「おこめ券を配らない市長」
「万博に“学校単位では行かなくていい”と言った市長」
「パワハラ内部通報の対応でニュースになった市長」
ここ最近、そんな見出しで名前を見ることが増えたのが
大阪府交野市(かたのし)市長・山本景(やまもと けい)さんです。
- どんな学歴・経歴をたどって市長になったのか
- いま市政でどんなことをやっている人なのか
- 評価されている実績と、逆に批判されているポイントはどこか
この記事では、こうした「山本景市長の現在地」を整理していきます。
3行で分かる「山本景」という人物
まずはザックリまとめると……
- 地元・交野育ちの“数字に強い”エリート市長
大阪桐蔭 → 和歌山大学 → 大阪大学大学院経済学研究科という学歴。 - 学生起業 → 金融マン → 議員 → 市長という異色キャリア
学生時代にITベンチャー「AAA!CAFE」を立ち上げ、のちにライブドアに売却。
その後、信金中央金庫・野村證券を経て政治の世界へ。 - 「財政再建」と「子育て支援」と「コスパ」を強く意識する市長
土地開発公社の巨額借金の圧縮、中学給食無償化、おこめ券より水道・給食優先など、
お金の使い方にかなりシビアな姿勢が特徴です。
ここから先は、もう少しゆっくり
「学歴 → 仕事 → 政治 → 市長としての実績・課題」という順番で見ていきます。
学歴:地元・交野から難関大学院へ
幼稚園〜高校までずっと「交野育ち」
山本景さんは、1980年3月12日生まれ。
生まれてすぐに交野市で育ち、幼稚園から中学校までずっと地元です。
- 開智幼稚園(交野市)
- 交野市立岩船小学校
- 交野市立第四中学校
と進み、その後は私立の大阪桐蔭高校へ。
大阪桐蔭というと「野球の名門」というイメージが強いですが、
進学クラスもあり、山本さんはそちらのルートで大学を目指したと見られます。
和歌山大学 → 大阪大学大学院(経済学修士)
高校卒業後は、和歌山大学経済学部へ進学。
さらに、大阪大学大学院経済学研究科(経済学修士)まで進みます。
大学院では「統計」が専門だったと本人も語っており、
この経験が、のちの世論調査や数字ベースの政策立案につながっていると話しています。
学生起業家としての「AAA!CAFE」時代
掲示板サービス「AAA!CAFE」を運営
在学中の1998年ごろから、山本さんは
「AAA!CAFE(トリプルエー・カフェ)」という
ホームページ・掲示板サービスの運営を始めます。
- 1998年 サービス開始
- 1999年11月 取締役副社長に就任
- 2002年4月 代表取締役社長に就任
という流れで、学生ながらITベンチャーの社長に。
当時は、個人サイトや掲示板が大流行していた時代。
インタビューによると、最大で40〜50万人ほどが利用していたといいます。
ライブドア(堀江貴文氏)への売却
しかし、掲示板サービスは広告が付きにくく、
「収益性が低かった」と山本さんは振り返っています。
最終的にこの会社は、
- 三井物産
- 米ナスダック上場企業 LookSmart
などと提携したのち、
ライブドア(堀江貴文氏)に営業譲渡されたとプロフィールに書かれています。
学生時代に起業 → 提携 → 売却まで経験してしまうという、
かなり“攻めた”キャリアのスタートです。
金融マン時代:信金中央金庫 → 野村證券
信金中央金庫での社会人スタート
大学院を修了した山本さんは、
2004年4月に信金中央金庫へ就職します。
信金中央金庫は、全国の信用金庫の「親玉」のような存在で、
地域金融のど真ん中にいる組織です。
ここでの経験は、
- 地方自治体の財政
- 地域経済とお金の流れ
を知るうえで、かなり役立っていると考えられます。
野村證券で「課長代理」まで経験
その後、2007年8月には野村證券株式会社へ転職。
- 2008年7月 課長代理
- 2009年7月 従業員組合支部運営委員
といった役職も経験しています。
本人は、インタビューの中で
「スピード感重視の社風で鍛えられた」
と語っており、
- 物事を早く決める
- 責任は自分が取る
- 職員がチャレンジしやすい環境を作る
といった市長としてのスタイルにも、
この金融マン時代の価値観が強く影響しているようです。
政治の世界へ:府議 → 市議 → 市長
きっかけは「交野市の借金350億円」
政治の道に進んだきっかけについて、
山本さんはこう話しています。
・交野市が土地開発公社関連で約350億円もの借金を抱えていると知った
・「これは普通のサラリーマンや市職員では立て直せない」
・「首長にならなければ根本解決できない」と感じた
この「交野市の巨額借金をどうにかしたい」という問題意識が、
政治家を目指す原点になっています。
2011年:大阪府議会議員に初当選
2011年、山本さんは大阪府議会議員選挙に立候補し、初当選。
当時は「大阪維新の会」公認での出馬だったとされています。
ただし、2015年の府議選では無所属で立候補して落選。
2015年:交野市議会議員選挙でトップ当選
同じ2015年、地元・交野市の市議会議員選挙に出馬し、
歴代最高得票率でトップ当選したと報じられています。
ここから「地元密着の市議 → 市長候補」というルートに入っていきます。
2018年:市長選は一度落選 → 2022年に再チャレンジで当選
- 2018年:交野市長選に初挑戦するも、現職に敗れて落選
- 2022年:再び市長選に出馬し、現職の黒田市長を921票差で破って初当選
2022年9月から、交野市長として市政トップの座についています。
市長としての「ビジョン」
財政再建 × 持続可能な住宅都市
NPO法人ドットジェイピーのインタビュー記事では、
山本市長が目指すまちの姿が、だいぶはっきり語られています。
テーマ①:財政再建
- 土地開発公社の借金はピーク時約368億円
- 長年かけて買い戻してきたものの、まだ100億円以上の負担が残っている
- ここをどう減らすかが、自身の大きなテーマ
と説明しています。
テーマ②:持続可能な「住宅都市」
交野市は人口約7万7千人、半分近くが山地という「ベッドタウン型」のまち。
- 無理に工場を誘致するより、住環境の良さを守る
- 交通の利便性(JR快速・京阪・第二京阪)を生かした住宅都市を目指す
- 若い子育て世帯の転入を増やし、少子高齢化に対抗する
という方向性を示しています。
具体的な実績①:財政・お金の使い方
土地開発公社の負債削減に“金融テク”を投入
令和7年度(2025年度)の施政方針では、
土地開発公社の負債削減についてかなり詳しく書かれています。
- ピーク時の保有残高:約368億円
- 2023年度末の残高:約50.4億円(公社保有)+ 約58.4億円(起債残高)
- まだ合計約108.8億円の負担が残っている
そこで山本市長は、
「全国自治体初」として、
緊急防災・減災事業債など“防災系の地方債”を活用し、
公社保有地の買戻しに使う
というスキームを打ち出しました。
令和6・7年度の2年間で約30億円分をこの手法で買い戻し、
実質的な負担を軽くしていく方針です。
「身を切る改革」と債券運用
同じ施政方針では、次のような点も挙げられています。
- 市長の退職金をゼロにする
- 交際費の利用停止を続ける
- 約74億5千万円を債券で運用し、年約1億1千万円の金利収入を確保
- 市債発行も、長期より低金利の短期を活用して金利負担を圧縮
いかにも「元証券マンらしい」財政運営で、
良く言えばお金にシビアで攻めるタイプ、
悪く言えば数字に割り切りすぎることもあるタイプとも言えます。
具体的な実績②:子育て・教育・生活支援
中学校給食の無償化&小学生まで拡大
交野市では、
- 北河内7市の中で最も早く「中学校給食無償化」を実現
- 2025年度(令和7年度)からは、小学校5年生まで無償化を拡大
といった施策が進んでいます。
さらに、
- 市立認定こども園で3〜5歳児の「主食提供」を開始(白ご飯持参が不要に)
- 小学校・中学校の雑巾を市が一括購入し、「雑巾持参ゼロ」を目指す
- 小学校低学年の30人学級を府内で先行して実施
など、「細かいけど、親目線だと地味に助かる」施策も並んでいます。
「おこめ券は配りません」宣言と、その代わり
物価高対策として国が交付する「重点支援地方交付金」について、
山本市長はX(旧Twitter)で、はっきりこう書きました。
「交野市はおこめ券を配布しません」
理由は、
- おこめ券配布は、印刷・発送などの事務費を含めると
経費率が約20%と高い(税金の2割が“事務コスト”で消えるイメージ) - それなら、経費率約1%の上下水道基本料金免除や、
経費のほとんどかからない給食無償化に充てたほうが、市民の得になる
という考え方からです。
「お米をくれないなんてケチだ」という批判もありますが、
山本市長としては、
「同じ5億円なら、できるだけムダを削って実際の支援額を増やしたい」
という“コスパ重視”のスタンスを貫いています。
具体的な実績③:防災・インフラ・新しい取り組み
シャワートラック・トイレカーなど「動くインフラ」
インタビューでは、
市長としての“スピード感のある施策”として、次のような例が挙げられています。
- 能登半島地震への給水車派遣
- AI循環式シャワー車の導入
- 仮ナンバーの回収ルール見直し
- 越境木の強制伐採ルールの整備
さらに、令和6年度にはクラウドファンディングで
- トイレトラック
- シャワートラック
の購入費用を集め、目標を上回る寄付が集まったことも施政方針に書かれています。
LED化や公共施設の防災投資
- 公共施設の照明を一気にLED化
- 小中学校・こども園・体育館などのトイレ改修
- 防災公園や防災倉庫の整備
など、インフラ面の投資も、
国の補助金や防災系地方債をフル活用しながら進めているのが特徴です。
万博をめぐるスタンス:「学校単位で行かなくてもいい」
2025年大阪・関西万博の「子ども無料招待」でも、
山本市長は全国ニュースに取り上げられました。
「学校単位で行く必要はない」と発言
大阪府は、府内の4歳〜高校生を万博に無料招待する計画を立て、
学校単位での遠足を想定していました。
しかし交野市では、全13小中学校が現時点で「参加意向なし」と回答。
山本市長は会見で、
「学校単位で行く必要はない」
と発言し、大きく報じられました。
理由として挙げたのは、
- バスの確保が難しい・高い
- 会場までの安全面(事故・熱中症)への不安
- 見学できるパビリオンが限られ、教育効果が薄いのでは
- 行きたくない家庭もいる中で、「学校行事」として一律に連れて行くべきか?
といった点です。
「個人で行くのは自由」という説明
一方で、市長はXなどで、
「学校単位で行かなくても良いと言っているだけで、
個人で行くかどうかは各家庭と本人の判断」
と繰り返し説明しています。
実際、交野市内でも小学校6年生が万博に行った例があり、
「交野市民だから万博に行けない」というわけではありません。
このスタンスは、
- 子どもを“動員”することへの慎重さ
- 安全や費用対効果を重視する姿勢
の表れとも言えますが、
賛否が分かれやすいテーマでもあります。
いま抱えている課題:パワハラ内部通報への対応
「現在地」を語るうえで、
良い話だけでなく、批判されているポイントにも触れておきます。
幹部職員のパワハラ内部通報“放置”問題
2025年11月、
交野市役所の幹部職員によるパワハラをめぐる内部通報が、
1年以上放置されていたとするニュースが、各局で報じられました。
報道によると、
- 「口の利き方気をつけろコラ!」などの暴言が録音されていた
- 複数の職員が人事課にパワハラ被害を訴えたが、
内部通報制度が十分に機能せず、「泣き寝入りせざるを得ない」状況だった - 市の規定が「客観的な証拠」を重視しすぎており、通報が動きにくかった
といった問題が指摘されています。
第三者委員会の設置へ
同じ報道では、
- この問題を検証する第三者委員会の設置に向けた条例案が提出された
ことも伝えられています。
山本市長はこれまで、
- 「放置していない」との立場を示してきましたが、
- 具体的な対応や責任のとり方については、今後も注目される状況です。
ここはまさに「現在進行形の課題」であり、
山本市長の危機管理・組織マネジメント能力が問われている局面と言えるでしょう。
まとめ
最後に、ここまでの内容をギュッとまとめます。
人物像
- 交野育ちの“地元エリート”
→ 大阪桐蔭 → 和歌山大学 → 阪大大学院(経済学修士) - 学生起業 → 金融マン → 議員 → 市長という異色キャリア
→ ITベンチャーをライブドアへ売却、信金中金・野村で金融の現場を経験 - 数字とスピード感を重視するタイプ
→ 借金削減・金利圧縮・身を切る改革など、お金と時間にシビア
主な実績
- 土地開発公社の負債削減に“防災系地方債”を活用するなど、
かなり攻めた財政再建策を展開中 - 中学校給食無償化 → 小5まで拡大、“雑巾持参ゼロ”など子育て・教育施策を前進
- 物価高対策として「おこめ券は配らず、給食無償化や水道料金免除に回す」という
コスパ重視の判断をSNSで積極的に発信 - シャワートラック・トイレカー・給水車派遣など、
防災・インフラ面で“動く設備”への投資にも力を入れている
課題・論争点
- 万博の「学校単位での招待」に対して
「行かなくてもいい」と言い切る姿勢は、賛否が分かれるテーマ - 幹部職員のパワハラ内部通報をめぐる“放置”問題では、
第三者委員会の設置が進むなど、説明責任が問われている
一言でまとめるなら、
「地元愛の強い“数字オタク系”市長。
お金と時間にシビアな分、判断が尖って見えることもある人」
というイメージかもしれません。
- 「税金の使い方を徹底的に考える市長」として評価するか
- 「コスパを言いすぎて、人の気持ちや現場の声を軽く見ている」と感じるか
は、見る人によって分かれるところでしょう。






