Q1. 申告敬遠って、そもそも何?
A. ピッチャーが4球わざと外すのではなく、監督が審判に合図(4本指を立てるなど)すると、投球なしに打者は自動的に一塁になります。
スコア上は「IBB(Intentional Base on Balls)」と記録。2017年に導入され、試合進行をスピードアップする狙いがありました。
ルールのイメージ
- 合図 → 審判が「タイム」 → 打者は一塁へ
- その結果押し出しになる場面(満塁など)もあります。
Q2. 申告敬遠は“卑怯”なの?それとも“正しい作戦”?
A. 感情としては「勝負して!」と言いたくなる一方で、プロの現場は“確率の勝負”です。
超一流打者(例:大谷)に長打される確率と、一塁を埋めて後続と勝負するときの失点確率を比べ、総合的に得点期待値が下がると判断すれば申告敬遠は“合理的な最適解”になり得ます。
実際、Game3後の分析でも、特定のカウントやアウトカウントでは申告敬遠が不利という指摘もあり、状況次第で評価は変わります。
Q3. なんで最近(特にポストシーズン)申告敬遠が多く見えるの?
A. 大きく3つの理由があります。
- 打者のレベル差が極端な場面が増えた
データ活用で相性・コンディションが細かく分かり、「ここはどうしても一発を避けたい」がハッキリ可視化されます。特に球場・投手交代・守備シフトまで含めて最小失点を目指す場面で、IBBの価値が上がります。 - “投げずに歩かせられる”ので副作用が減った
2017年以降は暴投・パスボールのリスクがゼロ。投球がないためタイムロスも最小。これが申告敬遠の使いどころを広げました。 - 大谷翔平のような“ゲームを壊す打者”の存在
2025年WS第3戦での大谷は2本塁打・2二塁打→以後5四球(うち4申告敬遠)と、出塁9度の歴史的パフォーマンス。相手(ブルージェイズ)は「もう勝負しない」という明確な選択を取りました。
Q4. 回数制限はある?同じ選手を何回でも歩かせられるの?
A. MLBには回数制限がありません。公式用語集や規則書には上限の記載がなく、実際に1試合で4回の意図的四球という前例もあります(※ポストシーズンでの4回は大谷が史上初)。
過去にもバリー・ボンズがシーズン・通算のIBB記録を更新しており、「何度でも申告敬遠できる」が実務上の答えです。
参考:ボンズの記録
シーズン120(2004年)/通算668など、IBBにまつわる主要記録の多くを保持。極端な“勝負回避”が成立してきた事実を示します。
Q5. 申告敬遠の“デメリット”は?
A. 塁を埋める=走者を増やすことです。
- ダブルプレーは狙いやすくなりますが、ヒット1本で複数走者が帰る可能性も上がります。
- 後続が強打者(例:ベッツ、フリーマン)だと、むしろ相手の勝率が上がるという分析も。状況(アウトカウント、塁状況、対戦成績)で損得は大きく揺れます。
Q6. 実行の手順と“ボールは生きてる?死んでる?”問題
A. 手順はシンプル。監督が合図→審判がタイム→打者は一塁へ。
この扱いは“アワード(付与)”で、他走者は“押し出しが必要なときだけ”進塁します。実務上はデッドボール(ボールデッド)扱いで再開と解釈すればOK。
補足:投球しないので、暴投で走者が進む心配はゼロ。ただし満塁なら押し出しで1点入ります。
Q7. 申告敬遠は投手の“最低打者対戦ルール(3人ルール)”を満たす?
A. カウントします。申告敬遠でもその打者と対戦したと見なされ、最低打者数の要件に算入されます。
Q8. 大谷翔平ケース:なぜ“4度の申告敬遠”が起きたの?
A. Game3前半での破壊力が規格外だったからです。
- 2本塁打・2二塁打=長打率が異常 → 一発を最優先で回避したい
- 走者状況:点をやりたくない局面が続いた
- 後続の質:ドジャースはベッツ、フリーマン級が控え、どちらを選ぶかの“究極の二択”に。結果、「大谷とだけは勝負しない」に振れたわけです。
Q9. 「申告敬遠は増えすぎ。ルールを変えるべき?」という意見は?
A. アイデアとして「1試合1人1回まで」などの制限案は昔から議論されてきました。ただし公式には採用されていません。
選手間・ファン間でも是非が割れるテーマで、戦略の自由度とエンタメ性のバランスがポイントです。
Q10. よくある勘違いをサクッと修正
まとめ:大谷翔平が教えてくれる“意思決定”の本質
- 申告敬遠は感情と確率のせめぎ合い。
- 上限はないため、極端な選択が現実に起こり得ます。
- ただし常に得とは限らない。後続打者の質・走者状況・回とアウトカウントまで含めた総合判断が鍵です。
- 2025年WS第3戦は、「勝負を避ける」という決断が歴史的数字(大谷の9度出塁、4度の申告敬遠)として刻まれました。確率を読む力が、ポストシーズンの1球・1点を左右する──その最前線の教材が、今の大谷なのです。

