この記事では、名古屋市西区で1999年に起きた主婦殺害事件と、2025年10月31日に逮捕された安福久美子(やすふく・くみこ)容疑者についてわかっていることを説明します。
特に注目されている「安福久美子容疑者」と「高羽奈美子さんの夫(=高羽悟さん)」の関係、そしてもう1つの「夫」=安福容疑者自身の家庭についても整理します。
事実と推測をきちんと分けて書きます。
まず事件は何だったのか?ざっくり整理
事件が起きたのは1999年11月13日、場所は名古屋市西区稲生町のアパートでした。そこに住んでいたのは当時32歳の主婦・高羽奈美子(たかば・なみこ)さん。奈美子さんは自宅の部屋の中で首などを刃物で何度も刺され、亡くなっていました。とても残酷な犯行でした。
ショックなのは、そのすぐ近くに当時2歳だった息子さん(長男)が、無傷のまま座っていたという点です。幼い子どもを残したまま、母親だけが命を奪われた。これは地域の人たちにとっても強い恐怖と怒りのある事件でした。
すぐに警察の大規模な捜査が始まり、延べ何万人という数の捜査員が動いたと言われています。それでも犯人は長いあいだ特定されず、「未解決事件」「迷宮入りか?」と言われ続けました。
ところが26年後の2025年10月31日、愛知県警はついに安福久美子容疑者(69)を殺人の疑いで逮捕しました。決め手になったのは現場に残っていた血痕(血のあと)などから採取されたDNA型(遺伝子型)で、これが安福容疑者のものと一致したという説明です。
さらに警察によると、安福容疑者は事件前後からずっと逃げ続けていた、というよりも、2025年10月30日に自分から警察署に出頭(自分の足で来て名乗り出ること)してきたという話も出ています。そして取り調べの中で、容疑について「合っています」といった内容の認める発言をしている、と報じられています。
ここまででもう1つ大きなポイントがあります。それは「なんで今になって“急に”出頭したの?」という疑問。そしてもう1つ、「なぜ高羽奈美子さんが狙われたの?」という疑問です。この2つの疑問のカギになるのが、「旦那との関係」です。
“旦那との関係”とは誰と誰のこと?
この事件でいう“旦那”は、大きく2人出てきます。
- 高羽奈美子さんの旦那(夫)=高羽悟(たかば・さとる)さん
- 安福久美子容疑者の旦那(=安福容疑者の配偶者とみられる人物)
ニュースやSNSでよく話題にされているのは、①のほう、つまり「被害者・奈美子さんの夫」と「安福容疑者」の関係です。ここがいちばんセンシティブで、多くの人が「そこに男女のもつれがあったのでは?」と想像している部分です。
一方で②の「安福容疑者の夫」については、情報がかなり少なく、正確なことは公表されていません。ただし近所の人の話として「普通の主婦という感じだった」「家族と暮らしていた」といった証言は出ています。つまり、安福容疑者には家庭があり、いわゆる“孤立した一人暮らし”ではなかった、という報道はあります。
この記事ではまず①について、つまり「安福久美子容疑者」と「高羽悟さん(被害者の夫)」の関係を、わかっている範囲で説明します。
安福久美子容疑者と高羽悟さんは、どんな関係だったのか?
報道でははっきりこう伝えられています。
- 2人は高校時代の同級生。
- ふたりとも高校の軟式テニス部に所属していた。
- 安福容疑者は、当時悟さんにバレンタインチョコや手紙を渡したことがあった。
つまり、高校生のころ、安福容疑者は悟さんのことを特別な気持ちで見ていた可能性があります。悟さん自身も「(警察に)“高校の同級生です。心当たりは?”と聞かれて、テニス部か?とたずねたら“当たり”と言われた。チョコと手紙をくれた子が頭に浮かんだ」と話しています。
この証言からわかることは、「悟さんにとっても、もらった側として印象に残るくらいの好意を受けていた」という点です。バレンタインにチョコと手紙をもらうというのは、普通に考えて“好意がある”サインと受け止められやすい行動ですよね。
ただしここで大事なのは、「2人が付き合っていた」という事実は今のところ確認されていない、ということです。報道では、交際していたという話や、男女関係があったという裏付けは出ていません。「安福容疑者が悟さんに片思いしていたのでは?」というのは、一部のネットやSNSで語られている推測レベルにとどまっています。
さらに、2人が最後に会ったのは1998年ごろと言われています。これは事件の約1年前。そのときは高校の軟式テニス部のOB・OG会(同窓の集まり)で再会した、と報じられています。
そこで安福容疑者は「結婚して頑張ってるよ」といった話をしていた、と悟さんは覚えているそうです。つまり、その時点で安福容疑者自身も「自分の家庭がある」と話していたということになります。
ここまでまとめると、次のようになります。
- 高校時代:
安福容疑者 → 悟さんにチョコや手紙。
悟さんにとっても“印象的な同級生”として記憶された。 - 1998年のOB・OG会(事件の1年前):
お互い「今は家庭がある」という近況報告をした程度で、深い会話はなかったと言われている。 - その翌年、1999年に事件発生。
この流れから、一部では「一方的な好意→嫉妬→犯行?」という“恋愛トラブル型の動機”を想像する声も出ています。ただし、これは現在のところあくまで世の中の推測であり、警察が「動機は嫉妬です」と正式に発表したわけではありません。ここはまだ事実として確定していません。
被害者・高羽奈美子さんと夫・悟さんの夫婦関係
では、高羽奈美子さん側の「夫婦」という視点も見ておきましょう。
奈美子さんと悟さんは“普通の若い家族”でした。2歳の息子さんがいて、結婚4年目というタイミングでした。夫は仕事に出て、妻は自宅で子どもの面倒を見ている、というごく普通の日常です。近所でも「明るく礼儀正しいお母さん」という印象だったと伝えられています。
事件の日、悟さんは仕事に出ていました。その間に何者かが部屋に入り、奈美子さんを襲った。悟さんが戻ったときには、もう奈美子さんは助からない状態だったと言われています。この時点で2歳の息子さんはその場に残されていました。
夫・悟さんにとっては、愛する妻を突然奪われたうえに、2歳の息子を一人で育てていく現実がいきなり始まったわけです。実際、悟さんはその後引っ越しをしましたが、「犯行現場のアパートの部屋だけは26年間ずっと借り続けてきた」と語っています。これは、現場の状態を保存し、証拠を守り、いつか犯人が捕まるようにするためだったといいます。
26年間も家賃を払い続け、玄関に残った血痕や足跡などの痕跡もそのまま残したという話は、多くの人の胸を打ちました。実際、SNSでも「ここまでやり続けた夫の執念がすごい」「愛が深すぎる」という声が広がりました。
ここで大事なのは、悟さんはずっと「犯人を見つけたい、奈美子のために」という気持ちで動いていたということ。そして2025年10月31日の逮捕の連絡を受けたとき、「ほっとしました。信じられないけど、26年やってきたから」と語っています。
つまり、夫婦は「すれ違っていた」「関係が悪かった」というような情報は出ていません。むしろ逆で、悟さんは“亡くなった妻のために人生をかけた”とも言えるくらいの行動をとってきたわけです。
この事実をふまえると、「夫婦のトラブルで奥さんが殺された」というタイプの事件ではなかったと考えるのが自然です。では、なぜ奥さん(奈美子さん)が狙われてしまったのでしょうか。そこでまた、“旦那との関係”が浮上します。
なぜターゲットは奈美子さんだったのか?ここがまだ「わからない」
今回の事件が難しいのは、狙われたのが「夫・悟さん本人」ではなく、「悟さんの妻=奈美子さん」だったということです。
報道で今わかっているのは、
- 安福容疑者は悟さんと高校の同級生だった。
- 悟さんにとっても「覚えている女子」だった。
- しかし悟さんは「思い当たる動機がない」と話している。
つまり、悟さん自身も「なぜ奈美子が?」という気持ちのままなのです。「嫉妬で…」といった理由は、世間の想像としてはわかりやすいのですが、まだ裏付けは出ていません。警察もこれから詳しい取り調べを進めるとしています。
ここから先は、まだ“推測”の世界です。たとえばよく言われるのは、次のような線です。
- 高校時代に芽生えた気持ち(片思いなど)が、長い年月の中でこじれた。
- 1998年のOB・OG会(同窓会のような集まり)で再会したことで、昔の感情に再び火がついた。
- 「悟さんには奥さんと子どもがいて幸せそう」という現実を知って、感情が乱れた。
- その歪んだ気持ちが、全く関係のないはずの奈美子さんに向いた。
こういった“嫉妬型”の説明は、たしかに人間ドラマとしてはわかりやすいです。SNSでも「片思いがこじれたのでは?」という声は多く見られます。
ですが、ここは本当に注意が必要です。今のところ「そういう気持ちが実際にあった」と本人が語ったわけでも、警察が公式に認めたわけでもありません。まだ表に出ているのは「高校時代の好意があったと言えるようなエピソード」「同級生だった」という事実レベルまでです。それ以上は憶測です。
もう一人の“旦那”=安福容疑者自身の家庭
ではもう1つの「旦那との関係」、つまり「安福久美子容疑者の家庭」についてはどうでしょうか。
報道では、安福容疑者は名古屋市港区で家族と普通に暮らしていた、アルバイトをしていた、近所の人からは「挨拶すれば返してくる、普通の人」という印象だった、といった証言があります。
この証言から見えるのは、事件後26年間「逃亡生活のようなもの」をしていたわけではない、という点です。「普通に暮らしていた人が、26年近く前の未解決殺人事件の犯人として突然逮捕された」というところに、近所の人はものすごい驚きを感じていると報じられています。
ここから考えられるのは、この事件が「計画的な金銭目的の殺人」や「暴力団などの組織的トラブル」ではなく、すごく個人的で感情的な理由に基づいていた可能性が高い、ということです。なぜなら、それ以外の合理的な動機(お金、仕事上の恨み、トラブルの決着など)が今のところ出てこないからです。これはあくまで状況からの推測ですが、多くの報道や専門家コメントでも「動機の解明が今後の最大のポイント」とされています。
ただし、「安福容疑者の夫(配偶者)が事件当時どこにいたのか」「事件のことを知っていたのか」「事件後どういう夫婦関係だったのか」といった詳しい情報は、現時点では明らかになっていません。つまりこちら側の“旦那との関係”は、まだ報じられていない部分が多いのです。
26年後の逮捕に夫は何を感じたのか?
高羽奈美子さんの夫・悟さんは、この26年間ずっと事件現場のアパートの部屋を借り続けて、証拠が失われないように守ってきました。玄関に残った犯人の血痕や足跡も、そのまま保存されていたと言われています。この“現場保存”が、今回の逮捕につながったとみられています。
悟さんは逮捕の報せを受けて、警察署に呼ばれたときの様子をこう話しています。
「席についたとたん、捜査員が涙ぐみながら『26年お待たせしてすみません。被疑者が特定できた』と言った」「ほっとしました。信じられないかもしれないけど、26年やってきたから」
この言葉は、多くの人の胸に刺さりました。
なぜなら、これは「復讐してやる」という怒りだけの話ではないからです。
「妻のために、真実のために、証拠を守り続けた」
「2歳の息子の母親を奪った相手を必ず見つけたい」
その静かな執念が26年という気の遠くなる時間を支えた。そのイメージが、多くの人に深い印象を残しました。
いま、その長男はもう大人になり、すでに結婚もしたと言われています。「母の記憶がほとんどない息子さんにとって、今回の逮捕は“母はちゃんと守られた”“母は忘れられていなかった”という証明になった」という報じられ方もしています。家族にとっては、ようやく時間が動き出した瞬間でもあったのです。
まとめ
ここまでを一度まとめます。
この事件は「未解決事件がついに動いた」というニュースであると同時に、「人の感情がどこまで人を追い詰めてしまうのか」というとても重いテーマも持っています。
そしていちばん大切なことは、亡くなったのは何も悪くない一人の母親であるということです。2歳の子どもを残して、突然、理不尽に命を奪われた。その意味の大きさは、どれだけ時間がたっても軽くなりません。
だからこそ、社会として本当に知りたいのは「なぜ?」です。
・なぜ奈美子さんが狙われたのか。
・なぜ26年も沈黙が続いたのか。
・なぜ今になって出頭したのか。
“旦那との関係”は、たしかにこの「なぜ?」に近づくヒントのひとつです。ただ、それがすべてだと決めつけるのは、まだ早い段階です。
この先明らかになるであろう「動機」は、単なるゴシップで終わらせてはいけないところだと思います。なぜなら、そこでようやく、高羽奈美子さんとその家族が26年間ずっと待ち続けた“答え”にたどりつけるからです。

