ジェンティルドンナの娘として知られるジェラルディーナ。
「G1を1つ勝ったのは知ってるけど、実際どれくらい強い馬だったの?」
という疑問を持っている方も多いと思います。
この記事では、
を整理していきます。
ジェラルディーナってどんな馬?ざっくりプロフィール
まずは基本情報から見てみましょう。
そして現在は引退して、お母さん馬(繁殖牝馬)としてノーザンファームで暮らしています。
「強さ」をざっくり一言で言うと?
結論から言うと、
世代トップクラスの古馬牝馬(4歳以上の女馬)で、
一線級の牡馬とも十分戦えた “一流G1馬”
という評価がしっくりきます。
- G1勝利は「エリザベス女王杯」の1勝のみ
- しかし、
- G2オールカマー勝ち
- 有馬記念3着
- 宝塚記念4着
- 香港ヴァーズ4着 など、
古馬の強豪が集まるレースで何度も上位に来ている
「勝ちまくる怪物」タイプではないものの、
ハイレベルな相手に混じって、どのレースでもしっかり存在感を見せたタイプと言えます。
では、もう少し詳しく「成長の物語」を見ていきましょう。
2〜3歳時代:血統は超一流、でも開花には時間がかかった
デビューは3着スタート
ジェラルディーナは2歳の9月、中京競馬場の新馬戦でデビューしますが、このときは3着。
2戦目は2着、そして3戦目でようやく初勝利を挙げます。
その後、2歳女王決定戦ともいえる阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に挑戦しますが、結果は7着。
「いきなり母のようにバリバリG1を勝つ」というタイプではありませんでした。
3歳春:クラシック路線には乗れず
母ジェンティルドンナは3歳で牝馬三冠を達成しましたが、
ジェラルディーナは、
- 桜花賞
- オークス
- 秋華賞
といったクラシック本番には出走できていません。
この時点では、
「血統はすごいけど、ちょっと地味目の良血馬」
くらいの印象だった人も多かったはずです。
3歳夏〜秋:転厩&3連勝で一気に「本格化」の気配
調教師の引退で厩舎が変わる
3歳の途中で、
それまで管理していた石坂正調教師が定年引退となり、
ジェラルディーナは斉藤崇史厩舎へ転厩します。
この「環境の変化」が、後の飛躍につながりました。
条件戦で3連勝
転厩後、古馬との混合条件戦に出走すると、
夏〜秋にかけて小倉の条件戦を含めて3連勝。
- 小倉のマカオJCT
- 筑後川特別
- 西宮S
と立て続けに勝ち、
「ようやく血統に見合う走りをするようになってきた」と、
競馬ファンの間で注目され始めます。
初の重賞挑戦では4着
3歳の締めくくりはチャレンジカップ(G3)。
ここでは勝ち切れず4着でしたが、
「古馬の重賞でも十分戦える」という手応えを見せました。
4歳前半:結果が出ず、もどかしい時期
4歳シーズンの前半は、
G2やG3を中心に使われますが、なかなか勝ちきれません。
- 京都記念(G2)4着
- 阪神牝馬S(G2)6着
- 鳴尾記念(G3)2着
- 小倉記念(G3)3着 など
「常にそこそこは走るけど、もう一押し足りない」
そんなもどかしい成績が続きます。
4歳秋:オールカマー&エリザベス女王杯で一気に頂点へ
ここからが、ジェラルディーナの“本番”と言っていい部分です。
オールカマー(G2):ついに重賞初制覇
2022年9月のオールカマー(G2・中山芝2200m)。
このレースでジェラルディーナは、
- 道中は中団の内で脚をため
- 直線で進路を見つけると一気に加速し、
- 一番人気のダンビュライトや、
G1馬デアリングタクトらをまとめて差し切って勝利
重賞初制覇を決めます。
ここでようやく、
「ジェンティルドンナの娘が、重賞の舞台でも本格的に開花した」
という評価になりました。
エリザベス女王杯(G1):大外一気の初G1制覇
続くエリザベス女王杯(G1・阪神芝2200m)が、
ジェラルディーナ最大のハイライトです。
- 馬場は重馬場というタフなコンディション
- 序盤は後方寄りでじっと我慢
- 最後の直線で大外に持ち出して一気にスパート
- 内で粘るライバルたちを豪快に差し切り、そのまま先頭でゴール
この勝ち方は、
「馬場が悪くても、相手が強くても、自分の脚をしっかり使い切るタイプ」
というジェラルディーナの持ち味を、はっきりと見せたレースでした。
この年のエリザベス女王杯は、
他にもG1馬や重賞勝ち馬が多数そろった「ハイレベルメンバー」。
その中で堂々と勝ったという事実は、
「ただの良血馬」ではなく
“本物のG1馬”として一流の力を証明したレースと言えます。
有馬記念3着:牡馬一線級相手でも通用
エリザベス女王杯の勢いのまま、
ジェラルディーナは年末の有馬記念(G1・中山芝2500m)に挑戦します。
このレースには、
- タイトルホルダー(G1複数勝ち馬)
- エフフォーリア(年度代表馬)
- ヴェラアズール(ジャパンC馬) など
日本のトップレベルの牡馬がズラリとそろった“ドリームレース”。
ジェラルディーナはスタートで出遅れる不利がありながら、
後方からきっちり伸びて3着に入線します。
斉藤崇史調教師はレース後、
「一線級相手にこれだけ走れたので、来年が楽しみ」
とコメント。
「古馬中長距離の一線級」に肩を並べたことを実感させる内容でした。
2022年JRA賞 最優秀4歳以上牝馬を受賞
この年の活躍が評価され、
ジェラルディーナは2022年JRA賞 最優秀4歳以上牝馬を受賞します。
- オールカマー(G2)勝利
- エリザベス女王杯(G1)勝利
- 有馬記念3着
という「秋の充実ぶり」が高く評価された形です。
この賞は、
その年の“古馬牝馬のトップ”にだけ与えられるタイトルなので、
「2022年の日本の古馬牝馬の中で、もっとも評価された馬」と言い換えてもいいでしょう。
5歳シーズン:世界と一線級牡馬に挑み続けた一年
5歳になった2023年、
ジェラルディーナはさらに高いレベルのレースに挑み続けます。
大阪杯(G1):5番人気で6着
春の中距離G1である大阪杯(阪神芝2000m)では、
5番人気に推されながら6着。
勝ったのはジャックドール、
上位にはダノンザキッドなど一線級牡馬が並びました。
負けはしましたが、
勝ち馬から0.6秒差と、大きく崩れているわけではありません。
香港クイーンエリザベス2世C(G1):世界の強豪相手に6着
次に挑んだのは、香港・シャティン競馬場のクイーンエリザベス2世C(G1)。
ここでは世界的な名馬ロマンチックウォリアーが勝利し、
ジェラルディーナは6着。
結果だけ見ると地味ですが、
「日本国内でトップクラスの古馬牝馬が、
世界の強豪に挑みに行った」
というチャレンジ精神は高く評価できます。
宝塚記念(G1):世界最強イクイノックス相手に4着
2023年の宝塚記念(阪神芝2200m)は、
世界ランキングでもトップ評価を受けたイクイノックスが圧勝したレースとして有名です。
そのレースでジェラルディーナは、
- 中団後方からの競馬
- 直線でしっかり脚を伸ばし
- イクイノックスから0.2秒差の4着
武豊騎手は、
「直線に向いた時は勝ったかな、と思ったけど…」
とコメントしており、
勝ち馬がイクイノックスでなければ、
十分勝ち負けになっていた内容でした。
秋〜冬:勝ち切れないまま引退へ
その後も、
- オールカマー(G2)6着
- エリザベス女王杯(G1)5着
- 香港ヴァーズ(G1)4着
と、G1・G2で掲示板付近の好走を続けますが、
勝ち星には手が届かず。
そして2023年12月の香港ヴァーズ4着を最後に引退し、
ノーザンファームで繁殖牝馬になりました。
レース内容から見る「ジェラルディーナの強さの特徴」
ジェラルディーナのレースぶりから見える“強さのタイプ”を、
かんたんに整理してみます。
① 切れ味というより「長くいい脚を使う差し馬」
- 後方〜中団でじっと構える
- 直線で外に出して、長くいい脚でじわじわ伸びてくる
というパターンが多いです。
一瞬でビュンと切れるというより、
「エンジンがかかったら、長くしぶとく伸び続ける」
そんなタイプの差し馬です。
② 相手が強くなるほど燃えるタイプ
- エリザベス女王杯(G1)勝利
- 有馬記念3着
- 宝塚記念4着
- 香港ヴァーズ4着
など、
相手のレベルが高いほど、かえってパフォーマンスを上げてくる傾向があります。
逆に、G3クラスでは取りこぼすこともあり、
「格に見合った舞台でこそ本領発揮」という感じです。
③ 気分屋な一面も
関係者のコメントでは、
- 「レース中の気持ちに波があるかも」
- 「ズブさ(反応の遅さ)を見せることもある」
といった指摘も見られます。
つまり、
「能力は高いが、メンタルや気分のコントロールが難しい繊細なタイプ」
とも言えます。
母ジェンティルドンナと比べると、どれくらいの位置づけ?
ここが一番気になるところかもしれません。
ざっくり比較すると、こんなイメージです。
実績の比較
ジェンティルドンナ(母)
- 牝馬三冠
- ジャパンC連覇
- ドバイシーマクラシック、有馬記念 など
- G1・7勝
- 年度代表馬2回
- JRA顕彰馬(競馬殿堂入り)
→ 日本競馬史でも「歴代最強クラスの牝馬」
ジェラルディーナ(娘)
- オールカマー(G2)
- エリザベス女王杯(G1)
- 有馬記念3着、宝塚記念4着、香港ヴァーズ4着
- G1・1勝
- 2022年 最優秀4歳以上牝馬
→「世代トップクラスの古馬牝馬」「一流G1馬」
さすがに、母のジェンティルドンナと“同格”とは言えません。
ただし、
「日本トップクラス牡馬相手にG1で上位に来ている」
「JRA賞も受賞している」
という点を考えると、
『普通のG1馬』ではなく、
しっかり“上のランク”に入る一流馬
と評価していいレベルです。
今後への期待:お母さんとしての「第二の伝説」へ
ジェラルディーナは2023年末で現役を引退し、
現在はノーザンファームで繁殖牝馬(お母さん馬)としての生活を始めています。
血統的には、
- 父:モーリス(G1・6勝)
- 母:ジェンティルドンナ(G1・7勝)
という超スペシャルな配合の娘。
そのジェラルディーナが、
これからどんな子どもを世に送り出すのか――
- 「母子でG1制覇」
- 「母・祖母・孫と三代G1馬」
といったドラマも、十分にありえます。
レースで見せた“一流の走り”が、血として次の世代に受け継がれていくのか。
ここから先は、ファンとして長く楽しめるポイントですね。
まとめ
最後に、この記事のポイントをもう一度整理します。
です。
ですから、最初の問いにもう一度答えるなら――
ジェラルディーナは、
「母ほどの“歴史級レジェンド”ではないけれど、
その時代のトップクラスと胸を張って言える、一流のG1牝馬」
と表現するのが、いちばんしっくりくると思います。



