布陣を崩す
このように、ストレッチ4は現代バスケットボールの戦術において非常に重要な役割を果たしているのです。
大学時代の実績は?
井上選手の大学時代の実績は、主に筑波大学での活躍が挙げられます。
最も大きな成果は、大学2年生時の2019年に開催された第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)での優勝です。この大会は日本の大学バスケットボール界最高峰の大会であり、ここでの優勝は井上選手のキャリアにおいて大きな意味を持ちます。
続く大学3年生時の2020年のインカレでは、チームは準優勝。個人としては優秀選手賞を受賞しており、トップレベルの選手として認められていたことがわかります。
大学4年生となった2021年のインカレでは、チームは3位という結果でした。しかし、準々決勝の日本大学戦では、14点差を追う展開から4Q終了間際に井上選手の3ポイントシュートで同点に追いつき、2度の延長の末に勝利するという劇的な試合を演じています。この試合で井上選手は22得点(3ポイント3本含む)、8リバウンドを記録し、チームの勝利に大きく貢献しました。
これらの実績は、井上選手が大学時代から3ポイントシュートの能力とビッグマンとしての役割を両立させ、チームの中心選手として活躍していたことを示しています。この経験が、プロ入り後の日本代表選出にもつながったと考えられます。
プロ選手としての課題は?
井上選手のプロ選手としての主な課題は、B1リーグでの経験不足と日本代表での立ち位置の確立です。
B1リーグでの経験に関しては、サンロッカーズ渋谷時代の2022-23シーズンでは、42試合の出場で1試合平均5分51秒のプレータイムにとどまりました。これは、トップレベルの試合経験を積むには十分とは言えません。
この課題に対して、井上選手はB2リーグの越谷アルファーズに移籍することで解決を図りました。2023-24シーズンでは、レギュラーシーズン50試合に出場し、平均出場時間は14分42秒に増加。プレーオフでも全6試合に出場し、7.7得点3.2リバウンドを記録しています。
日本代表での立ち位置については、予選やアジア大会では一定の活躍を見せているものの、2023年のFIBAバスケットボールワールドカップ本大会ではあまり出場機会を得られませんでした。世界トップレベルの大会で主力として活躍するためには、さらなる成長が必要です。
越谷アルファーズの安齋竜三ヘッドコーチは、井上選手について「まだまだ伸びるし、伸びなきゃいけない。(それは)日本代表のためにも、宗一郎本人のためにも。もっともっとやれると思います。やりきればもっともっと良くなると思うし、B1でも全然通用すると思います」と語っています。
これらの課題を克服するためには、B2リーグでの経験を活かしてさらに実力を磨き、B1リーグでも通用する選手になることが重要です。同時に、日本代表での役割を明確にし、世界レベルの大会でも活躍できる選手を目指す必要があるでしょう。
今後の目標は?
井上選手の今後の目標は、主にB1昇格への意気込みと日本代表での更なる活躍の2点に集約されます。
B1昇格については、越谷アルファーズ加入時に「ともにB1昇格という大きな目標を達成するため身を粉にして頑張ります」と語っています。この目標は2023-24シーズンで達成され、2024-25シーズンからB1リーグでプレーしています。
B1リーグでの目標としては、まずはレギュラーとして定着することが挙げられるでしょう。2025年2月17日現在、越谷アルファーズはB1リーグで11勝26敗と苦戦していますが、井上選手の平均出場時間は約22分と増加しています。この経験を活かし、チームの勝利に貢献することが当面の目標となるでしょう。
日本代表での更なる活躍については、2024年のパリオリンピックや2025年のアジアカップなどの国際大会で重要な役割を果たすことが目標となります。特に、2023年のワールドカップ本大会であまり出場機会を得られなかったことを踏まえ、代表チームでの地位を確立することが重要です。
安齋竜三ヘッドコーチは井上選手について「日本代表のためにも、宗一郎本人のためにも。もっともっとやれると思います」と語っており、さらなる成長への期待が高まっています。
井上選手自身も「この経験を糧にして、次につなげていこうと思います」と語っており、B1リーグでの活躍と日本代表での重要な役割の獲得を目指して日々努力を重ねていることがうかがえます。
バスケットボール選手としての魅力は?
井上宗一郎選手のバスケットボール選手としての魅力は、主に2つの点に集約されます。
1つ目は、201cmの長身を生かしたプレーです。この身長は、日本人選手としては非常に高く、リバウンドやブロックショットなどで大きな武器となります。例えば、2023-24シーズンのB2リーグでは、1試合平均2.1リバウンドを記録しています。この数字は、チームの防御力向上に大きく貢献しています。
2つ目は、3ポイントシュートの正確さです。井上選手は「ストレッチ4」と呼ばれるポジションを務めており、大型選手でありながら外角からの得点力も持ち合わせています。2022年7月のFIBAアジアカップでは、3ポイントシュートの成功率が50%という高い数字を記録しました。また、2023-24シーズンのB2プレーオフでも、3ポイント成功率52.4%という素晴らしい成績を残しています。
これらの特徴を併せ持つ選手は日本では珍しく、そのことが井上選手の大きな魅力となっています。長身を活かしたインサイドプレーと、正確な3ポイントシュートを両立できる選手は、現代バスケットボールにおいて非常に重要な存在です。
さらに、井上選手は試合日には誰よりも早く会場入りし、練習に励むという姿勢も持っています。この努力家の一面も、ファンや指導者から高く評価されている点です。
このように、身体的な特徴と技術、そして努力を惜しまない姿勢が、井上選手のバスケットボール選手としての大きな魅力となっているのです。
家族や私生活について
井上宗一郎選手の家族や私生活については、公開されている情報が限られていますが、いくつか興味深い点があります。
家族との関係については、両親が井上選手のバスケットボール選手としてのキャリアを強くサポートしていることがわかっています。特に、大学時代の試合には両親が頻繁に応援に来ていたという情報があります。
バスケットボール以外の一面としては、井上選手は読書が趣味だと言われています。特に、自己啓発本や心理学関連の本を好んで読むそうです。これは、メンタル面の強化にも役立っているのではないかと推測されます。
ファンとの交流については、SNSを通じて積極的に行っています。特に、Instagramでは試合の様子や日常の一コマを投稿し、ファンとのコミュニケーションを大切にしています。
また、地域貢献活動にも熱心で、所属チームの越谷アルファーズが行う地域のバスケットボール教室などにも積極的に参加しています。これらの活動を通じて、バスケットボールの普及や地域との結びつきを深めているようです。
プライベートでの過ごし方については、休日にはチームメイトと食事に行ったり、映画を見たりするなど、リラックスした時間を過ごしているようです。
このように、井上選手は家族のサポートを受けながら、バスケットボール選手としての活動と私生活のバランスを取りつつ、ファンや地域との交流も大切にしていることがわかります。
これからの日本バスケットボール界での役割は?
井上宗一郎選手の日本バスケットボール界での役割は、主に2つの観点から期待されています。
1つ目は、若手選手としての期待です。井上選手は1998年生まれで、2025年現在27歳です。バスケットボール選手としてはまだ若く、これからの成長が期待されています。特に、201cmという身長と3ポイントシュートの正確さを併せ持つ選手は日本では珍しく、この特徴を活かした活躍が期待されています。
日本バスケットボール協会の技術委員会も、井上選手を含む若手選手の育成に力を入れています。2024年のパリオリンピック以降の日本代表チームの中心選手として、井上選手の名前が挙がっているほどです。
2つ目は、日本代表の未来を担う存在としての役割です。井上選手は「ストレッチ4」と呼ばれるポジションを務めており、これは現代バスケットボールにおいて非常に重要な役割です。日本代表チームのトム・ホーバス監督が採用している「ファイブアウト」という戦術にも、井上選手のような選手が不可欠です。
実際に、2022年のFIBAアジアカップでは、井上選手は50%という高確率で3ポイントシュートを決めており、日本代表チームの戦力として重要な役割を果たしました。
今後、世界レベルの大会でも活躍できる選手に成長することで、日本バスケットボール界全体のレベルアップにつながることが期待されています。
また、井上選手の活躍は、若い世代のバスケットボール選手にとっても大きな刺激になるでしょう。身長が高くても3ポイントシュートが得意な選手が活躍する姿は、バスケットボールの可能性を広げ、より多くの子どもたちがバスケットボールに興味を持つきっかけになるかもしれません。
このように、井上選手はこれからの日本バスケットボール界において、若手のリーダーとして、また日本代表の中心選手として、重要な役割を担うことが期待されています。彼の成長と活躍が、日本バスケットボール界全体の発展につながることでしょう。