ジャンタルマンタルがマイルCSを完勝し、「春秋マイル完全制覇」「芝マイルGI完全制覇」という歴史的な偉業を達成しました。
この記事では、
- ジャンタルマンタルという馬の「強さの正体」
- 「春秋マイル完全制覇」と「芝マイルGI完全制覇」がどれだけスゴいことなのか
を解説していきます。
ジャンタルマンタルってどんな馬?
まずは基本プロフィールから、かんたんに整理しておきましょう。
- 馬名:ジャンタルマンタル(Jantar Mantar)
- 性別:牡(オス)
- 生年月日:2021年3月21日生まれ(4歳)
- 毛色:黒鹿毛(ほぼ黒に近い茶色)
- 調教師:高野友和(栗東)
- 馬主:社台レースホース
- 生産者:社台ファーム(北海道・千歳市)
- 父:Palace Malice(パレスマリス)
- 母:インディアマントゥアナ(母父 Wilburn)
2023年の2歳時には「朝日杯フューチュリティステークス」を勝ち、JRA賞最優秀2歳牡馬に選ばれた実績馬です。
名前の由来も“ロマン枠”
「ジャンタルマンタル」というちょっと不思議な響きの名前。
実はインドにある天体観測施設「ジャンタル・マンタル」が由来です。
- 星の動きや時間を測るための巨大な石造りの観測施設
- 世界遺産にも登録されている歴史的な建物
空や星を読み解く施設の名前をつけるあたり、「未来を切り開くスター」になってほしい、という関係者の思いも感じます。
これまでの主なGⅠ実績
ジャンタルマンタルが制した芝マイルGⅠを整理すると、こうなります。
- 朝日杯フューチュリティステークス(2歳・阪神1600m)
- NHKマイルカップ(3歳・東京1600m)
- 安田記念(3歳以上・東京1600m)2025
- マイルチャンピオンシップ(3歳以上・京都1600m)2025
2歳・3歳・古馬(3歳以上)と、世代をまたいでマイルGⅠを勝ち続けています。
特に2025年は
- 春:安田記念を完勝 →「春のマイル王」に
- 秋:マイルチャンピオンシップを完勝 →「秋のマイル王」に
となり、“同一年春秋マイルGⅠ制覇”という大仕事をやってのけました。
さらにすごいのは、
JRAの芝マイルGⅠ(牡馬も牝馬も出られるレース)4つをすべて勝った史上初の馬
だという点です。
2025年・春と秋のレース内容をざっくり振り返る
安田記念2025:休み明けで“横綱相撲”の完勝
2025年の安田記念は、GⅠ馬がズラッと並んだ豪華メンバー。
その中でジャンタルマンタルは2番人気に推されました。
レースの流れをかんたんにいうと――
- スタートを決めて好位3番手あたりを楽に確保
- ペースはGⅠにしてはやや遅め(スローペース)
- 直線で早めに先頭へ → そのまま押し切って完勝
- 勝ちタイム:1分32秒7(良馬場)
- 2着:ガイアフォース
- 3着:ソウルラッシュ
「危なげない」「横綱相撲」という言葉がピッタリのレース内容でした。
ポイントは、
- スローペースでも折り合いバッチリ
- 早め先頭でプレッシャーを受けても、最後まで脚が鈍らない
という“総合力”の高さです。
マイルチャンピオンシップ2025:ハイレベルメンバーを完封
秋のマイル王決定戦マイルチャンピオンシップは、京都芝1600m。
連覇を狙うソウルラッシュや、春の安田記念2着ガイアフォース、さらに英国からドックランズなど、近年でもトップクラスのメンバーが集まりました。
その中でジャンタルマンタルは1番人気。
レースの流れは――
- 好スタートから3番手の好位へ
- 逃げ馬トウシンマカオを見ながら理想的なポジション
- 4コーナーで手応え抜群のまま前をとらえに動き
- 直線入り口で先頭へ → 後続を突き放してゴール
- 勝ちタイム:1分31秒3(良)
- 2着:ガイアフォース(1と3/4馬身差)
- 3着:ウォーターリヒト
春の安田記念に続き、ここでも
- “好位から早めに抜け出してそのまま押し切る”
という王道の勝ち方。
しかも京都はこれで3戦3勝。
「コースを選ばない万能さ」に加えて、「京都との相性の良さ」も見せつけました。
ジャンタルマンタルの“強さの正体”を3つに分解してみる
強さ①:レースセンスが高すぎる
ジャンタルマンタルの最大の武器は、“レースセンスの高さ”です。
具体的には、
- スタートが上手 → 前の位置を取りやすい
- かかりにくく、折り合いがつきやすい → 無駄に力を使わない
- 直線での反応が速く、早め先頭でもバテない
という、「真面目で上手な競走馬」の典型。
マイル戦はペースが速くなりやすく、
- スタートで後手を踏む
- 折り合いを欠いて早めにガス欠
といった形で自滅する馬も少なくありません。
その中で、ジャンタルマンタルは
「いつも大きなミスをしない」
という安定感が光っています。
強さ②:抜群の“スピード持続力”
マイル戦では
- 一瞬の切れ味(瞬発力)
- 長くいい脚を使う持続力
のどちらかに偏る馬が多いですが、ジャンタルマンタルは
「そこそこ切れて、しかも長く脚を使える」
タイプです。
安田記念もマイルCSも、
- 4コーナーあたりからジワッと加速
- 直線では後続が迫ってきても、最後まで脚いろが鈍らない
という内容で勝っています。
これは
- 父Palace Maliceが持つスピードとパワー
- 母系が持つスタミナ
がちょうどいいバランスで伝わっているから、とも言われます。
強さ③:精神面の安定と、“勝ち切るメンタル”
GⅠで何度も勝てる馬は、能力だけでなく「メンタルの強さ」も必要です。
- 大観衆の中でも冷静に走れるか
- プレッシャーのかかる1番人気で力を出し切れるか
- 海外遠征や敗戦を経験しても、またGⅠで立て直せるか
ジャンタルマンタルは、香港マイルでの大敗後、半年ぶりの実戦で安田記念を勝ち、そこからマイルCSまで一気に駆け上がってきました。
普通なら「終わったのでは?」と噂されてもおかしくない状況から、
しっかり立て直してGⅠを連勝
しているあたり、精神面のタフさも一級品と言えます。
「春秋マイル完全制覇」ってどれくらいすごい?
ここで、今回のブログタイトルにもある
「春秋マイル完全制覇」
の意味をしっかり整理しておきましょう。
春のマイルGⅠ=安田記念
- 開催:東京競馬場 芝1600m
- 出走条件:3歳以上
- 春のマイル王決定戦
あらゆる距離・路線からトップホースが集まるため、日本でも屈指のハイレベルGⅠと呼ばれます。
ジャンタルマンタルはここを“横綱相撲”で完勝しました。
秋のマイルGⅠ=マイルチャンピオンシップ
- 開催:京都競馬場 芝1600m
- 出走条件:3歳以上
- 秋のマイル王決定戦
直線だけでなく、3コーナー~4コーナーの下り坂からスピードに乗せる技術が必要で、「騎手の腕」も試されるコースです。
ここでもジャンタルマンタルは、
- 好位からの正攻法
- 直線入り口で先頭
- 後ろを完封
という完勝パターンを見せています。
同一年で安田記念とマイルCSを両方勝つ難しさ
春と秋でマイルGⅠを制覇するのがなぜ難しいかと言うと――
- コースがまったく違う(東京と京都)
- 相手関係もガラッと変わる
- 馬のコンディションを春と秋の両方でピークに持っていくのが超難しい
からです。
同じ距離1600mといっても、
- 東京:長い直線で末脚比べになりやすい
- 京都:コーナーワークと下り坂からの加速が重要
と、求められる能力がかなり違います。
それを同じ年に両方クリアしたジャンタルマンタルは、
「どんな条件になってもマイルなら最強クラス」
であることを証明したと言っていいでしょう。
「芝マイルGI完全制覇」の意味と歴史的価値
さらにジャンタルマンタルが打ち立てたのが、
JRAの芝マイルGI“完全制覇”
という記録です。
ここでいう「芝マイルGI」とは、
- 朝日杯フューチュリティステークス(2歳・阪神1600m)
- NHKマイルカップ(3歳・東京1600m)
- 安田記念(3歳以上・東京1600m)
- マイルチャンピオンシップ(3歳以上・京都1600m)
の4つです(牡馬・牝馬が一緒に走れるマイルGⅠ)。
この4つを全て勝った馬は、ジャンタルマンタルが史上初。
しかも、
- 2歳 → 朝日杯FS
- 3歳 → NHKマイルC
- 4歳 → 安田記念&マイルCS
と、年齢が上がるごとに“階段を登るように”タイトルを積み重ねています。
これは単なる早熟馬ではなく、
「年齢を重ねてもトップクラスで進化し続ける本物のマイラー」
であることの証明です。
今後のローテと、種牡馬としての未来
現役続行なら、世界マイル戦線も射程圏?
すでに国内マイルではやることをやり尽くした感のあるジャンタルマンタル。
今後考えられるチャレンジは、
- 再度の香港マイル挑戦
- 海外のマイルGⅠ(例えば英のクイーンアンSなど)への参戦
といった「世界のマイル戦線」へのステップアップです。
香港での悔しい敗戦経験を持つだけに、
「日本最強マイラーが、今度こそ世界の頂点に」
というストーリーも十分あり得ます。
引退後は“マイルの名種牡馬”候補
血統面から見ると、ジャンタルマンタルは種牡馬としても魅力十分です。
- 父Palace Maliceは米国の名馬Curlinの子で、スピードとパワーに優れた血統
- 母系も芝・ダート兼用のスピード型で、日本の馬場によく合うタイプ
そこに、
- 日本の芝マイルで証明された実績
- 世代を超えた安定感
- 精神的なタフさ
が加わるわけですから、
「日本の新しい“マイル王国”をつくる父親」
になる可能性も十分あります。
将来、
- 「ジャンタルマンタル産駒がNHKマイルCを勝った」
- 「父子2代で安田記念制覇」
なんてニュースが出てきたら、それだけで胸アツですね。
ファン・馬券派にとっての“春秋マイル完全制覇”の意味
最後に、競馬ファン・馬券を買う側の目線からも、この偉業の意味を考えてみます。
「軸にして後悔しない馬」が誕生した
春と秋のマイルGⅠを同一年で制覇し、さらに芝マイルGⅠ完全制覇まで達成したジャンタルマンタルは、
「多少の不利があっても簡単には崩れない軸馬」
と言えます。
- コースが変わっても強い
- ペースが速くても遅くても対応できる
- 精神的にブレない
こういう馬が1頭いるだけで、そのレース全体の“軸”がはっきりし、他馬の評価もつけやすくなります。
“時代の基準”になるマイラー
今後、ほかのマイル路線の有力馬たちは必ず、
「ジャンタルマンタルと比べてどうか?」
という目線で評価されることになります。
- 「あの馬はジャンタルマンタルといい勝負をした」
- 「あの馬は、ジャンタルマンタル不在のGⅠで勝った」
といった形で、“時代の物差し”になっていくわけです。
まとめ
ここまでをまとめると――
という、完全に「歴史に残るマイル王」クラスの存在になりました。
これから先、
- 海外でのリベンジ
- まだ見ぬライバルとの再戦
- 引退後、子どもたちの活躍
など、ジャンタルマンタルを軸にした“物語”は、まだまだ広がっていきそうです。
春秋マイル完全制覇はゴールではなく、
「ここから先の伝説のスタートライン」
なのかもしれません。




