俳優・岡山天音さんが、NHKの夜ドラ『ひらやすみ』で連続ドラマ初主演をつとめています。
「名前は聞いたことあるけど、どんな俳優?」「そもそも『ひらやすみ』ってどんなドラマ?」「作品の雰囲気を知ってから見るか決めたい」という人も多いはず。
この記事では、
- 『ひらやすみ』はどんなドラマなのか
- どんなキャラクターが登場するのか
- テーマ・見どころ・原作との関係
- どんな人におすすめの作品か
を解説していきます。
『ひらやすみ』はどんなドラマ?
NHK「夜ドラ」枠で放送中の15分ドラマ
『ひらやすみ』は、NHK総合の「夜ドラ」枠で放送される15分×帯ドラマです。
- 放送局:NHK総合
- 放送枠:夜ドラ(よるドラ)
- 放送時間:毎週月〜木 22:45〜23:00(15分)
1話あたりが短いので、仕事や家事で疲れて帰ってきたあとでも「ちょっと一息入れながら見る」のにちょうどいい長さです。
原作は真造圭伍の人気マンガ
ドラマの原作は、真造圭伍(しんぞう・けいご)さんの同名マンガ『ひらやすみ』。
- 掲載誌:週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)
- 連載開始:2021年
- ジャンル:日常系・ヒューマンドラマ・“癒やし系(いやしけい)”
このマンガは、「手塚治虫文化賞 マンガ大賞」にノミネートされたほか、イタリアのポップカルチャーの祭典「ルッカコミックス&ゲームズ」で最優秀連載コミック賞を受賞していて、海外からも高く評価されています。
ドラマ版も、その“やさしくて、ちょっと切ない日常”の空気を大事にしながら映像化されています。
物語のざっくりあらすじ
主人公は29歳の元・俳優フリーター
主人公は、生田ヒロト(いくた・ヒロト)、29歳。
- 山形出身
- 俳優を目指して上京したが、「自分には向いていないかも」と感じて挫折
- 今は東京・阿佐ヶ谷にある釣り堀「金松」でアルバイト
- 性格はのんびり、マイペース
- お年寄りには好かれるけど、好きなタイプの女性には緊張してしまう
仕事も、将来の夢も、はっきり決まっていない。
だけど、どこか人の話をちゃんと聞いてくれて、ゆるく優しい――そんな青年です。
近所の“ばーちゃん”から平屋をもらうことに…
ある日、近所の一人暮らしのおばあちゃん・和田はなえ(83歳)と仲良くなったヒロトは、夕飯を一緒に食べるような関係になります。
ところが、はなえは突然、心筋梗塞で亡くなってしまうことに。
身寄りがいなかった彼女は、生前のうちに「自分の住んでいる平屋(ひらや)一戸建て」をヒロトに譲る手続きをしていました。
こうしてヒロトは、阿佐ヶ谷駅から徒歩20分ほどの、庭付き・2DKの古い平屋を“もらう”ことになります。
いとこの美大生・なつみと二人暮らしがスタート
そこへやってきたのが、山形から上京してきた18歳のいとこ、小林なつみ。
- 東京の美大・絵画科に進学したばかりの大学1年生
- 漫画家になるのが夢
- 人見知り&自意識過剰で、大学で友だちがなかなかできない
- 調子に乗りやすいけど、落ち込みやすい
ヒロトと一緒に、平屋で暮らしはじめます。
血はつながっているけれど、兄妹ほどべったりでもない“いとこ”。
その微妙な距離感が、ちょうどよくて心地いい。
この平屋に、やがて「生きづらさ」を抱えた人たちが、少しずつ集まってくる――。
そんな日常が、『ひらやすみ』の世界です。
主な登場人物とキャスト紹介
ドラマを楽しむうえで、キャラクター像を知っておくと、感情移入しやすくなります。ここでは主要キャストを、ざっくり紹介します。
生田ヒロト(岡山天音)
- 職業:フリーター(釣り堀「金松」のアルバイト)
- 年齢:29歳
- 元・俳優志望(芸名は「市川ヒロト」)
ヒロトは「何かを成し遂げた人」ではありません。
- 売れないまま俳優をあきらめた
- 定職についていない
- 将来のビジョンもぼんやり
いわば、“今の日本にたくさんいる普通の若者”の一人です。
でも、彼には大きな武器があります。
- 人の話をちゃんと聞ける
- 相手をジャッジせず、受け止める
- 「まあ、なんとかなるっしょ」と力を抜いて笑える
この“ゆるさ”が、周りの人たちにとって救いになっていきます。
岡山天音さん自身も、インタビューで「ヒロトのような友達がいたらいいなと思う」と語っており、原作ファンとしても、この役に強い思い入れを持って演じています。
小林なつみ(森七菜)
- ヒロトのいとこ
- 美術大学・絵画科の学生
- 漫画家志望
「こんな美大生、ほんとにいそう」と言われるくらい、“ちょっとオタクっぽくて不器用な女の子”を、森七菜さんがリアルに演じています。
- 自意識過剰で、すぐ落ち込む
- でも、好きなことにはまっすぐ
- ヒロトに昔、絵を褒められたことが心の支え
夢と現実の間でゆれ動く姿は、「若い頃の自分を見ているみたい」と感じる大人も多いはずです。
立花よもぎ(吉岡里帆)
- 阿佐ヶ谷駅前の「ニコニコ不動産」で働く33歳の女性
- 仕事はできるけど、プライベートはどこか空回り気味
- 阿佐ヶ谷のマンションで一人暮らし
ヒロトが働く釣り堀で出会い、
「お気楽そうに見えるヒロト」に、イライラしながらも、どこか惹かれていきます。
第5話以降は、駅や銭湯、スーパーなど、妙に遭遇するシーンが続き、「あれ、これって…?」という空気が生まれていきます。
和田はなえ(根岸季衣)
- 83歳の“阿佐ヶ谷のばーちゃん”
- 元・給食のおばさんで料理が得意
- 偏屈だけど、本当はとても優しい
ヒロトに平屋を譲った張本人。
彼女の存在が、この物語のスタート地点になっています。
そのほか、
- ヒロトの旧友・野口ヒデキ(吉村界人)
- なつみの大学の友人・あかり(光嶌なづな)
- はなえの親族やご近所さん
など、「そこに本当に生きていそうな人たち」が多数登場。
どのキャラクターも“やりすぎていない”演技で、日常の延長線上にちゃんと存在しているように感じられます。
舞台となる「阿佐ヶ谷の平屋暮らし」がとにかく尊い
団地の次は「平屋」ブーム?
NHKはこれまで、『団地ともお』など、「団地」を舞台にした作品を多く作ってきましたが、今回は「平屋」が舞台。
タイトルの「ひらやすみ」の「ひら」は、“平屋(ひらや)”の「ひら」でもあります。
- 阿佐ヶ谷駅から徒歩20分
- 庭付き
- 2DKの昔ながらの平屋
派手さはないけれど、どこか懐かしくて落ち着く空間。
「こういう家で、ゆっくり暮らしたいなあ」と、画面を見ながらため息が出るような、そんな家です。
さりげないごはんシーンが“飯テロ”レベル
作品の魅力を語るうえで外せないのが、「ごはん」。
- やきそばに目玉焼きをのせたワンプレート
- 味噌汁ととんかつ
- そうめんと小鉢のおかず など
どれも、特別な料理ではありません。
だけど、ちゃんと手間がかかっていて、温かさがある。
フードスタイリストは、『かもめ食堂』『ごちそうさん』などを手がけた飯島奈美さん。
「やりすぎないけど美味しそうなごはん」が、視聴者の心とお腹を同時に満たしてくれます。
テーマは「地に足のついた暮らし」と「生きづらさ」との付き合い方
“ケアドラマ”としての『ひらやすみ』
東洋経済オンラインは、このドラマを「心身ともに疲弊しがちな私たちのための“ケアドラマ”」と表現しています。
理由はシンプルです。
- 登場人物たちは、みんな何かしら“生きづらさ”を抱えている
- でも、決して「強くなれ!」とは言われない
- ただそばにいて、ごはんを食べて、少し話す
- それだけで、ちょっと心が軽くなる
ヒロトの平屋は、「人生に疲れた人が、ちょっとだけ休みに来る場所」のようにも見えます。
派手な事件は少ない。でも、だからこそ心に残る
『ひらやすみ』には、
- 大きな事件
- ドロドロの恋愛
- 犯罪やサスペンス
といった“テレビ的な”盛り上がりは、あまりありません。
その代わり、
- 仕事での小さな失敗
- 家族とのすれ違い
- 自分の将来への不安
といった、「あ〜分かる」と思えるモヤモヤが、丁寧に描かれます。
見る側は、自分自身の経験と自然につなげてしまうはずです。
原作マンガとの違い・ドラマ版ならではの魅力
15分ドラマならではの「余白」
原作はマンガなので、コマの間の“余白”から、登場人物の気持ちを読み取る楽しさがあります。
ドラマ版では、その“余白”を、
- ゆっくりしたカメラワーク
- 阿佐ヶ谷の街の空気
- 役者の表情の小さな変化
などで見せてくれます。
15分という短さもあって、1話の中に「説明ゼリフ」を詰め込むのではなく、
視線や沈黙で感情を伝えるシーンが多いのも特徴です。
阿佐ヶ谷の街の“生活感”
ドラマの中には、
- 商店街
- 銭湯
- スーパー
- 夏祭り(阿佐ヶ谷七夕祭り)
など、実際の街が舞台となったシーンがいくつも登場します。
“テレビ用にキラキラに飾りつけた街”というよりは、
「今日も普通に暮らしている人たちがいる場所」として描かれているのがポイントです。
どんな人におすすめ?視聴前チェックリスト
『ひらやすみ』は、特にこんな人に刺さりやすい作品です。
1. 仕事や人間関係に疲れている人
- 一生懸命やっているのに、報われている感じがしない
- SNSを見ると、他人と自分を比べてつらくなる
- 「もっと頑張れ!」と言われる作品はちょっとしんどい
そんなとき、このドラマは「頑張らなくてもいい時間」をくれます。
ヒロトの「まあ、なんとかなるっしょ」という空気感に、肩の力がふっと抜けるかもしれません。
2. 将来がなんとなく不安な20〜30代
ヒロトは29歳、なつみは18歳。
どちらも、“何者にもなれていない途中の人”です。
- 夢を追いかけたい気持ち
- でも現実の生活も大事
- 親世代の価値観と自分の価値観のズレ
そういったものに揺れながら、それでもなんとか今日を生きている姿は、「これでいいのかな」と悩む視聴者の心に寄り添ってくれます。
3. 日常系・“ご飯ドラマ”が好きな人
『かもめ食堂』や『深夜食堂』のような、
「日常の中で誰かとごはんを食べる」タイプの作品が好きな人は、『ひらやすみ』とも相性がいいはず。
- 大事件は起きない
- だけど、なぜか見終わると心が軽い
- 今日の自分のごはんも、ちょっと大事にしたくなる
そんな感覚が味わえます。
岡山天音という俳優の“今”を見るドラマでもある
個性派から「主役」へ
岡山天音さんは、これまでも多数の映画・ドラマに出演してきた実力派俳優です。
- メインキャストの一人
- クセのある役
- 物語の“スパイス”になる存在
として記憶している人も多いかもしれません。
そんな彼が、NHKの連続ドラマ枠で初主演となったのが『ひらやすみ』。
- 声のトーン
- 間の取り方
- 相手役との距離感
すべてが“抜け感”のある演技で、力みがありません。
「大きなヒーローではないけれど、そばにいてほしい人」
――そんな主人公像を、自然体で体現しています。
「ヒロトみたいな友達がいたらいいな」と思わせる存在感
インタビューで岡山さんは、ヒロトについて、
ヒロトのような友達がそばにいたら、地に足のついた生活の美しさに、もっと気づけるかもしれない
といった趣旨の話をしています。
ドラマを見終わった後、
「自分の周りにも、こんな人いないかな」
「自分が誰かにとって、こういう存在になれたらいいな」
と感じる人も多いのではないでしょうか。
まとめ
最後に、この記事のポイントをまとめます。
もしあなたが今、
- 毎日がなんとなくしんどい
- でも、説教くさい自己啓発は聞きたくない
- ただ静かに、誰かの日常を眺めていたい
そんな気分なら、『ひらやすみ』はきっとぴったりのドラマです。
「平屋で一息つくような15分」を、ぜひ一度味わってみてください。


