ABC王者から見る「強さ」と「不安要素」
2025年の漫才シーズン、
「今年のM-1はエバースで決まりじゃない?」
こんな声を、Xやお笑いファンのあいだでよく見かけます。
実際、エバースは
- 2024年 M-1グランプリ決勝4位(3位と1点差)
- 2024年 NHK新人お笑い大賞 優勝
- 2025年 ABCお笑いグランプリ優勝(第46回大会)
という、今いちばん波に乗っている戦績です。
この記事では、
を解説していきます。
エバースってどんなコンビ?
まずは基本情報から、サクッと整理しておきましょう。
活動の中心は、
東京・渋谷や神保町のよしもと漫才劇場。
いわゆる「東京漫才」のど真ん中で戦ってきたコンビです。
ネタのスタイル
エバースの漫才をざっくり言うと、
「会話のテンポはゆるいのに、ボケの密度が高い、東京しゃべくり漫才」
といったイメージです。
- 佐々木の、ちょっと抜けたようで計算されたボケ
- 町田の、落ち着いていて優しいツッコミ
- ふたりの距離感からにじむ「仲の良さ」
この3つが合わさって、「ずっと見ていたくなる会話」が続いていきます。
雑に一言でまとめるなら、
「うるさくないのに、ずっと笑えるコンビ」
という感じです。
賞レースでの“右肩上がり”がエグい
エバースが「M-1大本命」と言われる最大の理由は、
ここ数年の“右肩上がりっぷり”です。
主な戦績だけ並べると、こうなります。
- 2023年
- M-1グランプリ 準決勝進出
- 2024年
- ABCお笑いグランプリ 決勝進出
- NHK新人お笑い大賞 優勝
- M-1グランプリ 決勝進出&4位(3位と1点差)
- 2025年
- 上方漫才協会大賞 文芸部門賞 受賞
- ABCお笑いグランプリ 優勝(第46回大会)
しかも、M-1公式サイトを見ると、
2025年大会も順調に勝ち上がっているのが分かります。
2023:準決勝まで
2024:決勝4位
2025:ABC王者の肩書きを引っさげてM-1へ
この「段階を踏んで強くなっている」感じが、
いかにも“優勝するコンビのパターン”なんですよね。
ABC王者になった意味とは?
ABCお笑いグランプリってどんな大会?
ABCお笑いグランプリは、
- デビュー10年以内の若手芸人の登竜門
- 主催は朝日放送(M-1のテレビ局と同じ系列)
- 歴代優勝者に
- ダウンタウン
- ナインティナイン
- 中川家
- ますだおかだ
- フットボールアワー
- 千鳥
- かまいたち
- 霜降り明星
など、今の“お笑いスター”がズラリ
という、超ガチな大会です。
正直、
「ここを獲ったコンビは、その後も売れることが多い」
と言っていいレベル。
そんな大会で、2025年、エバースが優勝しました。
決勝では、
- ファイナルに残った3組のうち
- 家族チャーハン
- かが屋
- エバース
- そのなかで、エバースは700点満点中667点の高得点で王者に。
「実力で取り切った」優勝だったことが分かります。
ABC王者=M-1優勝候補の“証明書”?
ABCの歴代王者から、
のちにM-1で優勝・活躍したコンビが多数出ています。
- 千鳥(ABC王者 → テレビスターへ)
- かまいたち(ABC王者 → M-1準優勝)
- 霜降り明星(ABC王者 → M-1優勝)
など、「ABC→M-1で暴れる」というルートは、
すでに何度も起きている“王道パターン”です。
そこにエバースが加わった、ということは
「M-1でも優勝争いに絡めるだけの実力は、もう証明された」
と見ていい、ということになります。
エバースが「M-1 2025大本命」と言われる5つの強さ
では、もう少し中身に踏み込んで、
「なぜここまで大本命と言われるのか?」を分解してみます。
ネタの“骨組み”がとにかく強い
M-1のような大会では、
- その場のウケ
- テンション
- ノリ
だけでは、決勝まで勝ち残れません。
必要なのは、
「何度見ても面白い“骨組み”がしっかりしたネタ」
です。
エバースは、
- 設定がシンプル
- 会話の流れが自然
- 伏線や繰り返しの入れ方がきれい
という、“構成のうまさ”が際立っています。
2024年のM-1決勝ネタも、
奇をてらった設定ではなく、
「誰でも状況がイメージしやすい」日常系の題材でした。
それでいて、後半にかけて笑いをどんどん積み上げていくので、
審査員にも視聴者にも伝わりやすい、という強みがあります。
ボケとツッコミの“温度差”がちょうどいい
エバースの魅力は、ふたりのキャラクターにもあります。
- 佐々木:一見ふわっとしているけど、ボケのアイデアが鋭い
- 町田:冷静で優しいツッコミだが、しっかり芯がある
この「温度差」が、
漫才に心地よいメリハリを生んでいます。
ガヤガヤした“体育会系のうるささ”ではなく、
「落ち着いているのに、会話のテンポでどんどん笑わせてくる」
このスタイルは、
- テレビの前の一般視聴者
- 審査員
- 劇場のお客さん
どの層にも届きやすいのが強みです。
賞レースを戦い抜いてきた“経験値”
2023年から2025年にかけて、
- M-1準決勝 → 決勝
- NHK新人お笑い大賞 優勝
- ABCお笑いグランプリ 優勝
と、賞レースをフル回転で戦ってきたエバース。
Number Webのインタビューでは、
「他の賞レースにもほとんど決勝に行っていて、とにかくネタの消費が激しい1年だった」
と語るほど、賞レースの場数を踏んでいます。
そして、2025年のABC決勝では、
以前は“緊張しい”だった2人が、
ほとんど緊張を感じさせない落ち着いた漫才を披露した、
という分析も出ています。
つまり、
「大舞台での緊張」という、若手の最大の弱点を克服しつつある
ということです。
M-1決勝で4位を経験していることも含め、
「本番で実力を出し切る力」は、
他の若手コンビより一歩リードしていると言えます。
ネタの“ストック”が豊富
ここ数年のエバースは、
- 各賞レースで違うネタを披露
- M-1準々決勝・準決勝でやったネタを、決勝ではあえて使わなかった
など、「強いネタを何本も持っている」ことがハッキリしています。
2025年のABC決勝でも、
過去のネタをブラッシュアップして優勝したうえで、
インタビューでは
「M-1にかけたいネタは別に用意してある」
と話しているのもポイント。
つまり、
ABCで2本、M-1用にさらに複数本、
「勝てるネタ」がストックされている可能性が高い
ということです。
M-1の決勝は
- 決勝1本目
- 最終決戦(上位3組)
と、最大2本のネタが必要です。
そこで、
- 1本目:確実にウケる「堅いネタ」
- 2本目:爆発力のある「一番強いネタ」
という使い分けができるコンビは、
やはり優勝候補として有利になります。
メディアからも「優勝候補」として認知されている
2025年になると、
エバースは各メディアのインタビューでも
「M-1優勝候補」「東京漫才の新しいスター」
といった言葉で紹介されることが増えてきました。
また、
- 冠特番
- ポッドキャスト
- ラジオやイベントへの出演
など、露出も着実に増えています。
これは裏を返すと、
業界内でも「そろそろ天下を取ってもおかしくないコンビ」と見なされている
ということ。
M-1は単なる“面白さの大会”であると同時に、
- 「今年、スターにしたいコンビ」を世に出す場
でもあります。
その意味で、エバースは
「M-1の“顔”になっても違和感がないポジション」
に、すでに立っていると言えるでしょう。
それでも残る「3つの不安要素」
ここまで読むと、
「もうエバースで決まりじゃん!」
と言いたくなりますが、
もちろん不安ゼロではありません。
ここからは、ファン目線で感じる“怖さ”もまとめておきます。
期待値が上がりすぎている問題
1つ目は、
「期待されすぎている」
という点です。
- 2024年のM-1で強烈なインパクト
- NHK新人お笑い大賞&ABC優勝
- メディアでも“優勝候補”扱い
ここまで来ると、
視聴者も審査員も、
「エバースなら、もっと笑わせてくれるはず」
と、知らないうちにハードルを上げてしまいます。
M-1は“期待値とのギャップ”がシビアな大会です。
- 無名コンビが「思ったより面白い」と高く評価される
- 有名コンビが「今年はそこまででも…」と伸び悩む
こうした現象は、毎年のように起こっています。
エバースが2025年のM-1で戦う相手は、
他のコンビだけでなく、
「自分たちへの、世間の期待」
でもあるのです。
ネタ順・会場の空気という“運”の要素
2つ目は、「運」の問題です。
M-1は
- 出番順
- 会場の空気
- 前後のコンビとの相性
によって、ウケ方がかなり左右されます。
たとえば、
- 前のコンビがめちゃくちゃウケて、会場が疲れた直後
- あるいは、変化球ネタの後で、構成派の漫才をやる
など、同じネタでも「置かれた順番」によって、
評価が変わることは多いです。
エバースは、骨組みのしっかりした正統派寄りの漫才なので、
- 会場が“奇抜なネタで大盛り上がり”した直後
- あるいは“しっとり系”が続いた後
など、空気によっては、
本来の実力より少し抑えられて見えてしまう可能性もあります。
ここは、もう祈るしかない部分でもあります。
強豪コンビが“鬼のように多い”2025年組
3つ目は、
「2025年のM-1自体、レベルが高すぎる」
という点です。
ここ数年のM-1は、
毎年のように
- 令和ロマン
- 真空ジェシカ
- さや香
- カベポスター
- 他多数…
と、「今年優勝してもおかしくないコンビ」が複数いる状態です。
そこに、
- 去年ブレイクした中堅どころ
- 今年“覚醒”した新顔
まで加わるので、
「エバースがどれだけ仕上げてきても、同じくらい強いライバルがいる」
という状況になります。
特に、
- 爆発力タイプのコンビが、決勝でドカンとハマった場合
- ネタ順がうまくハマったコンビが出た場合
には、
「安定して面白いエバース」が、
“相対評価で”押し切られてしまう可能性もゼロではありません。
それでも「今年、エバースを観ないのはもったいない」
ここまで、
- エバースの強さ
- ABC王者としての説得力
- それでも残る不安要素
を見てきました。
冷静にまとめると、
- ネタの構成力・キャラ・経験値・ストック、どれを取ってもトップクラス
- NHK新人お笑い大賞&ABC王者という“実績の裏付け”も十分
- あとは「期待値」「運」「ライバル」という、避けられない要素との勝負
という状況です。
つまり、
「優勝できるだけの武器は揃った。
あとは当日の流れ次第」
という、
まさに“本命コンビ”の立ち位置にいると言えます。
視聴者としての楽しみ方ガイド
最後に、視聴者としての楽しみ方を、
簡単にまとめておきます。
2024年のM-1を見返しておく
まずは、2024年のM-1決勝でのエバースのネタを、
もう一度見返しておくと、2025年との比較がしやすくなります。
- ボケの量
- ツッコミの間
- オチまでの流れ
などを意識して見ると、
「今年はどこが進化しているのか」が分かりやすいです。
ABCお笑いグランプリのネタとの違いを楽しむ
次に、2025年のABCお笑いグランプリ決勝のネタもチェック。
- ABCでやっていたネタ
- M-1で温存していると言われるネタ
この“使い分け”を想像しながら見ると、
お笑いファンとして、かなりニヤニヤできます。
「本命が勝つか、波乱が起きるか」を見届ける
2025年のM-1は、
- エバースという“本命中の本命”がいる年
でありながら、 - それでもどう転ぶか分からないほど、層が厚い年
でもあります。
だからこそ、
「きっちり本命が取り切るのか」
「それとも、また新しいスターが生まれるのか」
その瞬間を見届ける価値がある大会になりそうです。
まとめ:エバースは「優勝しても驚かない」段階に来た
改めて一文でまとめるなら、
エバースは、
「優勝してもまったく驚かないレベルまで来た、2025年M-1の大本命」
です。
ただし、
- 期待値の高さ
- ネタ順や会場の空気
- 強力なライバルたち
といった要素もあるため、
「絶対に勝つ」ではなく、
「勝っても負けても“主役級の1年”になる」
そんな位置にいるコンビだと言えるでしょう。



